経営スキル|課題の本質は、理念と経営計画と人事評価の不整合

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「企業理念」と「経営計画」と「人事評価」は、それぞれ「もっといい会社」にするために欠かせないテーマですが、それぞれ「個別テーマ」として別々に取り組んでいないでしょうか?

私は、中小企業経営者のマネジメントコーチとして、日々様々な相談を受けますが、これらが「ワンセット」であることに気付いていない経営者が少なくありません。そこで「理念と計画と評価は、ワンセットですよ」とアドバイスすると、「言われてみたら確かに・・・」という反応です。

中小企業が抱える様々な経営課題の本質的な原因は「企業理念・経営計画・人事評価の不整合」であることが少なくありません。

この記事では「企業理念」と「経営計画」と「人事評価」、それぞれが個別のテーマではなくワンセットであることを整理します。難しい話ではないので「確かに・・・」と再確認し、経営脳トレーニングの参考にしてください。

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理念・計画・評価に課題があるとき

企業理念と経営計画と人事評価をシンプルに表現すると下記のようになります。

  • 企業理念:どんな会社にしたいのか?
  • 経営計画:どうやって理念を実現するのか?
  • 人事評価:計画を実行し、理念を実現するためには、どんなスキルが必要なのか?

会社経営は「チームワーク」です。経営者というリーダーがいて、このリーダーを中心に集うメンバーで構成されるチームです。「もっといい会社」にするためには、このチームを「もっといいチーム」として、そのパフォーマンスを高めていく必要があります。理念も、計画も、評価も、それぞれチーム全員で共有するものであり、それらに課題がある場合、様々な不都合が生じます。

企業理念に課題がある場合に生じる不都合

シンプルに表現すると「我々は何を目指して仕事をしているのか?」という目的が企業理念です。別の表現をすると「当社は、何のために存在しているのか?」を言語化したものです。

もし、企業理念が不明瞭であったり、最悪「ないとき」、チームのメンバーは「何のために仕事をしているのか?」が分からないまま日々を過ごすことになります。

その結果、各メンバーは「自分の都合・自分の価値観・自分のスキキライ」を基準にして仕事をすることが多くなり「チーム」としての一体感や連帯は望めない状態となり、それを経営者は「それぞれが好き勝手に考え、行動するからまとまらない」と悩みを抱えることになります。

経営計画に課題がある場合に生じる不都合

立派な企業理念を掲げ、共感する人、賛同する人も少なくないのに、具体的に「どうやって理念を実現すのか?」「その理念はいつ実現するのか?」「何をもって理念実現とするのか?」など、そこに至る具体的な方法や時間軸が曖昧であると、いわゆる「絵に描いた餅」となり、立派な経営理念は、どんどん形式化し、周りの人たちは「どうせタテマエでしょ」と思い始めます。それによって、リーダーとしての求心力や、信用信頼を失っていきます。

この不都合の原因に気付かない経営者は「当社のメンバーはやる気がない・モチベーションが低い」など、他責にしがちです。

どれだけ企業理念に賛同したとしても、その実現性が疑わしいとき、人は本気になることができないのは仕方がないことです。

人事評価に課題がある場合に生じる不都合

立派な理念があり、そこに至るストーリーやシナリオが明確であっても、それを実行するのは「ひと」です。人事評価の「評価基準」は、計画を実行するために必要となるスキルのリストです。この「評価基準」が明確でないと「理念に賛同し、自分も貢献したいのだが、どんなスキルを身につければいいのだろう?」と、各メンバーには迷いが生じたり、方向違いの努力をしたり、中々パフォーマンスが高まりません。さらに、よくあるのは「気合と根性でガンバル!」といった精神論に傾いてしまうことすら少なくありません。

マラソンを完走するための課題は「ランニングフォーム」なのに、ひたすら「スタミナをつけること」に努力している人のようです。

3つの整合性

上記をまとめると、「企業理念」「経営計画」「人事評価」の3つの整合性は下記のようになります。

  • 企業理念:目的:何を実現するのか?というゴールの言語化
  • 経営計画:手段:企業理念の実現のためのストーリー・シナリオ・キャスティングを鮮明にする
  • 人事評価:要件:経営計画を実現するための各役割に必要となるスキルを言語化

この3点セットが整合することで、チームの各メンバーは「何を目指しているのか?どうやって実現するのか?自分には何が必要なのか?」を、正しく理解することになります。「目的・計画・役割」を正しく理解、納得し、行動するチームのパフォーマンスがよくなることは言うまでもないでしょう。

理念・計画・評価のあるべき姿

あらためて、それぞれのあるべき姿を確認しておきます。

企業理念とは何か?どうあるべきか?

企業理念は、ただの「お題目」ではありません。チーム全員で「目的を共有するためのツール」です。経営者それぞれに価値感があるので、それに「良し悪し」はないと私は思っています。違いがあるとすれば「賛同者の質と量」です。

「安心安全な社会生活をサポートする」という理念を掲げれば、そのような社会を夢見る人たちの賛同が得やすくなるでしょう。「みんなでお金持ちになろう!」という理念を掲げれば「お金持ちになりたい」という人達が集まるでしょう。しかし、ホンネでは「お金持ちになろう」なのに、形式的に「安心安全な・・・」という理念を掲げれば、アンマッチが生じてしまう、という意味です。

つまり、経営者が理念によって価値観を明確にすればするほど、その価値観に近いものを持ったメンバーが集まります。価値観が不明瞭であったり、発信が足りないと、価値観が違うメンバーも参画することが多くなり、マネジメントの難易度が上がります。

企業理念が、自分自身のホンネを発信するものになっているか?改めて確認しましょう。

(関連記事)必修経営スキル【理念創造力】理念で人を惹きつけるチカラ

経営計画とは何か?どうあるべきか?

経営計画は、理念を実現するための具体的なストーリーやシナリオです。そのクオリティは、読者が「これなら実現できそうだ!」という期待の大きさで評価することができます。それがワンシートで事足りる場合もあれば、数十ページのボリュームが必要になる場合もあるでしょう。要は「実現可能性」と、それによる「人心掌握力」です。

経営者ひとりで実現できないから、チームを編成します。そのチームの全員が「できそう!やろうやろう!」という気持ちになってくれないと、繰り返しますが「絵に描いた餅」になってしまいます。

社内外を問わず、会社の周りの人たちに、理解、納得、賛同してもらうため、そして、応援協力してもらうためのツールが「経営計画」なのです。

(参考記事)経営計画の策定と運用「3つの新視点」

人事評価とは何か?どうあるべきか?

チームのメンバーは「経営計画を実行する人たち」です。計画の難易度によって、必要となるスキルや、そのレベルは様々ですが「評価基準」は「経営計画を実行するために必要となるスキル」であることが必要です。

評価基準の設計で悩んでいる経営者の相談を受けると、そのほとんどが「経営計画がない」ことが原因です。理念と計画が明瞭であると、評価基準は自然にリストアップされてくるものです。

「野球で優勝」というゴールがあるから、打率や防御率が評価基準になるのと同じです。もし、ゴールが決まっていないと「どのレベルを求めればいいか」が決められないのは当たり前ですね。最悪のケースでは「競技すら決まってない」という笑えない事例もあります。

また、人事評価は「成長支援のツール」です。評価項目に点数を付けることが目的ではなく「点数を上げるためにサポートするためのツール」です。したがって、人事評価制度を正しく運用すれば、人材が成長します。人材が成長すれば、経営計画の実行レベルが上がります。経営計画を着実に実行すれば、「企業理念」によりアプローチしやすくなる、というロジックです。

人事評価を「点数を付けるためのツール」という勘違いをしないように注意しましょう。

(参考記事)最高のチームを作るための人事評価の仕組み「3つの重要視点」

まとめ

さて、どうでしょうか?「企業理念」「経営計画」「人事評価」は、ワンセットであり、それぞれの整合性が大切であることを整理しました。

中小企業経営において、様々な不都合が経営課題としてリストされますが、その原因の多くは、これらの整合性にあることが少なくありません。あらためて確認してみてください。経営が思うように進まない本質的な原因がそこにあるかもしれません。

関連記事も含め参考にしてみてください。

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