中小企業向|人事評価が上手く運用できない理由

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中小企業においては、人事評価が上手に運用できていないケースが少なくありません。

この記事では、せっかく人事評価制度を作って運用したのに、結果として失敗してしまう事例を紹介します。

この記事は「中小企業向け人事評価|仕組み作りと運用のアウトライン」の補足です。

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人事評価制度の「成功」と「失敗」

そもそも論ですが、中小企業における人事評価制度は、何をもって成否を評価するのか?ですが、一言で言うと「人材が成長しているかどうか?」です。

人事評価制度は、給与や待遇を決めることに限定した「結果の採点制度」ではありません。「あるべき姿」と「現状」のギャップである「成長課題」を明確にし、その解決のためのフォローをすることまでを含む「人材育成のための仕組みが人事評価制度」です。

人事評価が上手くいってないと感じるとき

中小企業経営者は、どんなときに「人事評価が上手くいってない」と感じるのでしょうか?

私の相談事例を振り返ると、次のようなケースが多いと感じています。

  • 人事評価に対して不信感を抱いている
  • 人事評価に対して、当事者意識が低い
  • 評価を上げようというモチベーションが低い

評価制度に課題があるケース

人事評価制度が、上手く運用できていない原因のひとつが、評価制度そのものに課題があるときです。

評価基準がよくない

評価基準に課題があると「何を評価するか?」「どう評価するか?」が曖昧となり、誤解や不信感の温床になってしまいます。人事評価制度において、評価基準に課題があるということは、そもそも制度自体の完成度が低いといわざるを得ません。

  • 評価基準は、実務を反映した分かりやすい項目であること
  • 各項目ごとに「あるべき姿」が、具体的に表現されていること
  • 評価レベルの区切りが明確であること(例:3点と4点の違いは?)

特に、この3つの点が重要です。

(参考記事)中小企業の人事評価|5段階評価「5点=満点」の大切な意味

評価のタイミングがよくない

人事評価は、最低でも年2回=半年ごと、可能であれば年4回=四半期ごとに実施することが望ましいです。人材育成が目的なので、課題の相互認識、課題解決の進捗状況確認、課題解決のフォロー、そして「元気づけ・勇気づけ」など、モチベートする機会を多めに設けることが効果的です。

もし、人事評価は年に1回だけというような制度であれば、人事評価を定着させることは困難です。

(参考記事)失敗しない「人事評価面談・キャリア面談」の実務

メンバーにとってメリットが少ない

メンバーが人事評価に不信感を持っていたり、また、当事者意識が低いときの主な原因は「メンバーにとってのメリット」を感じることが少ないからです。

「人事評価は、点数をつけられ、プレッシャーをかけられる制度」というような印象を持っていれば、それも仕方がありませんが、上述しているように、人事評価制度は成長支援の仕組みであり、そのメリットは「成長できること」です。

評価によって個々の成長課題を明確にすることができ、その課題解決のための研修制度や、個別指導が制度化されている必要があります。

つまり「何をすれば、成長できるのか?」「何を改めれば、もっと成長できるのか?」が、評価者とともに共有できる制度であることが重要です。

運用に課題があるケース

立派な制度設計があっても、運用に課題があれば「絵に描いた餅」に過ぎません。「正しい制度」を「正しく運用」することで、人事評価制度は成長支援の仕組みとして機能します。

目的の理解が低い

上記、繰り返しているように「人事評価制度」は「成長支援(人材育成)の仕組み」です。

この重要な目的が、個々のメンバーに正しく伝わっているか?を確認しましょう。

もし「給与や賞与を決めるためにテンスを付けられる制度」というような「誤解」が残っていては、人事評価制度は期待通りに運用することが困難になります。

(参考記事)人事評価は「経営計画実現のための人材育成ツール」という視点

評価基準の理解が低い

これは、評価する側も、評価される側も、双方にとって重要です。「評価基準」をお互いが正しく理解できているか?です。

例えば「コミュニケーションスキル」は、情報伝達のスキルであるにもかかわらず、他の人と仲良くするスキルというような間違った解釈をしていると、当然、正しい運用はできません。

ひとつひとつの評価基準について、双方が正しく理解できているか?を確認する必要があります。

(参考記事)中小企業の人事評価基準|5段階評価の作り方と使い方

評価者が不慣れ

評価者が不慣れで、正しく評価することができなければ、当然、評価される側は「正しく評価されない」という不満とともに、人事評価制度そのものに対して不信感を持ってしまいます。

「ボク・ワタシは、正しく評価してもらっている」と、納得が得られるような評価ができるように、トレーニングを急がなければなりません。

成長支援が足りない

「点数をつけるだけ」になっていて、成長課題の解決についての具体的なアドバイスやフォロー、さらには、元気付けや勇気付けができなければ、結果として「点数を付ける制度」になってしまいます。

最悪の場合は、成長をあきらめる人も出てくるでしょう。「どうせ、点数なんか上がらないんだから」というメンバーがいるとしたら、それは、本人ではなく「制度運用に課題がある」と自責で考え直す必要があるでしょう。

(参考記事)失敗しない「人事評価面談・キャリア面談」の実務

経営者に課題があるケース

最後に身もフタもない話ですが、そもそも論です。

「人材育成」に対しての経営者自身の意欲です。

個々のメンバー育成が、チームのパフォーマンスを改善向上させる方法であり、それが「もっといい会社」にするために欠かせないということをホンネベースで理解、納得し、その具体的な実務として人事評価制度が重要である、というマインドセットを持っているか?です。

そおそも、経営者がこのマインドセットを持っていないと、どんなに立派な制度設計をしたとしても、フェードアウトして、数年後には「形式化した面倒で止められないシロモノ」になってしまいます。

もし、どうしても、この成長支援に対するマインドセットが持てないのであれば、人事評価制度はメリットどころかリスクにもなりえます。

人事評価制度が上手く運用できないな、と感じるとき「成長支援に対するマインドセット」を自問自答してみてください。

(参考記事)人事評価の必要性とリスク|正しく運用しないとキケン

まとめ

さて、どうでしょうか?中小企業における人事評価制度が失敗する原因を3つのカテゴリーに整理して紹介しました。

なにか心当たりはありましたか?

関連記事も含め参考にしてみてください。

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