この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。約 6 分で読めます。
私は、税理士として30年以上にわたって、また、現役を引退した今でもマネジメントコーチとして多くの中小企業経営者と仕事をしていますが、人材が成長している会社を観察していて感じるのは「人材育成に対する経営者のホンキ度」です。そのホンキ度は「具体的な仕組み」に表れています。
この記事では、人材育成に対する経営者のホンキの証である「人材育成の仕組み作り」の事例を紹介します。
この記事は「中小企業向け人材育成|人が成長する仕組み作りの概要」の補足です。
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【課題整理】
人材育成に関する経営者の悩み
「成長は、本人の自助努力だ」という考え方の人がいます。このような考え方を持っている経営者は、自分自身が今まで相当な努力を重ねてきた人なので、自社のメンバーにも「そうあるべき」と考えていることが多いと感じます。
この考え方に共感し、自己の成長のために高いモチベーションを持って継続的に努力するメンバーが集まれば、放っておいても成長するので、経営者には大きな悩みもなく、それはある意味「最強」だと思いますが、現実はそのような中小企業は少数派です。
- 成長モチベーションが低い人
- 成長のための具体的な方法を知らない人
- 長続きしない人
- 挫折してしまった人
- 自分は十分できていると自信過剰な人
中小企業には、このような人たちが少なくありません。
経営者は、このようなメンバーたちに「どうすればいいのか?」と頭を悩ませています。
- どうやってモチベーションを上げればいいのか?
- どうやって成長のための具体的な方法を教えればいいのか?
- どうやって継続させればいいのか?
- どうやって立ち直らせればいいのか?
- どうやって自己認識を修正すればいいのか?
【ホンキ度】
本当に人を育てたいか?
上記のような悩みを解決するために必要なのは「人材育成に対するホンキの想い」です。
この「ホンキ」とは、「心の底からホンキで悩んでいる」という意味ではなく、「課題解決に対してホンキか?」ということであり、言い換えれば「ホンキで人を育てたいか?」です。
メンバーの成長が遅い、あるいは、メンバーが成長しないというのは、会社の将来に対するとても深刻な経営課題です。
この人材育成という経営課題の解決のためには、具体的な方法論の前に、そもそも「ホンキか?」ということがとても重要です。なぜなら「人材育成」は「根気との勝負」だからです。
「ホンキ度」が低いと、経営者自身が途中で挫折してしまい(あきらめてしまい)、ずっと「イマイチなメンバーに悩み続ける経営」になってしまいます。
まずは「人は必ず成長する。そのためにホンキで取り組もう!」という自身のマインドセットをセルフチェックしましょう。
これが、人材育成を成功させるための大前提となります。
(参考記事)経営者のマインドセット|「可能」を前提に考動しているか?
【仕組み化】
ホンキをカタチにする4STEP
人材育成には、具体的な「仕組み」が必要です。
中小企業においては、下記の4つのステップで「ホンキ」を「カタチ」に、つまり「人材育成の仕組み化」を進めます。
下記の3つのステップを具体的に示すことで「ウチの社長は、ホンキやな!」とチームの全員が感じてくれるはずです。
Step1
成長の定義を伝え「下地」を作る
まず「成長とは?」について、その定義と意義を全員で共有しましょう。
「成長したいですか?」という問いかけに対して、メンバーたちが素直に「成長したいです!」と答えてくれるように成長の意味合いを共有して「下地」を作りましょう。
「成長しなければならない」という、義務感やプレッシャーを持っている場合は、この取り組みがメンバーの精神的な負担になってしまいます。
「成長とは、もっと役に立つ存在になる」ということです。もっと役に立てば、周りから認められ、褒められ、感謝されます。その幸福感が、成長のための原動力になります。
それぞれが「もっと幸せになるためにもっと成長したい!」というWANT思考になるように、丁寧に説きましょう。
Step2
理想の人材像を具体的に伝える
次に「ゴール」を示しましょう。
「優秀な人材が欲しい」「理想の人材に成長して欲しい」と言っても具体的にはよくわかりません。「おいしいものを食べたい」と言ってるのと同じです。せめて「豚骨ラーメンが食べたい」と言えば「好み」がわかるように、まずは、経営者として「どんな人材を求めているのか?」という「ゴール」を示すことが必要です。
具体的には「人事評価基準」が、そのツールとなります。
Step3
理想の人材になる方法を伝える
次は「プロセス」です。
「どうすれば求めている理想の人材になれるのか?」という具体的な方法を伝える必要があります。
経営者が理想とする人材になるために、「どんな視点が必要か?」「どんな知識が必要か?」「どんな経験が必要か?」「どんなトレーニングが必要か?」など具体的なアクションなど「プロセス」を伝えます。
実務的には「人事評価の点数を上げるための方法」です。定期的な研修を実施したり、日常業務の中で伝えていくことになります。
Step4
理想に近づくための後押しする
「Step2:ゴール」と「Step3:プロセス」を伝えたら「行動あるのみ」ですが、多くは「外部刺激」が必要です。
例えるなら、Step2で「合格ライン」、Step3で「教材」を示した段階です。あとは「自習」ってことで理想の人材に成長してくれればラクチンなのですが、なかなかそうはいきません。「プロセス」の階段を上がるための「後押し」が必要です。
そのためには、日常の声掛けであったり、タイムリーなカウンセリングに加え、最も大事な「評価の共有」が必要です。
「社長は、自分のことを正しく見てくれている」という納得感を持ってもらうことが効果的です。
【誰のため】
誤解されると大きなリスク
この「人材育成へのホンキの取り組み」におけるリスクも書き留めておきます。
人材育成は、「経営者のホンキがメンバーに伝わり、お互いが成長のためにガンバル」という効果を期待する取り組みですが、この「経営者のホンキ」が誤解されると、チームが崩壊するほど破壊力を持ったリスクになります。
それは「メンバーたちの成長をホンキで望んでいる理由」が「メンバーの幸せか?」という視点です。
ベースにあるのは「経営の原理原則」である「3Gの幸せ」という考え方です。会社は、関わる人たちの持続的な幸せのための道具です。
- あなたが成長すると、チームが成長する
- チームが成長すると、会社が成長する
- 会社が成長すると、チームが幸せになり、あなたも幸せになる
この理屈の「ホンキ度」です。
「会社の成長のために、成長してほしい」ではなく「あなた自身の幸せのために、成長してほしい」です。
この「真意」が「ホンキ」として、誤解なく伝わることが、とても重要です。
まちがっても誤解されないように注意しましょう。
【要点整理】
人材育成に「手間」を投資する
人材育成に対する経営者の「ホンキ度」は、仕組みとなって表れるという話を紹介しました。
「人材育成は、手間がかかるなあ」という経営者がほとんです。しかし、人材育成は「投資」です。
「投資」せずにリターンだけ求めるのは虫が良すぎる、と私は思います。
そして、どうせ「投資」するなら、効率的かつ成功確率の高い方法で行うべきですよね。
それが「仕組み化」に他なりません。
関連記事も含め参考にしてみてください。
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