部門別会計|共通経費を配賦する4つの方法

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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。


中小企業がマネジメント会計(管理会計)を部門別で行うときに、「共通経費」や「本部経費」を各部門に配賦しますが、注意しなければならないのは、そもそも「なぜ部門別会計を行うのか?」という「目的」です。

この記事では「目的に応じたもっとも適切な配賦方法は何か?」ということについて「固定額方式」「人頭税方式」「税金方式」に加えて「実額配賦方式」の4つについて詳しく解説します。

この記事は「中小企業向け|マネジメント会計(管理会計)の設計と運用の概要」の補足です。

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共通経費を各部門に配賦する4つの方法

固定額方式

固定額方式は、もっともシンプルな方法で、文字通り「固定額」を各部門に配賦する方法です。

「A部門は月額100、B部門は月額200・・・」という具合に、各部門ごとに「固定額」を決定し、月々配賦します。

それぞれの配賦額の決定方法は、それぞれの事情や意図によって様々です。

  • 売上予算に応じて
  • 部門の人数に応じて
  • 使用面積に応じて

これを、共通部門側から見ると、各部門からは固定の「上納金」が計上されるので、実際発生する共通経費とは合致しません。共通経費の実額が「上納金」の範囲内で収まれば「黒字」になり、「上納金」を超える共通経費が発生したならば「赤字」となります。

人頭税方式

人頭税方式は「ひとり当たり10万円/月」と決めて、各部門の人数に乗じて賦課する方法です。部門のメンバーが10名であれば、毎月100万円が配賦される、という具合です。

上記の「固定額方式」と異なるのは「期中に変わることがある」という点です。メンバーが増えれば、その月から増額され、また、逆も同様です。

また「固定額方式」と同様、実際に発生した共通部門の経費とは差額が発生し、共通部門も「黒字」になったり「赤字」になったりします。

税金方式

税金方式は「月々の利益に応じて配賦(賦課)する」という方法です。

中小企業の場合、実務的には「限界利益」を基準にすることが一般的です。

これは「負担力に応じて配賦」するという考えによる方法であり、「毎月、限界利益の5%を賦課する」というような決め方です。

ちなみに、同じ人数、同じ面積など部門運営条件は同じだとしても「稼ぎ」に応じて負担が変わるので、これを「不公平」という意見もあります。

また、「限界利益」を基準にする場合、月々の「部門別たな卸し」が必要になりますが、それが煩雑で実務的な負担が大きい場合は「標準限界利益率」などを用いて計算することもあります。

「限界利益」ではなく「売上高」や「部門利益」を基準にすることもありますが、その選択は業種などその会社の諸事情によることになります。

なお、この方法も、実際の共通経費と差額が発生します。

実額配賦方式

上記の3つの方法は実際の共通経費と差額が発生するので、共通部門も「黒字」や「赤字」になることがありますが、それに対し「実額配賦方式」は、共通経費の実額を売上比や人数比などを基準にして配賦するので、差額は発生せず共通部門の利益は常にゼロになります。

部門別会計の目的に応じた選択

冒頭に書いたように共通経費をどのように各部門に配賦するか?については、部門別会計の目的を踏まえて検討します。

目的が「部門長評価」である場合

部門別会計の目的が「部門長評価(人事評価)」に連動している場合は「実額配賦方式」は不適当です。その理由は「共通経費の増減の影響を受けるから」です。

たとえば、総務部門で想定以上のコストが発生した場合に、実額配賦であると配賦額もそれに応じて増えて「評価が下がる」という結果になるからです。他部門の影響を受ける実額配賦は、部門長の不平不満につながるので他の方法を検討します。

また、会計にそれほど明るくない部門長にとっては「固定額方式」か「人頭税方式」が計算しやすく、理解しやすいという理由で採用することが多いです。

目的が「正しい業績把握」である場合

部門別会計の目的が、各部門の「正しい業績把握」なのであれば、そもそも「配賦しない」ということも選択肢です。

共通経費の配賦は、そもそも「意図的な計算」であり、その部門で発生した実際のコストではないから、あえて配賦する意味がない、という意見があります。

まとめ:併用方式もある

以上、中小企業がマネジメント会計(管理会計)を部門別で行うときの「共通経費」「本部経費」の配賦について、「目的に応じたもっとも適切な方法は何か?」について紹介しました。

共通経費(本部経費)を各部門に配賦する方法として、固定額方式人頭税方式税金方式実額方式の4つ。

また、部門別会計の目的に応じた選択の視点として、目的が「部門長評価」である場合と、「正しい採算把握」である場合という2つ。

この共通経費の配賦についても、そもそも「管理会計」の分野なので決まった方法はありません。各企業が経営者の意図や希望で自由に設計することになります。

実務的には、今回紹介した方法を組み合わせて採用することもあります。たとえば、固定配賦額に税金方式で加算する、という具合です。いろいろシミュレーションしてみましょう。

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