管理会計の進化型MA損益計算書|経営コストの実務

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中小企業(非上場企業)において「経常利益」は「アテにならない利益」です。

極端な場合、経営者が不相応な役員報酬を取ることで赤字になったり、反対に、役員報酬をゼロにして見せかけの黒字にしてみたり・・・自由に操作することができます。

これでは「本当の収益性」を把握することができません。

そこで、管理会計の進化型PLである「MA損益計算書」においては「経営者の意思によって自由に増減できるコスト」である「経営コスト」というカテゴリーを設けて「創造付加価値」を計算する構造になっています。

管理会計(マネジメント会計)の進化型PL「MA損益計算書」のイメージ

この記事では、この「経営コスト」について実務的に解説します。

この記事は「中小企業向け|マネジメント会計(管理会計)の設計と運用の概要」の補足です。

「経営コスト」を他のコストと区別する理由

MA損益計算書では、損益項目を大きく5つに区分し「経営コスト」は、その中のひとつの区分です。

  1. 変動原価
  2. 事業コスト
  3. 経営コスト
  4. 事業外損益
  5. 臨時損益

いきなり極端な例ですが、会社の業績が悪いからといって社員の給料を止めてゼロにすることはできません。

しかし、取締役は、その経営責任を果たす意味で「黒字転換するまで無給で頑張る」ということが可能です。

一般的に「人件費」といわれる「役員報酬」と「社員給与」は、その性格は全く違います。

同様に下記のようなコストは、他のコストとは違って、経営者の意思で増額や減額が自由なコストなので「経営コスト」として区分計上します。

  • 役員報酬
  • 役員交際費
  • 役員生命保険料
  • 寄付金

「経営コスト」を、他のコストと区別することによって、

  • 創造付加価値=ビジネスの事業採算性
  • 創造付加価値に対する経営者の取り分の適正性

が鮮明になり、損益計算書の情報価値をさらに高めることが可能となります。

創造付加価値とは?

(関連記事)会計は「事務処理」ではなく「情報処理」であるという視点

「事業コスト」に混在している「経営コスト」は勘定科目を2つに分ける

一般的な勘定科目には、「事業コスト」と「経営コスト」が混在していることがよくあります。

下記は、その一例ですが、このように混在している勘定科目は、マネジメント会計(管理会計)の科目体系を設計する際に「事業コストの科目」と「経営コストの科目」を設け、明確に区分できるように2つに分けます。

ただ、金額が小さい科目については、事務手数が煩雑になるので、区分しません。

一般的な勘定科目事業コスト経営コスト備考
接待交際費営業交際費役員交際費
採用費一般採用費特別採用費ヘッドハンティングのコストなど
生命保険料福利厚生保険料役員生命保険料節税目的の生命保険等
車両費一般車両費役員車両費特別な高級車の場合など
教育研修費社員育成費役員研修費

支払手数料

事務代行費専門家報酬ブレーンとしての士業報酬や
コンサル報酬など

(関連記事)管理会計の進化型MA損益計算書|事業コストの内訳

「投資コスト」としてさらに区分することも

新市場の開拓や、新製品の開発のためのコストなど「将来のための投資」も「経営コスト」ですが、その内容が重要な場合は「投資コスト」という名称でさらに区分を設けることがあります。

(関連記事)中小企業の管理会計|将来への投資計画を可視化する

まとめ

管理会計の進化型PLである「MA損益計算書」における「経営コスト」について紹介しました。

関連記事も含め参考にしてみてください。

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