「成長企業の幸福」と「膨張企業の不幸」

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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。


「成長」とは、お客様、取引先、社員たち、さらに経営者自身も含めて
会社に関わる全ての人たちの幸福のために進化することであり
誰かの我慢や犠牲を伴う「膨張」と勘違いしてはならない。

私は、気安くしている経営者に久しぶりに会うと、ついつい(関西弁で)「どお?最近、ますますエエ会社になったか?」と口から出てきます。

最近は聞かなくなりましたが、昔から大阪商人の挨拶代わりのフレーズに「儲かってまっか?」「ボチボチでんな!」という定番がありましたが、ま、そんなノリです(笑)。

この「エエ会社になってきたか?」に対して「エエ感じやで!」って調子良さそうな反応があったとき、私は(職業柄?)心の中で「(ホンマかいな?)」と少々意地悪な気持ちになります。

この「ホンマかいな?」の真意は「成長やったらええけど、膨張やったら気ぃつけなアカンで」です。

・・・ということで、大切なキーワード「成長」について「成長と膨張の差」にフォーカスして補足しておきます。

本稿は「経営者のマインドセット|「正しい成長志向」を持っているか?」の補足です。

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「成長の定義」役に立つ存在として進化すること

ヒトであっても会社であっても、「成長」とは「もっと役に立つ存在として進化すること」と私は定義しています。

なので「成長企業」とは「もっと役に立つように進化している会社」ということになります。

誰の役に立つか?それは「会社に関わるすべての人々」です。

その人たちは、大きく3つのグループに分けることが出来ます。

3Gマネジメント:社会・取引先+社員+経営者
  • G1
    グループ1:得意先や取引先
  • G2
    グループ2:社員とその家族や大切な人々
  • G3
    グループ3:経営者とその家族や大切な人々

この3つのグループの人たちの幸福ために、もっと役に立つように進化し続けている会社が「成長企業」である、と私は考えています。(3Gマネジメント

(参考記事)【3Gマネジメント】近江商人の「三方良し」との違い

「増収増益」が「成長」とは限らない

たとえば、「増収増益」を続けると、世間一般的には「成長企業」と評価されます。私もそう思います。しかし「みんなの幸福のため、役に立つように進化しているなら」という条件が付きます。そこに「成長企業の幸福」があるか?です。

増収増益の裏で・・・

  • 得意先のクレームが増加している
  • 取引先に無理難題を敷いている
  • 社員たちの待遇はよくならない
  • 社員たちは過重労働で疲弊している
  • 経営者は、家族を顧みず仕事に没頭している・・・

決算書上も「増収増益」なので、おそらく金融機関の評価も高く、内情を知らない人は「ええ会社やなあ~」と思ってくれるでしょう。

でも、裏で3つのグループ(3G)の誰かが上記のように犠牲になってたり、理不尽な負担を抱えたりして「ぜんぜん幸せでない」と感じていれば、それは「成長」ではありません。つまり「膨張の不幸」です。

この「3Gの幸福」の考え方によると、必ずしも「増収増益」が「成長」とは限らないのです。

「増収増益」の裏に潜んでいる「膨張の火種」

「膨張」について、会計の視点でも確認しておきましょう。

シンプルな例で紹介します。

例えば、次のように前期比200%の売上高を続けたとします。

2015年2016年2017年2018年2019年
売上高100200400800 1600
前期比 200% 200% 200% 200%

たった5年で売上高は16倍!です。「急成長企業」と評判になるくらいの「成長ぶり」です。

「売上高」だけを見てると「順調そのもの」です。

しかし、仮に「増収増益」であったとしても、この会社の決算書(特に、バランスシート:貸借対照表)をよく見たところ

  • どんどん在庫が膨らんでいってる
  • 積極拡大のための借り入れがどんどん増えている
  • 借入に伴って月々の返済額が多額になってキャッシュフローは苦しい

ということを示していたとすれば「ヤバくないか?」って誰でも気付くでしょう。

実際には、成長のプロセスにおいて、一時的にこのような状態になることもあるので単純に「ヤバい!」と断定することはできませんが、少なくとも「売上高のみで成長企業と評価することのナンセンス」がわかります。「増収増益」であっても「膨張の火種」が潜んでいるかもしれません。

「増収増益」でなくても、どんどん成長している例

上記を踏まえて「増収増益」でなくても、どんどん成長している例を紹介しておきます。

クドイようですが「成長とは、関わる人々の幸福のために、もっと役に立つように進化すること」です。「増収増益」でなくても「幸福のために、もっと役に立つように進化」していれば「成長」です。

簡単な例を示すと次のようなケースです。

前期当期前期比
売上高10001000100%
粗利益500600120%
人件費200300150%
その他経費200200100%
当期利益100100100%

「売上高」も「当期利益」も、前期同額です。しかし(説明の都合上、極端な数字ですが)「粗利益」が増加した分を人件費に振り分けており「給与賞与を増やした」のか「人数を増やした」のか「あるいは両方」なのかは分かりませんが、これによって、もし社員たちの幸福度が増したとすれば、売上や利益が前期並みであっても「成長した」と言えます。

誤解があってはならないので、念のために補足しておきますが、給与や賞与を増やした結果、会社や経営者自身が何らかのガマンをしていたり、犠牲になっていれば「3Gのひとつ」が欠けてしまうので「成長」ではありません。

まとめ

さて、いかがですか?

「成長」とは「関わる人々の幸福のために、もっと役に立つように進化すること」です。

「増収増益」など表面的な数字で周囲の人たちは「成長企業」と評価してくれたとしても、当事者である経営者は、そんな評価に「エエ気になってる場合ではない」のです。

お客さんや取引先、社員や家族や大切な人たちは「会社」に満足してくれているか?それらの人に迷惑をかけていないか?不必要な負担をしてもらって、それに甘えていないか?

このように、3つのグループの人たちの幸福度が増しているか?を常に意識し「膨張」することなく「成長」を持続しなければなりません。

この「成長」という言葉の意味は、もっといい会社にするためのとても大切な言葉です。「膨張」と勘違いしないようにしましょう。

「成長企業の幸福」の源泉となる経営者となるか?

「膨張企業の不幸」の元凶となる経営者となるか?

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