最高のチームを作るための
人事評価の仕組み
「3つの重要視点」
中小企業が人事評価制度を効果的に運用するには、3つの重要な視点があります。
- 人事評価制度は「もっといい会社」にするためのツールである。
- 人事評価の成否は、経営者のマインドセットに大きく左右される。
- 人事評価はあくまでも「道具」。「道具」は正しく使うこと。
これらの3つの重要視点をふまえ、10人~100人規模の中小企業のための人事評価制度の構築と運用について、そのアウトラインを紹介します。まずは「全体像」をインプットし、その上で「弱点補強」に取り組んでください。
人事評価制度はチーム作りの道具
「もっといいチーム」になれば
「もっといい会社」になる
先に結論を示しておきます。
「人事評価の目的は、人材を育成して、もっといい会社にすること」です。
会社の成長を握るのは「人」です。優れた人材を採用し、育成し、その能力を最大限に引き出すことで、会社は持続的な成長をすることができます。そのために欠かせないのが「人事評価制度の正しい運用」です。
人事評価は、単なる給与賞与の決定だけでなく、人材のモチベーション向上、育成、ひいてはチーム全体の成長、さらに企業文化=カルチャーの形成を促進するための重要な手段です。
この視点は、中小企業が人事評価の仕組みを成功させるための「前提」となります。
- 人事評価の仕組みを正しく運用する
↓ - 人材が成長する
↓ - もっといいチームになる
↓ - もっといい会社になる
人事評価によってメンバーとチームが成長するから「もっといい会社」になるというシンプルかつ本質的なロジックです。
まず、この「人事評価の目的」からズレないように気を付けましょう。
マーカス式
「成長支援型」人事評価の特徴
人を育て、チームを育てる
成長支援型人事評価制度
「人事評価」と言っても、様々なスタイルがありますが、このブログで紹介している人事評価の仕組み(ここでは「「成長支援型人事評価」と言います)の特徴は下記のとおりです。
具体的な解説に進む前に、まず、ここで紹介している仕組みがあなたが求めているものかどうかを確認してください。
- 成長支援型人事評価制度=「人材育成」を通じた「組織育成」が目的
- 10名から100名規模の中小企業での運用を想定したシンプルな仕組み
- 「基礎スキル10項目」と「実務スキル10項目」の合計20項目の評価基準によって個々のスキルを評価し点数化する仕組み
- 役職者は、上記に加えて「リーダースキル10項目」による評価を加算
- この人事評価の点数が、給与や賞与に反映することを想定
人事評価の成否は経営者次第
人事評価の失敗
一般的に、人事評価がうまく機能していないケース、つまり失敗事例を観察すると、次のような共通点があります。
- 点数を付けるという「上から目線」「一方通行」な評価
- 事業目的や目標、あるいは価値観が共有されていない
- 明確な評価基準や評価ツールがない、あっても公開されていない、あるいは不適切
- メンバーと評価者のコミュニケーション不足
- 評価結果のフィードバックや活用が無い、あっても少ない
- 給与賞与を決めるためだけの運用
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人事評価の成功
=ゴールイメージ
上記のような多くの失敗事例から学んだ「(マーカス式)成長支援型人事評価」を正しく運用すると次のようなことが実現します。これらが実現すれば、人事評価の運用は成功していると言えます。
- あるべきチームの姿を全員で共有できている
- 各メンバーの役割と責任が明確である
- 各メンバーの成長課題が明確である
- 各メンバーと評価者の定期的かつ深いコミュニケーションによって健全な相互信頼関係が築けている
- 各メンバーに対する持続的な成長支援が実現している
- 公平かつ公正な成果分配が行われている
- 上記を通じて、メンバーの成長意欲が高い
最大の成功要件は
経営者のマインドセット
「人事評価の仕組み=道具」があるから会社が良くなるのではありません。「道具」は正しく使うことが必要です。
仮に良くできた人事評価を仕組みであっても、それを正しく運用する必要があり、それを左右するのが経営者のマインドセットです。
人事評価に取り組む前に、次のようにマインドセットを持っているか?を自問自答しましょう。
- 「もっといい会社」に進化成長することへの意欲は十分か?
- 「もっといいチーム」に進化成長させることへの意欲は十分か?
- 人を育てたいという意欲は十分か?
- 人材育成・組織育成について自責で考動しているか?
どうでしょうか?
人事専任者が配置されていない中小企業の場合、経営者自身が、自責によって人を育て、チームを育て、会社を良くするという意欲を持っているか?がとても重要です。
人事評価によって、メンバーとチームを育て、もっといい会社にしたい、というマインドセットが最大の成功要件です。
もし不安がある場合、人事評価の実務に取り掛かる前に、まずマインドセットを整えましょう。
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人材育成における
人事評価の位置付け
人事評価は、人材育成における「PDCA(Plan-Do-Check-Action)」の中の「Check」に位置するプロセスです。上述したように「人事評価」は「人材育成」の仕組みの一部であり、その位置付けを正しく理解しておく必要があります。
Plan:理想像の言語化
人事評価の目的は「もっといいチーム」にするための人材育成であり、その結果として「もっといい会社」に進化成長することです。
そのためには「いいチームとは?」という理想のチーム像=ゴールイメージを明確にする必要があります。(=「Planning」)
その上で、その理想のチームには・・・
- どのようなメンバーが必要か?
- 各ポジションのメンバーにはどんなスキルが必要か?
・・・を言語化し「当社にとっての優秀な人材とは?」を鮮明にします。
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Do:教育研修
理想の人材として成長してもらうためには、研修やOJTなどによる「外部からの刺激」が必要です。
中小企業で働く多くの人たちの中で「自主トレ」で成長する人は少数派です。多くの人たちは「正しく導く必要」があります。
これは、学校教育において「テスト(=人事評価)」の前に「授業(=教育研修)」が必要であることと同じです。
Check:成長課題の抽出
人事評価は、人材育成・組織育成のPDCAサイクルの中の「Check」のプロセスに位置しています。
必要とされるスキルについて「クリアできていること」「クリアできていないこと」を可視化し、当人と評価者が共通認識することで「成長課題」を抽出します。
Action:成長課題の解決フォロー
「成長課題」が明確になれば、その解決のための「Action」です。
個々のメンバーの評価に基づいて、次のステップを目標設定し、その達成=成長課題の解決のためのサポートを行います。
コミュニケーションスキルに課題があれば、コミュニケーションのトレーニング、リーダーシップに課題があれば、リーダーとしてのトレーニング、といった具合です。
メンバーの「自主トレ」に依存することなく「いっしょに解決する」という企業文化がとても重要です。
【1】人事評価制度の構築
仕組みづくりのステップ
前置きが長くなりました・・・いよいよ「実務」です。
「人事評価の仕組み」は、次のステップで進めます。
人事評価は「もっといいチーム」を作るための道具です。まずは、どんなチームを目指すのか?ゴールイメージを鮮明にします。
目指すチームは、どのような部門や職種で構成されるのか?また、それぞれはどのように関連するのか?を整理します。
職種やポジションに関わりなく、全員に共通する基礎スキルを10項目作成します。
営業職、総務職というように、それぞれの職種別に実務スキルを10項目作成します。
各評価項目のレベルを評価するために5段階の評価基準を作成します。
現メンバーを実際に評価し、その結果をランキングし違和感が無いかを確認します。違和感がある場合は、評価項目の再考、ウエイト付けの検討、職種係数の検討を行い、適切なチューニングを行います。
Step1:チーム設計
制度設計のスタートにあたって、一般的にいう「組織図」を作成し3~5年後の「理想のチーム」を可視化します。
「このチームを作るために、それぞれ役割を果たそう」というチーム全員による共有と協力が必要です。
「成長」は各メンバーの「個人的なテーマ」ではなく「もっといいチームとなるためのテーマ」であることを正しく理解してもらうためにも可視化されたゴールイメージが必要です。
Step2:部門・職種設計
上記の「チーム設計」によって、部門や職種が明らかになります。一例を挙げると、次のような部門や職種に分類されます。
- 営業部門
- 製造部門
- 経理総務部門
支店展開しているような会社では次のような組織図が一般的です。
- 関西部門
- 中国部門
- 九州部門
- 本社
Step3:評価項目の作成(基礎)
前述したように、評価基準は「基礎スキル」と「実務スキル」で設定することをおススメしています。
パソコンやスマートフォンに例えると「基礎」は「OS」、「実務」は「アプリ」という区分と同じです。
「基礎スキル」は、それぞれの「アプリ」をサクサク動かすための「OS」として、職種や新人ベテランなど関わらず、全員に共通するスキルです。マーカス式では次の10項目をベースとして、それぞれの会社の事情に応じてアレンジしています。
- 社会人スキル
- 組織人スキル
- 課題発見スキル
- 計画実現スキル
- コミュニケーションスキル
- 管理スキル
- 積極的経験スキル
- ディスカッションスキル
- ロジカルシンキングスキル
- リーダーシップスキル
これは、すでにお気付きのように「経営脳:5つのレイヤー」の「第4レイヤー」である「スキル(基礎)」と同じです。つまり、経営者であっても、新人さんであっても共通です。
フォーマットサンプルのダウンロード
5段階人事評価|基礎スキル記録シート
*外部サイト(ビズオーシャン)にリンク
Step4:評価項目の作成(実務)
「アプリ」に相当する「実務スキル」は、それぞれの職種別に作成する必要があります。「営業部門」と「経理総務部門」というシンプルな2種類なのか?それとも、10も20も細分された職種があるのか?それぞれの会社によって様々です。
一例として「営業部門」のサンプルを示すと次のような評価項目が並びます。
- 戦略理解:当社の戦略を理解しているか?
- 市場理解:マーケットの状況を理解しているか?
- 顧客理解:顧客特性やニーズを理解しているか?
- 商品理解:当社の商品を理解しているか?
- 提案力:顧客の課題解決の為の提案ができているか?
また「経理総務部門」であれば、次のような項目が一般的です。
- 正確性:正確か?正確の根拠はあるか?
- 迅速性:処理量は十分か?・期限を遵守しているか?
- 整理力:資料やデータを秩序正しく整理しているか?
- 仕組化力:属人化せず標準化しているか?
- 専門家活用力:税理士や社労士の活用力
このようなイメージで、それぞれ「10項目」に絞り込みます。
Step5:5段階の評価基準の設定
「基礎スキル」と「実務スキル」の評価項目が決まれば、それぞれのレベルを評価するために「5段階の評価基準」を設定します。
上述の「理想のレベル」を「5点」とし、そこに至る段階として「1点」「2点」「3点」「4点」のそれぞれのレベルを設定していきますが、注意点は「シンプルがいい!」です。
そのためには、評価項目ごとに設定するのではなく、すべての項目について共通の定義をすることが有効です。多くを求める結果、複雑になってしまうと運用がしづらくなり本末転倒です。「運用できてナンボ!」です。
当社では、ひとつの目安として、次のように提案しています。
- 1点:理解レベル:理解しているか?
- 2点:行動レベル:行動しているか?
- 3点:成果レベル:日常業務に支障はないか?また、それは補助者等を必要としないレベルか?
- 4点:応用レベル:イレギュラー対応もできるか?
- 5点:指導レベル:他の仲間のスキル向上に貢献しているか?
「1点」は「理解しているか?」を問うので、もし理解していない場合は「0点」となり、事実上「6段階評価」となります。
Step6:シミュレーション
違和感をチューニング
「基礎スキル」と「実務スキル」の項目と5段階の基準が決まれば、既存メンバーを評価してシミュレーションします。
その結果、イメージ通りのランキングになれば「完成」となりますが、最初は「違和感」があるはずです。
評価項目のチェック
この「違和感」の理由のひとつは「評価項目」が足りないケースです。例えば「A君の発想力」は優れているのに「発想力」という評価項目がない場合、A君の優秀なところが点数に表れません。このような場合は、STEP3,4に戻って、評価項目の入れ替えを検討します。
ウエイトのチェック
評価項目は適正なのにランキングに違和感があるケースは「ウエイト」のチューニングをします。
「ウエイト」とは、各評価項目の難易度の調整です。例えば「社会人スキルの1点」と「ロジカルシンキングスキルの1点」は、同じでいいのか?の検討です。もし「ロジカル」の方が難易度が高く1点の重みが「社会人」に比べて重いならば「ウエイト2」と設定をします。
これによって「社会人3点」「ロジカル3点」の場合、3*1+3*2=9点という評価になります。
職種格差のチェック
さらに調整が必要なのは「職種格差」です。
「営業部門のオール3点の人」と「経理総務部門のオール3点の人」は「同点」でいいのか?の確認です。
もし「経理総務」に比べて「営業」は2倍の差があるなら、営業部門は「職種係数2」というような設定をします。
これによって、お互い「オール3=合計30点」であっても、評価点は「営業60点」「経理総務30点」という差がつくことになります。
Step7:年間スケジュールの決定
以上で、人事評価の「基準」が完成しました。
このあとは「運用の設計」です。具体的には、評価期間、評価面談、給与改定月、賞与支給月など、人事評価に関連するイベントをどのような周期で、どのようなタイミングで実施するかを明文化します。
これによって、人事評価の「制度・仕組み」が完成です。
【2】人事評価制度の導入
説明会の「アジェンダ」
「人事評価制度」が完成すれば、いよいよ導入(リリース)して運用段階に入ります。
導入にあたっては「説明会」を開催し、経営者自らが次の内容について全社員に解説しますが、そのアジェンダは次のようになります。
- 人事評価制度の目的「チーム作りのための成長支援」
- 人事評価基準「基礎スキル」「実務スキル」
- 評価点を上げるための考え方と取り組み方法
- 人事評価面談(個人面談・キャリア面談)の目的と進め方
- 年間スケジュール
プレゼンの注意点
この段階で「点数を付けるための人事評価」ではなく「成長支援のための人事評価」であることを全メンバーに正しく伝えることが、メチャクチャ大事です。
多くの場合、社員たちは「人事評価でダメ出しされる」という漠然としたイメージを持っている人が多いからです。
上述したように「もっといい会社にするために、みんなの成長が必要。会社は、そのためにみんなの成長を全力でサポートする」という経営者の「ホンキ」が伝わる必要があります。成長支援型人事評価制度の導入にあたって、特に注意しましょう。
【3】人事評価制度の運用
「人事評価制度」の1年間の運用例を紹介します。
事前説明会の開催(毎年)
評価対象期間に入る前に「人事評価の仕組みの目的や概要」「人事評価基準の解説」を中心とする「事前説明会」を開催し、チームのメンバーがこの取り組みについて正しく理解できているかどうかを確認する機会を設けます。
重要:日常の観察
人事評価は「日常業務」です。評価者は、日常から対象のメンバーの考えや行動を観察し、日常から「あるべき姿」に近づける関わりが大切です。
「評価の時期に過去を思い出す」というような「記憶に頼った評価」にならないように注意しなければなりません。
中間レビュー(半期または四半期)
半年ごと、あるいは四半期ごとに「個人面談:1on1」を実施し、成長課題への取り組みや進捗状況について共有する場を設けます。
各自から「現時点での自己評価」を提出してもらい、これに基づいた意見交換を行います。
順調であれば「この調子で!」と声を掛ければOKですが、そうでない場合は、適切なアドバイスを与えたり、悩み事に耳を傾ける時間になります。
期末レビュー
評価期間が終了すれば、中間時と同様「自己評価」を提出してもらい、これに基づいて「今期末の評価」を確定します。
また、同時に「来年の目標設定」を行い、その目標をクリアするために、考動をどのように改めればいいか?どのような学習が必要か?についてアドバイスを行います。
フォロー
新たな評価期間に入れば、次の目標をクリアするために個別にフォローを継続しましょう。文字通り「成長支援」のプロセスです。
【4】評価者の注意点
学校の先生のごとく
「評価者」は「学校」に例えるなら「先生」です。クラスの子供たちの成長は先生にかかってると言っても過言ではありませんが、会社における人材育成も同じです。この制度における「先生役」である「評価者」は責任重大です。
当面は経営者自身が全員の個人面談を実施することをお勧めします。全員の評価や面談は「しんどい仕事」ですが「育て上手な経営者」になるためのトレーニングと思って頑張ってください。
いずれ経営者自身の「評価スキル」が身に付けば、次は「評価者育成」として、そのノウハウをミドルマネジメント層に引き継いでいき、結果として「人材育成スキルの高いチーム」が出来上がります。
楽な仕事ではありませんが、導入から数年は、そのための期間です。
中小企業の人事評価Q&A
よくある質問・ご相談
中小企業経営者の方からの「よくあるご質問・ご相談」です。
他に、お聞きになりたいことがあれば「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。
*すべてにお答えできないことを予めご了承ください。
実際に運用が始まると、大なり小なりの「要改善点」が見え始めます。それらの改善点を踏まえ「来年のための改訂版」を作ります。注意点は「評価期間中には変更しない」です。評価期間の途中でルールを変えることは信頼感を損なうリスクがあるので、やむを得ず変更する場合であっても全員の同意や合意が必要です。
マーカス式の人事評価は、一般メンバーも役職者も共通の評価項目、評価基準を用いて行いますが「リーダーとしてのスキル」を評価するために「基礎」「実務」に加えて3つめの評価項目として「リーダースキル」を追加することを提案しています。
いわゆる全員評価ですが、社員たちが「私心を排除して公平に評価する目」を持っているならより公平な評価ができるので大賛成です。しかし、現実はどうでしょうか?50人規模までのサイズの中小企業でそれだけのメンバーが揃っている会社に私は出会ったことはありません。私情が泥臭く反映するなら私は反対です。
一般的にMBOと言われる方法ですね。「公平で適正な目標設定」ができるなら賛成です。これも、上記と同様「目標設定」が困難な会社の方が多いのが中小企業の実情です。ここで紹介した「成長支援型人事評価制度」を3~5年くらい運用してもらい、経営者も社員たちも「人事評価に慣れてきた」という段階で検討しても遅くありません。チームとして人事評価の経験値が低い間は不公平リスクが大きすぎると私は考えています。
およそ30人までのチームなら、当面は、社長が評価者となって、全員と向き合ってください。そして、社長の「経験値」が一定以上になれば、ミドルマネジメント層などの部門リーダー等に「評価のコツ」を落とし込んでいくことが「急がば回れ」です。
最初はホント大変ですが「産みの苦しみ」の経験は「人が成長する会社」の経営者として「バランスシートには載らない財産」となります。
ただ、それ以上のチームになれば社長一人で全員を評価するのは非現実的なので、その場合は、各チームのリーダーと共に評価しましょう。まだ評価に慣れていないリーダーに任せてしまうことは避けましょう。
一例を紹介しておきます。
給与=基本給+評価給+役職給
給与には「評価給」として人事評価の評価点を反映します。計算例を示すと下記のようになります。
例:A君の月給:(基本給20万円)+(評価給@2000円×50p)=30万円
基本給は、全員一律なので、新人もベテランも同じです。人事評価を反映する「評価給」は、この例では、単価@2,000円に評価点の50点を乗じて10万円になります。
最近は、様々なシステムサービスがリリースされていますが、結論は「まずはエクセルベースでやりましょう」が私の考えです。
その理由は「選ぶ目を養うため」です。
このブログは「100人規模までの中小企業経営者」を想定して記事作りをしていますが、せめて30人規模を超えるあたりまではシステムサービスを使わず「エクセルベース・紙ベース」で仕組み作りを検討してみてください。
「人事評価の経験」がある人は「どのシステムがいいか?」という選ぶ目を持ていますが、そうでなければ「どれがイイか?」「どれが自社にフィットするか?」「どれが自分の価値観に近いか?」ということはなかなか分かりづらいものです。
だから、インターネットに発信されている「比較情報」等を頼りにしがちですが、ハッキリ言って「それでもわからない」と思います。
まさに「選ぶ目」が無いからです。
まずは「エクセルベース・紙ベース」でゼロから自社の仕組みを作って2~3年運用すれば「当社の評価の方法」が決まり始めます。そのころには「人事評価で何が大切か?」が実感できるようになり、これが「選ぶ目」となります。
30人~50人規模を超えるあたりで、自分自身の「選ぶ目」を持ってシステムサービスの利用を検討することをおススメします。
ちなみに、「当社の評価の方法」が決まってからって「そんな面倒な遠回り」をせずに最初から外部のサービスを使うべき、という意見がありますが、私はそう思っていません。
「人事評価制度」の設計や運用を自社でやるか?コンサルティング会社に依頼するか?ということも考えておられると思います。
コーチの私が言うのも「営業クサイ話」かもしれませんが、経験者が会社におられないなら、コンサルティング会社依頼することをおススメします。
その時の「選ぶ基準」は、一言で言えば「経営者経験のある人」。「人を雇い、給与や賞与の支払いで悩んだ経験がある人」です。その中でも、あなたの会社規模と近い会社の経営を経験した人ならベストです。
私の経験では「大企業の人事の経験者」は、ピントがずれることが多く、中小企業特有の泥臭い事情への対応力という意味であまり期待できません。「中小企業を知る人」を選びましょう。
中小企業でもよく見かける「クレド」。いわゆる企業理念であり「ミッション」「社是」など、様々な表現はありますが、その会社の経営者が最も大切にする価値観や使命感を表したものです。
社員である以上、その理解と実践は新人もベテランも関係なく求められるものであり、これを評価に加えることは大賛成です。
「クレド(理念)」と「基礎スキル」の評価は全員共通とし「実務スキル」の評価は職種ごとに用意し、これら「3つのチェックシート」で評価します。
まとめ:成功のための重要ポイント
成長支援ツールとして
以上「マーカス式(成長支援型)人事評価の仕組み」についてそのアウトラインを紹介しました。一覧にまとめると次のようになります。
Step | 内容 | |
---|---|---|
P | Plan | 目指すチームの可視化 必要な人材像の言語化 「人事評価基準」の設計 ・基礎スキル(全員共通) ・実務スキル(職種別) |
D | Do | 各評価項目のトレーニング (例) ・新人研修 ・基礎スキル研修 ・職種別技能等研修 ・リーダー研修 |
C | Check | 人事評価と個人面談 ・自己評価の提出と共有 ・成長課題の抽出 ・課題解決策の共有 |
A | Action | 成長課題のフォロー |
それぞれの詳細については、それぞれのセクションに記載してある関連記事を参照してください。
最後に、前述した「失敗原因のリスト」を再掲しておきます。
- 点数を付けるという「上から目線」「一方通行」な評価
- 目的や目標、あるいは価値観が共有されていない
- 明確な評価基準や評価ツールがない、あっても公開されていない、あるいは不適切
- メンバーと評価者のコミュニケーション不足
- 評価結果のフィードバックや活用が無い、あっても少ない
- 給与賞与を決めるためだけの運用
この失敗の原因リストは、「この逆」を正しく行えば成功確率が上がるというリストでもあります。
中小企業に限らず、人事評価制度を設計し運用することは簡単なことではありません。やればやるほどその大変さを実感することになります。かと言って、会社経営に欠かせない基本の仕組みです。
このマニュアルを参考にしていただき、丁寧に人事評価基準を作成し「PDCA」を回せば、かなり高い確率で「もっといいチーム」となり「もっといい会社」に進化成長します。
もし、サポートが必要であれば気軽にご連絡ください。
コーチングのご案内
成長支援型人事評価制度の実装サポート
お役にたちますように!
【補足】このブログで書けないこと
このブログでは、読者経営者の方々に実務的に役立ててもらおうという思いを持って、なるべく深く、そして詳しく発信しているつもりなのですが、人事評価や給与賞与に関する内容で「どうしても書けないこと=公表できないこと」があります。
すでにお察しだとは思いますが、このブログは経営者の方だけではなく、一般社員さんたちもアクセスし読むことができます。
人事評価とか給与賞与に関するマネジメントには、そのカテゴリの性質上「社員さんたちには知られない方がいいこと」があります。
すべて「理想論」や「タテマエ」で解決できればいいのですが、「人に関する実務」はそんなに甘いものではなく、時には「荒療治」しなければならないシーンがあります。この「荒療治」を紙面で誤解なく伝えることは困難であり、また、少しでも参考になるようにとカモフラージュした「事例紹介」をしようと試みても「事実の例」なので、当事者の方々にとっては「あ、この記事、当社のことやん」ってすぐにわかってしまいます。それは、その当事者である社員さんにとっても「あ、自分のことだ」とわかってしまいます。「いい話」の場合はいいのですが「よくない話」の場合は、気分を害したり、あらぬ誤解を生じさせたりするリスクがあります。
このような理由で「トラブル解決系」や「裏技的な方法」は、一般公開されているブログでは書けません。
「それが聞きたいのに・・・」と、物足りなさを感じられる方も少なくないと思いますが、ご了承ください。