経営者の倫理観:人として、経営者として、ブレない正しさ

この記事に書いてあること
【経営脳】5つのレイヤー。第1レイヤーは、経営者の心構えや考え方をマネジメントする「マインドセット」。

中小企業が「もっといい会社」に成長するためには、経営脳を最適化し「もっといい経営者」に成長することが唯一の選択肢。

そのため、特に大切なのは、他のレイヤーに優先する「第1レイヤー:マインドセット」=「正しさを考えるチカラ」を整えることです。

本稿では、この「マインドセット」が試されるテーマのひとつ、「倫理観」について詳しく紹介します。

要旨・結論は次の通りです。

忙しい人は、これだけでもインプットしてください。

  • ジブンは、人として正しいか?
  • ジブンは、経営者として正しいか?
  • 人として正しいのに、経営者としての正しさからズレることがある。
    だから「常に問う」ことが必要。
  • 倫理観は「ラクチン経営」の前提。
  • 正直である、約束を守る、ズルをしない。
  • 損得(ソントク)で考えてもいいから、早さ重視で倫理観を高める。
  • 倫理観の強いリーダーが、「倫理観が強いカルチャー」を作る。
  • 常に「ジブンは正しいか?を常に考える習慣」。
    この習慣が、経営者のマインドセットをより質の良いものに整えてくれる。

「シンドイ経営」の理由はなんだろ?と感じている経営者の方は、ぜひ読んでみてください!

「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けた「自己投資=経営脳トレーニングのサポート」を目的に、「もっといい会社」に成長するヒントを日々更新しています。
本記事は、35年以上にわたり税理士として中小企業経営を支援し、管理会計や経営計画を専門とするマネジメントコーチ・堀井弘三が、その現場で得た豊富な経験と知識に基づき執筆しています。
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執筆者、堀井弘三のプロフィールはこちらです。

【おさらい】
経営脳のマインドセットとは?

本稿は「Layer1:経営者のマインドセット」を深掘りする8つの記事のひとつです。

先に「経営脳:5つのレイヤー」をおさらいしておきましょう。

経営脳:5つのレイヤー
【経営脳】5つのレイヤー。第1階層は、経営者の心構えや考え方をマネジメントする「マインドセット」。
  • Layer1:マインドセット
    経営脳の全体を「正しく」マネジメントするチカラ
  • Layer2:フィジカル
    カラダをマネジメントするチカラ
  • Layer3:メンタル
    ココロをマネジメントするチカラ
  • Layer4:スキル
    仕事をマネジメントするチカラ
  • Layer5:センス
    違いや差をマネジメントするチカラ

「経営脳」は、経営者が持っている「ジブンをマネジメントするチカラ」のことです。

「経営脳」を整えると「経営者としてのパフォーマンス」が良くなります。

経営者のパフォーマンスが良くなると、それにつれて会社も成長する、というロジック。

では「経営脳」を整え、
アタマをよくする」ために
どうすればいいか?

そのためのフレームワークが
経営脳の5つのレイヤー」です。

ヒトとパソコンやスマートフォンはそっくり。

ヒトも「ハードウエア+ソフトウエア」に例えることができます。

これは、その「ヒトのソフトウエア」を5つに分けたものです。

最下層の「マインドセット」の役割は、
経営脳全体を正しくマネジメントすること

いわば、ハードウエアやアプリを制御する
OS(Operating System)」に相当するレイヤーです。

パソコンやスマートフォンが「OS」で制御されているように、ヒトも「マインドセット」によって制御されています。

つまり、「人は考え方次第」です。

経営者の「ココロやカラダ」、「スキルやセンス」が正しく動くように制御する「マインドセット」。

本稿で紹介する「倫理観」は、この「マインドセット」を整えるための大切な視点のひとつです。

経営脳の5つのレイヤーは、下記の記事で詳しく解説しています。

経営脳はフレームワークで最適化できる|5つのレイヤー

まだの方は先に一読していただくと理解が深まります。


●主な内容
・経営者と会社の成長は表裏一体
・経営課題の本質は「経営者の成長課題」

・レイヤーごとに課題を整理して自主トレ
・レイヤーの前提は「自責」で取り組むこと
・レイヤーの効果は「自己効力感」が高まる

【重要定義】
倫理とは「人としての正しさ」

一般的に「倫理」と言えば「人としての正しさ」のことです。

このブログでは、「道徳」「正義」「正直」「公正」などの、類似語や関連用語も含めた広い意味で使っています。

この「人としての正しさ」が、考動(考えや行動)に表れている人が「倫理観を持った人」と評されます。

論点:なぜ「倫理観」が必要なのか?

会社経営において「倫理観」が大切であることは言うまでもありません。

「倫理観」が不足すると、その多くは「シンドイ経営」になります。

ほとんどの経営者は「倫理は大切」と思っています。

自己認識も「自分はちゃんと倫理観を持っている」です。

しかし、それは「言行一致」しているでしょうか?

「倫理を貫くこと」は、意外と難しいものです。

会社経営の現場において、困難で時間もかかる「本質的解決」より、安易に「ズルい応急処置」をしてしまうことがあります。

そうせざるを得ないのかもしれません。

その時に「罪悪感」を感じるか?です。

  • やむを得ず、ズルい意思決定をしてしまった」なのか?
  • ズルい意思決定かもしれないが、仕方がない」なのか。

この差が「倫理観」です。

現実問題として「やむを得ない場面」があるものです。

このとき

  • 「倫理観」を持っている経営者は「再発防止策」を考えます。
  • 「倫理観」が不足している経営者は「ホッと一息」で終わりです。

この「倫理観の差」が、

経営者のマインドセットの差」となり、
経営者としての差」となって開いていくことは想像に難くないでしょう。

この「カラクリ」を紐解いていきましょう。

関わる人たちに対する倫理

まず、会社経営において「倫理観」が試される場面を共有しましょう。

会社経営の目的である「関わる人たちの持続的な幸せ」で考えます。

3Gマネジメント:社会・取引先+社員+経営者

3つの関わる人たちのグループは、次の通りです。

  • Group1:社外
    得意先や取引先を含む社会全般
  • Group2:社内
    社員とその家族や大切な人たち
  • Group3:自分
    経営者の家族や大切な人たち

この人たちに対して

  • ウソをつかない
  • 約束を守る
  • ズルいことをしない

などの「当たり前」によって
イヤな思いをさせない」ことが
人としての正しさ」です。

つまり、これがもっとも「基本的な倫理」。

具体的には・・・

  • 法令遵守(コンプライアンス)
  • 公正性や公平性
  • 健全なコミュニケーション
  • 心理的安全性の確保
  • 多様性への配慮
  • ハラスメント防止
  • 地域社会との共存
  • 環境への配慮

・・・などの「当たり前」に、会社の倫理的な姿勢が現れます。

この記事では、近江商人の「三方良し」との比較で「3Gマネジメント」の詳細を解説しています。

  • 「近江商人の三方良し」
    1. 「世間」
    2. 「買い手」
    3. 「売り手」
  • 「3Gマネジメント」
    1. 「社会・取引先・顧客」
    2. 「社員と、その家族や大切な人たち」
    3. 「経営者と、その家族や大切な人たち」

【軽視危険】
倫理観の不足は「シンドイ」

理解を深めるために、ネガティブなシーンを共有しましょう。

経営者の倫理観が低いとき、いわゆる「るいとも」が起きやすくなります。

つまり、周囲に倫理観の低い人たちが集まりやすい。

  • 倫理観が不足した得意先や取引先
  • 倫理観が不足した人材

具体的には、次のような「シンドイ経営」となって表れます。

  • 信用できない取引
  • 油断できない取引
  • 隠ぺい体質の人たち
  • 「正しさ」より「自己都合」を優先する人たち
  • 鵜呑みできない報告や情報
  • 相互信頼感が低く懐疑的

ゾッとしますね・・・。

まだまだありますが、これ以上、リストアップしたくありません。

ただ、これらに「心当たり」があれば、それを「他責」しないように注意です。

実は、「ジブンの倫理観」とリンクしていないか?

「自責」で自問自答してみてください。

【本質視点】
経営者の前に「人として」

この「倫理観」の話は「経営者だから」ではありません。

そもそも「人として」ですよね。

すでにお気付きのとおりです。

ただ、もう一度「経営者の倫理観」に焦点を合わせると「気になる話」を思い出します。

私は、税理士として、数十年にわたって多くの中小企業経営者と出会いました。

その間、よく耳にしたフレーズが

「あの社長、人としたらエエんやけどなあ…」
(あの社長、人としたらイイヒトなんだけどなあ)

確かに、プライベートで会って話をすると「わきまえた人」であり、「イヤな思い」をすることなんか、これっぽっちもありません。

なのに、経営手法を観察していると「なんで?」と思うような判断や意思決定を平気でしている。

中小企業にこのタイプの経営者は少なくありません。

もったいない!」です。

「人として」は、大丈夫なのに
「経営者として」は、課題がある。

どこかで「会社経営はシンドイものだ」と思い込んでしまっているのです。

「シンドイ経営」は仕方がない、とジブンに言い聞かせているのです。

そんなことありません。

その「しんどさ」は軽減できます

もっと進めば「ラクチン経営」になります。

後ろめたさを感じる「やむを得ない意思決定」をしたときの考え方を少し変えるだけです。

それを「仕方がない」と考えるのではなく、「オカシイ=正しくない」と考えることです。

正しくないことは、正す」。

まさに「経営者のマインドセット(正しさを考えるチカラ)」が試される場面です。

「人としてエエ人」なら、「経営者としてもエエ人」になれます。

この繰り返しで、少しずつ「ラクチン経営」に向かうことができます。 

私が「マインドセットを整えれば、経営はラクチンになる」と提唱している理由のひとつです。

【課題解決】
損得で考えてもいい

「人としての正しさ」、「倫理観」を高めていきましょう。

このとき、「倫理観」は高尚なテーマなので「損得(ソントク)で考えるべきではない」という意見を聞くことがあります。

でも、私の考えは違います。

手段は問わず、「倫理観が高まるなら、損得で考えてもよし」です。

なぜなら、経験的に「その方が早い」と思ってるからです。

「どうあるべきか?」という自問自答で時間がかかるくらいなら
「どっちが得か?」の方が手っ取り早いです。

結果として「高い倫理観の経営者」になれば、その方法はなんでもいいです。

  • 倫理観が高ければ「ラクチン経営」になる。
  • 倫理観が低ければ「シンドイ経営」が続く。

さて、どっちが「トク」か?です。

私は、「人としての正しさ」を貫き「ラクチン経営」で人生を過ごす方が、絶対に「トク」と思っています。

「人としての正しさ」が、「善良な人」たちからの支持率を高めます。

支持率の高い経営者には、協力、応援が集まります。

いい意味での「るいとも」。

想いを同じくする社内外の人たちと共にする会社経営

すべての経営者が理想とするところだと思います。

最高に「トク」でしょ?

そのために?

その方法はシンプルです。

3Gの人たちの持続的な幸せをよく考え
「イヤな思いをさせないこと!」に尽きます。

それが「人としての正しさ」の本質です。

*「幸せ」ってなに?とモヤモヤしているなら、この記事を参考にしてみてください。

  • 「幸せ」に含む2つの意味
  • 経営目的は、関わる人たちの幸せ
    • 幸せとは「不幸」でないこと
    • 会社は小さくても、関わる人たちは多い
  • 反面教師、経営が不幸の起点となるとき
  • 目標は、幸せの機会を増やす経営
  • 理想論か?そうではない経験談
  • 「ずっといい会社」へ

【企業文化】倫理的なチーム

「もっといい会社」にするために、もう少し話を深めます。

倫理的なチーム
倫理観の強いチーム

ジブン視点」とともに「チーム視点」でも「倫理観」を考えましょう。

上述した「ネガティブ」を「ポジティブ」に変換してみましょう。

  • 倫理観が不足した人材
    倫理観が強い人材
  • 隠ぺい体質の人たち
    隠さない人たち
  • 「自己都合」を優先
    「正しさ」を優先
  • 鵜呑みできない
    信用できる
  • 相互信頼感が低く懐疑的
    相互信頼と相互感謝

つまり、

  • 約束を守る
  • 正直
  • ズルをしない

このような人たちで組成されたチーム。

この「倫理観」が「企業文化=カルチャー」として根付いているチームは、ある意味「最強」です。

このようなチームには、「かけひき」や「探り合い」なんて無縁です。

「正しさを基準にした開かれたコミュニケーション」が当たり前のチーム。

さて、どうすれば、このような「理想のチーム」になるか?

その方法は、たったひとつ。

「倫理観の強いリーダー」になることです。

むつかしく考えなくていいです。

シンプルに、リーダーとして「約束を守る・正直・ズルをしない」。

たった、これだけです。

さらに「おトク感」が増すと思います。

【実務指針】考動チェックリスト

参考までに、チェックリストを追加しておきます。

「正しさの自問自答」「言行一致の自己診断」の参考にしてみてください。

  • 価値観や考え方のベース
    • 公正・公平に意思決定をしているだろうか?
    • 成果のためには、犠牲はあって当然と考えていないだろうか?
    • 偽ったり、誤魔化したりせず正直に考動しているだろうか?
  • 情報の取り扱い
    • 正しい情報を必要とする人たちと共有しているだろうか?
    • 情報を隠したり、改ざんしたりしていないだろうか?
  • 人材評価や待遇
    • 社員をスキキライで評価したり、判断したりしていないだろうか?
    • すべてのメンバーを公正な基準で評価し、成果分配しているだろうか?
    • 公言できない理由によって誰かを優遇していないだろうか?
    • すべてのメンバーに対して平等な機会を提供しているだろうか?
    • 言いやすい相手に理不尽な負担を強いていないだろうか?
  • コンプライアンス
    • コンプライアンスに課題はないだろうか?
    • ハラスメントは無いと言い切れるだろうか?

【要点整理】会社として正しさ

さて、どうですか?

「経営脳:5つのレイヤー」の最下層「経営者のマインドセット」が試される大切な視点のひとつ「倫理観」を紹介しました。

「経営者のマインドセット」とは、「正しさを考えるチカラ」です。

自問自答はシンプル。

ジブンは、人として正しいか?

ジブンは、経営者として正しいか?

「人としては正しい」のに、様々な経営課題と格闘している間に「経営者としての正しさ」からズレてしまうことがあります。

だから「常に問うチカラ」が必要です。

要点を再掲しておきます。

  • 「関わる人の幸せ」が経営の目的であり基本。
  • つまり「イヤな思いをさせない」こと。 
  • 「倫理観」は、「ラクチン経営」の前提。
  • 「正直である」「約束を守る」「ズルをしない」 こと。
  • 損得で考えてもOK。早さ重視で倫理観を高めること。
  • 「倫理観の強いリーダー」が「最高のカルチャー」を作る。

「経営者としてのマインドセット」を整え、さらに強くしましょう。

「人としての正しさ」が、「経営者としての正しさ」となり、
「経営者としての正しさ」が、「会社の正しさ」となって現れます。

この「正しさ」を問い続ける習慣=アタマのクセは「一生ものの財産」になります。

もちろん、そのご褒美が「最高の経営者人生」であることは言うまでもありません。

もし、サポートが必要であれば、いつでも気軽に連絡ください!

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以上、お役に立ちますように!

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