【経営者の戦略構想力】ストーリーの魅力で仲間を巻き込む

この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。約 9 分で読めます。


この戦略の意義は何だろうか?
この戦略が生む価値は何だろうか?
この戦略の
 差別化要因は何だろうか?
この戦略で
 仲間を巻き込めるだろうか?

「もっといい会社」にするためには、経営脳を整え「もっといい経営者」になることが唯一の選択肢です。

いい経営者になるためのマインドセットと心身のコンディション(L1~L3)を整えたら、次は「第4階層:経営スキル」のトレーニングです。

このページでは、10人~100人規模の中小企業経営者のために、経営脳5つのレイヤーの「第4レイヤー:スキル」のひとつである「経営者の戦略構想力」について深掘りします。

この記事に書いてあること

理念や目標が単なる「夢」ではなく、必ず実現達成するものであると信じ、そのための多少の苦労は厭わず一生懸命頑張ってくれる仲間たち。

「できそう!」「やれそう!」「やりたい!」「できないはずはない!」というモチベーションを支えているのは根拠のない精神論ではなく明確な戦略ストーリー。

この戦略を描くのは経営者自身。

「戦略構想力」は、これを実現するための必修経営スキルのひとつです。

  • 中小企業経営者にとっての「戦略構想力」とは何か?
  • そもそも「戦略」とは何か?
  • 「戦略構想力」のセルフチェックリスト
  • 「戦略構想力」を高めるためにどうすればいいのか?

【二層構造】
ヒトも “OS+アプリ” で動いてる

個々のスキルの前に、まず「スキルの全体像」について要点整理しておきます。

「スキル」は、仕事をするための技能や技術などのことですが、大きく・・・

・・・2つに分類することができます。

スポーツでも・・・

  • 競技の種類に関係なくすべてに共通する「筋力」「走力」「スタミナ」などの基礎的な能力と
  • 「技」「テクニック」「連係プレー」など、その競技特有の能力に分類できますが

・・・それと全く同じです。

基礎スキルは「ビジネスパーソンとしてのスキル」であり、新人やベテラン、年齢や性別、ポジションなどの違いに関わらず「全員必修」のものです。

このブログでは、その中でも特に優先的に重要と思われる「課題発見力」「計画実現力」「管理力」「仕組力」「コミュニケーション力」「論理的思考力」「拡深思考力」「リーダ力」の8つについて紹介しています。

一方で、経営スキルは、会社経営特有の技能等であり「ヒト・モノ・カネ+トキ」をマネジメントするための経営者にとって必修のスキルです。

このブログでは「先見力」「理念創造力」「戦略構想力」「チームビルディング力」「会計力」「情報力」「プロジェクトマネジメント力」「伝達力」の8つを特に重要と位置付けて紹介しています。

基礎スキル」は、パソコンやスマートフォンに例えるなら「OS」に相当する部分です。「OS」がイマイチであれば、どんなに優秀な「アプリ」をインストールしてもサクサク動かない、という現象をそっくりです。

「経営が上手くいかない」という症状において、経営者のアプリ(経営スキル)以上に、そもそものOS(基礎スキル)に課題があるというケースは少なくありません。

(詳しくは「経営脳の第4レイヤー:スキル」を参考にしてください。)

【定義確認】
ストーリーの言語化と可視化

必修経営スキルのひとつである「戦略構想力」とは「理念実現や目標達成をするための具体的なストーリーを言語化・可視化するチカラ」です。

単なるアイデアに留まることなく、戦術や作戦、実行計画までも含む概念です。

具体的に細分すると下記のようなリストになります。

  • 理念や目標との整合性
    • 理念や目標を明確にし、戦略をその実現や達成のための方法として明確にリンクさせるチカラ。
  • 言語化=ストーリーテリング
    • ゴールまでのプロセスを、わかりやすく、魅力的なストーリーとして言語化するチカラ。
  • 可視化
    • 戦略や計画を視覚的にビジュアライズするチカラ。
  • スケジューリング
    • 戦術や作戦を行動計画として具体的なスケジュールに落とし込み、チームメンバーや仲間と共有するチカラ。

このように「戦略構想力」は、戦略や戦術を具体的な行動計画にまで落とし込むチカラも含み、チームマネジメントにおいて欠かすことはできません。

【戦略とは】
“意義・価値・違い”の鮮明化

経営戦略は、販売戦略・人事を含む組織戦略・開発戦略・財務戦略などをはじめとして、必要となる個別戦略に細分されますが、いずれも、その意義や価値、そして他社との違いを鮮明にすることが重要です。

  • 「その戦略にどのような意義があるのか?」
  • 「その戦略にどのような価値があるのか?」
  • 「その戦略は競合と比較して何が違うのか?」

ーーという問いかけに対して、自社の競争優位性をスラスラとプレゼンテーションできることが「戦略構想力」の高さの表れとなります。

そのために、下記のような自問自答を繰り返しアタマを整理していきます。 

  • 販売戦略
    • 魅力的な商品やサービスとその売り方
    • 販売することにどんな意義があるのか?
    • 顧客にとっての価値は?
    • 競合と何が違うのか?
  • 原価戦略
    • 仕入方法や製造方法
    • その方法に意義はあるのか?
    • 誰にとっての価値か?
    • 競合と何が違うのか?
  • 組織戦略
    • チームパフォーマンスをより高める仕組み
    • その仕組みの意義は?
    • メンバーや仲間にとっての価値は?
    • 競合と何が違うのか?

このように、各個別テーマにおいて「意義」や「価値」を鮮明にした上で、それを具現化するリアルなストーリーが戦略となります。

【自問自答】
戦略構想力のセルフチェック

「戦略構想力」は、理念実現や目標達成をするための具体的なストーリーを言語化・可視化するチカラです。

「付加価値」「差別化要因」「参入障壁」などを明確にし、社内外の仲間たちを巻き込む魅力的なストーリーが書けているか?

次に、自問自答のサンプルを紹介するので、このような視点で自己内観し、解決すべき課題がないかを確認してみてください。

【自主トレ】
戦略ストーリーの壁打ち

あなたの「自主トレ」の参考までに、私のコーチングの現場での取り組みを紹介しておきます。

コーチングの本質的な目的は「経営者の考え方を整えるサポート」であり、実務的なノウハウや方法論を伝授することではありません。

実務的な方法で解決しても、多くの場合、それは一時的な効果で終わってしまいます。

そのような一時しのぎの解決ではなく、経営者本人の考え方という根本的な解決が必要です。

  • 経営者の考え方が整えば、行動が改善する
  • 行動が改善すれば、結果が変わる

ーーというロジックです。

「整える」とは、漠然として言語化できていない考え方や勘違い、間違っている考え方を正しく鮮明にすることを指します。

スキルに何らかの課題がある場合、その原因のほとんどは「考え方」にあります。

「考え方」を正しく、鮮明に整えることができれば、ほとんどの課題は解決します。

以下に、スキルの課題解決のためのコーチングのステップを紹介します。

このステップを自主トレの参考にしてみてください。

(関連記事)コーチングのご案内

Step1:前提条件を整える

まずは、個別のスキルの自主トレに取り掛かる前に、その前提条件を確認しておきましょう。

スキルの前提条件とは、経営脳の5つのレイヤーで紹介している「マインドセット」「フィジカル」「メンタル」という3つです。

「原因はスキルではないかもしれない?」という「本当の原因」の確認です。

もし、不都合の本質的な課題が「マインドセット」「フィジカル」「メンタル」のいずれかにあるならば、スキルの前にこれらの前提となるレイヤーの解決を優先しなければなりません。

L1~L3の下位レイヤーに問題がないことを確認すれば、次は「L4:スキル」です。

ここで、大切なのは「スキルを高めたい!」という内発的なモチベーション(WANT)があるか?です。

もし「スキルをよくしなければならない」という外発的な義務感(MUST)であれば「なぜ、欲求ではなく義務感を感じているのだろう?」と、さらに深い自己確認が必要です。

その結果、これも問題なく、「スキルを改善したい!」というWANTを確認することができれば、やっと次のステップに進めます。

Step2:ゴールを鮮明にする

Step1の前提条件が整えば、具体的に「戦略構想力」のトレーニングです。

トレーニングとは、課題解決のための具体的なアクションのことですが、そのためには「ゴールを鮮明にする」ことがとても大切です。

ゴールである「戦略構想力が高い自分」とは?のイメージjです。

戦略構想力」とは「理念実現や目標達成するための、具体的なストーリーを言語化・可視化するチカラ」のことです。

例えば・・・

実現したい理念や、達成したい目標は鮮明であり、それらのための競争力のあるストーリーは言語化、可視化できている。
また、そのストーリーを実行するための、スケジュールやキャスティングも具体化され、仲間や関連者は、それを正しく理解し行動してくれている。

これは、ひとつのサンプルですが、あなた自身の気持ちにフィットするあなた自身の言葉で「ゴール」を言語化しましょう。

Step3:現在に至ったプロセスを再現する

ゴールが鮮明になれば、それに向かって「意識的なトレーニング」を重ねます。

最初に取り掛かるのは、過去3~5年程度を振り返り、現在に至ったプロセスを「ストーリー」として言語化し再現することです。簡単に言えば「当社物語」です。

過去を振り返って「成功事例:なぜ成功したか?」「失敗事例:なぜ失敗したのか?」の事実や、それに伴うチームの状態も含めて、身近な人が「なるほど、だから今の状態なのね」と理解できるような「読み物」の制作です。

このトレーニングの「ねらい」は「自己認識=自社を客観的に理解する」ことと「ストーリー作り」の2つです。

過去は「事実」というネタがあるので、これからの戦略である「未来のストーリー」より難易度は低く取り組みやすいです。

さらに、どうせ書くなら「面白いストーリー」「楽しいストーリー」など、遊び心を盛り込むことも一考の価値ありです。

なぜなら、この後に構想する未来の戦略も、読者が「面白い」「楽しい」と感じるほうが、共感や賛同が得やすいからです。

「現在に至ったプロセス」を整理し「ストーリー」で再現するトレーニングを重ねましょう。

Step4:戦略チェックの習慣化

上記のステップで「今までの自社認識」と「ストーリー作りのスキル」が高まったので、次は「本題」である「戦略構想」です。

まずは「ストーリーのネタ」の整理です。

理念を実現し、目標を達成するために「誰が何をやるか?」です。そして「その人たちが、そのとおりやればクリアできるのか?」という実現可能性の検討を繰り返します。「5W1H」や「3C」など一般的なフレームワークを使うと整理しやすいので使ってみてください。

コーチングの現場では、この実現可能性の検討の段階で「それをやってもムリじゃない」「それは、できないのじゃない」「そのリスク負える?」など、イチイチ「意地悪なツッコミ」を繰り返し「カベウチ」の相手としてフォローします。

実現可能性が高いと判断できるところまで整理出来たら、次は「ストーリー」ですが、実は、実現可能性が高い戦略はすでにストーリーとしてほぼ完成していることがほとんどです。

あとは、パワーポイントやGoogleスライドで「経営計画書」を制作すれば「モノ」は出来上がりです。

しかし「スキル開発」は終わりません。目的は「戦略作り」ではなく「戦略構想力」のトレーニングなので、常に「戦略的に思考する」という習慣が大切だからです。

そのためには「戦略チェック」というTODOをスケジュールに毎週、または毎月など、短い期間で定期登録するのがおススメです。常に戦略をアップデートする習慣が「戦略構想力」を高めます。

【要点整理】
魅力的な戦略で巻き込む

さて、どうですか?

経営脳5つのレイヤーの「第4レイヤー:スキル」のひとつである「経営者の戦略構想力」について整理しました。

想像してみてください。

理念や目標が単なる「夢」ではなく、必ず実現達成するものであると信じ、そのために多少の苦労は厭わず一生懸命頑張ってくれる仲間たち。

彼ら彼女らの「できそう!」「やれそう!」「やりたい!」「できないはずはない!」というモチベーションを支えている魅力的な戦略ストーリー。

その戦略を描き、周囲を巻き込むのはあなたです。

「戦略構想力」は、そのための必修経営スキルのひとつです。

もし、課題が見つかったなら、自主トレを重ね解決しましょう。

サポートが必要であれば、いつでも気軽に連絡ください!

以上、お役に立ちますように!