必修経営スキル【会計力】過去と未来を数字で語るチカラ

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この記事に書いてあること

毎月、月初に「マネジメントレポート」が手元に届き、主要KPIを正しく把握できるので、課題に対してスピーディーに手打ちができている。その結果、収益率や生産性は高く、キャッシュフローには余裕があり、そのキャッシュの裏付けのある内部留保が徐々に増している状態。

「会計力」は、このような状態を実現するための必修経営スキルのひとつです。

この記事では10人~100人規模の中小企業経営者にとっての「会計力」について詳しく紹介しています。

  • 中小企業経営者にとっての「会計力」とは何か?
  • 「会計力」が不足すると何が起きるか?
  • 「会計力」のセルフチェックリスト
  • 「会計力」を高めるためにどうすればいいのか?

「もっといい会社」にするためには、経営脳を整え「もっといい経営者」になることが唯一の選択肢です。

いい経営者になるためのマインドセットと心身のコンディション(L1~L3)を整えたら、次は「L4:経営のためのスキル」のトレーニングです。

このページでは、10人~100人規模の中小企業経営者のために、経営脳5つのレイヤーの「第4レイヤー:スキル」のひとつである「経営者の会計力」について深掘りします。

OSとアプリ=”基礎スキル”と”経営スキル”

個々のスキルの前に、まず「スキルの全体像」について要点整理しておきます。

「スキル」は、仕事をするための技能や技術などのことですが、大きく・・・

・・・2つに分類することができます。

スポーツでも・・・

  • 競技の種類に関係なくすべてに共通する「筋力」「走力」「スタミナ」などの基礎的な能力と
  • 「技」「テクニック」「連係プレー」など、その競技特有の能力に分類できますが

・・・それと全く同じです。

基礎スキルは「ビジネスパーソンとしてのスキル」であり、新人やベテラン、年齢や性別、ポジションなどの違いに関わらず「全員必修」のものです。

このブログでは、その中でも特に優先的に重要と思われる「課題発見力」「計画実現力」「管理力」「仕組力」「コミュニケーション力」「論理的思考力」「拡深思考力」「リーダ力」の8つについて紹介しています。

一方で、経営スキルは、会社経営特有の技能等であり「ヒト・モノ・カネ」をマネジメントするための経営者にとって必修のスキルです。このブログでは「先見力」「理念創造力」「戦略構想力」「チームビルディング力」「会計力」「情報力」「プロジェクトマネジメント力」「伝達力」の8つを特に重要と位置付けて紹介しています。

基礎スキル」は、パソコンやスマートフォンに例えるなら「OS」に相当する部分です。「OS」がイマイチであれば、どんなに優秀な「アプリ」をインストールしてもサクサク動かない、という現象をそっくりです。

「経営が上手くいかない」という症状において、経営者のアプリ(経営スキル)以上に、そもそものOS(基礎スキル)に課題があるというケースは少なくありません。

(詳しくは「経営脳の第4レイヤー:スキル」を参考にしてください。)

会計力とは?

必修経営スキルのひとつである「会計力」とは「過去:会計の数字から経営状態を把握するチカラ」や「未来:今後の計画を会計の数字で具体化するチカラ」などを指し、これに長けている経営者が「数字に強い経営者」です。

数字に強い経営者は、月々の試算表や決算書から「会社の過去・現在・未来」を読み解くことができます。特に下記の項目について、具体的に把握しています。

  • 収益力
    • 「いくら儲かったか?」という結果のみならず、過去のトレンドから「収益体質=稼ぐチカラ」を正しく理解しているので、今後の見通し、短期中期の打ち手を具体的な数字で思考できる。
  • キャッシュフロー力
    • 「日々の資金繰り」だけではなく、損益と資金の相関関係を理解し「キャッシュを増やすチカラ」の改善や強化を具体的な数字で思考できる。
  • 時価純資産
    • いま解散したら、いくらのキャッシュになるか?という「清算換金価値」を把握し、実施的な内部留保の目標設定をしている。

会計力の不足が原因で生じる不都合

会社でおきる不都合、言い換えれば経営者の悩みは、その本質的な原因が「経営者の会計力」であることが少なくありません。その典型的な例を示すので、チェックしてみてください。自社で起きている不都合は、その真因を他責ではなく、自責で考えることがとても重要です。

  • 経営課題が不鮮明
    • 過去の経営状況を感覚的にとらえており、本質的な課題に気付いていない
    • 経営課題が業績に与える影響を比較分析できないので、課題解決の優先順位を誤る
  • 未来想定が甘い
    • 現在の状況が継続する場合、中長期的に会社はどうなるか?の想定が甘い
    • せっかくの経営計画が経営改善に結びつかないことが多い
  • 目標設定とモニタリング
    • 必達ライン、希望ラインを達成するための目標設定があいまい
    • 目標に対する進捗状況の把握や課題分析が曖昧であったり、誤認したりする
  • 過剰債務
    • 返済能力を超える安易な借り入れを行ったため、完済までの期間が異様に長い
    • 収益性の改善より、融資引き出しの方に意識が強い
  • 意思決定
    • 意思決定の根拠に数字がなく、感覚的かつ希望的意思決定が多くなる
    • 意思決定の成否を「運」で済ませてしまう
  • コミュニケーション
    • 社内でのコミュニケーションにおいて「かなり」「もっと」「ほどほど」など感覚的な言葉が多くエラーが生じやすい。

自問自答:会計スキルのセルフチェック

「会計スキル」は、専門分野でもあるので「経営者として、どこまで身に付ければいいのか?」と、その程度が分からないかもしれません。次に、必修ラインのチェックリストをを紹介するので、不足している点を見つけてください。

  • 会計の基礎知識
    • 「借方」「貸方」と聞いてピンとくる。
    • 自社の貸借対照表を説明できる。
    • 当社の直近の自己資本の額を把握している。
    • 当社の損益計算書を説明できる。
    • 当社の損益分岐点を把握している。
    • 利益と資金の動きのズレを説明できる。
    • 当社の収支分岐点を説明できる。
  • 税金の基礎知識
    • 会社の税金の申告先や納付先を理解している。
    • 決算書と申告書の違いを説明できる。
    • 法人税の計算プロセスの概要を説明できる。
  • 管理状態の把握
    • 過去5年分の決算書と総勘定元帳の保管先を把握している。
    • 過去5年分の会計データの保管先や保管方法を把握している。
    • 当社の経理担当者と顧問税理士の役割分担を把握している。
  • 会計力アップの取り組み
    • 月次決算を実施し、月々の貸借対照表と損益計算書をチェックしている。
    • 毎年の決算書を熟読している。
    • 定期的に顧問税理士など、会計の専門家と意見交換をしている。

会計力の強化コーチング

コーチングの本質的な目的は「経営者の考え方を整えるサポート」であり、実務的なノウハウや方法論を伝授することではありません。

実務的な方法で解決しても、多くの場合、それは一時的な効果で終わってしまいます。

そのような一時しのぎの解決ではなく、経営者本人の考え方という根本的な解決が必要です。経営者の考え方が整えば、行動が改善します。行動が改善すれば、結果が変わる、というロジックです。

「整える」とは、漠然として言語化できていない考え方や勘違い、間違っている考え方を正しく鮮明にすることを指します。

スキルに何らかの課題がある場合、その原因のほとんどは「考え方」にあります。「考え方」を正しく、鮮明に整えることができれば、ほとんどの課題は解決します。

以下に、スキルの課題解決のためのコーチングのステップを紹介します。このステップを自主トレの参考にしてみてください。

Step1:前提条件を整える

経営脳の5つのレイヤーで紹介しているように、スキルの前提には「マインドセット」「フィジカル」「メンタル」という3つのレイヤーがあります。

「うまく行かない原因はスキルなのか?」という「本当の原因」の確認が最初のステップです。

もし、不都合の本質的な課題が「マインドセット」「フィジカル」「メンタル」のいずれかにあるならば、スキルの前にこれらの前提となるレイヤーの解決を優先しなければなりません。

下位のレイヤーに問題がなければ、次に「L4:スキルを改善したい」という「WANT」のレベルでの内発的なモチベーションがあるか?です。もし「スキルを改善しなければならない」という「MUST」、つまり「外発的な義務感」が残っているようであれば、改めて「なぜ、欲求ではなく義務感を感じているのだろう?」という自己内観による自己認知が必要です。

これも問題なく、「スキルを改善したい!」というWANTを確認することができれば、次のステップに進みます。

Step2:ゴールを鮮明にする

前提が整えば、具体的に「会計力」のトレーニングです。トレーニングとは、課題解決のための具体的なアクションのことですが、そのためには「ゴールを鮮明にする」ことがとても大切です。

ゴールである「会計力が高い自分自身」とは?

会計力」とは「過去や未来を数字で語ることができるチカラ」ことです。

例えば・・・

過去と未来の接点である「今」から過去を振り返って「当社の財務体質・収益体質」を理解し、解決すべき課題は数値化できている。また、その課題解決のために、改善すべきテーマも数値目標として具体化され、それは経営計画や利益資金予算として関連者と共有することができている。

これは、ひとつのサンプルですが、あなた自身の気持ちにフィットするあなた自身の言葉で「ゴール」を言語化しましょう。

Step3:3つのKPI

ゴールが鮮明になれば、それに向かって「意識的なトレーニング」を始めます。

「会計力」を高めるために意識するのは「会計の知識=手段」ではなく「KPI=目的」です。

そもそも「何のための会計なのか?」という目的意識がとても重要です。

「KPI」とは「重要業績評価指標:Key Performance Indicators」のことであり、何をKPIにするかは、目的や目標、状況によって様々ですが、中小企業経営のKPIとして最上位にあるのは、前述した3つ。

  • 収益力
  • キャッシュフロー力
  • 時価純資産

これらを最上位のKPIとし、これらを改善し、高めるための下位のKPIとして何が適切か?例えば「限界利益率」「在庫回転率」「利益返済比率」など、自社の事情や課題に照らし合わせて設定することから始めます。

会社を良くするために「何を優先するか?」「何に集中するか?」という「会計という道具」を何を目的として使うのか?という明確な意識が大切です。

Step4:反復継続して習慣化する

会計は「継続は力なり」の典型的なテーマです。

「会計力」を高め、過去・現在・未来の数字に強くなるためには、反復継続して「会計」を習慣化することが欠かせませんが、その実務が「マネジメント会計(管理会計)による月次決算」です。

マネジメント会計(管理会計)を活用して経営を可視化し、設定したKPIを毎月チェックすることが最も有効なトレーニングになります。

一般の試算表や決算書は、金融機関や税務当局に報告するための「財務会計」という「一般のルール」に従って作成されており、経営が目的のフォーマットではないので、経営者が経営の実態を把握するには少々分かりづらいものになっています。

それに対して「マネジメント会計(管理会計)」は「経営者のための自由な会計」です。試算表や決算書を経営者用にカスタマイズされた「オリジナルのフォーマット」に変換することで「真実=経営の実態」が見えるようになり、実態把握と同時に課題が鮮明となり「早期発見・早期治療」が可能になります。

コーチングの現場では「月例経営会議」を開催し、レポートを一緒に読解しながらディスカッションを重ね、KPIの理解を深めるサポートを行っています。

その詳細は「マニュアル」で随時更新しているので参考にしてみてください。

マネジメント会計マニュアル
脱・試算表「データドリブン経営のススメ」マネジメント会計で経営を可視化

まとめ:データに裏付けされたリーダーシップ

さて、どうですか?

経営脳5つのレイヤーの「第4レイヤー:スキル」のひとつである「経営者の会計力」について整理しました。

想像してみてください。

毎月、月初に「マネジメントレポート」が手元に届き、主要KPIを正しく把握できるので、課題に対してスピーディーに「手打ち」ができている。その結果、収益率や生産性は高く、キャッシュフローには余裕があり、そのキャッシュの裏付けのある内部留保が徐々に増している状態。「会計力」は、そのための必修経営スキルのひとつです。

もし、課題が見つかったなら、自主トレを重ね解決しましょう。

サポートが必要であれば、いつでも気軽に連絡ください!

以上、お役に立ちますように!

(追伸)決算書の活用スキルも重要!「決算書活用マニュアル