攻めの経営|将来への投資計画を可視化する

この記事は、約 6 分で読めます。
この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。


私は、このブログをはじめとして、あっちこっちで「内部留保を貯めよう」という話をするので「誤解」されることがあります。「そんな守りの経営ではダメだ!」と。そんなこと、一言も言ってないのですが(笑)おそらく「投資の話」が少ないので、そのような「誤解」をされるみたいです。

そこで、この記事では、会社の将来のための投資計画を考えるためのマネジメント会計(管理会計)の活用法を紹介します。

この記事は「中小企業向け|マネジメント会計(管理会計)の設計と運用の概要」の補足です。

このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。初めてアクセスしていただいた方は、こちら(=「このブログについて」)をまずご覧ください。

将来のための投資をしているか?

「投資」といっても株や債券など金融商品のことではありません。会社のさらなる成長のための投資のことです。

一部の特別な例外はあるかもしれませんが「将来の安全安心を約束されている中小企業」なんて無いといっても過言ではないでしょう。

「近い将来」も「遠い将来」も、持続的かつ健全に成長し、経営者自身はもちろんのこと、メンバーたちも楽しく安心して活躍でき、得意先をはじめとする取引先との関係も良好、という状態でありたいものです。

その状態は自然に転がり込んでくるものではなく「意図して経営」しなければなりません。

その「将来のありたい状態」のための先行支出が「投資」です。

さて、あなたは将来のための投資をしているでしょうか?

「投資」のため「MA損益計算書」をおさらい

「将来のための投資」といっても、事業資金に限界がある以上「過剰投資」は本末転倒であり、会社の足元を揺るがすことになりかねません。「投資」は、少なくても、多くてもリスクとなりえます。自社の「投資余力」を正しく知るとともに「投資枠」を設定することが必要ですが、ここで「マネジメント会計(管理会計)の出番」です。

進化型PLである「MA損益計算書」のフォーマットを確認しておきましょう。もし「なんだ?MA損益計算書って」という方は、先にこちらの記事(MA損益計算書)を参照してください。

(詳説記事)管理会計|中小企業経営者のための【進化型】MA損益計算書

「創造付加価値」から「投資余力」を知る

「投資枠」を設定するために、まずは自社の収益構造を確認し「どれだけ投資できるのか?」という「投資余力」を把握しなければなりません。

この「投資余力」を表すのが「創造付加価値」です。

この「創造付加価値」は、ビジネスで生み出した利益ですが、これが十分でないと「投資どころじゃない!」ってことになります。言い換えれば、利益の再投資という「善循環」を回すための稼ぎは十分か?ということです。

仮に「事業利益」が少ない状態であっても「経営コスト」を少し圧縮すれば「投資余力」を産み出せます。しかし「創造付加価値」が少ないと、その捻出のため「本業のための事業コスト」を圧縮することになり、現在のビジネスに影響を与えかねません。

中小企業のための進化型PL「MA損益計算書」の投資コストのイメージ

(参考記事)管理会計|ビジネスの真の実力は「創造付加価値」に表れる

「創造付加価値」を基準に「投資枠」を検討

「投資余力」が分かれば、「創造付加価値」をどれだけ将来の投資に回すか?の検討です。

「創造付加価値」は「限界利益」の30%以上であることがひとつの目安ですが、その状態を3つのサンプルで確認します。

MA損益計算書|創造付加価値をどれだけ再投資に回すか?のイメージ

限界利益の30%相当の創造付加価値を稼いでいる場合・・・

  • [A] 投資なし
    投資をしないのなら10の経営コスト枠を取って、20の事業利益が残ることになります。
  • [B] 事業利益を投資に回す
    経営判断として、内部留保より投資を優先する考え方です。経営コストはそのまま(10)にしておき、創造付加価値のうち10を投資に回すと、事業利益は10に圧縮されます。
  • [C] 経営コストを投資に回す
    内部留保も確保するため、経営コストを半分に抑える、というサンプルです。経営コストの一部を投資に回すので事業利益は20でキープです。

以上は、いずれも「計算例」であって「どれがいい」という話ではありません。

それぞれの経営判断によって「将来投資をどうするか?」という「投資枠」を上記のようにシミュレーションし、あらかじめ設定しよう、という提案です。

もちろん「いまが投資するチャンス!」ってタイミングであれば「投資枠」を大きく拡大して「当面、赤字でもいい」という意思決定もあり得ます。

まずは「創造付加価値」によって「どれくらいの投資余力があるのか?」を正確に把握し、その上で決定するようにしましょう。「行き当たりばったり」や「カン」ではなく、この「マネジメント会計の活用」によって「会計力」を鍛えることができます。

(参考記事)必修経営スキル【会計力】過去と未来を数字で語るチカラ

「何から、いつ」投資するか?

「将来のための投資」と言っても、その投資テーマは様々ですが、あえてマネジメント会計(管理会計)の視点で列挙すると次のようになります。

  • 売上を拡大するための投資
    新たな市場、新たな商品・サービス、新たな顧客など、将来の売上を拡大するための投資
  • 限界利益率をアップするための投資
    限界利益は「売上高-変動原価」によって計算しますが、この「率」をよくするための生産性改善や新たな仕入れルートの開拓等、原価低減のための投資であったり、あるいは、既存商品やサービスの値上げのための投資
  • 人的コストの適正化のための投資
    人的コストを適正にするために、採用力、育成力、分配力などを改善、アップさせるための仕組みづくりのための投資

その他、収益性やキャッシュフローを改善するために、他にも投資するテーマとして「経営力を上げるための投資」「資金力を上げるための投資」あるいは「リスク耐性を高めるための投資」など、まだまだたくさんあると思いますが、優先順位をよく検討して投資テーマを決めましょう。

(参考記事)【経営者の基礎スキル】課題発見のためのゴールファースト思考

また「いつ」という検討も大切です。どのテーマが優先するか?は、それぞれの会社によって異なりますが、どのテーマであっても「行き当たりばったり」や「思い付き」による投資ではなく「計画的に投資する」ためのGSC(ゴール・シナリオ・キャスティング)を明確にしましょう。

(参考記事)【経営者の基礎スキル】計画実現のためのバックキャスト思考

実務:勘定科目を新設しよう

上記のように「投資」が始まると、今までとは性質の違うコストが発生します。「どんな投資でどれだけ支出しているか?」を明確にするために「勘定科目」を新たに新設して、従来コストとは区分して処理することが重要です。

この際のネーミングのコツは「***費」ではなく「***投資」とすることです。具体的には、次のような勘定科目がPLに登場します。

【投資コストの科目サンプル】

  • 新市場開拓投資
  • 生産性改善投資
  • 付加価値拡大投資
  • 人材開発投資
  • カルチャー構築投資

まとめ

マネジメント会計(管理会計)の活用法のひとつとして「投資」を紹介しました。

そのためには、進化型PL「MA損益計算書」の利益区分のひとつである「創造付加価値」の理解を深める必要があります。その上で下記のステップで進めてください。

関連記事も含め参考にしてみてください。

もし、サポートが必要であれば、いつでも気軽に連絡ください!→「お問い合わせフォーム

以上、お役に立ちますように!