この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。約 11 分で読めます。

おはようございます!
2025年の第5週の土曜日。あっというまに「もう2月!?」と思ってるのは、私だけでしょうか?
さて、先週の「貸借対照表」に続いて、今週は「損益計算書/PL/Profit&Loss Statement」について整理しておきます。
「損益計算書」を見ても「売上高」と「経常利益」だけを確認して「おしまい」という経営者が少なくありません。
そこには「もっと儲かるヒント」が潜んでいるので、それだけではもったいないことです。
かといって、前回同様、専門的なことまでをインプットすることはないので、本稿では「中小企業経営者はこれだけでいい!」という内容に絞り込んで損益計算書のエッセンスを「図解」を交えてお伝えします。ただ、言い換えれば「これだけは必修!」ということでもあります。この機会にセルフチェックしてみてください。
このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。初めてアクセスしていただいた方は、こちら(=「このブログについて」)をまずご覧ください。
【目的確認】
過去から未来を見通す
最初に、経営者が「損益計算書(PL)」の理解を深める目的を確認しておきましょう。
それは、過去から未来を見通して「もっと儲けるため」です。
損益計算書(PL)には「利益」が表示されていますが、それとともにその結果に至った売上やコストなどの「要素」も表示されていて、これを増減させることで「利益のシミュレーション」をすることができます。
- もし、売上があと10%多かったら・・・
- もし、利益率があと2%高ければ・・・
- もし、コストをあと5%抑えていれば・・・
という具合です。
つまり「過去」をベースにして「未来」を試算=見通すことができ、それに基づいて「できること」「できないこと」などを吟味すれば、根拠のある目標を設定することができます。
損益計算書(PL)は、「結果を見ておしまい」なのではなく、経営当事者として、そこに示されている数字を振り返り「次の経営」に活かさなければなりません。
「もっと儲けるために」過去の実績から未来のための有効な経営情報を読み取ること、これが損益計算書(PL)の理解を深める目的です。
【課題共有】
PLの良し悪しを見極めたい
損益計算書(PL)に示されている数字は「その1年の結果」ですが、例えば、売上高5億円、経常利益1億円、当期純利益3,000万円だったとします。
さて、この1年の成績は良かった?それとも悪かった?
もし、その数字が想定以上であれば「良かった!」と思い、反対に想定以下であれば「悪かった!」と思います。
つまり、損益計算書(PL)に示されている数字は、経営者にとって「相対的」なものです。
意識しているかどうかは別として、経営者には「想定していた数字」があり、それを基準にして良し悪しを感じています。
その「想定」が低ければ、実はもっと儲かるはずのに、中途半端なところで満足したり、反対に「想定」が高ければ、十分な成果を上げているのに満足できず、さらに高めるためにチームに過剰な負荷をかけてしまうことにもなりかねません。
こんなことは経営者も百も承知なのですが、聞こえてくる声は「その想定が難しい」です。
つまり、損益計算書(PL)の良し悪しを見極めるための「想定」をどのようにすればいいか?言い換えれば、まさに「目標設定の仕方」ということになります。
これが、分からないと「無目的な前期比」や「他社比較」を基準にしたり、最悪の場合は「思いつき」で目標設定することになります。
そのリスクは「無目的な仕事」によって「社員たちの心が離れていく」という、思いもよらないところに現れます。
さて、良し悪しを見極めるための「あるべき損益計算書(PL)」をどのように設定すればいいのでしょうか?
【課題解決】
PLで「儲け上手な経営者」に!
上述したように、損益計算書(PL)の理解を深める目的は「もっと儲けるために」過去の実績から未来のための有効な経営情報を読み取ることです。
そのスキルを高める方法には2つあります。
- ひとつは「シミュレーション」を繰り返すこと
- もうひとつは、長期目標と関連付けること
シミュレーションを繰り返す
下記の設定において、売上を2倍にすれば、営業利益は何倍になりますか?
(売上総利益率や販管費は変わらないとします)
- 売上高:5億円
- 売上総利益:1億円(売上比20%)
- 販管費:9,000万円
- 営業利益:1,000万円
計算してみましょう。
- 売上高:5億円→2倍の10億円
- 売上総利益:1億円→利益率が20%なので、2億円
- 販管費:9,000万円:条件通り変わらず
- 営業利益:1,000万円→1.1億円(2億円-9,000万円)
条件付きではありますが、売上高を2倍にすれば、経常利益はナント「11倍」です。
続けて、目標利益からのシミュレーションをしてみましょう。
同じ設定で「利益を2倍にするために必要な売上高は?」の計算ですが、今度は「逆算」です。
- 営業利益:1,000万円→2倍の2,000万円
- 販管費:9,000万円変わらず
- 売上総利益:1億円→1.1億円
- 売上高:5億円→1.1億円÷20%=5.5億円
答えは「5.5億円」です。つまり「売上を10%伸ばせば、営業利益は2倍になる」です。
さて、どうでしょう?
「当然、そらそうや!」なのか
「えっ!そうなのか!」なのか。
このようなシミュレーションを「習慣的にやってる経営者」は、損益計算書(PL)を上手に活用できています。
もし、こんな計算をしたことがない、あるいは、この結果に驚いている経営者は、この機会に損益計算書(PL)への理解を深めましょう。
長期目標と関連付ける
さて、もうひとつの視点は「長期目標と関連付けること」です。
前回の「貸借対照表(BS)」で解説したとおり「会社の純資産(自己資本)は、創業来の当期純利益の積み重ね」です。
会社が継続する限り、これから先も「当期純利益」は、貸借対照表の「純資産(自己資本)」に加算されていきます。
簡単な例で示しましましょう。
現状の純資産が5,000万円の会社が、毎期100万円の当期純利益を重ねていくと、20年後の純資産は(帳簿上)7,000万円になります。現在35歳の経営者なら、55歳になったときの純資産です。
さて、この「7,000万円」は、多いでしょうか?それとも少ないでしょうか?

もし「これでちょうどいい」であれば、毎期の(税引後)純利益の必達ラインは100万円です。
一方、これでは「少ない!2億円は欲しい!」と思うならば、今後20年間で「1.5億円の(税引後)純利益」の上積みが必要です。
つまり「単年度の目標設定」を「手段」とし、「将来の純資産」を「目的」にすることで損益計算書(PL)の見方が変わるはずです。
「シミュレーションのチカラを高め、将来の目標達成に活かす」という視点を持つことで、必ず「損益計算書に強い経営者」になることができます。
その結果、「儲け上手な経営者になれる!」という理屈です。
【基本図解】
超シンプル:利益=収益-費用

損益計算書(PL)の構造は、図解するまでもなく、あっけないほど超シンプルです。
(利益)=(収益)-(原価・費用・損失)
ひとことで「利益」と言っても「本業の利益」以外にもあるので、イメージ図のような区分がされ「5つの利益」が表示されています。
「売上高10億円、当期純利益1億円」という情報だけでは「本業で稼いだの?」それとも「何か臨時収入でもあったの?」ということが分からないからです。
ちなみに・・・
- 原価:売上高に対応するコスト:仕入高や外注費等
- 費用:収益のための原価以外のコスト:地代家賃や旅費交通費等
- 損失:収益に貢献しないロス:貸倒損失や固定資産売却損等
・・・と使い分けています。
*学問的な定義では、全部「費用(広義)」ですが、中小企業経営者の皆さんは「実務」なので、この程度の「使い分け」で十分です。
【詳細図解】
利益の階段を「図」で理解する
上記の損益計算書(PL)の構造は、階段にすると頭に入れやすいと思います。
この図を見ながら、あなたの会社の損益計算書(PL)と照らし合わせてみてください。
「ヘタな他社サンプル」と見るより「自分の会社の実数字」を見る方がインプットしやすいと思います。
投資家や就職を控えた学生さんたちは「他社の損益計算書」を見る必要がありますが、経営者は、それ以上に「自社理解」が重要ですから、必ず!「自分の会社の実数字」で見てください。

一般的に「当期純利益」は「最終利益」と表現することもあり「何もかも含んだ成績」を表します。
それに対して「事業の成績」を表しているのは「営業利益」や「経常利益(=「ケイツネ」)」です。
例えば、飲食業が本業の会社が、小規模な不動産賃貸をサイドビジネス的に営んでいれば、それを本業とは区分して「営業外」として扱うので「飲食業の成績は、営業利益」「不動産賃貸も含めると、経常利益」というような具合です。
元税理士として、私がクライアントに説明する際に配慮してたのは「(税引後)当期純利益」です。
税金も納税した後に「1年間でどれだけ稼いだか?」なので、プロセスに紆余曲折や言い訳があったとしても、最後は「(税引後)当期純利益」が、その経営者の成果だからです。
【用語確認】
利益と所得を混同しない
ここで、中小企業経営者だからこそ、正しく理解しておいてほしいことがあります。
「利益」と「所得」の違いです。
- 経費は使い放題!プライベートな飲食費も趣味のグッズも何でも落としていい。
- 役員報酬も自由。ボーナスが欲しければ欲しい時にもらえばよい!
- 交際費に上限なんてないよ!
- お小遣いが足りなければ、無利息で会社のお金を借りればよい!
- 株主は自分。自分の会社のお金の使い方は誰にも文句は言わせない!
さて、どうですか?ここまでくれば「暴君」ですね(笑)。しかし、倫理上は大きな問題があるにせよ、経営者以外の他の株主がいて、こんな「やんちゃ」を許してくれるなら(=ふつうは許さない・・・)「会計のルール的」には何も問題ありません。
・・・と、説明の都合上、あえて下品(乱暴)に書いてみましたが、これは「利益計算」の話です。
しかし!「所得計算」となると、話は大きく変わります。
- 事業関連性のない経費は損金として認められない
- 役員報酬や賞与を損金にするには制限がある
- 交際費の損金算入額には上限がある
- 会社の資金を借りる際には利息を支払わなければならない
- 課税対象である所得計算においてルール違反は認められない
法人税等は「利益」に課税されるのではなく「所得」に課税されます。
だから、利益を計算するための「損益計算書」と、所得を計算するための「申告書」に分かれているのです。
税務署に提出するのは「申告書」であって、「損益計算書を含む決算書」は「添付資料」にすぎません。
この「利益」と「所得」の違いは、「経費」と「損金」の違いでもあるので「中小企業経営者の必修税務知識」として正しく覚えておきましょう。
今度、顧問税理士と話をするときに「家族旅行の支出は、経費にしてもいいけど、損金にはできないってことね!」と言ってみてください。おそらくその税理士先生は「だ、誰に教えてもらったの??」とびっくりすると思います(笑)。
【管理会計】
財務会計で経営はわからない
さて、ここまで読んでもらって「説明があっさり(ざっくり)してるなあ・・・」と、物足りなさを感じておられるかもしれません。
その理由は、損益計算書(PL)自体が「経営に役立てるには」物足りないフォーマットだからです。
例えるなら「調理しないとおいしくない素材」ってところでしょうか?
詳細は、別の記事で解説していますが、会計には「財務会計」と「管理会計」という2つのルールや考え方があって、ここまで説明した「決算書の一部の損益計算書」は「財務会計」のルールで作成されてものです。
「財務会計」の目的は「外部報告」です。株式公開企業なら市場等に公表するため、非公開企業であっても金融機関や信用調査会社、さらに税務署など外部に報告や提出をすることが目的であるため、社会的なルールに従わなければなりません。
(参考記事)管理会計の基礎|中小企業経営者のためのマネジメント会計入門
「経営者のため」ではない、この「財務会計」のフォーマットは「食べられないことはないけど、おいしくない」のです。
でも「経営者にとっておいしくする調理方法」があります。それが「管理会計(マネジメント会計)」です。
そのもっとも特徴的なのは「ルールがない」ということです。経営者が、自分なりに自由にフォーマットをアレンジるすることができます。極端な言い方をすれば、他者にとっては「マズイ料理」であっても、その経営者自身が「これが美味いんだ!」と納得すればOKです。
つまり「経営をリアルに可視化できる」のが「管理会計(マネジメント会計)」のメリットであり、経営感覚とよりフィットするフォーマットにすることができます。
私が、おススメしているフォーマットは、下記のとおりですが、詳しくは関連記事を参考にしてみてください。

ただ、大事なことを付け加えておきます。
「財務会計」と「管理会計」は、どちらか?という「選択」ではありません。
「管理会計」は、あくまでもオプションなので、「財務会計と管理会計の二刀流」になることが必要です。
(関連記事)賛否両論|管理会計にわざわざ手間をかけるメリットはあるの?
【要点整理】
PDCAをグルグル回す!
さて、どうですか?損益計算書(PL)への理解は深まったでしょうか?
中小企業経営者として「ここだけは正しく理解しておいて!」というところにフォーカスして詳しく整理しました。
- 損益計算書の理解を深める目的は「もっと儲けること!」
- 多くの経営者は、損益計算書の良し悪しを見極めたいと思っていること
- 損益計算書の活用で「儲け上手な経営者」になるためには・・・
- 損益計算書の構造は超シンプル(利益=収益-費用)であること
- 損益計算書の構造は5つの利益を階段で理解するとよいこと
- 利益と所得を混同しないこと
- 財務会計で経営はわからないので管理会計(マネジメント会計)を活用すること
貸借対照表(BS)と同じく、損益計算書(PL)の解説に関する情報も世間にあふれていますが、そのほとんどは「会計上の理論」です。
中小企業経営者は「理論」より「実務」です。
損益計算書は、経営者目線で読み、「目標設定」と「予実分析」を繰り返し=「PDCA」をグルグル回して「もっと儲かる会社」にしましょう!
関連記事も含め参考にしてみてください。
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以上、お役に立ちますように!