
おはようございます!
さて、今回は「成長と膨張」について整理しておきます。
人も会社も「好不調の波」があるものです。
その原因には「一時的なもの」と「体質的なもの」がありますが、
今日は、より深刻な「体質的な原因」について整理します。
その多くには「ヤバイ予兆」がありますが、
それは「好調」の陰に隠れていることが多く、
なかなか気付きにくいことが、その特徴です。
「調子に乗ってたら、足元をすくわれるぞ!」
こんな忠告を受けたことはありますか?
それとも、実際に足元をすくわれたことはありますか?
この「悪い予兆」に気付かず、
「成長企業」が、「膨張企業」と化し、
最悪の場合は「崩壊」に至ることすらあります。
気付くかどうかで明暗が分かれます。
本稿では、「悪い予兆」とは何か?
それに、どう対処すればいいか?について詳しく解説します。
今週は、順調な方ほど読んでほしい内容です。
このブログでは、「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けた「自己投資=経営脳トレーニングのサポート」を目的に、「もっといい会社」に成長するヒントを毎週発信しています。
初めてアクセスしていただいた方は、「このブログについて」をまずご覧ください。
【本質共有】
黒字が”いい会社”とは限らない
黒字は悪くないことです。
むしろ、利益を稼得することは、経営者全員の目的であり、目標です。
「業績がいい会社」です。
しかし、増収増益や規模拡大など、いわゆる「形式的な成長」をしていても「いい会社」とは限りません。
2つの視点に注意しましょう。
会計的な視点
損益計算書(PL)においては「好調」と評価できても、
貸借対照表(BS)に「ヤバイ予兆」が潜んでいる場合があります。
過剰在庫、過剰負債、キャッシュフローの悪化、含み損の増大など。
好調の背後に潜むこの「ヤバイ予兆」を見逃してはなりません。
関わる人たちの視点
好調な業績の裏で、会社に関わる3つのグループの人の誰かが犠牲になっていれば「本末転倒」です。

- 得意先や取引先を含む社会全般
- 社員と、その家族と大切な人たち
- 経営者と、その家族と大切な人たち
経営の目的は、これら「会社に関わる人たちの持続的な幸せ」です。
これらの中に「イヤな思い」をしている人がいませんか?
万が一、そのような人がいれば、それは「アカン会社」です。
厳しいことを付け加えれば、会計的な視点も含め、そうしてしまった「アカン経営者」と言わざるを得ません。
(関連記事)【経営の目的】3Gマネジメント:関わる3つのグループの人たちの幸せ
【予防知識】
ヤバイ予兆に鈍感なリスク
「リスクを知ること」。
人も会社も同じです。
ウィルスの脅威を知れば、マスクやワクチンで守りを固めます。
さらに、体力や体質を整え、免疫力を高めます。
脅威(リスク)を知らなければ、戦わずしてやられてしまうことさえあります。
また、脅威を知っていても「過信」によって、守りが甘くなることもあります。
- 「自分に限って、大丈夫だろう」
- 「当社に限って、それはないだろう」
そんな「過信」が「足元をすくわれるリスク」を高めてしまいます。
- 知ることで、意識が芽生える
- 意識があると、敏感になる
- 敏感になると、守りが堅くなる
「リスクを知ること」がとても大切です。
「リスク」とは「被害想定」です。
万が一のとき、どんなダメージを受けるか?
「感染すること」ではなく、「感染による被害」知る意識と視点が経営者に求められます。
業績好調な時ほど、この「リスクへの意識」が希薄となり、同時に「過信」が大きくなるものです。
「鈍感」になってはいけません。
「成長」の背後から「ヤバイ予兆」は、音をひそめて忍び寄っているものです。
【反面教師】
こんな会社にしたくない!
「リスク」の「リアリティ」を高めましょう。
中小企業でよくある典型的な「予兆」と「被害」についてリストします。
心当たりはないか?確認してみてください。
好調時に見逃しがちな「予兆」
- 会計的なヤバイ予兆
- 貸借対照表の軽視:増収増益の裏で過剰負債・実質債務超過
- 損益分岐点の軽視:安全性の低下・固定費アップ・無計画な増員
- 収支分岐点の軽視:返済力の低下
- 関わる人たち(3G)のヤバイ予兆:関わる人たちの幸せ感
- 得意先のクレームが増加
- 取引先とのギクシャクが増加
- 世間から良い評判を聞かなくなった
- 社員たちのモチベーションが低下
- 家族を顧みるヒマがない経営者
予兆を見逃したときの「被害」
「ヤバイ予兆」を見逃すと、次のようなダメージ(被害)を被ることになります。
- 会計視点
- 利益に対する返済比率が高くなり、資金繰りが悪化
- 資金繰り悪化による手元資金の減少
- 損益分岐点が上昇し、利益が出にくい体質に悪化
- 返済余力が低下し、銀行評価が低下
- 3Gの視点
- 顧客離れ
- 取引条件の悪化
- 社員の離職
- 採用難
- 経営者がフキゲンに・・・
これらは、ほんの一例に過ぎませんが、経営の現場におられるなら、容易に想像できると思います。
誰も「こんな会社」にしたくないはずです。
多くの場合、不都合となって顕在化したときには、ほとんど手遅れとなっているものです。
【類似現象】
想定内の予兆と想定外の予兆
上記のような「予兆」が現れていても、2つの本質的に異なるケースがあります。
- 想定内のリスクテイク
- 経営者が状況を理解した上で「攻め」を選択している場合
- それは、リスクを認識し、対策を講じた上での予兆
- 想定外のヤバイ予兆
- 経営者が「予兆」に気づかず、リスクを認識していない場合
- それは、無知による怠慢・・・
この両者は同じ「予兆」を示すことがありますが、「想定の有無」によって本質的に異なるものです。
ここでお話ししているのは、後者のケースです。
【堅守徹底】
守りのモニタリング
「ヤバイ予兆」と、その先にある「ダメージ」について整理しました。
では、つまづくことなく、成長を持続するために、どうすればいいか?です。
「予兆に敏感になる方法」について提案します。参考にしてみてください。
会計のモニタリング
「会計的なヤバイ予兆」は、毎月の試算表(貸借対照表・損益計算書)から読み取ります。
下記をKPIとして追加しましょう。
- 損益分岐点限界利益(売上ではない)
- 時価貸借対照表(換金価値に置き換えて読む)
特に「貸借対照表はチェックしてない」という方が多いと思います。
この機会に、顧問税理士から詳細のレクチャーを受けましょう。
もし、会計に苦手意識があるなら、下記の記事を参考にして「会計力」を高めましょう。
(参考記事)経営者が会計に「弱い理由」と「強くなる方法」
3Gのモニタリング
関わる人たちである「3G」のモニタリングは、難しくありません。
「耳を傾けること」に尽きます。
心当たりがあると思います。
業績好調時の経営者は、その自信から「聞かなくなる」ことが多いモノです。
得意先、取引先、社員たち、そして、自分自身の家族に思いを馳せて「イヤな思いをさせてないか?」を自問自答しましょう。
- Group1:得意先・取引先・社会
- 得意先や取引先は満足してくれているか?
- 世間の評判は良好か?
- Group2: 社員と、その家族や大切な人たち
- 社員たちの幸せ感は持続しているか?増しているか?
- Group3: 経営者と、その家族や大切な人たち
- 家族や大切な人たちの幸せ感は持続しているか?増しているか?
- ジブンは、ゴキゲンに過ごしているか?
この自問自答の目的は「仮説を立てること」です。
「幸せなはずだ」というような「思い込み」にならないように、仮説は検証しなければなりません。
そのために「耳を傾ける」のです。
できるだけコミュニケーションを活発し「生の声」を聞くようにしましょう。
【機会認識】
黒字は「体質強化」に投資
ここまで「業績好調=黒字経営」を前提として、「守りの意識」を整理してきました。
ひとことで言うと、「ヤバイ兆候に敏感になって、膨張しないように早期発見・早期治療の意識」です。
この「ヤバイ予兆」の正体は「経営課題」。
「ヤバイ予兆に敏感」とは、「課題に敏感な経営者」ということに他なりません。
「課題は解決するもの」。
チャンスは巡ってきています。
そのための「黒字」です。
黒字は、課題解決に投資し「体質強化」を進めましょう。
弱点補強して体質強化
まず「弱点補強」からです。
「業績好調=黒字経営」といえど「弱点」はあります。
例えば、下記のようなことに心当たりがあるなら、優先投資です。
- 安定性:今の黒字は「たまたま」だ
- 分散性:特定の商品や顧客等に偏っている
- 持続性:中長期に続くかわからない
- 前提性:前提条件が変われば崩れる
もし、このように「足元」がユルイなら「足元固め」に投資です。
この他にも、「人事制度」「採用・育成力」「会計力」などにおいても「弱点」がないか確認しましょう。
「攻撃は最大の防御なり」と言います。
強味をさらに強くすることで、弱点補強ができるなら、それも選択肢です。
- 拡販やブランディング強化のための広告投資
- 新商品や新技術への開発投資
- 設備投資
ただ、弱点補強にならない攻めの投資は、「努力が報われない・裏目に出る」ことが多いので、「足元を固める投資か?」という視点を忘れないようにしましょう。
あくまでも、投資判断の基準は「体質が強化されるかどうか?」です。
最大リターンを期待するなら
中小企業で、最大リターンがある投資先は・・・
それは、いうまでもなく「経営者自身」です。
「もっといい経営者」になれば、必ず「もっといい会社」に成長します。
そのためには「時間投資」が必要です。
そのための時間確保に資金が必要であれば、まさに「最適な黒字の使い方」となります。
「会社の弱点」と同様「ジブンの弱点」を整理し、補強していきましょう。
そのためのフレームワークが「経営脳:5つのレイヤー」です。
詳しくは、下記の記事を参照してください。
(詳説記事)経営力強化|経営脳はフレームワークで最適化できる|5つのレイヤー
ムダ遣い・浪費に注意
黒字決算であると「節税の誘惑」があります。
「節税」は否定しませんが「間違った節税」は禁物です。
「節税」を間違うと、会社はどんどん痩せていきます。
「間違った節税」とは、一方通行の支出であり、リターンがないものです。
簡単に言うと「経費の無駄遣い」で納税額を圧縮しようとする行為です。
高級車を買って、納税額は圧縮しても、それ以上の「代金」が流出します。
その「流出した資金」で、会社の弱点は補強されません。体質は強化れません。
「会社の利益」は、チームで得た成果です。
その無駄遣いは「お金」だけではなく、「みんなの苦労」までムダにしてしまいます。
くれぐれも「ムダ遣いや浪費」をしないように注意しましょう。
【要点整理】
「成長の幸せ」「膨張の不幸」
さて、どうでしょう?
今回は、「成長の背後から忍び寄る膨張や崩壊の兆候」と題して、「業績好調=黒字経営」の時だからこそ注意しなければならない視点を整理しました。
- 「勝って兜の緒を締めよ」
- 「伸びるほどこうべをたれる稲穂かな」
- 「初心忘るべからず」
この格言が今も残っているのは、調子に乗って踏み外してしまうのは「ヒトの性(さが)」だからかもしれませんね。
- 黒字によって、経営課題が見えなくなってないか?
- 黒字によって、経営の質が低下していないか?
「増収増益」「黒字拡大」など表面的な数字で周囲の人たちは「成長企業」と評価してくれます。
しかし、当事者である経営者は、そんな評価を真に受けて「調子に乗っている場合ではない」のです。
関わる3つのグループの人たちは
- 満足してくれているか?
- 迷惑をかけていないか?
- 負担が偏ってないか?
- イヤな思いをさせてないか?
そして、自問自答「それに甘えていないか?」
これらを常に意識することで「膨張」することなく「成長」を持続することができます。
「成長企業の幸せ」の源泉となる経営者となるか?
「膨張企業の不幸」の元凶となる経営者となるか?
「経営の原理原則」から踏み外さないようにしましょう。
もし、サポートが必要であれば、いつでも気軽に連絡ください!→「お問い合わせフォーム」
以上、お役に立ちますように!
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【追記】虎の監督
“勝つからおかしなるんよ”
*2024年9月14日:「通ずるもの」があるので、追記しておきます。

「勝つからおかしなるんよ」
勝ったけど反省点が多い試合だった阪神タイガース、試合後の岡田監督のインタビュー。
「黒字やからおかしなるんよ」と聞こえます。
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