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03:成果分配の功罪|業績連動型のデメリットとリスク

2026 5/05
2024年2月7日2026年5月5日
H.HORII

「みんなで稼いで、みんなで分かち合う」、
理想の「業績連動型賞与」。
しかし、その大きなメリットの裏には
デメリットもリスクも潜んでいる。

10人~200人規模の中小企業経営者の「自己投資=経営脳トレーニングのサポート」を目的に、「もっといい経営者」「もっといい会社」に成長するヒントを日々更新しています。
40年近く税理士として中小企業経営を支援し、経営計画や管理会計、組織作りを専門とするマネジメントコーチ・堀井弘三が、その現場で得た豊富な経験と知識に基づき執筆しています。
初めてアクセスしていただいた方は、「このサイトについて」をまずご覧ください。

中小企業で「業績連動型賞与」の仕組みを運用する際のデメリット・リスク・失敗事例などネガティブな側面をまとめます。

業績連動型賞与制度には・・・

  • メンバーたちの経営参画意識の向上
  • 労使の信頼関係の強化
  • 人件費の変動費化

など、メリットが数多くありますが、反対に・・・

  • 業績不振による原資不足
  • 情報漏洩
  • 人事評価の手間
  • コンサルティングコスト

・・・などのデメリットやリスクもあります。

失敗事例も紹介するので、参考にしてみてください。

INDEX

【盲点弱点】
デメリットとリスク

業績連動型賞与の仕組みは、経営的な視点で見ると「会社の業績管理と人材育成を連動させる仕組み」として多くのメリットがあります。

しかし、一方で次のようなデメリットやリスクを心配する声もあります。

  • 業績不調の場合、賞与ゼロの可能性があり、モチベーションへの影響が心配だ
  • 人事評価のための評価面談や評価集計等、手間がかかるのでは?
  • 業績を社内公表するので、その情報が社外に漏洩するリスクがあるでのは?
  • 導入コスト・運用コスト(社内コスト・社外コスト)が安くない?

それぞれについて、対処法を含めて紹介します。

業績不調で
賞与原資がなくなるリスク

業績は、良い時も悪い時もあります。

残念ながら想定を超えて業績が悪く、ルール通りに計算すると「賞与原資がゼロになる」ということがありえます。

業績が悪くても毎日真面目に一生懸命頑張っている社員に対して「業績が想定以下なので、今回の賞与はありません」と言いづらい…という気持ちはよくわかります。

ルールにしたがい「賞与ゼロ」…。

こんなとき、メンバーは
「業績連動型だから仕方がない…」と
「アタマ」では分かっていても
「でもね…」と、
「ココロ」は別の方向に向かいます。

このリスクへの対処法として「下限設定ルール」を盛り込むことがあります。

最低保証額の設定です。

さすがに「ゼロ」はモチベーションへの影響がよくない、と考える場合「どんなに業績が悪くても最低保障として***円は支給する」という一文をルールに盛り込んでおく、という方法です。

ただし、私は「逆」もセットにします。

つまり「上限設定」です。

想定をはるかに超えた好業績の場合、破格の賞与になる可能性があるからです。

私は、自社で業績連動型賞与制度を導入する際に社員全員の意見を聞きました。

  • 好業績の場合、青天井にするなら、悪い時はゼロとなることもある。
  • ゼロを避けるなら、上限も設定する。
  • 上限下限を設けるか、設けないか、君らが決めてくれ。

そのときに彼らが選択したのは
「青天井&ゼロ方式」でした。

実際、数年前に「賞与ゼロ」になったことがありましたが、大きな問題は生じませんでした。

このように業績不調で賞与原資がなくなる場合のルールはトラブル回避のために最初に決めておくことが大切です。

人事評価の
手間がかかるデメリット

業績連動型賞与制度に限ったことではありませんが、人事評価の結果が給与や賞与に直接的に連動するので、より慎重な人事評価が不可欠です。

とはいえ、それを「手間」と感じる経営者は少なくありません。

でも「人事評価は手間だ」と考える経営者は(冷たいようですが…)業績連動型は導入しない方がいいです。

業績連動型賞与制度の運用が新たなストレスになって、いずれ「やめたい」と思うようになります。

実際、この相談は年に数回あります。

業績連動型賞与制度の大切な基本コンセプトは「人材の成長を願い、その成長による成果をみんなで山分けしよう!」です。

このコンセプトを正しく理解し、納得できれば、たとえ「手間」と感じても、それはストレスとはならず、むしろ、成長するメンバーの評価が楽しみになるはずです。

業績情報が漏洩するリスク

「情報漏洩」は業績連動型ゆえのリスクです。

賞与の根拠となる業績を社内に公表するということは「チームの全員がそれを知っている」ということです。

「人の口に戸は立てられぬ」というように、ゼロリスクにはできません。

メンバーのモラルを信じるしかない、というのが現実です。

それでも、可能な限りのリスクヘッジができるとすれば、業績の公表は「口頭で」ということくらいです。

情報公開に当たっては「業績報告書」を人数分プリントして会議にて配布して公表し、会議終了後は回収する、という具合です。

私が経験した「苦い思い出」を紹介すると…

「社員の家族から漏れた」という事例があります。

夫のボーナスに奥さんは興味津々・・・当たり前ですね。しかし、この奥さんが「井戸端会議」でついつい嬉しくて小学校のママ友さんたちに話してしまった、という例です。これは、たまたま「発覚」した例ですが、そうでないことも少なからずあると思います。

コストがかかるデメリット

外部コンサルタント等にサポートしてもらうときのコストですが、それが「高いか」「安いか」の感じ方は人それぞれです。

ただ…

  • 「成長支援型の人事評価制度」と
  • 「業績連動型賞与制度」を運用し
  • メンバーがモチベーション高く成長し、
  • 彼ら彼女らとともに得た成果=業績に応じて気持ち良く分配することができる

…ということの価値の対価としてどうか?です。

私は「価値ある投資」だと思います。

【失敗事例】
中小企業でよくあるケース

続けて、失敗事例も紹介しておきます。

見切り発車で
失敗した事例

個々の「貢献率」を計算するための人事評価にまつわる失敗例として「評価基準の公表が遅れたケース」を紹介しておきます。

一日も早く業績連動型賞与制度を導入したかった経営者が「見切り発車」したケースです。

年末近くになって「今回の賞与は、業績と人事評価の点数に応じて支給します」と、評価基準を配布しましたが、そのタイミングが悪かった…。

支給の直前での公表だったのです。

いわゆる「後出しじゃんけん」です。

メンバーからすると
「それって、最初に教えてもらわないと!」
「ずるい!」と感じるのは当然です。

せっかくの業績連動型の「第一印象」が悪くなってしまった例です。

急いては事を仕損じる

ルール外のお手盛り支給で
失敗した事例

業績連動型賞与制度のルールに従って計算した結果を見た経営者、どうもイメージしていた金額とは違ったようで、特定の複数のメンバーに「社長賞」として加算しました。

いわゆる「お手盛り」です。

加算したメンバーには 「加算したのはあなただけだから、みんなには内緒だよ」と一言加えて…。

この経営者は、この社長賞をもらった社員は喜んでくれる、と信じていました。

しかし、後日談ですが「僕は、あの時、社長が信用できなくなり、社長賞をもらったことが、他の同僚に対して申し訳なく思い、複雑でした。」と言っているのを聞いて、私も非常に残念な思いをしたということがありました。

その後、「業績連動型って建前だ。結局、最後は社長がエンピツなめなめして決めている。」という社内の空気が数年続いてしまいました。

決して、ルールを逸脱した特別支給をしてはならないという出来事でした。

このリスクを回避するために必要なのは、導入前の「綿密なシミュレーション」です。

月次決算の精度が低くて
失敗した事例

業績に連動させて分配をする以上、言うまでもなく業績計算の正確性は非常に重要です。

月々の経理処理が雑で「月次業績」が正しく表れていないとき、それを見たメンバーは違和感を感じ「これって信用ならんな…」と冷めていき「こんな数字で賞与が決まるって納得できない」と不満や不信に至る、ということがあります。

会計データを基にして業績を社内に公表し、それが、メンバーの待遇に直結していることを経理担当者や顧問税理士事務所には正しく理解してもらい、慎重に協力してもらうよう働きかけることを忘れてはなりません。

「精度の高い月次決算」は、制度の信頼感を保つ上で非常に重要です。

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【要点整理】
工夫すれば回避できる

以上、業績連動型賞与のデメリット、リスク、そして失敗例を紹介しました。

  • 業績連動型賞与制度の主なデメリットとリスク
    • 業績不調で賞与原資がなくなるリスク
    • 人事評価の手間がかかるデメリット
    • 業績情報が漏洩するリスク
    • コストがかかるデメリット
  • 業績連動型賞与制度、中小企業での失敗事例
    • 見切り発車で失敗した事例
    • ルール外のお手盛り支給で失敗した事例
    • 月次決算の精度が低くて失敗した事例

以上のようなマイナス面がありますが、工夫すれば対処できるものばかりです。

これらを踏まえて検討していただければ、と思います。

さらに詳しいことはこの記事で
09:成果分配の失敗|業績連動型賞与でしくじる理由 せっかく実装した「業績連動型賞与」。手間もコストをかけた。なのにうまくいかない。なぜだ…。 中小企業が「業績連動型賞与(ボーナス)」の仕組みを実装しても「うま…

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「組織戦略」全記事リスト

1部:概要編
  • 01:組織戦略の本質|最高の経営者人生のために
  • 02:組織戦略の主軸|人的資本経営|消費から投資へ
  • 03:組織戦略の全容|最高のチーム「5つの仕組み」
  • 04:組織戦略の前提|相性の良し悪しがとても大切
  • 05:組織戦略の目的|経営者の自由度を拡げる
2部:組成編
  • 01:組織作り|経営者のチームビルディング・スキル
  • 02:組織作り|最高のチームを作る実務:5ステップ
  • 03:組織作り|「もっといいチーム」の「らしさ」
  • 05:組織作り|「感じのイイ会社」のカルチャー
3部:採用編
  • 01:採用力の課題|「イイ人」はなぜ採れないのか?
  • 02:採用力の強化|「イイ人」を採るマーケティング
  • 03:採用力の改善|「イイ人」を見極めるための視点
  • 04:採用力の改善|「イイ人」に選ばれるための視点
  • 05:採用力の実務|「イイ人」を見極める面接のコツ
4部:育成編
  • 01:人を育てる覚悟「ホンキ」で人を育てているか?
  • 02:人材育成の準備「優秀な人材」を言語化してるか?
  • 03:人を育てる前提「ヒト」を正しく理解しているか?
  • 04:人材が育つ文化「成長の定義」を共有しているか?
  • 05:人材育成の課題「人が育たない会社」の共通点8選
  • 06:人材育成の順序「スキルの3段階」に沿ってるか?
  • 07:人材育成の仕組「学校方式のPDCA」で育てる!
  • 08:人材育成の仕組「いい会議」をすれば人は育つ!
  • 09:人材育成の仕組「定例研修」を「内製化」する!
  • 10:人材育成のコツ「いいね!」褒めて育てる重要視点
  • 11:人材育成の難問「リーダー」が育たない理由
  • 12:リーダー育成│3つの役割をチームで共有する
5部:評価編
  • 01:人事評価の本質|組織を育てるための道具
  • 02:人事評価の現実|中小企業が失敗する理由
  • 03:人事評価の運用|「成功例」と「失敗例」の比較
  • 04:人事評価の基準|5段階評価のサンプル|無料DL有
  • 05:人事評価の基準|「好みのタイプ」を言語化する
  • 06:人事評価の基準|「マインドセット評価」の追加案
  • 07:人事評価の実装|設計から運用までの実務ステップ
  • 08:人事評価の実務|「評価面談:1-on-1」の進め方
  • 09:人事評価の効果|最大メリットは「経営者の成長」
  • 10:人事評価の別案|評価基準は社員が設計すれば?
  • 11:人事評価は手段|経営計画の実行を支える仕組み
6部:分配編
  • 00:3つの成果分配|成果は「利益」だけではない
  • 01:成果分配の本質|「給与とは?」の軸を持つ大切さ
  • 02:成果分配の概要|業績連動型賞与の「ざっくり」
  • 03:成果分配の功罪|業績連動型のデメリットとリスク
  • 04:成果分配の実務|評価と給与の「キレイな関係」
  • 05:成果分配の実務|業績連動型賞与の実装ステップ
  • 06:成果分配の実務|売上?利益?ナニに連動させる?
  • 07:成果分配の実務|賞与の「総額計算」の「分配率」
  • 08:成果分配の実務|各人の賞与を計算する「貢献率」
  • 09:成果分配の失敗|業績連動型賞与でしくじる理由

このサイトでは、ひとりでも多くの経営者の方々のお役に立ちたいという思いを持って、なるべく深く、そして詳しく発信しているつもりなのですが、「ひと」に関することには「どうしても書けないこと=公表できないこと」があります。

特に、人事評価とか給与賞与に関するマネジメントには、その性質上「社員さんたちには知られない方がいいこと」があります。

お察しのとおり、このサイトは経営者の方だけではなく、一般社員さんたちもアクセスし読むことができます。

すべて「理想論」や「タテマエ」で解決できればいいのですが、「人に関する実務」はそんなに甘いものではなく、時には「荒療治」しなければならないシーンがあります。この「荒療治」を文字で誤解なく伝えることはとても困難です。

また、カモフラージュした「事例紹介」であっても、当事者の方々にとっては「あ、この記事、当社のことやん」ってすぐにわかってしまいます。それは、その社員さんにとっても「あ、自分のことだ」とわかってしまいます。「いい話」の場合はいいのですが「よくない話」の場合は、気分を害したり、あらぬ誤解を生じさせたりするリスクがあります。

このような理由で「トラブル解決系」や「裏技的な方法」は、一般公開しているこのサイトでは書けません。

「それが聞きたいのに・・・」と、物足りなさを感じられる方も少なくないと思いますが、何卒ご了承ください。

ただ、トラブルや裏技が必要になるときの共通した原因があります。それは、この「組織戦略」を疎かにしてしまったリバウンドであること。念のために書き添えておきます。

6部-分配編
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この記事を書いた人

H.HORIIのアバター H.HORII マネジメントコーチ

思考のスパーリング・パートナー

もっとエエ会社にしたいなら、
もっとエエ経営者になればええねん!

これが口ぐせ。

1999年に税理士事務所を創業し、
勤務時代も含めると約40年近く
300人を超える中小企業経営者の
成功と失敗を特等席で見てきた
「超実務家」。
2022年に幸せな事業承継を遂げ、
自ら「経営の入り口から出口まで完走」。

現在はマネジメント・コーチとして、
20〜40代の次世代経営者を
「あおって、いやして、元気づけて」
パフォーマンスを最適化するのが仕事。
その現場で得た「もっとよくなるヒント」を
惜しみなく日々発信中。

詳しいプロフィールはこちらへ。

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