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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
2024年第13週の土曜日、3月も明日で終わりですね!「自主トレ」は順調ですか?
さて、今日は「中小企業の人事評価はシンプルがいい!」という話を整理しておきます。
私は、マネジメントコーチとして様々な中小企業の人事評価の現場に立ち会っていますが、その経験上「中小企業の人事評価基準は、絶対にシンプルがよい」と思っています。
中小企業で人事評価の仕組みを運用するのは「経営者本人」か、もしくは「側近」の人たちです。誤解を恐れずに言うと彼らは「人事評価の専門家」ではありません。
人事評価は「正しく運用できてナンボ」です。コンサルタントや専門家が作った素晴らしいツールであっても、それが正しく運用できなければ宝の持ち腐れとなってしまいます。
この記事は「中小企業向け人事評価|仕組み作りと運用のアウトライン」の補足です。
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【運用覚悟】育てる気がないならやらない
人材育成のフレームワークは「PDCA」であり、そのツールが「成長支援型人事評価」です。
人事評価の仕組みを正しく運用すればメンバーは必ず成長します。
逆に、どれだけ立派な人事評価制度であっても、それを正しく運用しなければ、社員は期待通り成長しません。
「正しく運用する」とは、この「PDCA」を上手に回すことに他なりませんが、それぞれの実務は下記のとおりです。
Step | 内容 |
---|---|
Plan | 目指すチームの可視化 「必要な人材像」「望む人材像」の言語化 「人事評価基準」の設計 ・基礎スキル(全員共通) ・実務スキル(職種別) |
Do | 各評価項目のトレーニング (例) ・新人研修 ・基礎スキル研修 ・職種別技能等研修 ・リーダー研修 |
Check | 人事評価と個人面談 ・自己評価の提出と共有 ・成長課題の抽出 ・課題解決策の共有 |
Action | 成長課題のフォロー |
だから「正しくない運用」を、このPDCAのプロセスごとに整理すると次のようになります。
Step | 内容 |
---|---|
Plan | 人事評価基準が「建前論」や「一般論」であり 経営者が期待する「当社の社員のあるべき姿」とはズレている、異なっている。 ・経営者自身が「建て前」と思っている評価基準 ・とりあえず「カッコをつけただけ」の評価基準 ・そもそも経営者が「望む人材像」を明確にできていない など・・・ |
Do | 「人事評価基準」の内容を説明していない 研修等の育成活動がない |
Check | 評価者が「人事評価基準」に基づく「観察」をしていない せっかく「人事評価基準」があるにも関わらず、 それに基づくことなく「感覚的」に点数をつける |
Action | 成長課題を解決する教育研修等のフォローの仕組みがなく 社員の「自助努力」という言い訳で育成放棄。 |
こんな人事評価ならやらない方がマシです。いや「やってはならない!」です。
- 評価基準そのものに経営者の想いが反映されていない
- 評価基準はあるけど、その内容を正しく理解させていない
- 評価のための観察をしていない
- 評価基準の「各段階の定義」は無視して採点
- 点数が低くても放置・・・
こんな「ひどい環境」でも成長する人は極々一部であり、それは「ただのラッキー」なのです。
念のため書き添えておくと「面倒な人事評価制度」を「正しく運用しなくてもよい場合」もありますが、それは「人材の成長を求めていない場合だけ」です。
(参考記事)人事評価の課題|中小企業はなぜ上手く運用できないのか?
【現実重視】正しく運用するためのシンプル
私も「理想」は「レベル(難易度・詳細度・網羅度)が高い評価基準を運用することがイイ」と思っています。
でも「現実」はどうでしょうか?
- そんな高いレベルを運用できるでしょうか?
- そこまでレベルの高い人材が必要でしょうか?
- あるいは、そんな高いレベルの人事評価の指導者は社内に見当たりますか?
私は「現実的な視点」「実務的な視点」で「理想」より「現実」をお勧めするようにしています。
これは「妥協」ではなく「メンバーの成長効果を期待するための選択」です。
ハイレベルな評価基準を作成しても、PDCAを回すことが出来なければ「宝の持ち腐れ」どころか「タテマエ」になってしまいます。
「花より団子」、「人事評価基準」は、経営者の「手に負えるレベル」で作成することを強くお勧めします。
「目安」は「評価する側が指導できるレベル」です。
評価する側も手が届かないようなハイレベルな評価基準で社員を評価すると「冷めた社員」から「社長ですらできないレベルでエラそうに評価されたくない」「できるなら社長が手本を示してほしい」と思われるのがオチです。
経営者が評価者として制度全体をグリップでき、その人事評価を継続することによって、メンバーが持続的に成長してくれれば「正しく運用出来た」と評価することができます。
【評価基準】基礎+実務=計20項目が適量
私がおススメしている「(マーカス式)成長支援型人事制度」で使っている「スキルチェックシート(評価基準)」は、基礎スキル=10項目と、実務スキル=10項目の合計20項目のシンプルなものです。
*ちなみに「人事評価基準」と言うと、かたっ苦しいので、私は「スキルチェックシート」と言ってます。
基礎スキルは、老若男女・職種・役職に関わらず、全員に共通する、ビジネス・パーソンとしての基礎的なスキルです。パソコンで言えば「OS」に相当するスキル。
実務スキルは「OS」に対して「アプリ」。職種ごとに設定されるスキルです。
チェック項目が10項目を超えると、それに比例して運用に手間がかかり、その結果、曖昧で無責任な雑な評価になる危険性が高くなるので注意です。
キホンとなるサンプルを紹介しておきます。
基礎スキル10選のサンプル
評価項目 | 概要 |
---|---|
社会人 スキル | 社会人としての認識、姿勢、行動 |
組織人 スキル | 組織の一員としての認識、姿勢、行動 |
課題発見 スキル | あるべき姿と現状を正しく具体的にイメージし、 そのギャップとしての課題を明確にするスキル |
計画実現 スキル | 目標やゴールに期限を設定し、 その達成のために具体的な行動計画を立てて、 着実に実行し、ゴールに達するスキル |
コミュニケーション スキル | 情報を正しくタイムリーに、思いやりをもって発信・受信するスキル |
管理 スキル | 管理とは、リスクを想定し、事前準備、 事前対処するスキル 先読みや想定の力 |
積極的経験 スキル | 自分の課題を解決するために、自発的、積極的に学習したり経験するスキル |
論理的思考 スキル | いわゆるロジカルシンキング。 感情や感想にとらわれず、原因と結果を言葉でつなぐスキル |
ディスカッション スキル | 自分の考えや意見を正しく発言し、 逆に他者の話を正しく理解し受け止めるスキル |
リーダー スキル | いわゆるリーダーシップ。 ポジションに関わらず、チームのために人を動かすことができるスキル |
実務スキル(営業職)のサンプル10選
上記の基礎スキルは、全員共通ですが、実務スキルは「職種別」評価基準です。
営業職、技術職、総務職という具合に職種別に作成します。
例えば、営業職であれば、つぎのような項目が一般的です。
- 商品知識力
- 新規開拓力
- 企画・提案力
- 販売力
- 接客力
- 仕入力
- 採算力
- 課題解決力
- 作戦遂行力
- その他PR
どのような人材になってほしいか
以上「基礎スキル」と「実務スキル」の人事評価基準=スキルチェックリストのサンプルを紹介しましたが、コーチングの現場ではこれを「たたき台」として、それぞれの経営者の意向によって数項目を入れ替えて作成しています。
例えば「基礎スキル」の「論理的思考力」よりも、最後までやり遂げる「責任力」を評価したい、というリクエストがあれば「じゃあ、入れ替えましょう」って具合です。
この人事評価基準=スキルチェックシートを作る時の大切な視点は「当社の社員は、どのような人材になってほしいか=理想の人材像」という経営者の望みや期待の強さです。繰り返しますが、あれもこれもと欲張りたくなっても「優先10選」に絞ることが正しく運用するコツです。
(参考記事)人事評価基準は経営者の「好みのタイプ」で作る
【0点あり】見た目 “5段階”、実質 “6段階”
「基礎スキル」も「実務スキル」も、各項目は「5段階」で採点します。その目安は、つぎのとおりです。
- 【1点】理解・納得レベル(あるべき姿が分かっている)
- 【2点】行動レベル(日常業務において改善課題がある)
- 【3点】成果レベル(日常業務に支障はない・補助者を必要としない)
- 【4点】習慣・安定レベル(イレギュラーなことも対応できる)
- 【5点】相互支援レベル(他者の指導・組織内外への拡散)
ちなみに、見た目は「1~5」なので、5段階に見えますが、1点にも満たない、というケースがあるので「0点」もありえます。だから実質「6段階評価」です。
【評価実務】経営者自身のトレーニング
以上、私がおススメしているシンプルな人事評価基準=スキルチェックシートを紹介しましたが、これでも「シンプルじゃないやん!」と意見をいただくことがありますが、その時は「すぐ慣れるよ!」と返すことにしています(笑)。
つまり、人事評価そのものに不慣れな時は、何を見ても「難しいな」「面倒やな」という印象をもちます。
さて「次の仕事」は「評価者訓練」です。
経営者が「評価する側」として人事評価制度を運用するためには、少しトレーニングが必要です。
私は経営者と一緒に人事評価基準=スキルチェックシートを作成し、次に「どのように評価すればよいか?」をトレーニングします。
約半年間くらい、経営者の体に「評価基準=チェック項目」を染み込ませるために、様々な事例や想定によるディスカッションを繰り返します。それによって半年前は「シンプルじゃないやん!」と難しい顔をしていた経営者が「めっちゃ、分かりやすい!」とニコニコしてくれます(笑)。
人事評価を通じて経営者本人がワンランク成長した瞬間です。
(参考記事)中小企業の人事評価|最大メリットは経営者の成長
【要点整理】人事評価は経営者の必修テーマ
以上「人事評価はシンプルがいい」ということでサンプルを紹介しました。
- 人事評価は、人材育成の「PDCA」であること
- 正しく運用するためにシンプルがよいこと
- 人事評価基準は「基礎+実務=計20項目」が適量であること
- 見た目「5段階評価」、実質「6段階評価」で評価すること
- 評価者である経営者のトレーニングが必要であること
繰り返しますが、人事評価は「運用できてナンボ」です。複雑であったり、過度にレベルが高いなど、経営者がグリップできない「立派な人事評価制度」を構築してもそれを使えなければ意味がありません。
この記事で紹介したものも「ぜんぜんシンプルじゃないやん!」と思ってるかもしれませんが、それは最初だけです(笑)。「もっといい会社」にするための「産みの苦しみ」となるかもしれませんが、このプロセスは「もっといい経営者」になるために避けて通れない「必修テーマ」なので、ぜひ、頑張ってください。
関連記事も含め参考にしてみてください。
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