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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
多くの経営者が「節税するとトクをする!」と思っています。
ただし、注意しなければならないのは、トクをするのは「正しい節税」をしたときであって「間違った節税」をするとトクどころかソンします。「できるだけ払いたくない=資金を温存したい」と思ってるのに、節税を間違うと会社の大切なキャッシュが減ってしまうカラクリを整理しておきます。
この記事は「決算書中小企業向け|決算書活用マニュアル」の補足です。
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【節税の誤解】キャッシュが無くなる計算例
典型的なケースを紹介します。
利益が1,000万円。
税率を35%とすれば、納税額は350万円。
この納税を回避するために経費を1,000万円使った。
その結果、利益はゼロ=納税もゼロ。
350万円の節税ができた。
・・・というケースです。
いかがですか?
確かに350万円の納税は回避できましたが、トクをしたと思いますか?
この事例、利益に相当する資金1,000万円を経費として支出したので会社のキャッシュは空っぽです。
もし、1,000万円の経費を使わず納税したら350万円は出ていきますが、650万円は会社に残ります。
つまり、節税しなかったら650万円のキャッシュが残るのに、350万円の納税を回避するために1,000万円を使い切った、ということです。
【両者の考え】ソンか?トクか?
この話、単純に「ソンか?トクか?」という判断はできません。
それぞれについて「言い分・言い訳」を聞くと・・・
節税して「トクした」という経営者の言い分
1,000万円の追加経費は、広告宣伝や社員研修に使った。
つまり「将来への投資」として支出した経費だ。
近い将来「収益」としてリターンがあるから「ソン」なんてしてないよ!
節税して「ソンした」という経営者の言い訳
もったいないことをしたよ・・・。
350万円の税金がゼロになるなら!と思って「食いまくって、呑みまくって」さらに「不必要な買い物」もしてしまった・・・。
まったくの「無駄遣い」を後悔してるよ・・・。
【正しい節税】節税はリターンがあるときだけ!
整理すると・・・
「経費を使ったら、利益が減って、税金は減る」、これは「事実」です。
しかし、もう一つの「事実」は「経費を使うからキャッシュは減る」ということです。
節税目的で支出するキャッシュが「いずれ帰ってくる投資」なら賛成ですが、ただの「無駄遣い」であれば本末転倒です。
将来、支出額以上のリターンがあるなら「正しい節税」です。
もし、支出額以上のリターンがないなら「そのまま納税」の方がキャッシュは増えます。
【節税のワナ】キケンな生命保険
ひとつ補足しておきます。
下記のような「節税商品」に騙されないように気を付けてください。
- A:保険料100=全額損金
- B:節税額35
- C:AーB=実質保険料65
- D:満期返戻金65
もうお分かりですよね?
支払った生命保険料は全額損金処理できるので実質的な保険料は65。
将来65帰ってくるからソンしないでしょ!
・・・というセールストークです。
落とし穴は「返ってくる65には課税される」です。
税率を35%とすると、返ってくる満期返戻金の手取りは約42になります。
生命保険を検討するときは「実質返戻率」ではなく「単純返戻率」、つまり、支払った保険料がどれだけ帰ってくるか?で検討しましょう。
最近は、税制上の扱いが変わったので、このタイプの商品がほとんどなくなりましたが、生命保険に限らず「節税商品」と言われるものは「セールスマンの話」ではなく「税理士の話」をよく効いてから判断しましょう。
【まとめ】税金を抑えるには倍以上の資金がいる
さて、節税に関する知識、認識に間違いはありませんでしたか?
- 経費を使ったら納税額は減るが手元のキャッシュも減ること
- 支出以上のリターンがないなら節税しないこと
少々雑ですが、あえて覚えやすく表現すると「税金を抑えるためには、その倍以上の資金が必要」ということです。
節税を間違うと、会社はどんどん弱くなります。
この重要ポイントを忘れないようにしましょう。
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