会計に強い経営者になるため
決算書を読む習慣を身につける

会計に強い経営者になるためには、従来とは違う「新しい視点」が必要です。

  1. 決算書は税理士に任せるな!
  2. 決算書は「見るもの」ではなく「読むもの」であること
  3. 簿記3級を満点合格すること

これらの3つの新視点をふまえ、中小企業経営者が「自社の決算書の熟読」を通じて会計に強くなる方法のアウトラインを紹介します。まずは「全体像」をインプットし、その上で「弱点補強」に取り組んでください。

なお、「決算書はまったく初めて」という方はコチラ(決算書の基礎:知ってて当たり前「決算書用語」リスト)を読んで基本用語をまず頭に入れてください。

決算書にはヒントが隠れている

損益計算書と貸借対照表には
会社の過去・現在・未来の情報が
隠れている

「決算書」とは「損益計算書」と「貸借対照表」がメインの2表です。この2表には「経営状況に関する重要な情報」がたくさん隠れていますが、あなたは「熟読」し「理解」していますか?

中小企業経営者は、一般的に顧問税理士から毎期「決算書」を受け取っていますが、その多くは「税務署に申告するため」「銀行から融資を受け取るため」に使うだけで、「経営に役立てている人」は少数派です。

「決算書」には、過去の業績や現在の財務状況を示すだけでなく、未来の業績やリスクを予測するための手がかりとしても活用することができます。つまり「現在」だけでなく「過去」や「未来」までが隠れているのです。

「もっといい会社」の「もっといい経営者」に進化成長するためには決算書を正しく読める「会計に強い経営者」になることを避けて通れません。

ぜひ、この「決算書熟読マニュアル」を活用して「会計に強い経営者」になれるよう自主トレに励んでください。

中小企業経営者が
決算書に弱い2つの理由

価値に気付ていてないから

中小企業経営者が決算書に弱い理由のひとつは「決算書の価値に気付いてないから」です。

決算書が税務申告や銀行融資のための資料となるのは、上述したように会社の経営状況に関する重要な情報であるからであり、その情報価値は経営者にとっても同様です。

経営者がこの情報価値に気付いていない理由の多くは顧問税理士です。

あなたは、税理士から毎期の決算書を詳しく説明してもらっていますか?

多くの税理士は「決算書を作る人」であり「分析や説明をする人」ではないため、経営者は、せいぜい売上と利益と納税額くらいしか説明を受けないので決算書の内容を知らないまま、つまり「価値に気付かないまま」なので「会計(決算書)に強くない」という残念な状態が続きます。

*「決算書のことは私に任せて(社長は営業に専念して)ください」というような営業トークで、決算書をブラックボックス化するようなタイプの税理士は特にキケンです。

しかし、何かのきっかけで「決算書の情報価値」が分かると、経営者は必要性を感じ、学習動機が生まれ、自然と「会計(決算書)に強い経営者」になっていきます。

あきらめているから

一方で、せっかく「決算書の価値」を感じつつも「難しそうだし」「勉強する時間もないし」「税理士に任せておけばいいし」という「できない理由」によって、あきらめてしまっている経営者も少なくありません。

厳しいことを言うようですが「責任放棄」と言われても仕方がりません。チームを率いる会社のトップとして、会社の経営状況を正しく把握しておく責任があるはずです。

会計に強い経営者になるための
3つの新視点

新視点1
ー決算書は税理士に任せるな!

「決算書は税理士に任せるな!」という少々誤解されそうな表現ですが、これは決して「税理士が頼りないから」という意味ではありません。

決算書は、税理士に任せっきりにするのではなく、経営者自身が「自分事」として捉えて必要なトレーニングをしよう!という意味です。

株式投資をする人、融資をする人、課税する人、取引先を調査する人などにとって「他社の決算書」は「他人事」ですが、「自社の決算書」は、経営者にとって「自分事」です。

巷にあふれている「決算書の読み方」というコンテンツのほとんどが「他人事の視点での見方」を解説したものです。

経営者には「自社の決算書」を「自分事」としての読解するチカラが必要です。

新視点2
ー「見る」から「読む」へ

会計に強い経営者になるためのひとつの方法は「決算書」は「見るもの」ではなく「読むもの」と視点を変えることです。

前述したように「価値ある情報」は「数字の裏」に隠れていることが多く、表面的に見ているだけではその価値ある情報に気付きません。

「この数字の裏に何が隠れているのか?」という「読む視点」が大切です。

特に、軽視されがちな「貸借対照表」への正しい理解は必修です。

新視点3
ー簿記3級の満点合格

ご承知の通り「決算書」は、日々記帳されている会計帳簿の延長線上にあります。そこに表示されている数字のすべてに「帳簿の裏付け」があります。

決算書という「プロセスの一部」だけを勉強するのではなく「簿記」を勉強することで「プロセスの全体」が分かり「読解力」はケタ違いに上達します。

その具体的な方法は「簿記3級の満点合格」です。「簿記3級の勉強」でもなく「簿記3級の合格」でもありません。「満点合格」です。

簿記3級には「決算書が出来上がるプロセスのエッセンス」がすべて含まれています。このプロセスを漏れなくインプットするために「満点合格」が最も近道です。

決算書熟読
5つのチェックポイント

Point1
「そもそも正しい決算書か?」

脱税や粉飾は論外

まずは「大前提」の話です。あなたがこれから熟読しようとしている手元の決算書は「そもそも正しいのか?」です。

節税するために意図的に利益を圧縮したら、あるいは、融資条件を有利にするために細工したら・・・これは論外です。

ここで言う「正しさ」というのは、業績や財務状況を判断するにあたって問題のないレベルで会計処理がされているか?です。

決算書を熟読する前に、作成した人に「正しく処理されていますか?」と必ず確認をしましょう。

Point2
「今、廃業したらナンボ?」

時価純資産の確認

決算書の正しさを確認したら、真っ先に確認するのは「貸借対照表」です。「今、廃業したら、どれだけのキャッシュが手元に残るか?」を確認しましょう。

これを「時価(換金価値)純資産」といいます。

  • 現在の会社の資産をすべて換金すれば「どれだけのキャッシュになるか?」
  • 現在の会社の負債をすべて支払い、返済すれば「どれだけのキャッシュが残るか?」

さて、キャッシュが残りましたか?それとも、足りずに負債が残りましたか?

この計算結果が「現在における会社の本当の価値」です。

Point3
「つぶれないか?」

返済と損益のバランスチェック

会社は「赤字」で倒産するわけではありません。どれだけの「赤字」を出してもキャッシュが続く限り存続します。逆にいうと「黒字」でもキャッシュが枯渇すれば、そこでゲームオーバーです。いわゆる「黒字倒産」というやつです。

仮に、黒字を出し続けていても、それを上回る返済があれば、キャッシュは減り続け、カウントダウンが始まっています。

キャッシュが尽きる前に返済を終えるか?それとも収益性を改善しし、返済額以上の黒字ラインまで引き上げるか?または、追加の資金調達をするか?あるいは、これらの対策を複合するか?などについて検討しなければなりません。

貸借対照表の「借入金残高」と損益計算書の「税引後純利益」のバランスをチェックしましょう。

Point4
「老後は安心か?」

退職金を「アテ」にしていいのか?

あなたの「人生計画」に関わる話です。

「人生設計上、老後資金はどれだけ必要ですか?」

その老後資金は、どのように準備するか?です。

プライベートで準備ができて、会社の業績と切り離して考えていいのか?それとも、引退時の退職金を「アテ」にしているのか?

もし「アテ」にしているのであれば「いつまでに、どれだけの退職金を準備すればいいのか?」を現在の決算書(貸借対照表)の情報に基づいてシミュレーションし、その後、毎期「予定通り順調にストックを積み重ねているか?」を確認する必要があります。

Point5
「誤解されないか?」

決算書は「一人歩き」させてはならない

決算書は「一人歩き」することがあります。

特に、銀行など金融機関に提出した決算書は、経営者の意図に反して「誤解」されることが少なくありません。

  • 将来への先行投資や臨時的なコストによる赤字なのに「業績悪化」と誤解されていないか?
  • たまたま決算時に多くの在庫があって「過剰在庫」と誤解されていないか?
  • 決算時に大口案件の売掛金残高が残って「滞留債権」と誤解されていないか?

決算書は、提出前に「事前確認」をして、誤解されそうな場合は「一人歩き」させず、あらかじめ「補足説明」を加えるなど「正しく理解してもらうための情報」を用意しなければなりません。

まとめ

決算書を熟読すること

会計に強い経営者になるために欠かせないツールである決算書の熟読について紹介しました。改めて要点をまとめておきます。

  1. 会計に強い経営者になるための3つの新視点
  2. 決算書熟読5つのポイント

改めてセルフチェックしてみてください。

もしサポートが必要であればいつでもお気軽に!→コーチングのご案内

お役に立ちますように!

関連記事