経営スキル|「給与とは何か?」を深掘りして考えてみる

HORII
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おはようございます!

今日は、2024年第43週の土曜日。

早くも「冬季賞与の話」がチラホラでてくる季節になりました。

この「冬の賞与をどうしよ?」という話、私にとっては定番の話題があります。

そもそも、給与とか賞与ってなんだろう?」という少々「重めの話」です。

この話、中には「どうでもいい」と一蹴する経営者もいます。

しかし、私は「大事な話」だと思っています。

いわば、経営者の「給与哲学」と言ってもよい価値観の話です。

今後、人材不足による採用難や、転職市場の活況による優秀な人材の流出リスクへの対策としても、とても重要なテーマです。

今週は、賞与制度の設計にも関わる「中小企業にとって給与とは何か?」について整理しておきます。

これも「経営脳の自主トレ」には、いいテーマだと思います。

この機会に考えてみてください。

このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に、「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。
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【深慮理由】
なぜ”給与”を深掘りするのか?

私がまだ税理士事務所を経営しているとき(2022年3月に事業承継)の話です。

もう10数年も前の話になりますが、ある新人君が私のデスクまでやってきました。

唐突に「社長、ありがとうございます!」と、私に頭を下げました。

「ん?ナニ?なんかしたか?」とキョトンとする私。

「お給料、ありがとうございました!」

私は、とっさに「いや、お礼を言うならオレじゃなくてお客さんに言えよ」と返しました。

今度は、彼がキョトンとしています。

HORII
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「オレは、君たちに給与を支払ってるなんて考えたことないよ!」

新人君
新人君

「???」

HORII
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「オレはお客様から頂戴した報酬をみんなに分配しているだけや。

ま、その分配の手間にお礼を言ってくれるなら、わかるけど(笑)」

新人君
新人君

「給料は会社からもらってるとばかり思っていました!」

HORII
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「ちゃうで!感謝するなら、オレよりお客さんにお礼を言わないと!」

私が想像してる以上に深く刺さったみたいで、そのあとの彼の考動が変わりました。

私は、そんなに「いい話」をしたつもりはありませんでした。

しかし、その後、このエピソードを大切にして税理士事務所を経営していました。

「給与の意味を伝えるって効果的やな」と気付いたからです。

中小企業経営者の中には、会社の財布どころか「自分の財布から給与を支払っている」と思っている人もいます。

理論的、会計的には「オーナー会社の資産」から支払っているので、その考え方を間違っているわけではありません。

しかし「気持ちの問題」っていうのも、メンバーのモラルやモチベーションに大きく影響するものです。

このエピソードがあってから、それまで「私の考え方」という個人的な価値観を、自社のメンバーのみならず、若い人たちに話すようにしました。

「給与とは何か?」

これを整理しておくことで、採用や育成を含む人材マネジメントにおける「軸」ができます。

さらに、メンバーのお客様に対する感謝の気持ちにもリアリティを持たせることができます。

反対に、この「軸」がないと経営者は対処療法的な行き当たりばったりの考動をしてしまうことがあります。

例えば、社員のご機嫌取りや、懲罰、自分自身の非を隠すために、あるいは、かけひきの道具として。

給与や賞与を「そんな使い方」をしてしまうことがあります。

「そんな使い方」をしたときは、遅かれ早かれ経営者は、そのリバウンドに見舞われる。

私は、そんなシーンもたくさん見てきました。

このように、中小企業の現場で起きている様々なシーンを観察していると「給与とは何か?」を経営者が言語化しておくことの重要性を感じざるを得ないのです。

これが、「給与」を深堀りを提案する理由です。

【現実整理】
評価+気遣い+意図+世間体

中小企業で支払われている給与を、計算要素ではなく「意味合い」で整理します。

給与は、大きく「評価」「気遣い」「意図」の3つに分解できますが、さらに「世間体」を反映しているケースも少なくありません。

まずは、リアルな現場を整理しておきます。

評価の反映

給与には評価が反映されています。

仮に、きちんとした人事評価の制度がなく、世間では「鉛筆なめなめ」と言われることがあっても、「公表してないけど経営者の内なる基準」があって、社員たちの出来・不出来で給与は上下します。

気遣いの反映

中小企業において「経営者の気遣い」が、給与に反映されていることもよくあります。

ルール化されているかどうかは別として、経営者の気遣いには様々あります。

「結婚したから」「子供ができたから」「資格を取ったから」「たまたま手柄があったから」などの「プラスの気遣い」。

あるいは、失敗等のペナルティとして「マイナスの気遣い」が反映されることがあります。

意図の反映

経営者の意図」が反映されているケースもよくあります。

もっとも多いのが「期待を込めて」です。

これが公平に反映しているならいいのですが、「目にかけているメンバー」「かわいいメンバー」などに「君だけよ!内緒ね!」なんてやっている経営者も後を絶ちません。

また、意外と多いのが、口数の多いメンバーを「おとなしくさせるため」なんてこともありますね。

世間体の気遣い

上記とは、少々異なりますが「世間体」を気にするケース。

極端な場合は、評価もせず「30歳だからこれくらいだろう」のような決め方です。

その他

上記以外にも、給与には、様々な事情や経営者の考え方が反映されていることがありそうです。

しかし、これを機会に、あなたの会社の給与を「意味合い」で分解してみてください。

自分自身でも意識していなかったことに気付くかもしれません。

【本質深耕】
給与の本来あるべき姿は?

以上、給与に反映されているものの「意味合い」を整理しましたが、そもそも、給与とはどうあるべきなのでしょう。

私は「評価」以外に上記のような「気遣い」「意図」「世間体」などを含むことは「アリ」だと思います。

むしろ、それが現実であり、杓子定規に「評価のみであるべき」という「タテマエ」を論じるつもりはありません。

ただ、大切なのは「ブラックボックス」にしてはならないということです。

評価も気遣いも意図も、それらをオープンなルールとしての制度化が必要です。

また、メンバーからの改正リクエストには積極的に耳を傾けましょう。

「お互いにとって気持ちのいいルール」として、常にアップデートを重ねることがとても大切です。

経営者とメンバーの間に、かけひきや、探り合いは必要ありません。

経営者も含むチームの各メンバー間の信頼関係、ひいては、心理的安全性にも関わる重要なテーマです。

パフォーマンスの高い「いいチーム」として成長を続けたいのであれば、「オープンなルールで運用すること」があるべき姿であると思います。

給与は交渉材料ではなく、チームの信頼を築くツール」なのです。

【重要視点】
制度設計にはコンセプトが必要

では、「オープンなルール」をどのようにして設計、運用するか?です。

ここで「給与とは何か?」というコンセプトがとても重要になってきます。

「オープンなルール」は、そのコンセプトを具現化したものです。

そのルールを見れば、その会社の経営者の考え方が分かります。

両者は表裏一体と言っても過言ではないでしょう。

上記に、私のエピソードを紹介しましたが、私のコンセプトは「給与や賞与は、成果の分配である」です。

給与や賞与のルールは、この考えや価値観を実務に落とし込んだものになっています。

このブログで紹介している「業績連動型賞与」も、この考え方がベースになっています。

とはいえ、「給与とは何か?」については、様々な考え方や、あるいは、個々の会社の事情、さらには、業界、業種、さらに職種の特性や特殊性など、様々な要素が複雑に絡み合っているので「これが正解だ!」と示すことはできません。

言い換えれば、給与のコンセプトは、会社ごとにオリジナルで、経営者自身が「当社の正解」を組み立てる必要があります。

以下、考え方のバリエーションを紹介するので、これを参考にして「あなたの給与についての考え方」の整理してみてください。

給与はコストか?投資か?

給与は、過去と現在における保有スキルや、具体的な成果を反映して、現在の利益から支払うコストであるという考え方です。

営利企業が大前提なので、コストは少ないに越したことはありません。

一方で、給与は将来の利益を産むための投資であるという考え方もできます。

仮に、単年度では赤字であっても、来期以降のリターンを期待して「前払いする」という考え方です。

(参考記事)中小企業のための人的資本経営:ゲーリー・ベッカー先生に学ぶ

成果分配?時間の対価?
苦労の代償?

また、私が考える「成果分配」とは反対に「成果は反映する必要がない」という考え方をする人もいます。

その場合、「時間の対価」、つまりメンバーの時間を買ってるという考え方や、「やりたくない仕事、つらい仕事を、よくガマンしてくれた」と、その苦労に報いるという「償い」的な考え方もあります。

どんなチームが理想なのか?

経営側に様々な考え方があるように、メンバー側にも様々な考え方があります。

あなたが理想とするチームのメンバーは、「どんな給与制度を希望しているか?」を知る必要があります。

彼ら彼女らの「給与賞与に対するニーズ」です。

「安定的な給与」を望んでいるメンバーに、ハイリスクハイリターンな「フルコミッション給与」を提示しても、ソッポ向かれることは容易に想像できるはずです。

「ハイリスク・ハイリターン」を望むメンバーを集めた方が、理想のチーム作りができるのか?

それとも「ローリスク・ローリターン」を望むメンバーを集めた方がいいのか?

それとも「ローリスク・ハイリターン」というように、どちらも期待できるルールにするのか?

メンバーのニーズも反映したうえで「当社にとっての給与とは何か?」を整理しましょう。

制度は「理想のチーム」「理想のメンバー」をイメージし、そのニーズにマッチする制度を組み立てましょう。

経営者の独りよがりや価値観の押しつけになるのはキケンです。

【要点整理】給与に哲学は必要か?

さて、どうでしょう?今週は、「そもそも、給与なんだろう?」という「給与哲学」ともいえるような少々「重めの話」でした。

このような「給与哲学」について、その要否については賛否両論があると思います。

あなたは、どう思いますか?

関連記事も含め参考にしてみてください。

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