中小企業の賃金アップ|人的コスト15%アップの影響を試算する

この記事は約 4 分で読めます。


大手企業が賃金アップを先行し、このトレンドは中小企業にも及び、すでにその影響を大きく受けている業種も表れています。

この記事では、マネジメント会計(管理会計)の活用法のひとつである「賃金アップしたときのシミュレーション」を通じて、その影響の検討について整理します。

この記事は「中小企業向け|マネジメント会計(管理会計)の設計と運用の概要」の補足です。

このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。初めてアクセスしていただいた方は、こちら(=「このブログについて」)をまずご覧ください。

まず「人的コスト」のおさらい

中小企業経営者のための進化型PL「MA損益計算書」のイメージ

従来の損益計算書を組み替えた、進化型PL「MA損益計算書」の「人的コスト」には、給与賞与だけではなく、社会保険の会社負担分や通勤手当、福利厚生費など「ヒトに関連するコスト」のすべてを含みます。

10人~100人規模の中小企業の場合、黒字企業のデータを観察すると、その多くは「人的コストは限界利益の40%以内」で収まっています。

反対に、人的コストが限界利益の40%を超えると、黒字企業は少なく、また、黒字であっても、そのための「しわよせ」が別の部分に見え隠れしています。

(関連記事)人件費は40%が上限?

黒字企業の必達ラインと言える「人的コストは限界利益の40%以内」は、逆に表現すると「限界利益の必達ラインは人的コストの2.5倍」ということでもあります。

今回は、この「売上高や利益への影響」を計算しよう、という提案です。

(関連記事)管理会計|中小企業経営者のための【進化型】MA損益計算書

人的コストを15%アップしたときの影響試算

現段階において、賃金(給与賞与)アップのための余裕があったとしても「限界利益:人的コスト」のバランスについては正しく理解し、常に把握しておかなければなりません。

「利益が出れば賃上げするよ!」と「利益が先だ」という考え方の中小企業経営者が少なくありませんが、今後は、そうではなく、利益より先に賃金(給与賞与)、「必要十分な賃金のための必要利益は?」という考え方が必要です。

ひとつの例として、人的コストを「15%アップすると?」「25%アップすると?」を試算してみます。

【現状】【A】15%up【B】25%up
売上高5,0005,0005,000
限界利益
(対:売上比)
1,000
20%
1,000
20%
1,000
20%
人的コスト400460500
その他コスト400400400
事業利益
(経常利益)
200140100

上記の例は、限界利益をそのままにして、人的コストが【A:15%up】、【B:25%up】した場合の試算ですが、「事業利益」は、30%減、50%減というように、人的コストが25%upしたときには「事業利益」は半分になってしまいます。

人的コストが25%upしても、現在の「事業利益:200」をキープするためには、そのup分である100の限界利益を上積みしなければなりません。

限界利益を上積みするには、売上高の拡大と、限界利益率の改善のふたつの要素で考えることになります。

  • 売上高で増額する場合:売上高を10%拡大し「5500」になれば「限界利益率:20%」はそのままでも限界利益は「1000→1100」になる。
  • 限界利益率で増額する場合:限界利益率を改善し「22%」になれば「売上高:5000」はそのままでも限界利益は「1000→1100」になる。

このように、人的コストの増加が、収益性にどのように影響するか?を試算し「自社の体質」を知っておくことが、とても大切です。

(関連記事)中小企業の人手不足対策|「自責」で考え、競争力を強化する

社会保険の会社負担分を忘れないように

上記は「人的コスト」として試算しているので、社会保険の会社負担分も含んでいます。

給与賞与がアップすれば、社会保険も増額するため「給与だけに着目」してシミュレーションしないように注意しましょう。

仮に、社会保険の会社負担分を15%と見積もると、給与賞与が100万円アップすれば、人的コストは115万円になります。

まとめ

以上、「売上高・限界利益・人的コスト」の連動シミュレーションのシンプルな計算例を紹介しましたが、実務的には給与規定や賞与規定などの既存ルールや、適正人員のこと、あるいは、正社員・パートの区分など、検討材料は様々複雑に関連しています。

「カンタンに決められない」ことも多いため、来る将来に困ることがないように「先読み」して、経営計画に盛り込んでおくようにしましょう。

関連記事も含め参考にしてみてください。

もし、サポートが必要であれば、いつでも気軽に連絡ください!→「お問い合わせフォーム

以上、お役に立ちますように!