平均給与が年500万円なら経常利益はいくらになる?

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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。


この「平均給与が年500万円なら経常利益はいくらになる?」というタイトルに違和感を感じましたか?一般的に「経常利益が***なら、平均給与は?」と、逆の表現じゃないの?と。

マネジメント会計(管理会計)を活用してもらうために「収益構造のテンプレート」が有効なので、その紹介のためにあえて「ヘンなタイトル」を付けました。

この記事は「中小企業向け|マネジメント会計(管理会計)の設計と運用の概要」の補足です。

このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。初めてアクセスしていただいた方は、こちら(=「このブログについて」)をまずご覧ください。

答えは「一人あたり400万円」

平均給与(賞与等を含む)が年500万円なら、経常利益は「一人当たり400万円」になります。

その計算は、次の通りです。

限界利益100%
人的コスト30~40%
その他の事業コスト30~40%
経営コスト10%
経常利益20%

この比率は、私たちが「黄金比率」と呼んでいるひとつのテンプレートです。

これには、経常利益は限界利益の20%以上を残そうという考え方がベースにあります。

経常利益を20%残し(分かりやすいように)法人税等を半分とすると、税引き後の純利益は10%、つまり「毎期、限界利益の1割を内部留保加算できる」という考え方です。

(関連記事)管理会計の活用|収益性改善|損益計算書の「黄金比率」

「給与」は「人的コスト」の一部です。一般的に、社会保険の会社負担や通勤手当などの「労務副費」も必要であるため、それを20%と見積もると「一人当たりの人的コスト」は「500万円×1.2=600万円」となります。

限界利益に対する人的コストの割合を30%とし、逆算すると「必要限界利益」は、600万円÷30%=2000万円となります。

限界利益に対する経常利益の割合は20%なので「答えは一人当たりの経常利益は400万円」ということになります。

このテンプレートについての詳細は下記の記事を参考にしてください。

(詳説記事)中小企業の人的コスト比率|人件費は限界利益の40%が上限?!

視点転換:必要限界利益の概念

中小企業経営者が、給与を考える時に「どれだけ払えるか?」が先に立ってしまうことが少なくありません。この発想は「限界利益が前提」になっています。「現状、どれだけ払うチカラがあるか?」という「現状限界利益→給与」の順番での考え方です。

ここで紹介しているテンプレートは「逆」で、「払うチカラをどこまで伸ばせばいいか?」というように「給与→必要限界利益」の順番です。

限界利益に対する人的コストの比率を上限40%と設定すれば、社保の会社負担や通勤手当などの副費を除けば、メンバーに支給する給与(賞与を含む)は「40%÷1.2=約33%」になります。図らずも「給与の3倍稼げ」の比率になります。

簡単な「早見表」を作ると次のようになります。

年間平均給与
(賞与を約3か月分と仮定)
1人当たり
必要限界利益
400万円
=@27万円*12+@38万円*2
約1200万円
450万円
=@30万円*12+@45万円*2
約1350万円
500万円
=@33万円*12+@52万円*2
約1500万円
550万円
=@37万円*12+@53万円*2
約1650万円
600万円
=@40万円*12+@60万円*2
約1800万円

このように「現状利益でどれだけ給与を払えるか?」ではなく「支払いしたい給与のためには、必要限界利益はいくらか?」と視点を転換することで「人件費で悩むこと」から「収益性改善に悩む」に思考習慣を変えることができます。

この「収益性改善で悩むこと」は、特に人手不足が深刻化する中小企業にとって、とても重要です。

「現状収益を前提にする」→「給与が上がらない」→「採用競争力が低下する」→「優秀な人材を獲得できない」→「収益性はさらに低下する」という悪循環は致命傷になりかねません。

(関連記事)中小企業の人手不足対策 「自責」で考え、競争力を強化する

引退時、退職金を3億円手にする

私は、若い経営者に「将来、退職金はいくら欲しい?」と聞くようにしています。

ほとんどの経営者は「考えたことがない」と答えます。「1億円でいい?」と続けると「もう少し欲しいなあ」と笑いながら答えてくれます。「じゃあ、3億円にしようか?」「そうですね!」。

そんな「軽いノリ」でいいです。将来の退職金のイメージを持つと、現状の収益体質の改善のきっかけになります。

いきなり「退職金?」と思われるかもしれませんが、この「経営者の退職金のシミュレーション」と、上記の「平均給与のシミュレーション」において「必要限界利益」の考え方がベースになるという意味で変わりはありません。

現在41歳の経営者が、60歳で引退してセカンドライフに移行することを想定して簡単な計算例を示します。これを「たたき台」にして、あなたなりのシミュレーションをしてみてください。

41歳~50歳51歳~60歳合計
限界利益12億円
(年平均1.2億円)
18億円
(年平均1.8億円)
経常利益
(限界利益の20%)
2.4億円
(年平均2400万円)
3.6億円
(年平均3600万円)
経常利益の半分
=税引後利益
=内部留保
1.2億円
(毎年1200万円積み上げ)
1.8億円
(毎年1500万円積み上げ)
3億円

さて、この数字は「ハードルが高い」ですか?それとも「意外といけるかも?」ですか。引退=経営者の出口は「(事業承継を含む)売却か、清算」の二択ですが、いずれにしても、その際に手にする「セカンドライフ資金」の元になるのは「内部留保」です。

このシミュレーションに「一般例」はありません。経営者の人生は百人百様だからです。

(関連記事)中小企業のオーナー経営者の「生涯収入」を考えてみる

自分なりのテンプレートを持っておく重要性

この記事で皆さんに伝えたいことは、給与でも退職金でもありません。

意図は「マネジメント会計のテンプレートを持っておこう」という提案です。それも「自分なりの」です。

ここまで読んでいただいて「経常利益20%?」と違和感を持った方もいらっしゃれば、「人的コスト40%以内?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

業種や規模、経営の前提条件や、個人の諸事情などによって様々なので、上記に例示したような一般的な標準テンプレートの「数値」にあまり意味はありません。この「数値」は、それぞれによって最適解が違うからです。

重要なのは、あなたにとっての「最適解」による「テンプレート」を持っておくことです。

ぜひ参考にしていただき、あなたなりの「限界利益・人的コスト・内部留保」のバランスの最適解を見つけ、テンプレートとして思考習慣に組み込んでみてください。

必ず、収益性は改善し、なにより「数字に強く」なれます。

(関連記事)中小企業経営者が会計に「弱い理由」と「強くなる方法」

まとめ

さて、どうでしょう?「収益構造のテンプレートを持つ効果」について整理しました。

関連記事も含め参考にしてみてください。

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