人事評価を「ちゃんと」やりたい。
でも、どこから手を付ければいいのか?
どうやって運用すればいのか?
イメージが付かない…
「人事評価制度」を作ったからといって
「会社が良くなる」ことはありません。
それどころか
「運用」を間違うと
「チーム崩壊のリスク」すらあります。
中小企業にとって
「人事評価」は
「ハイリスクハイリターン」。
「道具」は正しく使うことが必要です。
中小企業の人事評価、
設計から運用まで、順を追って整理します。

人事評価制度の設計
まず「制度設計」。
中小企業の人事評価制度は、次のステップにそって「丁寧に設計」します。
「丁寧」に!
とても重要な視点です。
Step1:チーム設計
人事評価制度は
「最高のチーム」を作るための
「道具」です。
「なぜ、人事評価をするのか?」
「どんなチームを目指すのか?」
制度設計は、目的やゴールを鮮明にするところから始めます。
ここを「雑」にすると、多くは「失敗」します。
「人の格付け」をするのではありません。
「貢献度」を公正公平に評価するためです。
「最高のチームのための貢献度」。
だから「チームのイメージ」が大切なのです。
具体的には、一般的にいう「組織図」を作成し「最高のチーム・理想のチーム」を可視化します。
- どんな部門が必要なのか?
- どんな人材が必要なのか?
- どんな配置がいいのか?
- どんな指示命令系統がいいのか?
これらの検討によって、部門や職種が明らかになります。
一例を挙げると、次のような「絵」になりますが、これに関わらず「逆三角形」や「ナベブタ」でも構いません。

詳細は、この記事を参考にしてみてください。

Step2:評価基準の作成
「組織図」ができれば、各ポジションに「どんなスキルが必要なのか?」を言語化していきます。
「こんなスキル」が
「こんなレベル」なら
「申し分のない満点人材」
それを表すのが「人事評価基準」です。
実務的には
「基礎スキル」と
「実務スキル」の
「二本立て」で作成することをお勧めします。
基礎編
「基礎スキル」は、職種や新人、ベテランなど関わらず、全員に共通するスキルです。
例えば、次のような10項目です。
- 社会人としての考え方と行動
- 組織人としての考え方と行動
- 課題発見力
- コミュニケーション力
- 計画実現力
- 管理力
- 議論力
- 積極的経験力
- 伝達力
- 報連相力
これらの「評価項目」について「申し分のないレベル=求めているレベル」を言語化します。
この「満点」が、後述する「5段階の5点レベル」となります。
私がおススメしている「満点」は「他者の指導ができるレベル」です。
実務編
営業職、事務職というように、それぞれの職種別に「実務スキル」も10項目作成します。
例えば、次のような「評価項目」があります。
【営業職】
- 商品知識力
- 新規開拓力
- 企画・提案力
- 販売力
- 接客力
- 仕入力
- 採算力
- 課題解決力
- 作戦遂行力
- その他PR
【事務職】
- 専門実務知識
- 事務処理正確性
- コスト削減力
- 業務改善力
- ホスピタリティ
- 情報管理力
- コンプライアンス力
- 調整・交渉力
- 組織貢献力
- その他PR
【技術職】
- 技術専門性
- 設計・構築力
- 品質管理力
- 納期遵守力
- 標準化能力
- リサーチ力
- コスト意識
- トラブル対応力
- ナレッジ共有力
- その他PR
【製造・現場職】
- 作業習熟度
- 安全衛生管理
- 品質保持力
- 設備保全能力
- 生産性向上力
- 資材・在庫管理力
- 多能工化対応
- 異常検知・解決力
- チームワーク
- その他PR
【企画系職】
- 市場分析力
- コンセプト立案力
- 情報収集力
- プロジェクト管理力
- 販促実行力
- 費用対効果算出力
- デジタルリテラシー
- プレゼン力
- ブランド構築力
- その他PR
以上は、あくまでも「サンプル」です。
これらを参考にして、自社にフィットする評価項目をリストアップしましょう。
私の経験では「10項目が適量」です。
あれもこれも、と増やしてしまうと「運用の難易度」が上がります。
「人事評価は運用できてナンボ」です。
特に優先的な10項目に絞りましょう。
*もし「余裕」があるなら、「基礎・実務」に合わせて「マインドセット評価」を追加することもおススメです。

5段階評価のレベル設定
上記で「基礎スキル」と「実務スキル」について「申し分のない満点人材のレベル」が明確になりました。
前述したように、私のおススメは「他者の指導ができるレベル」です。
百聞は一見に如かず。
例えば、このようになります。
- 【1点】理解・意識レベル
- どうあるべきか?が分かっている
- 【2点】行動・挑戦レベル
- 実行しようとする姿勢等は認められるが、まだ日常業務において改善課題がある
- 【3点】成果レベル
- 日常業務に支障はなく、特別な場合を除いて補助者を必要としない
- 【4点】習慣・信頼レベル
- イレギュラーなことも対応できる・応用が利く
- 【5点】指導成果レベル
- 他者の指導・組織内外への拡散の成果実績がある
注意点は「シンプルがいい!」です。
そのためには、評価項目ごとに設定するのではなく、このように、すべての項目について「共通の定義」をすることが有効です。
なお、「1点」は「理解しているか?」を問うので、もし理解していない場合は「0点」となり、事実上「6段階評価」となります。
以上、評価基準の作成の詳細は、この記事を参考にしてみてください。

Step3:チューニング
以上で「形」はできました。
しかし「そのまま」は使えません。
自社のメンバーを公正公平に評価できるようにチューニングが必要です。
現メンバーを実際に評価し、その結果をランキングしてみて「違和感」が無いかを確認します。
違和感がある場合は、評価項目の再考、ウエイト付けの検討、職種係数の検討を行います。
評価項目の再考
「違和感」の理由のひとつは「評価項目」が足りないケースです。
例えば「発想力で差がついてる」のに「発想力」という評価項目がないようなケースです。
このような場合は、STEP2に戻って、評価項目の入れ替えを検討します。
ウエイト付けの検討
評価項目は適正なのにランキングに違和感があるケースは「ウエイト」のチューニングをします。
「ウエイト」とは、各評価項目の難易度の調整です。
例えば
「社会人スキルの1点」と
「ロジカルシンキングスキルの1点」は、
「同じ」でいいのか?の検討です。
もし「ロジカル」の方が難易度が高く、1点の重みが「社会人」に比べて重いならば「ウエイト2」と設定をします。
これによって「社会人3点」「ロジカル3点」の場合、3*1+3*2=9点という評価になります。
職種係数の検討
さらに調整が必要なのは「職種格差」です。
「営業部門のオール3点の人」と
「事務部門のオール3点の人」は
「同点」でいいのか?の確認です。
もし
「事務」に比べて
「営業」は2倍の差があるなら、
「営業」の「職種係数2」という設定をします。
これによって、お互い
「オール3=合計30点」であっても
「営業60点」
「事務30点」と差がつくことになります。
Step4:年間スケジュールの決定
以上で「人事評価基準」が完成しました。
次は「運用の設計」です。
具体的には…
- 評価期間
- 評価面談
- 給与改定月
- 賞与支給月
…など、人事評価に関連するイベントをどのような周期で、どのようなタイミングで実施するかを明文化します。
3月決算の場合のサンプルを例示しておきます。
| 月 | イベント① | イベント② | |
|---|---|---|---|
| 3月 | 前期末 | 4Q:評価面談 来期経営計画と人事評価制度のリリース 「来期の目標」と「期待する貢献」と「必要とするスキル」を全員にプレゼン | |
| 4月 | 期首 | ||
| 5月 | |||
| 6月 | 夏季賞与 | 1Q:評価面談 | |
| 7月 | |||
| 8月 | |||
| 9月 | 上半期終了 | 2Q:評価面談 | |
| 10月 | 下半期開始 | ||
| 11月 | |||
| 12月 | 冬季賞与 | 3Q:評価面談 | |
| 1月 | |||
| 2月 | |||
| 3月 | 期末 | 4Q:評価面談 来期経営計画と人事評価制度のリリース 「来期の目標」と「期待する貢献」と「必要とするスキル」を全員にプレゼン | |
| 4月 | 新年度期首 |
人事評価制度の導入
次は、完成した「人事評価制度」をリリースします。
説明会の「アジェンダ」
導入にあたっては「説明会」を開催し、経営者自らが次の内容について全社員に解説します。
アジェンダのサンプルを参考にしてください。
- 人事評価制度の目的
「チーム作りのための成長支援」 - 人事評価基準の解説
「基礎スキル」「実務スキル」 - 評価点を上げるための考え方と取り組み方法
- 人事評価面談の目的と進め方
- 年間スケジュール
プレゼンの注意点
この段階で
「点数を付けるための人事評価」ではなく
「成長支援のための人事評価」であることを
「全メンバーに正しく伝えること」が、
「メチャクチャ大事」です。
多くの場合「人事評価でダメ出しされる」という漠然としたイメージを持っているメンバーが多いからです。
上述したように
「もっといい会社にするために、各自の成長が必要」
「そのためにみんなの成長を全力でサポートする」
この経営者の「ホンキ度」を伝える必要があります。
そのため
「このように評価する」
だけでなく
「こうすれば評価が上がる」
ということも伝えるようにしましょう。

人事評価制度の運用
「人事評価制度」をリリースした後、1年間の運用例を紹介します。
「人事評価制度」をチームに定着させ、成功させるためには「人事評価のときだけ」ではなく「日常化」することが、とても重要です。
事前説明会の開催
評価対象期間に入る前に
「人事評価の仕組みの目的や概要」
「人事評価基準の解説」を中心とする
「事前説明会」を開催します。
「人事評価」の目的が希薄化したり、独自解釈にズレることを防ぐために大切です。
重要:日常の観察
人事評価は「日常業務」です。
評価者は、日常から対象のメンバーの考えや行動を観察し、日常から「あるべき姿」に近づける関わりが大切です。
「評価の時期に過去を思い出す」という
「記憶に頼った評価」にならないように
「要注意」です。
「評価基準」に沿った
「日常のコミュニケーション」があれば
「評価の誤解」が防げます。
もちろん、このコミュニケーションが
「人材育成そのもの」であることは言うまでもないでしょう。
経過フォロー(半期または四半期)
半年ごと、あるいは四半期ごとに「評価面談:1on1」を実施し、成長課題への取り組みや進捗状況について共有する場を設けます。
各自から「現時点での自己評価」を提出してもらい、これに基づいた意見交換を行います。
順調であれば「この調子で!」と声を掛ければOKです。
そうでない場合は、適切なアドバイスを与えたり、悩み事に耳を傾ける時間になります。
期末評価
評価期間が終了すれば、上記の経過フォロー時と同様「自己評価」を提出してもらいます。
それに基づいた
「評価面談」にて
「今期末の評価」が確定します。
また、同時に「来年の目標設定」を行い、その目標をクリアするために、考動をどのように改めればいいか?どのような学習が必要か?についてアドバイスを行います。

成長課題の解決フォロー
期末評価で共有した「成長課題」を「解決」することで、人材は成長していきます。
必要に応じて、個別フォローや、研修の実施等を行います。
繰り返しますが、人事評価は
「点数を付けること」が「目的」なのではなく、
「成長支援」の「手段」です。
この「正しい目的」から、ズレないように「成長課題の解決フォロー」に「投資」しましょう。

人事評価を成功させるコツ
さて、どうでしょう?
「中小企業の人事評価制度」の設計から導入、運営までの順を追いました。

こりゃ大変だ!
これまで、何度も「こんな反応」を見てきました。
もちろんカンタンではありません。
なぜなら「競争力の源泉」ともいうべき「組織作り」の仕組みだからです。
もし、これがカンタンなら、中小企業に差は付かない、と言っても過言でないでしょう。
「経営は難しい」と言います。
それは
「組織作りが難しい」からです。
売り上げも、開発も、製造生産も「人の営み」である以上、すべて「根底」でつながっています。
いきなり「フルセット」でやる必要はありません。
「できるところからコツコツ」が現実的でしょう。
人事評価はカンタンではありませんが
意思決定はカンタンです。
「やるか、やらないか」の2択。
成功させるコツは
「組織作りにホンキになること」。
お役に立ちますように!




