税理士と中小企業|経営者の良き相談相手?付き合い方に注意!

この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。約 10 分で読めます。


HORII
HORII

おはようございます!

2025年第3週の土曜日、お正月ムードも終わって、もうすっかり通常モードですね。スタートは順調ですか?

さて今週は「税理士」についてです。

先日、ある若いビギナー経営者から「税理士との付き合い方」について相談をもらって、私のその返答が思った以上に彼に刺さったようなので、読者のみなさんにもお役に立つと思い、その相談記録を共有します。

顧問税理士とどのような関係性を築けばいいか?についてモヤモヤがあれば是非参考にしてみてください。

このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。初めてアクセスしていただいた方は、こちら(=「このブログについて」)をまずご覧ください。

税理士は「会社経営の相談相手」ではない

「税理士とどう付き合ったらええのかなあ・・・」

彼の相談は漠然としていましたが、30年以上も税理士をやってた私には「何が言いたいか?」はすぐに理解できました。

もし、顧問の税理士が彼の期待通り、あるいは期待を超える関与をしてくれていたら「どう付き合えば?」というような疑問や迷いは生じないはずです。

会社設立時から関与してもらってる税理士に彼は物足りなさを感じていたのです。

私がストレートに「何が気に入らないの?」と聞くと・・・

若手経営者
若手経営者

ほとんど役に立つようなアドバイスがないんだ。

会社に来ても、いつも雑談だけで帰っていく。

元税理士:堀井
元税理士:堀井

どんなアドバイスを期待してるの?

まさか「経営」?

若手経営者
若手経営者

そう!いろいろ経営相談ができると思ってた。

元税理士:堀井
元税理士:堀井

冷たいようやけど、それは「期待する方が悪い」よ(笑)。

彼のように会社経営の相談相手として税理士に期待する経営者は少なくありませんが、勘違いしてはならないのは「税理士は経理や税金の専門家」であって「会社経営の専門家」ではないということです。

たくさんの中小企業に出入りしている税理士は「見ている会社の数」は多いものの、その「見方」は「経営」ではなく「経理や税務」です。「多くの経営」を見ているのではなく「多くの経理や税務」を見ているのです。

経営コンサルティングを標榜している税理士もいますが、その人たちは「税理士とコンサルの二足わらじ」を履いているのであって、今風に言えば「二刀流の税理士」です。

そのような「二刀流の税理士」ではない「フツウの税理士」に「経営相談」を期待するのは、「散髪屋さんに頭痛の相談をするがごとし」です。「近いけどぜんぜん違う領域」なのです。

(参考記事)ブログ執筆者「堀井弘三」プロフィール:価値観を共有できるクライアントとともに

税理士に「経営相談」するリスク

「経営」という言葉は非常に広範囲にわたります。企業理念やビジョンの策定から、戦略立案、販売、製造、人事、そして財務など、あらゆる分野が含まれます。これらの多岐にわたるテーマに対して「何でも相談してください」と言うのは、そもそも怪しいと思いませんか?

多くの税理士は、顧問先の企業や経営者と長年にわたって関わりを持つため、「見た話・聞いた話」というレベルでは豊富な話題を持っています。そのため、表面的には「話ができる税理士」に見えるかもしれません。しかし、経営者が期待する「課題に対する最適な解決策」を提供できる税理士は、実際にはごく少数です。

ほとんどの「ふつうの税理士」は、経理や税務という経営の中でもごく一部の限られたテーマの専門家であることを忘れてはなりません。

税理士には「いい人」が多いので、関与先の経営者から相談されれば、なんとか期待に応えようと真剣に向き合ってくれるのですが、その真剣さと「最適解」は別の話です。

ここで注意すべきなのは、「税理士に教えてもらったから」というだけの理由で、肩書に惑わされて盲目的に信じてしまうリスクです。親身に対応してくれたとしても、そのアドバイスが必ずしも正しいとは限りません。「餅は餅屋」と言いますが、専門分野は専門家に任せるべきです。

経営に関する相談であれば、税理士よりもむしろ実務経験の豊富な先輩経営者の方が、より実践的で現実に即したアドバイスを提供してくれる可能性が高いものです。

「じゃあ、税理士とはどう付き合えばいいの?」ですよね。

税理士に「経理」は任せてもいい

誤解を防ぐために大切なポイントを整理しておきます。

「経営相談に応じられない税理士はダメだ」と言ってるのではありません。大事なのは、税理士には経理や税務の専門家として期待するのであって、経営相談を期待するのはキケンという話です。

会社経営にとって、経理や税務は非常に重要なテーマです。

この重要な専門分野をしっかりとサポートしてくれるのであれば「いい税理士」なのです。

ただ、ここにも注意点があります。

ときどき「面倒なことは私に任せて、社長は営業に専念してください!」というようなキャッチコピーで営業している税理士を見かけます。

このような広告にある「面倒なこと」とは、もちろん「なんでもかんでも」ではなく「経理事務」のことです。

領収書等の資料整理や、それに基づく会計ソフトへのデータの入力業務、つまりインプットである「経理の領域」です。

そのような「面倒な経理」を引き受けてくれるのなら、コストさえ見合えば任せることは合理的です。

しかし!です。

「面倒な経理の領域」を任せても、「重要な会計の領域」は任せてはいけません。

税理士に「会計」は任せてはいけない

「インプット」があれば「アウトプット」があります。

「経理」が「インプット」であれば、「会計」が「アウトプット」です。

経理事務の結果、アウトプットされる「試算表」や「決算書」など「会計の領域」は、税理士に「任せっきり」にしてはなりません。

「試算表」や「決算書」は、会社経営における重要な情報です。

「アウトプット」まで丸投げして「試算表や決算書も税理士に任せているので、自分はよく分からない」という経営者になったらダメ!です。

「面倒なことは私に任せて、社長は営業に専念してください!」という税理士の広告を見て「アウトプット」まで丸投げしてしまう経営者が少なくありませんが、税理士に任せてもいいのは「面倒な経理の領域=インプット」だけです。

なぜ、試算表や決算書などのアウトプットである「重要な会計の領域」まで任せてはならないのか?次にまとめます。

税理士に会計を任せてはならない理由

試算表や決算書などの「会計資料」は、「経営者のための重要な情報」です。税務署のためでもなければ、銀行等金融機関のために作成するものではありません。

税務署や金融機関が「決算書」を求めるのは、そこに「会社の情報」があるからです。

この「会社の情報」を経営者自身が把握していない、もっといえばコントロールしていないとすれば、少々厳しく言うと「(経営の)責任放棄」です。

試算表や決算書を「きちんと説明しない税理士」と「きちんと熟読しない経営者」のように「良きに計らえ」的な関係は間違っています。

試算表や決算書の「情報価値」は、経営者が主導権を持つことによって担保されます。

経営者自身が、経営情報として何が必要か?を理解し、その情報が得られるアウトプットかどうか?を主導しなければなりません。

両者は「欲しいアウトプットを得るために、経営者が税理士にインプットの指示や依頼をする」という関係です。

この良好な関係があってこそ、試算表や決算書の情報価値が高まるのです。

(関連記事)中小企業経営者が会計に「弱い理由」と「強くなる方法」

その1「低レベルに気付かない」

関連して、ネガティブなことを補足しておきます。

経営者が会計に強くないと、雑な会計処理(インプット)による低レベルなアウトプットでも、それに気付きません。

税理士の中には、それをいいことに「手抜き」する人も少なくありません。

税理士の言い訳は「細かく、厳密に処理しても、どうせ見ないでしょ」です。

もはや、試算表や決算書は「ただの集計表」にしかならず「経営情報」には程遠いものになってしまいます。

私に言わせれば「どっちもどっち」の関係ですが「それでいいのですか?」と、ひとこと言いたくなります。

その2「経営課題に気付かないリスク」

経営者が、会計を税理士に任せっきりにして、無頓着になったときの本質的なリスクは「経営課題に気付かない経営者になること」です。

試算表や決算書などを税理士に任せきって、ロクに見ない経営者は、「会計を読み解くトレーニング」をする機会を失います。

結果、せっかく役に立つ貴重な情報が手元にあるにも関わらず「カンと思い込みに頼る経営」になってしまいます。

よほどの天才経営者でない限り「カン」には限界があります。

成長する経営者は試算表や決算書から自社の経営課題を発見し、その解決策を講じながら会社をより健全に成長させる「データドリブン経営」を行っています。

取り返しがつかないことにならないように、常に「自社を数字で把握すること」が重要なことは言うまでもありません。

税理士との正しい付き合い方

以上を踏まえて、彼の相談に対して「税理士との付き合い方」として次の4つのポイントをアドバイスしました。

  • 自社に必要な税務の知識を吸収すること
  • 毎月、税理士から試算表のレクチャーを受けること
  • 決算にあたり、事前に「着地点」を税理士と共有すること
  • 決算書は「原案」でディスカッションすること

それぞれ、補足します。

税務の知識を吸収すること

税理士は、文字通り「税務の専門家」ですが、だからと言って「丸投げ」するのではなく、経営者として知っておくべき最低限の税務知識を税理士から吸収することに努めましょう。

法人税や消費税の大まかな仕組みに加えて、特に「税務調査」ってどんなものか?それに対する日常から注意しなければならないことなどは必修です。

「任せているから知らなくていい」は大きな間違いです。

毎月、試算表のレクチャーを受けること

毎月の「月次決算」をすることは当然ですが、そのアウトプットを「チラ見」で済ませてはなりません。

専門家である税理士に毎月の試算表をレクチャーしてもらい「自分の事業感覚」との違和感をチェックしましょう。

「先月は、いつもより利益があったな!」と思っているのに、試算表は「いつも通りの利益」しか計上されていなければ「なぜ?」という違和感を感じるはずです。

税理士のレクチャーを受け、「自分が勘違いしてる」のか「試算表が間違っている」のかをハッキリさせましょう。

このプロセスを継続することで、知らず知らず「会計に強い経営者」に成長していきます。

決算前に「着地点」を税理士と共有すること

決算の2~3か月前から「決算書のカウントダウン」を始めます。

この推移で行けば、どんな決算書になるか?という「着地点」を顧問税理士と共有することがとても重要です。

「決算書」は、決算日を経過すると「後戻り」できません。

納税額の見込みは当然として、銀行等金融機関にプレゼンしても高く評価してもらえるような「貸借対照表」「損益計算書」に着地できるかどうか?の確認が必要です。

また、それによって「冷静な決算対策」も可能です。

「ドタバタのハードランディング」は、時として大ケガを負うことになるので要注意です。

決算書は「原案」でディスカッションする

決算日を越えたら、なるべく早く税理士から「決算書原案」を受け取りましょう。

税務署や銀行等の「外に出しても恥ずかしくない決算書」かどうかのチェックです。

「貸借対照表」「損益計算書」さらに「科目内訳書」を念入りにチェックし、ミスや思い違いのピックアップはもちろんですが「お化粧」ができないか?の検討が必要です。

もちろん、粉飾決算のような「厚化粧」は論外ですが、「スッピン」で出すより「印象のよいお化粧」を施すことも大切です。

そんな「お化粧」についても、適切なアドバイスをくれる「センスの良い税理士」なら、手放さないように!

まとめ

さて、どうですか?今日は「税理士との付き合い方」について、若い経営者との相談事例を共有しました。

関連記事も含め参考にしてみてください。

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以上、お役に立ちますように!