前の記事で
「01:人事評価の本質|人を育てるための道具」と
「02:人事評価の現実|中小企業が失敗する理由」を紹介しました。
ここでは、その実務として「中小企業における人事評価の成功例と失敗例の比較」を整理しておきます。
【軽視厳禁】
ハイリスク・ハイリターン
中小企業における「人事評価」は、ハイリスク・ハイリターンの仕組みです。
うまく運用すれば、メンバーは成長し、どんどん「イイチーム」になっていきます。
でも、運用に失敗すれば、経営者とメンバーの信頼関係は崩れ、取り返しのつかないことになってしまいます。
だから、私は…
「やるなら、ちゃんとやる」
「できないなら、やらない」
…と、最初に「経営者の覚悟」を聞くようにしています。
下記に「運用の成功例」と「運用の失敗例」のサンプルを紹介します。
「やるか?やらないか?」の判断基準として、参考にしてみてください。
【成功事例】
人事評価の理想的な運用
「人を育てる方法」は、伝統的なフレームワークである「PDCA」の典型例と言ってもいいでしょう。
- P:どんな人材に育てるか?
- D:育成実務
- C:成長課題の抽出
- A:成長課題の解決支援
「人事評価」は、このPDCAサイクルの中心となる「C:Check」のプロセスですが、「PもDもA」も、この「C」がベースとなっています。
したがって
「人事評価の理想的な運用」というのは、
「PDCAがセットで運用されること」と指します。
以下、「成功事例」として紹介しますが、
これは「ひとつの理想形(満点)」と思ってください。

満点を取る必要はないけど、
合格ラインは目指してほしい


Plan:どんな人材に育てるか?
経営者が理想とする「最高のチーム」のメンバー育成です。
まず「どんなチームにしたいのか?」の解像度を高めます。
その上で、各ポジションの「理想的な人材像」を具体化します。
具体的には…
- 全員に共通する「基礎スキル10項目」
- 各ポジションの「実務スキル10項目」



さらに「マインドセット10項目」を加えれば完璧!
これが「評価項目」となります。
その上で、それぞれの「評価項目」について「1点~5点」の「5段階」の「基準」を作成します。
「人事評価基準」の完成です。
Do:育成実務
「人材育成」とは
「人事評価基準の点数を上げる取り組み」です。
「基礎スキル」「実務スキル」の各項目がアップするような「仕組み」が必要です。
これがなければ「各自の自習に任せる」という制度になってしまいます。
具体的には…
- 新人研修
- 基礎スキル研修
- 職種別技能等研修
- リーダー研修
…などが考えられます。
また、これらの「座学」に加えて「OJT(On the Job Training)」が必要なことは言うまでもありません。
ただ、その際にも忘れてはならないのは「このOJTによって、どの評価項目の点数が上がるか?」です。
Check:人事評価と個人面談
「PDCA」の「C:Check」が、一般にいうところの「人事評価」です。
- 自己評価の提出
- 評価者評価とのすり合わせ
- 成長課題の抽出
- 課題解決策の共有
- 「何が成長課題なのか?」
- 「その課題はどうすれば解決できるか?」
この「ふたつの問い」に対して、両者が「共通認識」できるところまでが「人事評価」です。
「点数をつけるだけ」ではありません。
Action:成長課題の解決フォロー
上記の「C:Check」で「共有した成長課題」を、解決するためのフォローやサポートのプロセスです。
「2点だから、次までに3点になるように努力してね」だけでは「台無し」です。
「3点になるように、こうしよう!」と具体的な解決策を共有し、そのためのフォローを個別に実施します。
私は、このプロセスが最も重要と思います。
なぜなら「成長してもらうためにやっていることだから」です。
【失敗事例】
人事評価の間違った運用
「正しくない運用」として、あえて「最悪なケース」を例示しておきます。
このような運用をすると、メンバーたちのモチベーションの火は消え、リーダー(経営者)に対する信頼や信用を失い、チームの体をなさなくなります。
この状態に陥っている中小企業を観察していると、そのマネジメントは「有無を言わせないトップダウン」「威圧」「脅し」、あるいは「過剰な待遇」などに頼っていることが少なくありません。
私が「ハイリスク・ハイリターンの仕組み」と言っている理由です。
Plan:理想像があいまい
人事評価の目的が「給料のためだけ」になっているケースが少なくありません。
その多くは、評価項目が
「当社の理想像」ではなく
「一般的な理想像」がゴールになっています。
メンバーから見れば
「求められている姿」と
「実際の仕事内容」にギャップがあります。
メンバーの姿勢が
「給料のための仕事」になっても仕方がありません。
また…
- 経営者自身が「建て前」と思っている評価基準
- とりあえず「カッコをつけただけ」の評価基準
チームは、「当事者意識」を失い、どんどん冷めていきます。
Do:育成の仕組みが連動してない
様々な「人材育成」の取り組みが「評価」と連動してないケースです。
「評価が上がり」
「待遇が良くなる」というインセンティブがありません。
メンバーたちは
「人事評価に対する当事者意識」を失います。
「人事評価が形骸化」してしまう理由のひとつです。
「タテマエの経営者」と
「冷めたメンバー」との「人事評価」。



第三者として観察すると「こっけい」ですらある
Check:事実を軽視した感覚的評価
評価者が「人事評価基準」に基づく「観察」をしていないケースです。
「観察情報」を持っていないので
「感覚評価」になりがちです。
「なぜ、3点なのか?」の説明ができない。
「なぜ、上がったのか?下がったのか?」
せっかくの「評価基準」も意味がありません。
評価者の「評価スキル」が未熟なまま実装したときに、よくあるケースです。
さらに…
「評価者がお手本を示せてない」
メンバーの心の中には…
「あなたに評価されたくない」
「人事評価」の運用において
「もっとも悲しいフレーズ」です。
Action:課題解決を放置
成長課題を解決するフォローがなく「自助努力」という言い訳で育成放棄。
「どうしたらいいのか?」と悩み、迷っているメンバーに「頑張れ!」の精神論。
せいぜい「忍耐力」しか養われないでしょう。
【要点整理】やる?やらない?
さて、どうですか?
| 成功(理想) | 失敗(最悪) | |
| P | 独自の「理想の人物像」が明確 | 借り物の「一般的な基準」 |
| D | 評価を上げるための「学習」がある | 現場任せの「放任・自習」 |
| C | 事実に基づき課題を「共有」する | 観察不足による「感覚評価」 |
| A | 弱点を克服する「解決フォロー」 | 精神論だけの「放置」 |
説明の都合上「理想」と「最悪」の「両極端」を例示しましたが、実務は「どっちに寄るか」です。
「理想」に近ければ「人は育つ」。
「最悪」に近ければ「人は離れる」。
「やるなら、ちゃんとやる」。
改めて念押ししておきます。



