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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
減価償却費の部門別配賦の重要視点は「部門別会計の目的は何か?」です。
「正しい業績把握」が目的なのか?それとも「人事評価」が目的なのか?
その目的によって「実額配賦」するか「社内レートで配賦」するかなどを検討します。
この記事では、中小企業がマネジメント会計(管理会計)を応用した部門別会計を実施する場合における「減価償却費」の部門別配賦について解説します。
この記事は「中小企業向け|マネジメント会計(管理会計)の設計と運用の概要」の補足です。
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減価償却費の実額配賦は不公平?
例えば、店舗別の部門別会計を行っている場合、車両や設備の減価償却費を店舗別に把握できるので、各部門に実額を計上することが可能ですが、減価償却費は、多くの場合、定率法で計算されるため下記のような傾向があります。
- 新しい設備の償却費は高い
- 古い設備の償却費は安い
- 償却済み資産なら償却費はゼロ負担
この「高低差」が各部門に反映するわけですが、これを「不公平だ」という意見や「いや、実際のコストなんだから当然やん」という意見が出てきます。
部門別会計の「目的」をハッキリさせる
減価償却費の実額計上が「公平か」「不公平か」は、部門別会計の目的によって「正解」が変わります。
部門別会計の目的が「業績把握」の場合
この場合は「実額計上」が正解です。
各店舗の「投資回収状況」を「正しい業績」と考えるのであれば、まだ投資回収期間にある部門なのか?それとも、もう投資回収が終わった部門なのか?を判断するためには減価償却費は「実額計上」しなければなりません。
例えば、新規オープンで新しい設備が多い部門であれば、当初の償却負担は大きくなり、利益は少な目に計上されますが、この数字を見て「まだ、初期投資の回収中なので、利益があまり出ないね」と読解することになります。
部門別会計の目的が「人事評価」の場合
一方で、部門別会計の目的が「人事評価」なのであれば「実額計上」が不公平になることがあります。
「部門利益」が、その部門長の評価に反映する場合、設備の新旧で償却負担が変わるので、それが「人事評価」に影響し「不公平」に繋がることがあります。
この場合は、実額を配賦しない、下記の「設備レンタル部門方式」のような方法を検討します。
設備レンタル部門を設ける方法
部門別会計の目的が「人事評価」などで、実際の償却費の配賦が意図に反する場合は、設備の所有は本部として「設備レンタル部門」を設けるのがひとつの方法です。
例えば、本部を「レンタル部門」とし、各部門の設備は「本部からレンタルし、各部門はそのレンタル料を本部に支払う」という方法です。
設備の種類ごとの「社内レート(レンタル料)」の設定は少々手間がかかりますが、部門別の償却台帳を管理することを思えば大したことないと思います。
この方法は、副次的な効果として、本部を「収益部門」とすることも可能です。
「償却前部門利益」という利益を追加する
売上高 | ***** |
限界利益 | ***** |
部門コスト | ***** |
【償却前部門利益】 | ***** |
償却コスト | ***** |
【償却後部門利益】 | ***** |
上記の「設備レンタル部門」までは必要ないという場合は、「償却前部門利益」という計算区分を設けることを検討します。
「人事評価」は「償却前部門利益」で行い、そこから「実際の減価償却費」を控除して計算する「償却後部門利益」で「業績評価」を行う、という方法です。
償却コストの影響が大きくない場合は、この方法によって「業績把握」も「人事評価」も一石二鳥で実現することが出来ます。
まとめ
以上、中小企業がマネジメント会計(管理会計)を応用した部門別会計を実施する場合における「減価償却費」の部門別配賦について紹介しました。
実務的には、各社の様々な事情があるため、結果として「フルオーダー」で設計することが少なくありませんが、いずれにしても「部門別会計の目的は何か?」がとても重要なので気を付けてください。
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