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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
おはようございます!
2024年第18週、GW真っ只中の土曜日です。仕事している人、ゆっくりしている人、ひょっとしたら海外で過ごしている人など、様々だと思いますが、私はゆっくり組です(笑)。
さて、今日は「ちょっとイライラしてる話」を整理しておきます。
「イライラ」とは・・・GW前に「財務分析」や「経営指標」の重要性を力説する「ある人」と、ちょっとした議論になったから・・・まだクールダウン出来てないんですね(笑)。
・・・ってことで、その議論になった「財務分析」について整理しておきます。
この記事は「決算書中小企業向け|決算書活用マニュアル」の補足です。
【きっかけ】改善するためにまず財務分析?
熱くなった議論は「中小企業の財務体質をどうやって改善するか?」の「方法論」についてでした。
「その人」は・・・
改善するためには、まずは財務分析やね
と言います。その通りです。違和感はありません。
私が「どんな分析をするの?」と聞くと
財務分析と言えば、**比率とか、**回転率とか、いろいろあるでしょ?!
と言うので
そんな分析をしたって原因なんてわからんでしょ?
もっと言えば、良し悪しもわからん!
と返すと、だんだん熱くなってきた、って感じです(笑)。
【白熱反省】財務分析は役に立たないっ!
そこで、私は「例題」を出しました。
自己資本比率5%、ってどうよ?
5%では少ない。良くないよ!
じゃあ、どれくらいがいいの?
(堀井さん、知らんの?って顔で)自己資本比率は、最低でも20%ないとアカン!
ふ~ん・・・なんで20%なん?
それが常識やん!
なんで常識なん?
知らんがな・・・
は?
税理士やコンサルと言えど、**比率とか、**回転率の良し悪しの話をする人のほとんどがこんなもんです。
一般に良い悪いとされているラインを盲目的に信じて?「それらしく」話しているだけです。
私は常々「財務分析なんて中小企業の役に立たない」って思ってるので、この手の人についついエキサイトしてしまったんですね(大人げない:恥)。
ちなみに、この話、詳しくは後述しますが「簿価で自己資本比率を計算しても何の意味もない」「大切なのは率ではなく金額」という2つの理由で「役に立たない」のです。
【世間通説】ナンセンスな指標たち
ちまたでよく見かける「世間一般の財務分析」、それを経営に活かしている経営者って「いない」と思います。
なぜ?
「経営の役に立たないから」あるいは「正しくないから」です。
ただ「無視」することはできません。なぜなら、銀行等の金融機関をはじめとする「外野の人たち」は、上記の「その人」のように、盲目的に信じている財務分析の理屈であなたの会社の決算書を分析したり評価するからです。そんな人たちに「誤解」されるのも困るので「世間一般の指標」は、経営には役立ちませんが「外面(そとづら)」を良くするためには知っておく必要はあります。
そんな、経営には役に立たないけど、外面を良くするために知っておいた方がいい「世間一般の財務分析」 の代表例は下記のような指標です。
これらの指標は「本当の財務状態」を表さないので、経営の役には立ちませんが、金融機関に提出する決算書を少しでも良く見せるための参考にはなります。
流動比率
流動比率=(流動資産)/(流動負債)
会社の安全性を示すと言われている「流動比率」は流動負債より流動資産が多い方が安全という指標ですが・・・もし、流動資産の中に換金できない資産が含まれていれば?と考えると額面通りに判断できません。
例えば、この貸借対照表によると
「流動資産:12,000」>「流動負債:11,000」
なのでギリギリセーフって感じですが、もし「その他の資産:2,000」は換金できない資産だとすれば、評価は逆転します。
つまり、流動比率は、簿価で計算しても意味がないのです。
極端な話、「前払費用100|未払金50」だったら「負債の2倍の資産があるから安全」となりますが、「は?」ですよね。
短期的な安全性を正しく計算するなら「時価換算」が必要なのに「世間一般」では「簿価」で計算するので「換金できない資産」や「簿価より評価が低い資産」も額面通り含んでいます。
そのように、価値のない資産を含めて計算する「流動比率」なんてナンセンス!でしょ?
自己資本比率
自己資本比率=(自己資本=純資産)/(資産合計)
自己資本比率も「安全性」の指標とされています。
上記の「その人」が言うように、自己資本比率が高い方がよいとされていますが、その通りです。異論はありません。
でも・・・ですよ・・・
「資産1,000万円・純資産300万円」なら
「自己資本比率は30%」であり「20%以上あっていいね!」って評価されますが「たった300万円で安全なん?」って思いませんか?
何が言いたいか?
自己資本は「比率」ではなく「金額」で判断すべしなのです。
中小企業において「資産100億・純資産1億」なら「自己資本比率は1%」であり「ヤバい会社!」って判断されそうですが、ヤバイですか?「とりあえず1億あれば大丈夫だろう!」ってほとんどのオーナー経営者は思うはずです。
とはいえ、100億円の資産の中に「回収不可能な不良債権1億円」が含まれていれば、たちまち「純資産(時価)」はゼロになってしまいます。
つまり、この「自己資本比率」も「時価(換金価値)で計算しないと意味がない」のです。
(関連記事)こうなってはならない!「ヤバイ貸借対照表」のサンプル
売上や利益の成長率
私は、中小企業の成長性分析にも違和感を持っています。
売上や利益が右上がりでないと成長性がないという評価ですが、どんな業種であっても「適正規模」があります。
トップの交代が難しいオーナー中小企業の場合、その「適正規模」は経営者のスキルで決まる、といっても過言ではありません。
もし、成長し続けなければならないと思い込んだ経営者が、自身のスキルを越えて規模拡大にまい進したら・・・その方がよっぽどヤバイです。
「売上」や「純利益」がずっと横ばいでも、相応な規模で堅実経営をしている方がよほど安全だと思いませんか?
やたら「成長率」で会社の良し悪しを判断する人たちも私はナンセンス!と思っています。
経常利益率
経常利益率=(経常利益)/(売上高)
企業の収益力を示す指標と言われています。
当然、高い方がいいわけですが、公認会計士の監査の必要のない中小企業の経常利益なんて「なんとでも」なります。
たとえば、社長の役員報酬を半額にすれば、たちまち経常利益は高くなります。減価償却を半額にしても同様です。
そんな「操作できる経常利益」で分析しても意味がありません。ナンセンスです。
(参考記事)管理会計|ビジネスの真の実力は「創造付加価値」に表れる
資本回転率
資本回転率=(売上高)/(総資本)
クドイ説明はしません。
総資産の何倍の売上高か?という指標で「資本の効率性」を示す指標ですが「だからなんやねん!」と思っています(笑)。
中小企業経営者の中で「資本効率を上げなければ!」と意識している人に会ったことはありません。
【目標設定】”あるべき姿” を正しく理解する!
ちょっと乱暴な言い方になりますが・・・
私の考え方は
「財務分析をチンタラやってるヒマがあれば、さっさと目標設定しよう!」です。
中小企業の財務体質を改善するためには、まず「当社にとって理想の財務状態は?」を具体化し、当事者である経営者が正しく理解することがとても重要です。
中小企業の経営者に「自己資本比率を20%に改善しましょう!」と言ったところでキョトンとされて終わりです。そんな「タテマエの数字」なんかどうでもよく、むしろジャマです。経営者に「**比率」「**回転率」とかを示してもほとんど改善には結びつきません。
何より大切なのは「あるべき姿」を明確にし、経営者自身が正しく理解することです。
【強化実務】財務体質を改善する4ステップ
中小企業が財務体質の改善に取り組むときの私のコーチング手法は次のとおりです。
賛否両論あることは承知していますが、これが、私の30年以上の税理士経験から得た結論です。
STEP1:貸借対照表の目標設定
大切なのは「当社の貸借対照表はどうあるべきか?」です。
当社の貸借対照表は「どうあるべきか?」の解像度を上げ、可視化したうえで「いつまでに、どこまでいけるか?」というプロセスを吟味し、中期的な目標設定をすることが重要なんです。そこには「流動比率」も「自己資本比率」も「何たら回転率」も不要です。
STEP2:課題の明確化
課題とは「あるべき姿」と「現状」の「ギャップ」です。
「3年後の貸借対照表」と「直近の貸借対照表」を比較するとギャップ=差額が明確になります。
メインは「時価純資産をいくらにするか?」ですが、その他にも次のようなテーマについて課題を整理して明確にします。
- キャッシュ残高をどこまで増やすべきか?
- 在庫はどれだけ圧縮すべきか?
- 回収と返済を含む支払いの収支バランスをどう改善するか?
- 償却すべき不良資産は?
- 借入金を主とする負債をどこまで圧縮すべきか?
STEP3:課題解決のための収益性改善
「貸借対照表」を動かすのは「損益計算書」です。
「貸借対照表」の課題を解決するために必要なのは「収益」です。
「貸借対照表」をもっと良くするために、どれだけの利益が必要なのか?をシミュレーションして「目標利益」を算出します。結果として「予算」が出来上がります。
STEP4:36か月の経営計画
上記で3年分の「目標貸借対照表」と「目標損益計算書」が完成します。
しかし、この段階では「絵に描いた餅」です。
実際に改善効果を得るためには行動計画が必要です。
それが「経営計画」であり、3年分ですから「36か月の経営計画=行動計画」となります。
「目標貸借対照表」にたどり着くために36カ月「月々、誰が何をすべきか?」を具体化します。
あとは「やるだけ」です。
(参考記事)中小企業の経営計画の成否は「ゴール設定」で決まる
【まとめ】真の姿がわかる指標で分析すること
さて、どうでしょう。今週は少々乱暴なコラムになりましたが、言葉足らずも含めてお許しください。
「世間一般の財務分析」によって得られる指標の多くは役に立たない=百害あって一利なし、が言いたかっただけです・・・。
ただ、誤解してもらったら困るのは「分析がいらない」と言っているのではありません。
「財務分析は必要」です。
ただ、そのときに「世間一般の指標」ではなく「真の姿がわかる指標」を使うことに気を付けてほしいのです。
その具体的なツールが「マネジメント会計(管理会計)」に他なりません。
(参考記事)中小企業の「データドリブン経営」、軸は「マネジメント会計」
関連記事も含め参考にしてみてください。
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