経営計画の実務|成長フェーズに応じた7つのパターン

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会社の成長フェーズに応じて、経営計画はいくつかのパターンに分けることができます。

本稿では、中小企業の経営計画について、7つの成長フェーズごとにフォーカスすべきポイントを紹介します。

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この記事は「中小企業向|経営計画の策定と運用、3つの新視点」の補足です。

会社経営をフライトに例えれば、離陸から無事に着陸するまで7つのフェーズに分類できます。会社の現在のフェーズに応じて「何に重点を置くか?」を確認することが計画のアウトラインを整理するにあたって大切です。

離陸=起業フェーズ

これから起業する段階であったり、まだ創業から間もないテイクオフ=起業フェーズでの経営計画では、下記の点が疎かにならないように特に注意が必要です。

  • 事業戦略
    事業プランを実際に行動に移す段階です。時間軸のリアリティを高めておく必要があります。
  • 組織戦略
    多くの場合は「少数精鋭」でのスタートアップになります。「初期メンバー」の人選や連携について緻密にシミュレーションしておく必要があります。
  • キャッシュフロー計画
    初めて「お金を動かす」ことになります。「損益」も重要ですが、それ以上に「キャッシュフロー計画」の精度については、税理士等の専門家のレビューを受けるなど、慎重な計画が求められます。また、リスク想定として、万が一資金が不足したときの調達についても想定しておく必要があります。
  • リスク想定
    「やってみないとわからないこと」が多いこのフェーズにおいては「心配性なくらいがちょうどいい」ものです。


上昇フェーズ

無事にテイクオフできた後、さらに高度を上げるフェーズにおいては、下記のテーマについての計画精度が重要です。

  • 経営課題のピックアップ
    起業して初めて気付く経営課題が多いフェーズです。さらなる拡大に備えて、小さな課題を軽視せず、この段階で課題解決する計画を盛り込んでおきましょう。
  • 採用戦略
    事業の拡大に応じて人員の不足が想定されます。成長の妨げにならないように必要な人材を必要なときに確保できるよう採用戦略を具体化しておくことが重要です。
  • 金融機関対策
    銀行等の金融機関との取引が多くなっていきます。良好な関係を築き、信用を積み上げられるようにマネジメント会計による業績管理の仕組みを構築するなど、金融機関に対する情報開示の準備を進めましょう。

(参考記事)中小企業の経営計画|利益目標の設定方法、6つのパターン

安定飛行フェーズ

一定の高度に達したら「次の成長期」のため足元を固めましょう。

さらに高度を上げれば、今は小さな課題であっても、それが大きなリスクとして影響することが少なくありません。

次の負荷に充分耐えられる体質を整える必要があります。

急成長による空中分解を避け、より持続可能な体質に強化するためにとても重要なフェーズです。

  • 経営課題のピックアップ
    上記の上昇フェーズと同じく、次の拡大に備えて、この段階で経営課題をすべて洗い出し、安定感を高めるため課題解決計画を盛り込んでおきましょう。
  • 財務基盤の形成
    上昇フェーズにおいて身につけた収益力によって、最低限の内部留保を蓄積しておく必要があります。「固定コストの1年分」など、具体的な目標値を設定し軍資金=自己資金の確保を進めましょう。
  • リーダーシップの強化
    上昇に応じて、チームも大きくなります。従来の「ナベブタ組織」では、統率がとれなくなるリスクがあります。一段落している安定フェーズにおいて、次のフェーズのための「リーダー育成」に努めましょう。

再上昇フェーズ

一定の安定期を経たのち、セカンドステージに向けて、さらに高度を上げる際の計画は下記の点に注意しましょう。

  • 現状認識
    このフェーズにおいては十分「会社らしく」なっています。再上昇に備えて自社の「強味・弱み」を言語化し、リーダークラスと共有しましょう。
  • 新たな目標設定
    「次はどこまで上がるか?」「最適なサイズは?」など、規模感をシミュレーションし「身の丈に応じた目標」を設定しましょう。
  • 戦略の再構築
    起業~上昇段階とは市場環境や競争環境も変化しているはずです。再上昇するにあたり、戦略を再構築しておきましょう。

立て直しフェーズ

何らかの理由で傷付いたときは「立て直し」のための時間が必要となります。そのような再建フェーズにおいては、下記のようなテーマが優先されます。

  • 課題認識
    「なぜ傷付いたのか?」、本当の原因を言語化することが立て直しには不可欠です。現実から目を背けることなく振り返りましょう。
  • 組織再編
    会社の立て直しは「事業再構築」に併せて「組織再編」が伴います。ゼロベースでチームビルディングに取り組みましょう。
  • 財務状態の回復
    多くの場合、バランスシートが傷付いています。目的はバランスシート(貸借対照表)であり、PL(損益計算書)は手段であるとの視点を持って「内部留保」の回復プランを整理しましょう。資金と内部留保に連動しない利益計画では足りません。

(参考記事)中小企業向|勘定合って銭足らず?「黒字倒産」のカラクリ

機長交代=事業承継フェーズ

いわゆる「事業承継」の段階です。後継者、あるいは譲渡先に無事バトンタッチできるように会社を整えるフェーズです。

  • 出口オプションの想定
    経営者の出口は「承継・売却・廃業」3つしか選択肢がありません。どの出口から出るのか?どの出口でも出られるようにするのか?出口のオプションごとに具体的な「出方」をシミュレーションする必要があります。
  • 次期経営チームの育成
    事業承継フェーズの最大のテーマは「自分がいなくても回る会社」にすることです。そのための「次世代経営チーム」の育成プランが経営計画の中心となります。
  • フェードアウトプラン
    事業承継フェーズにおいて、現経営者は「徐々に存在感を消していくこと」が重要です。どのようにして、どの段階で、どれくらいの時間をかけてフェードアウトするかを計画します。

着陸=廃業フェーズ

事業承継を前提としない場合は、会社を清算=廃業しなければなりません。ハードランディングにならないよう「機内」「機外」「空港」に迷惑をかけないように無事着陸するための計画になります。

  • 事業の整理
    廃業に向けて処分する資産、解除する契約などの整理を行い、そのひとつひとつの時期や方法を計画に盛り込みます。
  • 従業員のサポート
    全員解雇が前提です。一人ひとりの「次の人生」をサポートするための計画に、経営者の誠実さと感謝の気持ちが表れます。
  • 清算課税
    廃業にあたり、会社(法人格)が消滅しますが、それに伴って課税も発生します。廃業に当たって「必要としている資金」が期待通りに手元に残るか、税理士などのサポートを得て、試算しておくことで計画のリアリティーが増します。

(参考記事)経営者の引退・・「出口」を知らない経営者はいずれ後悔する

まとめ

さて、どうでしょうか?

会社のフェーズを7つに分けて、特にフォーカスすべき経営計画のポイントを紹介しました。

経営計画の基本形に加えて、それぞれのフェーズに応じて「フォーカスするテーマ」を特に精細にプランニングするように注意してください。

関連記事も含め参考にしてみてください。

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