人事評価の実務|5段階基準の作り方と使い方|サンプルDL付

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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。


中小企業の人事評価基準で、もっとも一般的なのは「5段階評価」ですが、「5段階の定義」を曖昧なまま運用している企業が少なくありません。あるいは、せっかく「5段階の定義」を明確にしているのに、その定義にそって運用できていない企業も散見されます。

この記事では、人事評価の本来の目的である「人材育成」に有効な「中小企業の人事評価基準」の作り方と使い方のポイントを紹介します。

ぜひ参考にしていただき、よりクリアな人事評価基準で社員さんの成長を支援してほしいと思います。

この記事は「中小企業向け人事評価|仕組み作りと運用のアウトライン」の補足です。

このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。初めてアクセスしていただいた方は、こちら(=「このブログについて」)をまずご覧ください。

人事評価の目的は人材育成

なぜ人事評価は必要なのか?それは、紛れもなく人材を育成して、もっといい会社にするためです。

人事評価は、メンバーの育成によって、チームのパフォーマンスを高め、「もっといい会社」にするためのツールに他なりません。

「5段階評価」の実務に取り組むにあたり、この目的を改めて確認しておくことが、とても大切です。

課題発見のフレームワーク

「成長」とは「もっと役にたつ存在として進化すること」であり、そのための「課題解決」が「成長」です。

今までできなかったことが、できるようになる、また、もっと上手にできるようになる、その積み重ねや、また、その範囲の拡大によって人は「もっと役にたつ存在として進化」していきます。

この成長プロセスのために欠かせないのが「課題発見」です。

もっと役に立つ存在に進化するために「何が足りないのか?」「どうあるべきなのか?」を言語化し、そのギャップとして「課題」の解像度を上げることが「解決」のために必要です。

【課題発見のフレームワーク】
(あるべき姿)-(現状)=(課題)

「5段階の人事評価基準」は、この「課題発見のフレームワーク」を人材育成のために活用するためのツールです。

  • 「5点満点中、君は現状3点だね」
  • (あるべき姿5点)-(現状3点)=(課題2点分)
  • 「この2点分の課題を解決するためにどうすればいいか?を考えよう」

という具合です。

人事評価制度を継続的に運用することで、チームの全メンバーが「課題発見のフレームワーク」を習慣化できるだけでも、人材育成に大きな効果をもたらします。

(参考記事)【経営者の基礎スキル】課題発見のためのゴールファースト思考

5点(満点)の重要な意味

5段階の人事評価基準では「5点」が「満点」ですが、その意味は「経営者が、当社のメンバーに求めるレベル」です。

「5点」は、経営者の意思であり、「人事評価基準」は、それを伝えるためのツールでもあります。

人事評価の全項目において「オール5点」であれば、その経営者にとって「申し分のないメンバー」であり「求める人材像」を言語化したものとなります。

もし「オール5点」でも「物足りない」とすれば、それは「評価項目」にモレがあるということであり「5段階基準」の前に「評価項目」を見直さなければなりません。

つまり、人事評価基準は「経営者が求める社員のあるべき姿=理想の人材」を具体的に言語化したものなのです。

なので、本来、経営者ごとにその評価項目や求めるレベルは違うので、どこかのサイトで無料配布されている「既製品」をダウンロードしてコピペという取り組みは安易と言わざるを得ず、私は「そのような経営者は、人事評価はやらない方がよい」と思っています。(もちろん、たまたま「既製品」がピッタリだったら話は別ですw)

5段階の人事評価基準の作り方

ひとつのサンプルとして、私が中小企業経営者のコーチングの現場で使っている「5段階評価」を紹介します。

下記の無料テンプレートを併せて見ていただけるとより分かりやすいと思います。

【無料ダウンロード】
5段階の人事評価の記録シートサンプルを次のサイトから無料でダウンロードできますので併せて参考にしてください。
https://www.bizocean.jp/doc/detail/547595/

【0点】があるから実は6段階評価

私がオススメしている「5段階」は、おおむね次のようなステップにしてあります。

  • 【1点】理解・納得レベル
  • 【2点】行動レベル
  • 【3点】成果レベル
  • 【4点】習慣・安定レベル
  • 【5点】相互支援レベル

ちなみに、見た目は「5段階」ですが、「1点レベルにも満たない」場合は「0点」もあります。よって、実質は「6段階評価」です。

以下「コミュニケーションスキル」を例に紹介します。

この「コミュニケーションスキル」には、評価の着眼点として「正確」「タイムリー」「思いやり」という3つのキーワードが設定されています。

【1点】理解・納得レベル

情報の受発信の重要性を理解し、納得している

コミュニケーションスキルは「情報共有と意思疎通のためのスキル」と私は定義していますが、良好なチームワークのためには、一人一人が情報を「正確」に「タイムリー」に「思いやり」を持って受発信することが求められます。

この定義を「正しく理解している」「確かに!と納得している」と認めることができれば【1点】はクリアですが、次のステップである「行動=受発信」が少ない場合は【2点】を与えることはできません。

いわゆる「分かってるけど、動いてない」というレベルです。

ちなみに「正確」「タイムリー」「思いやり」という着眼点である3つのキーワードが頭になく「コミュニケーションってみんなと仲良くやることでしょ!」なんて勘違いをしているようなら「理解してない」という評価になり【1点】でもなく【0点】となります。

このように【1点】の理解。納得レベルでは着眼点=キーワードを、正しく理解し、納得しているかを評価します。

【2点】行動レベル

情報の受発信の重要性を理解・納得し、行動しているが、日常業務においてエラーを起こすことがある。

キーワードである「正確」「タイムリー」「思いやり」のどれかが欠けていてコミュニケーションエラーの原因となるようなことがあるなら「理解納得し行動はしているが成果には至ってない」として【2点】となります。

  • 発信する情報の正確性が疑わしい
  • 受信した情報を鵜呑みにして正確性の確認が少ない
  • 発信しているが、いつもタイミングが悪い
  • 緊急事態なのに、その連絡にパソコンメールを使う
  • 必要な情報を自発的に受信しようとせず「聞いてないです」と平気で言う
  • いわゆる「言い方」に配慮がなく、相手の気分を害する

などが、このレベルによくあるシーンです。

【3点】成果レベル

適切に情報の受発信を行い、日常業務においてエラーは少ない

日常業務において、常に「正確」に「タイムリー」に「思いやり」を持って情報の受信・発信を行っており、ほとんどエラーはなく「平時においては支障がない」というレベルなら【3点】です。

【4点】習慣・安定レベル

常に適切なコミュニケーションを実践しており、その安心感・安定感があり、周囲の信用を得ている。よってイレギュラーな対応も任せられる。

正しいコミュニケーションが「思考習慣」「行動習慣」となっていると認められれば【4点】です。

【3点】との違いは、日常業務を超えてイレギュラーな対応も安心でき周囲の信用を得ている状態です。

また、日常の言動から「しなければならない=義務感」ではなく「するべきだ=責任感」というレベルの思考を認めることができたり、また「受動的姿勢」ではなく「能動的姿勢」に達していると認められる状態なら【4点】です。

ただ、満点=5点に足りないのは「同僚、後輩へのアドバイスや働きかけ、動機付けなどの指導・拡散の行動」です。

【5点】相互支援レベル

自ら手本となるコミュニケーションを実現しており、組織全体のコミュニケーションスキルを改善・向上させるため、他者にも働きかけている

私が想定している「満点=あるべき姿」は「相互支援レベル」です。つまり、「チームの成長のために、他者の成長にも貢献すること」です。「みんなで成長して、良いチームにしよう!」と積極的に行動しているメンバーの姿は、すべての経営者が求めるところだと思います。

他者の課題を発見し「なにか自分にサポートできることはないか?」等を考え、他者に関与する姿勢が認められると【5点=満点】となります。

(参考記事)中小企業の人事評価|5段階評価「5点=満点」の大切な意味

5段階の人事評価基準の使い方

以上のように、ここで紹介している「5段階評価」は「当社の社員としてあるべき姿」に成長するプロセスを表していますが、実際に「あるべき姿=理想の人材」に近づいてもらうためには、そのサポート=支援が必要です。

続けて「人事評価基準」を「社員研修のテキスト」として使う方法と、定期的に行う「1on1:評価面談」の目的について紹介します。

人事評価基準は社員研修のテキスト

「人事評価基準」は「社員研修のテキスト」として使うことがおススメです。

前述したように「人事評価基準」は「経営者が求めるメンバーのあるべき姿」をリスト化したものであり、「こんなメンバーに成長して欲しい」という経営者からのメッセージでもあります。

プリントして配布するだけで正しく伝わればいいのですが、残念ながらそこまでは期待できません。

定期的に「人事評価基準」をテキストにして「スキルアップ研修」を実施しましょう。「あ~そろそろ人事評価の季節だなあ~」と、人事評価の時だけ思い出す、というような使い方では「成長支援ツール」としての効果は望めません。

人事評価基準は社員研修のテキストとして活用することを強くお勧めします。

1on1、評価面談の目的は2つ

さて、人事評価に「1on1:評価面談」が不可欠ですが、この面談は、半年に1回以上、できれば四半期ごとに全社員と30分~1時間を使って実施しましょう。

評価面談の目的は2つです。

  • 「評価者評価」と「自己評価」のすり合わせ
  • レベルアップのアドバイス

ひとつの目的は「評価者評価」と「自己評価」のすり合わせです。

評価面談に際しては、事前に「自己評価」を提出してもらいますが、本人がする「自己評価」と、評価者がする「評価者評価」が一致していればいいのですが、現実は複数の項目でギャップが発生します。

  • 自己評価:3点:日常業務に支障はないレベル
  • 評価者評価:2点:日常業務にまだ補助者が必要なレベル

という具合です。

どちらの評価が正しいのか?両者が事実に基づいて話し合って、どちらかに決定しなければなりません。そのための評価面談です。この手間を省くと、本人は「正当に評価されてない」と感じ、一方、評価者は「彼は自信過剰だ」と感じ、そのギャップがイヤなトラブルに発展します。

もうひとつの目的はレベルアップのアドバイスです。

現状の評価が【2点】であれば、どうすれば【3点】にレベルアップできるか?について、具体的にアドバイスし、加えて、モチベーターとして成長への動機づけを行うことも評価面談の重要な目的です。

まとめ

以上、5段階の人事評価基準について紹介しました。改めて確認しておきます。

  • 【1点】理解・納得レベル
  • 【2点】行動レベル
  • 【3点】成果レベル
  • 【4点】習慣・安定レベル
  • 【5点】相互支援レベル

各段階について、この5つの「境界線」を明確にすることが「人事評価基準」を作るコツです。これを丁寧に作ることで、使いやすいものに仕上がるはずです。

関連記事も含め参考にしてみてください。

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