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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
私は、常々「中小企業の経営計画は経営者の人生計画という視点で考えること」とアドバイスしていますが、その意味において「お金の話」は、大きく「会社のお金」と「経営者個人のお金」という2つの側面で考える必要があります。
この記事では、そのひとつである「中小企業のオーナー経営者のおカネ」について、最も長期的な「生涯収入」にフォーカスして整理します。
*この記事は、更新日現在の税法等ルールによって書いています。
この記事は「中小企業向|経営計画の策定と運用、3つの新視点」の補足です。
このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。初めてアクセスしていただいた方は、こちら(=「このブログについて」)をまずご覧ください。
スタートは「いくら必要か?」
経営者個人のお金の話のスタートは「いくら必要か?」です。これは、極めてプライベートな話なので、人によって様々です。すでに「ひと財産」を持っている人なら「もう、これ以上要らない」と思うかもしれません。反対に、大きな負債を抱えている人なら「生活費以上のお金が必要」かもしれません。独り身の人、家族の多い人の違いによっても必要資金は大きく変わるでしょう。
いずれにしても「その出所」は、現役時代は「役員報酬」と「配当」、引退後は「退職金」と「株式の売却(払い戻し)対価」の4つですが、このように、オーナー経営者の場合、一般に言われる「生涯賃金(給与+退職金)」に加えて、自社株からの配当や、その株式の売却(払い戻し)対価までが「生涯収入」に含まれます。
*言葉のニュアンスとして「生涯賃金」は違和感があるので、この記事では「生涯収入」と表現することにします。
*さらに株式等の投資運用や、サイドビジネスの副収入などの「枝葉」が生い茂る人もいますが、この記事では、すべてのオーナー経営者に共通する「4つの出所」について整理します。
生涯収入の4つの「出所」とその関連
前述したように、オーナー経営者の「生涯収入」の中心は「役員報酬」「自社株からの配当」「役員退職金」「株式の売却(払い戻し)対価」の4つです。
それぞれの特徴について、基礎知識を確認しておきましょう。
役員報酬と自社株評価とその税金
役員報酬の増減は、ダイレクトに「会社の業績」にリンクし「表裏の関係」にあります。役員報酬を大きくすれば、その分だけ会社の業績は減少します。反対も同じです。役員報酬を小さく設定すれば、それだけ会社に利益が残ることになり「内部留保」が溜まりやすくなります。さらに、この「内部留保」は「株価」を左右します。「内部留保」が大きくなれば「株価」が高くなります。
つまり、意識していない人が多いのですが「役員報酬」の金額設定は「自社株の評価」に連動していることを忘れないようにしましょう。この「自社株の評価」が、将来の「相続税・贈与税・所得税」に影響します。
一般的に、月々の「役員報酬」は、税法ルールを慎重に検討し「税メリット」が最も大きい金額に設定されますが、受け取る個人には「所得税・個人住民税」が課税され、さらに「社会保険料」の負担もあります。会社の利益には「法人税と関連地方税」が課税されますが、個人の税金は「超過累進課税」、会社の税金は「平均課税」であることも、税金の基礎知識として知っておく必要があります。この違いが「税メリット」に影響します。
自社株からの配当
中小企業で配当を実施している会社は少数派ですが、その理由の多くは「デメリット」でしょう。会社側で考えた場合、「役員報酬」で支払えば「損金」になりますが、「配当」で支払っても「損金」にならないからです。
また、中小企業の場合「配当実績」が「自社株評価」に影響することも配当しない会社が多い理由でもあります。
役員退職金
会社の清算も含め、経営者としての引退は「取締役を退任する」ということですが、その際に「役員退職金」を得ることができます。税法には「過大役員退職金」という損金上限のルールがあるため、その金額設定においても「節税シミュレーション」を行うことが一般的です。
会社側においては「損金計上できる範囲」を検討し、一方、受け取る個人側においては「手取り額」をシミュレーションします。ちなみに、退職金を受け取る個人は、在任期間に応じて「退職所得」を計算し、その上で半額分離課税になるため、同額の「役員報酬」を受け取ることに比較して、その税負担は低くなります。
極端な(机上の)想定をすれば、役員報酬は最低限で設定しておき、それによって蓄積した内部留保を退職金で受け取れば(法人側の課税を考えなければ)「手取り額を最大化」することも可能です。逆に考えれば「(高課税の)役員報酬」を高額に設定することで内部留保を蓄積せず「(低課税の)退職金はナシ」とすれば「手取り額は最小化」することになります。
また、損金計上の有無に関わらず「会社から退職金を支払う」ので、内部留保が減少し、それに伴って「自社株評価」が低くなります。極端なケースとして、内部留保を全額退職金として支出すれば「株価」はゼロになることもあります。
自社株の売却・払い戻し
あなたの会社の「自社株の評価額」を知っていますか?
ほとんどの経営者は「知らない」「気にしたことがない」と言いますが、ますは「直近決算時点での株価評価」を顧問税理士に依頼してみてください。会社の業績によって、株価評価は常に動きますが、まずは「基準点」知っておくことをオススメします。
この「基準点」を知っておくだけで「将来のおおよそのイメージ」をすることができます。「まったく見当が付かない」という状態とは違って、経営者なら「いろんな気付き」があるはずです。
この「自社株」は「経営者の出口:2つの選択肢=承継か?解散か?」によって、その取扱いは変わりますが、いずれのケースであっても「株価評価」が影響します。
特に、業績好調で、かつ「後継者に事業承継」を予定しているのであれば、年々評価額が高騰していき、その「相続」の難易度が高まるので、早い段階での「想定」がとても重要です。
(関連記事)経営者の引退・・「出口」を知らない経営者はいずれ後悔する
4つの「出所」関連図
以上「4つの出所」を解説しましたが「ややこしいなあ・・・」と感じられたと思います。
改めて、それぞれの関連をイメージにしたので確認してみてください。
*このイメージ図は説明を簡略化するため「税金」は記載していません。
人生の損得に関わる=信頼できる税理士と連携する
ここまでを読んでもらって「ややこしいなああ・・・結局、どうすればいいの?」と、かえって混乱されたかもしれませんが、この「生涯収入の最適化」の答えは「百人百様」です。冒頭にも書いたように、すでに持っている貯蓄や負債、それぞれが必要としているレベル、家族構成など、それぞれの「変数=計算要素」に違いがあるからです。
また、毎年改正される税法にも大きな影響を受けるので、私のアドバイスは「信頼できる顧問税理士と連携すること」です。
この相談に応じられないような税理士なら、今すぐ「新しい別の税理士」を探しましょう。「人生の損得」に影響するからです。
まとめ
さて、どうですか?中小企業のオーナー経営者の「生涯収入」を「4つの出所」に分類して整理してみました。
関連記事も含め参考にしてみてください。
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以上、お役に立ちますように!