私は、中小企業経営者から「経営計画」や「予算管理」の相談をよく受けますが、その大半の人が「予算」を勘違いしています。
- たぶん、これくらいは行くだろう、という「予想」
- これまでの流れからすると、この辺りに着地するかも、という「予測」
これらを「予算」と勘違いしているのです。
この記事では、そんな「よくある予算の勘違い」を紹介しながら「予算の定義」をまとめます。
この記事は「中小企業向け|管理会計(≒マネジメント会計)の設計と運用の概要」の補足です。
このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に、「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。
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【予算とは】
数字で計画を進捗管理
「予算」とは「計画」のことであり、「予算管理」は「計画管理」と言い換えることができます。
目標にアプローチするための計画。
つまりアクションプランを数字で表現したものが「予算」です。
計画に沿って進んでいるか?を数字によって「管理」する経営手法が「予算管理」です。
「予算(数字)」は、そのための「手段」であり、「目的」はあくまでも「計画達成」です。
したがって、「予算」の裏には、必ず「計画=アクションプラン」があります。
【類似注意】
予算っぽい “予算に似た資料”
私は、経営計画や予算管理についての相談を受けるとき、まず、現状の計画や予算の「資料」を見せてもらいます。
その「資料」の説明を受けると、残念ながら、その多くは「予算」ではありません。
そのほとんどが、一見「予算」っぽい「予算に似た資料」です・・・。
中には、きちんと「損益計算書」の形になっていて「見た目」は、キレイでしっかりした「予算に見える資料」もあります。
しかし、多くは次のような「資料」です。(マシな順番のリスト)
- 必達利益から逆算したという「根性損益計算書」
- たぶん「こうなるはず」という「予想損益計算書」
- 前年の120%で計算した「売上高予測」だけ(利益目標なし)
- 期待値・希望値など「夢の売上高」
さら、年間目標売上を毛筆(筆ペン?)で書いた「額縁」、前年比20%アップ!という「標語」など、「想定を超えた」ことも少なくありません。
これらに共通しているのは「数字だけ」で、その数字を裏付けとなる「根拠」や「計画」がありません。
それらは「予想」や「予測」であり、予算とは似て非なる「予算っぽい」ものです。
もし「正しい予算」があって「予算管理」が上手く運用できていれば、そもそも、私に相談しないはずですが・・・w。
【予算要件】
正しい予算は正しい計画が前提
前述したように「予算管理」は「計画管理」であり、「予算」は「計画」を数字に落とし込んだものです。
「正しい計画」を、数字に落とし込むと「正しい予算」になります。
「計画」が正しくないと、あるいは、そもそも「計画」が無ければ「正しい予算」にはなりません。
「正しい計画」とは「GSC(=ゴール+シナリオ+キャスティング)」の3つの要件が言語化された計画です。
「実行責任者(=キャスティング)」が「筋書(=シナリオ)」のとおりに行動すれば「目標(=ゴール)」は実現達成する、というフレームワークですが、これが「正しい予算」の「裏付け」になります。
この裏付けである「GSC」が曖昧であると、それに伴って予算も曖昧になり、そもそも「予算」を作成するはずなのに、出来上がったものは「予想」や「予測」であり、最悪の場合は「夢・希望」でしかなくなってしまいます。
「正しい予算」には、「GSC」が揃った「正しい計画」が必要なのです。
(参考記事)経営者の計画達成力|バックキャスト思考なら必ず達成できる
【予算作り】
計画から始める5つのステップ
上述したように「正しい予算」には、GSCが言語化された「正しい計画」があります。
したがって「予算策定」は、それ自体が独立するものではないので、実務的には「計画作り」から始めます。
一般的なステップを紹介します。
- Step1:中期経営計画(=36カ月のシナリオ)の策定
- ゴール設定:36か月後、何を達成し、何を実現するのか?
- Step2:短期経営計画の策定
- 【G】ゴール:中期経営計画の初年度、どこまで到達し、どこまで実現するのか?
- 【S】シナリオ:どうすればゴールに達するのか?のアクションプラン
- 【C】キャスティング:シナリオ実行の責任者、担当者は誰か?
- Step3:シナリオの数字化
- シナリオを実行すると、どんな数字(PL:損益計算書)になるのか?
- 中期経営計画の36カ月分を数字にする
- 売上と人員数、人員数と採用コストなど、連動する数字に注意する
- 万が一に備えて「予備費」を設ける
- Step4:矛盾のチューニング
- シナリオと数字に矛盾はないか?をチェックし、矛盾があれば「Step1~3」を繰り返す
- 36カ月の連続性に矛盾はないか?(例:11か月目~13カ月:期の変わり目での変化が大きい)
- Step5:計画の予算化
- 「GSC」を数字化して、納得できる数字になれば、予算として「内定」
- チームで共有しやすいように「丸い数字」に端数処理して「確定」
(参考記事)目標設定|利益目標はどうやって決める?6つのパターン
【効果効用】
PDCAでチームが成長する
この「予算」の話につきものなのは「予算の通りに行くなら誰も苦労しない!」という意見です。
しかし、「じゃあ、計画立案や予算管理をやめれば、苦労せず経営できるのですか?」です。
会社経営には「やってみないと分からないこと」が必ず含まれます。
むしろ、その方が多いかもしれません。
だからと言って「やらない」という選択肢はありません。
ここに「予算」か「予想」か「予測」かの違いが出ます。
「予想」や「予測」は、当たったか?外れたか?の「数字の確認」しかできませんが、「予算」であれば「なぜ外れたか?」という「理由の確認」ができます。
つまり「PDCA」です。
「予算管理」は、PDCAの典型です。
- 「P:計画・予算」を立てて
- 「D:実行」して
- 「C:月次決算で進捗管理し、課題発見」して
- 「A:課題解決する」
このサイクルを毎月グルグル回すことでチームの課題解決力が高まっていきます。
つまり「チームが成長する」のです。
「予想・予測」が「当たったか?外れたか?」で一喜一憂するチームとは、まったく違う成長曲線を描きます。
(参考記事)中小企業の予算管理|管理会計は会社の健全な成長に欠かせない
【相談事例】
売上予算だけじゃダメなのか?
「売上予算だけじゃダメなのか?」
この相談も少なくありません。
細かな予算表を作るのは手間がかかるので「売上予算」だけで「事足りる」という考え方です。
私の回答は「売上予算だけじゃダメ」です。
そもそも、会社は「利益を出すチーム」であり、「売上」は、その手段にすぎません。
「売上予算だけ」というのは、よくいう「手段の目的化」です。
また「売上予算だけ」であれば「売上が主役」となり「売上拡大の為なら犠牲も仕方がない」というカルチャーになりがちです。
いわゆる「成長」ではなく「膨張」するリスクを伴います。
「利益確保のために、どのようにアクションするか?」という「計画(GSC)」を明確にすることで「正しい成長」を持続することができます。
(参考記事)「成長企業」と「膨張企業」の差
【要点整理】
課題解決力を高める重要ツール
中小企業の予算管理における「予算の定義」について整理しました。
「予算」は、「予想」や「予測」とは違って、目標に向かう計画=アクションプランを数値化し、その予実分析によって課題解決力を高める重要なツールです。
関連記事も含め参考にしてみてください。
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