時空を越える経営計画
「3つの新視点」
中小企業が経営計画を効果的に運用するには、従来とは少し違う「新しい視点」が必要です。
- 経営計画は経営者の人生計画そのものであること
- 中期計画は「3年」ではなく「36ヵ月」で策定・運用すること
- ゴールまでの仮説とその評価を繰り返すシミュレーションであること
これらの3つの新視点をふまえ、10人~100人規模の中小企業のための経営計画の策定と運用について、そのアウトラインを紹介します。まずは「全体像」をインプットし、その上で「弱点補強」に取り組んでください。
経営計画がないことのデメリット
経営計画がないことで起きる
様々な不都合
経営計画がないことのデメリットは、一言でいうと「いい会社にならない」という身も蓋もない話になります。
「いい会社」とは、関わる人たちの幸せが持続している会社です
例えば、年々拡大し、利益も十分で、外からは成長しているように見えていても、内情は様々な問題を多く抱えていて犠牲者や理不尽な負担を強いられている人たちが絶えないような「膨張企業」は「いい会社」ではありません。
そのような上手くいってない会社をよく観察すると、下記のような症状があり、その多くは「経営計画がないことが理由であり、そのデメリット」といえます。
- ゴールが鮮明でないため、あるいは、間違ったゴール設定をしているため、経営課題を正しくピックアップできない
- 経営課題が不鮮明なのでその場しのぎの応急処置が多く、本質的な解決ができず、再発が多い
- 中長期の視点がなく、短期的な施策が多い
- 「何のための仕事か?」が不明瞭なのでチームのモチベーションが上がらない
- 「貢献すべき成果は何か?」が曖昧であり、公正な人事評価ができない
- 予算が曖昧で財務状況が不安定
- 「先を見通すこと」が少ない、あるいは不正確なのでリスク想定が甘い
チームで共有する目標がない、課題が不鮮明、リスク想定が甘い(特殊なケースを除いた一般的な企業において)これでは「いい会社」として持続的な成長ができるはずがありません。
これらの症状の多くは「経営の原理原則に基づいた経営計画」を習慣化することで解決することができます。
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経営計画「3つの新視点」
【新視点1】
経営計画は人生計画
会社と人生の時間軸をリンクさせる
多くの中小企業においては「会社の幸せ」と「経営者の幸せ」は表裏一体です。
「もっといい人生を送りたい」という経営者の想いが経営計画を運用するにあたり不可欠です。
一般的な中小企業の多くは「オーナー経営者企業」であり、会社の歩みは経営者の歩み、つまりその人生そのものです。したがって、「もっといい会社」を目指すことは、経営者の「もっといい人生」を目指すことに他なりません。
「経営計画は人生計画である」という新視点を持ち、会社と経営者の人生の「時間軸」をリンクさせることで、計画のクオリティが高まります。
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【新視点2】
「3年」ではなく「36か月」
月の連続によって年の非連続を防ぐ
「中期経営計画」というと「3年単位」が一般的ですが、私はあえて「36か月」と月単位で考え、作成することを提案しています。その理由は「連続性」と「具体性」です。
年単位の計画は、年度と年度の非連続が生じやすいのですが、3年計画を月単位の行動計画に落とし込むことで、途切れることなく連続する計画を作ることができます。
また、月単位にすることで、それぞれのテーマの「所要時間」の見積もり精度を上げることができ、より現実的な計画を策定することができます。
【新視点3】
行動と結果のシミュレーション
仮説とその評価を繰り返す
経営計画は、単なる目標設定ではなく「リアルな行動計画」です。
この「行動計画」は、「この通りに実行すればゴールできる確率は上がるだろうか?」「このプロセスで想定できるリスクは網羅できているだろか?」という仮説とその妥当性の評価を繰り返すことで徐々に精度が高まっていきます。
「こうであればいいな」という期待だけの根拠のない「計画もどき」にならないように「行動と結果のシミュレーション」という視点が大切です。
経営計画「4つのメリット」
経営計画を策定し、運用することで「もっといい会社」に進化成長する可能性が大きく高まります。
次の4つのメリットがその理由です。
【メリット1】
経営者の頭がクリアになる
経営計画のメリットのひとつは「経営者の頭がクリアになる」です。
「もっといい会社にしたい」という経営者のマインドセットがすべての出発点ですが、「いい会社って何か?」というゴールと、そこに至るストーリーを経営計画によって鮮明にすることができます。
【メリット2】
いい仲間が集まる
2つめのメリットは「いい仲間が集まる」です。
経営計画を実現するためには「いい仲間」が必要です。
経営計画は「会社の魅力を伝えるためのプレゼンツール」です。社内外を問わず、あなたのゴールに共感や賛同、協力や応援をしてくれる「いい仲間」を集めるため、また、既存の仲間を「もっといい仲間」にするため「会社の魅力」を伝えることが必要です。
【メリット3】
チームがひとつになる
3つめのメリットは「チームがひとつになる」です。
会社経営は、社内外の人たちとのチームプレーです。チームをひとつにするためには、具体的なゴールとシナリオを共有し、共感を得ることが欠かせません。
【メリット4】
経営のムダを最小限にできる
4つめのメリットは「経営のムダを最小限にできる」です。
経営計画は、ゴールまでの「机上のシミュレーション」です。計画を組み立てていくプロセスにおいて、ゴールに至るまでの様々な課題解決策を具体化し、さらにリスクをあらかじめ想定することで、確実性の高い最短コースを導き出すことができます。
経営計画作成のステップ
Step1:マインドセット
動機はMUSTか?WANTか?
意外と疎かになっている「経営者のマインドセット」。
どんな会社を目指しているのか?
どんな人生を送りたいのか?
中長期に及ぶ持続的な成長のためには、そもそも「どうしたいのか?」「どうなりたいのか?」という公私共の目的や目標を鮮明にしておく必要があります。
経営計画の「作業」に取り掛かる前に、まず自己内観をして「もっといい会社にするための経営計画を作ろう!そして、もっといい人生にしよう!」とマインドセットすることが大前提です。
動機が「作らなければならない=MUST」ではなく「作りたい!=WANT」かどうかを自問自答しましょう。
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Step2:アウトラインの整理
ゴールとストーリーの概要
マインドセットの確認ができたら、次に「経営計画のアウトライン」を整理しましょう。
- 企業理念・経営理念の再確認
- 中長期的に、どのような会社にしたいのか?
- 3年後は、どのような状態になっているのか?
- そのために解決すべき課題は?
- それらの課題を解決すれば、目指す会社になるのか?
これらについて自問自答し、それぞれの整合性を確認しましょう。その上で「3年後のゴールは現実的か?理想が高過ぎないか?」などを確認し「経営計画のアウトライン」を明確にします。
一般的にゴールは、利益や資金、組織人事、商品サービスなど、複数になりますが、それぞれの整合性について注意しましょう。
また、会社の成長フェーズに応じて、経営計画はいくつかのタイプに分けられます。飛行機に例えれば次のようになりますが、自社がどのタイプの計画になるか?についての検討もこのアウトラインの整理に効果的です。
- 起業フェーズ「テイクオフプラン」
- 成長フェーズ「上昇プラン」
- 現状維持フェーズ「安定プラン」
- 第2成長期フェーズ「セカンドスタートプラン」
- 危機回避フェーズ「リバイバルプラン」
- 事業承継フェーズ「バトンタッチプラン」
- 廃業フェーズ「着陸プラン」
Step3:36カ月のストーリー
ゴールまでの物語
ストーリーとは「ゴールに至るプロセスを言語化したもの」です。各ゴールに至るそれぞれのストーリーは下記の点に注意しましょう。
- 物語はゴールまで論理的に繋がっているか?
- プロセスの途中に非現実的願望が混在していないか?
- このストーリーならゴールできそう!という期待が高まるか?
また、販売計画のように競争優位によって達成できるゴールの場合は、そのストーリーは「戦略そのもの」となります。
チームメンバーが読めば「なるほど~」と理解できる分かりやすい言葉で綴ることがとても大切です。
Step4:スケジューリング
月々の行動計画に落とし込む
次に、上記のストーリーを「行動計画」として、月々のスケジュールに落とし込みます。この段階で、キャスティング(担当者)も同時に行います。
- このゴールの担当責任者はだれか?
- ゴールまでのスケジュールは?
担当責任者が、スケジュール通りに行動すれば、本当にゴールできるのか?を繰り返しシミュレーションし、その精度を確認しましょう。
また、スケジューリングは、必ずそれぞれの担当責任者を交えて行うことが重要です。担当責任者の事情を考慮しないトップダウンの「やりなさい計画」は、実行段階におけるどこかでリバウンドが生じます。
Step5:予算化
行動計画を数字に置き換える
スケジューリングができれば、次は「予算化」です。
ここまでのステップで、販売計画・販促計画・生産計画・人事計画など、テーマ別のゴールが設定され、そのための行動計画が具体化されています。それぞれについて、数字に置き換えることで予算が組み立てられます。
ここで計算された利益や資金繰りについて、過不足等が生じる場合は、ゴールやストーリーに戻って必要な修正を行い、さらにリアリティーを高めていきます。
Step6:経営計画書のリリース
経営計画書
- 表紙・タイトル・目次
- 経営理念・ビジョン
- 現状の課題
- 中期目標・短期目標
- 基本戦略+個別戦略
- 実行計画・アクションプラン
- 組織計画(組織図・採用・育成等)
- 予算・利益資金計画
- リスクと対策
ここまでのステップで「36カ月の経営計画」の「ラフ」が出来上がったので、次にリリースに向けて「経営計画書」として体裁を整えます。
経営計画書は百社百様ですが、一般的に、左(上)のような構成になっています。
「経営計画発表会」のようなイベントとしてリリースすることが望ましいのですが、その際の注意点は下記のとおりです。
- 目的は36カ月の計画をチーム全員で共有し、それぞれが正しく理解すること。オシャレに作っても正しく伝わらなければ意味はない。
- 予算や利益の計画など、非公開ページがある場合は「経営版」と「社員版」など複数のバージョンを作成する。
- 全員集合を原則とし、同じタイミング、同じ場所でリリースする。
- 最初に「正しく理解し共有すること」の重要性と、ひとり一人が当事者であることを伝える。
- 計画書に記載されているスケジュールは、事前に当事者と合意形成を済ませておくこと。
- 質疑応答の時間を作る。
- 録画することで、欠席者フォローのみならず、発表者である経営者自身の反省材料とすることができる。
経営計画の運用
月例経営会議
チーム全員で進捗を共有する
「経営計画書」は、毎月、関連者と一緒に進捗状況の確認をするため「月例経営会議」を定例化します。
営業、開発、製造、管理等、部門別に開催する方法もありますが、私は「関連当事者が一堂に会する」という方法を提案します。その理由は、チーム運営において「横連携」がとても大切と考えるからです。他部門の事情や状況を把握し、相互理解を深めるための絶好の機会です。
なお、会計や財務を非公開としている場合は、その部分だけは経営陣と顧問税理士など、クローズなミーティングとすることが一般的です。
また、スケジュールは「最優先事項」として「年間予定」等であらかじめ日時をFIXしておきましょう。欠席は厳禁です。万が一、欠席者が出そうな場合は、要出席者が全員揃う日に延期するなど、月例経営会議は「最重要な会議である」という位置付けがとても重要です。
人事評価と成果分配
ゴールまでの貢献に報いる
経営計画は、チーム全員で実行するものであり、その貢献に報いる必要がありますが、そのためのツールが「人事評価」であり「成果分配(給与賞与)」です。
人事評価の点数が高いということは、経営計画に対する貢献が高いということで、その整合性はとても重要です。
また、評価項目は「経営計画実行に必要とされるスキル」でなければなりません。
人事評価の点数を上げるための努力と支援
↓
スキルが上がる
↓
経営計画への貢献が高まる
↓
成果分配が増える
このロジックによると「人材育成」は「経営計画の実行力を上げるためのトレーニングである」と定義することができます。
「経営計画」は、人材育成や人事評価とリンクしていることを忘れないようにしましょう。
あって当たり前のカルチャー
成長志向の企業において、経営計画は「あって当たり前」のツールです。
チームの目標、行動計画、評価、成果配分などのベースになる経営計画はなくてはならないものであり、それをチームの「考動習慣」とすることで本来のメリットが得られます。
経営計画は「あって当たり前の企業文化・カルチャー」のもと運用されるものであり、「時々作る」というシロモノではありません。
Q&A・FAQ
よくある質問・ご相談
中小企業経営者の方からの「よくあるご質問・ご相談」です。
他に、お聞きになりたいことがあれば「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。回答はこのページに追記します。
*すべてにお答えできないことを予めご了承ください。
よく混同されがちな「事業計画」は「経営計画」の一部です。「事業計画」は「商売の計画」であり、「経営計画」には、組織作りや人材育成なども含む経営全体の計画のことです。
「予算」や「利益計画」は「経営計画」を数字に落とし込んだものであり「経営計画」の一部です。「行動計画の裏付けのない数字」は「計画」ではありません。注意しましょう。
計画修正は柔軟に行うべき、というのが私の考え方です。計画を早々にクリアした時、反対に大きく下回った時は、当初計画の影が薄くなってきます。常に「行動の指針」として機能させるためには修正は必要です。
ただ、一定の規律の必要性や事務的な煩雑さも考慮して、修正のタイミングは四半期や半期ごとというのが実務的です。
経営計画は、毎年アップデートします。これは一般的に「ローリング方式」と呼ばれるもので「3年ごとに計画する」のではなく、毎年「この先3年を計画する」という方法です。
せっかくマインドセットを整えて、経営計画の策定に着手しても上手に作ることができなくて悩む経営者が少なくありません。
その原因は「経営計画のスキル」ではなく「レイヤー4:スキル」の不足です。「基礎スキル」と「経営スキル」の課題を解決することで、改めて考えなくても「経営計画が自然に思い浮かぶ」という状態になります。
経営計画のノウハウの前に「スキルの課題」を解決しましょう。
でも、それには時間がかかる・・・という場合は、相性の良いコーチにサポートしてもらうことも検討してみてください。
まとめ:成功のための重要視点
もっと人生を良くするのための
行動計画
さて「中小企業の経営計画」について、アウトラインを紹介しました。
経営計画を効果的に運用するための大切な視点は3つ。
- 経営計画は経営者の人生計画そのものであること
- 中期計画は「3年」ではなく「36ヵ月」で策定・運用すること
- ゴールまでの仮説評価を繰り返すシミュレーションであること
「どんな人生にしたいのか?」
そのために
「どんな会社にしたいのか?」
という大きなビジョンをふまえて
「3年後のゴールは?」
「現状は?」
「そのギャップは?=課題」
「どうやって埋める?=解決策」
「もっとよくなるため」に、チームで課題とその解決策を共有し、共にサポートしながらPDCAをグルグル回していくというフレームワークです。
ぜひ、参考にしてください。
もし、サポートが必要であれば、気軽にご連絡ください。
コーチングのご案内:経営計画の策定と運用サポート
お役に立ちますように!
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