
「もっといい会社」にするためには、経営脳を整え「もっといい経営者」になることが唯一の選択肢です。
いい経営者になるためのマインドセットと心身のコンディション(L1~L3)を整えたら、次は「第4階層:経営スキル」のトレーニングです。
本稿では、経営脳5つのレイヤーの「第4レイヤー:スキル」のひとつである「仕組み化スキル」について深掘りします。
このブログでは、「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けた「自己投資=経営脳トレーニングのサポート」を目的に、「もっといい会社」に成長するヒントを毎週発信しています。
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【二層構造】
ヒトのアプリ「基礎と実務」
個々のスキルの前に、まず「スキルの全体像」について要点整理しておきます。
「スキル」は、仕事をするための技能や技術などのことですが、大きく・・・
・・・2つに分類することができます。
基礎スキルは、すべてのビジネスパーソン共通のスキルであり、新人やベテラン、年齢や性別、ポジションなどの違いに関わらず「全員必修」のものです。
このブログでは、その中でも特に優先的に重要と思われる「課題発見力」「計画達成力」「管理力」「仕組力」「コミュニケーション力」「論理的思考力」「拡深思考力」「リーダ力」の8つについて紹介しています。
一方で、経営(実務)スキルは、会社経営特有の技能等であり「ヒト・モノ・カネ・トキ」をマネジメントするための経営者にとっての必修スキルです。
このブログでは「先見力」「理念創造力」「戦略構想力」「チームビルディング力」「会計力」「情報力」「プロジェクトマネジメント力」「伝達力」の8つを特に重要と位置付けて紹介しています。
「経営脳の5つのレイヤー」の最下層に位置する「マインドセットをOSとする」なら、「スキルはアプリ」に相当します。
- 「基礎スキル」は、「標準アプリ」=最初から標準搭載されている「文字入力」などのユーティリティアプリ
- 「経営スキル」は、「専門アプリ」=「会計」「デザイン」「設計」などのように、使う人が職種や必要性に応じてインストールするアプリ
「専門アプリ(経営スキル)」は、「OS(マインドセット)」と「標準アプリ(基礎スキル)」に大きく影響を受けます。
「OS」が古い、あるいはエラーを抱えている場合、どんなに優れた専門アプリをインストールしても、スムーズに動作せず、エラーが頻発したり、システムの動き全体が悪くなったりします。
最悪の場合はフリーズ・・・。
「標準アプリ」にトラブルが生じているときも同様です。
これは、人間のパフォーマンスにもそっくり当てはまります。
人のOSである「マインドセット」に課題があると、「基礎スキル」「経営スキル」に関わらずうまく機能しません。
また、「マインドセット」には問題がないのに、経営が上手くいかないケースにおいては、標準搭載アプリである「基礎スキル」が何らかの問題を抱えていることがほとんどであるというのが、長年のコーチ経験での肌感覚です。
(詳しくは「経営脳の第4レイヤー:スキル」を参考にしてください。)
【定義確認】
仕組みで回す基礎スキル
「仕組み化」とは、簡単に言うと「個人のやり方」を「会社のやり方」に変換していくことです。
「仕組み化スキル」は、その知識やノウハウなど経験に裏付けされた実務能力のことを指します。
言い換えれば「人に依存せず、仕組みで回すスキル」です。
これはーー
- 仕事を抱え込まない
- バックアップ体制を準備しておく
- いつでもバトンタッチできる状態にしておく
ーーという意味で、マネジメント層に限らず、すべてのビジネスパーソンにとって必要な「基礎スキル」のひとつとして位置付けています。
仕組み化を進めないと、その担当者は、自分自身の考え方や技量の範囲内で「自分のやり方」を形作ります。
いわゆる「属人化」が進むわけです。
仮に、その方法が偶然にも最適化された効率の良い方法であったとしても、そのノウハウや経験は、その個人に蓄積され「会社のノウハウ・経験」として共有されないことがほとんどです。
このような属人化が進むと、次のような「ムダ」や「キケン」となって現れます。
- ムダ:属人化された業務は、その担当者の力量の範囲内でしか合理化が進まず、無駄が散見される。
- 聖域化:業務のブラックボックス化が進み、悪化するとアンタッチャブルな聖域にまで発展することがある。
- リスク:属人化された業務は「できることしかやらない(=やるべきことの抜け漏れ)」という傾向があるばかりではなく、不透明であるがゆえに、ミスの発覚が遅れたり、最悪の場合は不正の温床になってしまう。
- 停滞:担当者が不在の場合、業務が止まってしまうことがあり、また、退職時には、その業務のノウハウや経験知も併せて消滅してしまうことがある。
- 引継ぎ困難:属人化された個性的かつ独特な方法は、引継ぎや伝承が困難となることがある。
- 非効率:属人化された業務は、その担当者にとっては最適であっても、他者にとっては、そうとは限らない。
- 業績拡大の妨げ:特定の担当者のキャパシティーに処理能力が依存するため、業務拡大の足かせになることがある。
- 近代化の妨げ:全体的、総合的なシステム化やデジタル化の障害になることがある。
これらの弊害が、チームにとって悪影響を及ぼすことについて、多くの説明は不要でしょう。
仕組み化を進めることが、コストパフォーマンス、タイムパフォーマンス、人材育成、さらにリスクヘッジなど様々な面において必要です。
(参考記事)経営者の管理力:想定と準備で チャンスは最大化 リスクは最小化
【盲点弱点】
実は経営者が最も属人的?
「仕組み化スキル」は、すべてのビジネスパーソンにとって必要である「基礎スキル」です。
もちろん経営者も例外ではありません。
経営者として、チームの仕組み化を進め、生産性を改善し、リスクを軽減するためのリーダーシップを発揮することは当然ですが、忘れてはならないのは「じゃ、ところで自分は?」です。
ほとんどの中小企業において、もっともノウハウや経験を持っているのは経営者です。
その蓄積された貴重な情報は、チームにとっても価値あるものであり、これを共有し、活用しやすいように「仕組み化されているか?」ということです。
商品開発、販売戦略、広告戦略、人脈開拓などについて「指示命令」はすることがあっても「なぜ、そうするのか?」という指示命令の背景や、その根拠となるノウハウや経験、情報も一緒に伝えなければ、現場は盲目的に指示命令に従うしかありません。
これでは「考え、応用する機会」が無いため、結果として人材の成長を阻害します。
経営者自身も「自分が持っている情報・ノウハウ・経験」を、チーム全体で共有し、活用できるような「仕組みづくり」が人材の育成や、チームのパフォーマンスを改善するためにとても重要です。
中小企業において、実は、会社の中でもっとも属人化しているのは経営者自身かもしれません。
(関連記事)人が育つ仕組み|自ら考えて動くチームを作り、経営に専念する
【自問自答】
仕組み化は進んでいるか?
経営者の「仕組み化スキル」は、人材育成を主とする競争力強化のために欠かせないスキルです。
「自分は仕組み化を進めているか?」をチェックするための自問自答のサンプルを紹介するので、このような視点で自己内観し、解決すべき課題がないかを確認してみましょう。
- 仕組み化の現状把握
- 主な業務について、そのプロセスが文書化されているか?
- 文書化された業務プロセスは、権限等に応じてアクセスできる状態か?
- 業務プロセスのメンテナンスは定例化され、それ自体が仕組み化されているか?
- 無駄や非効率で困っているメンバー、ガマンしているメンバーはいないか?
- チーム全体を見渡して「オープン性」や「透明感」を感じているか?
- 効率化の可能性
- 現在の業務プロセスに無駄や非効率な部分はあるか?
- 無駄や非効率を改善する具体的な方法は明確か?
- デジタルツールの活用余地はどこにあるか?
- もはや「旧式化」しているツールはないか?
- リスク認識
- 特定のメンバーに依存することでブラックボックス化し、リスクを孕んでいるプロセスは?
- ブラックボックスリスクを放置していないか?改善期限は設定しているか?
- 改善提案
- メンバーからの提案やフィードバックを放置していないか?
- 自己認識
- 自分の中にある、情報やノウハウをチームと共有する仕組みはあるか?
- 自分自身がブラックボックス化している部分を認識しているか?
- そもそも「仕組み化」の重要性を強く認識しているか?
(関連記事)盲点弱点|大切と分かっているのに実行しない経営者の話
【自主トレ】
もっと仕組化を進めるために!
「仕組み化スキル」のトレーニングは、「業務プロセスの可視化と改善の繰り返し」が効果的です。
部門ごと、職種ごとに、その実務担当者を交えて事細かなインタビューを重ね、ひとつひとつ紐解いていきます。
また、必要な時は、経営者自身が業務プロセスの中に入って「体験」することも重要です。
その標準的な手順は次の通りです。
- 現状確認
- 業務の理解=現在の業務プロセスを詳細にインタビューし、ポストイット等を使って可視化。
- 問題点の特定=ムダな部分、非効率な部分など問題点を特定。
- 必要に応じて、業務プロセスの中に入って実務を「体験」。
- 目標の設定
- 理想のプロセスを、経営者、部門長、実務担当者とともに検討し、どのように改善するのか?どこを変更するのか?など目標を設定し共有。
- テストラン
- 新しいプロセスを実行し、期待通りに流れるか?新たなリスクはないか?どんなエラーが考えられるかなどを検証し、ブラッシュアップすべき点をリストアップ
- 本格導入
- テストランにて、詳細の調整が終われば、正式に本格導入。
以上、一般的なサンプルです。
実務的には、営業部門、開発部門、バックオフィス部門など、それぞれの部門の特徴によって様々なオプションがありますが、基本的な流れはこのとおりです。
この仕組み化のステップで、もっとも重要なのは「1:現状確認」です。
もともとブラックボックス化されているので「全部、洗いざらいピックアップすること」ができるか?がそのあとのステップの成否に関わります。
担当者のインタビューでよく耳にするのは「基本的に・・・です」「原則として・・・です」というフレーズです。
諸問題は「例外」に潜んでいます。
「基本形・原則型」の正確なヒアリングは重要ですが「例外」もすべてピックアップしきれるように注意しましょう。
(参考記事)盲点弱点|「これが最適解だろうか?」と考える大切な習慣
【要点整理】
仕組み化が進む仕組みづくり
さて、どうですか?
経営脳5つのレイヤーの「第4レイヤー:スキル」のひとつである「仕組み化スキル」について整理しました。
仕組み化は、ムダやリスクを軽減するために重要であるばかりではなく、人材育成にも効果的な取り組みです。
仕事を抱え込まず、標準化、マニュアル化、自動化を「担当者レベルで自主的に進めるチーム」のパフォーマンスが高いことは容易に想像できます。
つまり、個々のメンバーにも共通する「基礎スキル」としての「仕組み化スキル」を高めることで「なんでも仕組み化してしまうカルチャー」を醸成することも期待できます。
ぜひ「仕組み化が進む仕組み」を作ってください。
もし、課題が見つかったなら、トレーニングを重ねて解決しましょう。
サポートが必要であれば、いつでも気軽に連絡ください!
以上、お役に立ちますように!
基礎スキル8選