この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。約 8 分で読めます。
「成長支援型人事評価」の大切なプロセスである「人事評価面談(キャリア面談)」について整理しておきます。
この記事は「中小企業向け人事評価|仕組み作りと運用のアウトライン」の補足です。
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【目的確認】
人事評価は「成長支援ツール」
まずは大切な「人事評価の目的」をおさらいしておきましょう。
「人事評価」は社員(メンバー)の成長支援のためのツールです。
評価基準に照らし合わせて個々の「成長課題」を明確にし、その課題解決をサポートすることで成長を促す取り組みです。
給与を確定することが主目的ではない、ということに注意しましょう。
繰り返しますが、目的は「人材の成長支援を通じてもっといい会社にすること」であり「人事評価制度」は、そのためのツールです。
(必読記事)中小企業向け人事評価|仕組み作りと運用のアウトライン
【位置付け】
成長支援のPDCAの「A」
人事評価による成長支援は「PDCAサイクル」の典型例と言えます。
- PLAN:人事評価基準による「社員としてあるべき姿=理想の人材像」を言語化
- DO:日常の実践(=社員)と観察(=評価者)
- CHECK:人事評価による成長課題の明確化と共有
- ACTION:課題解決(=評価点アップ)の取り組み
このPDCAを回すことによって社員の成長を支援するわけですが、「評価面談(キャリア面談)」は、ACTION(課題解決=評価点アップ)のサポートのためのプロセスです。
【目的認識】
勘違いすると絶対に失敗する!
「評価面談(=キャリア面談)」を実施するにあたって、評価者と社員(メンバー)の双方がその目的を正しく理解していることがとても重要です。
繰り返しますが、評価面談の目的は「社員(メンバー)の成長支援」です。
万が一、評価者が評価面談の目的を「評価点を伝える時間」とか「ダメ出しをする時間」とか「反省を促す時間」とか、さらに、あってはならない「説教の時間」なんて勘違いしていると絶対に失敗します。
一方、社員(メンバー)に評価面談の目的を正しく伝えていないために、「評価を告知される時間」とか「ダメ出しされる時間」「叱られる時間」なんて勘違いして、彼ら彼女らが必要のない緊張や萎縮をするようであれば「成長支援型人事評価」は失敗していると言わざるを得ません。
人事評価は成長支援のための仕組みであり「評価面談は、前向きで建設的な時間」であることを双方が正しく理解し、さらに納得していることがとても重要なのです。
【相互期待】
両者に必要な大切な心構え
評価面談にあたって「評価者」と「社員(メンバー)」双方の心構えを念押ししておきます。
評価者側の心構えは
「期待」
評価面談に備えて評価者側に必要な心構えは「社員一人ひとりに成長して欲しい」という社員に対する「期待」です。
「成長して欲しい」という期待の気持ちがなければ、そもそも「成長支援型人事評価」が成り立ちません。
前提となる気持ちです。これは「タテマエ」ではありません。
万が一「評価面談ってメンドウやなあ・・・」という「ホンネ」があるなら「人事評価」はやめた方がいいです。
「偽善的な人事評価」では、だれも幸せになりません。
(参考記事)人事評価の必要性とリスク|正しく運用しないとキケン
社員・メンバー側の心構えも
「期待」
一方、評価面談にあたって社員(メンバー)側に必要な心構えも「期待」です。
定期的に行われる「人事評価に基づく評価面談」を彼ら彼女らが楽しみにしているか?あるいは、心待ちにしているか?、つまり期待しているかどうかが大切です。
彼ら彼女らは何を期待しているのか?
それは「自分自身の成長機会」です。
評価面談によって、自分の成長課題が明確になり「どうすればもっと成長できるか?」に対するヒントが得られ、さらに、そのためのフォローもしてもらえる、その結果「自分は成長できる!」という期待です。
もし、評価面談に臨む彼ら彼女らに期待がないとすれば、それは「期待できない評価面談」をしている評価者側が反省と改善を行う必要があります。
評価者側は、彼ら彼女らが「期待してくれるような評価面談」が実施できるように取り組まなければなりません。
【実務手順】
6つのステップで丁寧に進める
評価面談の実務をステップ別に紹介しましょう。
この6つのステップを疎かにせず、丁寧に進めることが成功の秘訣です。
STEP1
事前準備:「自己評価」を回収
評価面談の前に全員から「自己評価」を提出してもらいましょう。
「いつまでに提出してもらうか?」については、各社の事情によりますが、評価面談のために十分な準備ができる時間を確保する必要があります。
STEP2
事前準備:双方のギャップ確認
提出してもらった各自の「自己評価」について、評価者は「自分が評価した点数とギャップがないか?」をチェックします。
例えば「コミュニケーションスキル」について、本人の「自己評価」では【4点】なのに、評価者側の評価は【2点】というようなケースです。
- 自分が評価した【2点】は厳しすぎたかな?言われてみれば本人の【4点】が正しいなあ。
- 彼は自己評価が甘いな・・・自分を過大評価しすぎてるけど、なんでだろう?
- 【2点】は厳しすぎるけど【4点】でもないな・・・【3点】が適正だな
など・・・このギャップについて、よく考えて準備をしましょう。
STEP3
事前準備:アドバイスの準備
人事評価によって点数を付けるのは「成長支援のための課題発見」のためです。
「どうすれば彼のコミュニケーションスキルは4点レベルにアップすることができるのか?」について、評価面談の場でアドバイスできるように準備しておく必要があります。
評価者のアドバイスを、彼ら彼女らが「いいヒントをもらった!」と実感してもらう必要があります。
「根性で頑張れ!」「やればできる!」というような根性論や精神論だけで、具体的な課題解決方法をアドバイスできないなら「やらない方がマシ」なので注意しましょう。
「どのようにアドバイスをするか?」に十分な時間をかけてプレシンキングし、丁寧に準備しましょう。
STEP4
評価面談当日:30分~1時間/1人
評価面談は、あらかじめ時間を決めて実施しましょう。一般的には一人当たり30分~1時間が必要です。
視点は「社員満足度を得るために必要な時間」です。
上述したように、彼ら彼女らは「評価面談に期待」しています。この期待を裏切るようなことがあってはなりません。仮に、一人10分だけであっても十分に満足してくれればいいのですが、私の経験上「満足感」を得るにはそれなりの時間が必要です。
反対に1時間を超えそうなとき。例えば、ギャップのあるテーマが多くて、一つひとつにアドバイスをしていたら時間が足りない、というようなときです。その時は「改めて時間を取ろう」と、別日を提案し「時間無制限の機会を作ってじっくりサポートするよ」という姿勢が必要です。まちがっても「時間切れ」という中途半端な状態で終わらないように気を付けましょう。
STEP5
評価面談当日:話の進め方
さて、評価面談における話の進め方ですが、おおむね次のようなシナリオです。
- 「自己評価」と「評価者評価」のギャップの確認とギャップ解消
- 「成長課題」の共有
- 「課題解決方法」の共有=アドバイス
- その他の悩み・不平・不満のヒアリング
このようなシナリオ通りに進まないときは、臨機応変な対応が必要ですが、どのようなシーンであっても「そもそも」の「成長支援」を忘れないようにしましょう。目の前の社員が、どうすれば「もっといい人材になるか?」の一点集中です。
そして最後には「あなたの課題解決のためにフォローするから頑張ろうな!」と、モチベートする言葉を付け加えればさらに効果的です。「あとは自力で頑張りなさい」と締めくくるのとは大違いです。
STEP6
アフターフォロー
評価面談のアフターフォローとして、実際に成長してもらうための具体的なかかわりが必要です。
評価面談によって共有した「成長課題」の解決が成長に他なりません。そのためのフォローです。
「あなたの課題解決のためにフォローするから頑張ろうな!」と約束したのに、その後放置しようものなら信頼関係は簡単に崩れてしまいます。
日常のコミュニケーションの中においても「どお、調子は?解決できそう?進んでる?困ってない?悩んでない?」と声をかけ、タイムリーなフォローすることが大切です。
アフターフォロー、これが成長支援のキモです。
補足:緊張させないこと
ひとつ補足しておきます。
評価面談は、いわゆる「1 on 1(ワン・オン・ワン)」で実施します。人は「1対1」の方が腹を割って話しやすくなるからです。
社内の人間関係など「ここだけの話」が出ることもあります。双方の信頼があって初めて貴重な情報を得られることもあります。
ただ、人によっては「期待」していると同時に「緊張」している場合もあります。評価者、特に、それが社長との「1対1」であれば想像以上に緊張したり萎縮したりしているものです。
方法は様々ですが、相手に応じて工夫しましょう。
【要点整理】
1on1 は評価者の成長チャンス
さて、評価面談(キャリア面談)の実務について整理しました。
どうでしょう?「手間がかかるなあ・・・」と思いますか?人事評価は「時間」や「手間」だけでなく、何より「気」を使うので、評価者の負担感はそれなりだと思います。
ここに「もう一つの大切な視点」があります。
「評価者が負担に感じる理由」は「評価と育成のスキルが足りないから」です。
厳しいことを言いますが、社員と向き合って成長支援することの「反復」こそが「評価者としてのトレーニング」であり「評価者の成長」に繋がります。
社員の成長とともに評価者が成長することで会社は「もっといい会社」に成長します。
この「評価者の成長」という視点も併せて忘れないように頑張ってください!
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