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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
ますます人材の成長が重要な時代になってきました。
特に、中小企業・スモールカンパニーにおいては、メンバーの人数も限られており、ひとり一人のパフォーマンスが会社全体のパフォーマンスに大きく影響します。
そんなことは百も承知なのに「どうすれば人材を育てられるのか?」と悩んでいる経営者は少なくありません。
この記事では、10人~100人規模の中小企業における「人材が育たない理由」をヒントにして、人材育成の重要課題を整理します。
この記事は「中小企業向け人材育成|人が成長する仕組み作りの概要」の補足です。
「成長が遅い」と感じるのはナゼ?
そもそも、メンバーが「成長してる」とか「成長してない」って、何で判断しているのでしょうか?
それは、おそらく、彼ら彼女らが、経営者の期待に「応えている」か「応えていない」かだと思います。
経営者なら誰でも個々のメンバーに「期待」をしています。「スキルを高めて、もっと活躍してほしい」と。
その期待に応えてくれるメンバーは「成長したな」とうれしくなるし、反対に、期待に応えてくれないと「相変わらずやなあ・・・」と悩ましい対象になってしまいます。
人材側の課題
私は「中小企業に属する人の能力に大差はない」と思っていますが、現実は「デキるヒト」と「デキないヒト」がいます。なぜ、この「差」があるのか?です。
この「差」は「現象」としてはスキルの差なのですが、このスキルの差が付いてしまう本質は「考え方の差」にあると思っています。「考え方」に差があるから「スキル」に差がついてしまう、という「仮説」です。
この「仮説」が正しければ、スキルの差を埋めるためには、技術や手法をインプットするのではなく「考え方を正せばよい」ということになります。
実際、私は30数年間の税理士事務所経営において、このスキルの差の原因である「考え方の差」を痛感し「実務的な指導」より「考え方の指導」を意識して取り組むことで「仮説を検証」し、その結果「間違ってない」と確信しています。
この実体験を踏まえて、私は人材育成のコーチングの現場では「社長、考え方の勉強をしよう!」と提案することにしています。
学ぶべき、あるいは、わきまえるべき「考え方」の勉強にもいろいろありますが、その中でも特に優先しているのは「成長とはナニか?」「社会人とはナニか?」「組織人とはナニか?」の3つです。
この3つの考え方は、当然すぎて「そんなの常識でしょ!」「わざわざ今さら?」という反応があることも少なくありませんが、自問自答してみてください。「成長」「社会人」「組織人」を分かりやすく社員に説明できるか?意外と説明しづらいと思います。
以下、この「3つの考え方」について紹介します。
成長の意味を知らないから育たない
これは「そもそも論」です。
成長が遅い人の多くは「成長ってなにか?」をよく分かっていなかったり、あるいは、勘違いしています。
そのような人に「成長してほしい」と願っても、そもそも「成長」という言葉が労使で共通言語になっていないので「ズレ」が生じるのは当然です。
改めて「成長」という言葉の意味についての共通認識できているかを確認しましょう。
「成長」とは「もっと役に立つように進化すること」です。
極端な話、勉強して知識が増えても、その知識が誰の役にも立たないのであれば、それは「自己満足」の域を出ず、「成長」ではありません。勉強した結果、誰かの役に立つから「成長したな」と周りに認めてもらえるのです。
このように、成長が遅い人の原因のひとつは、そもそも「成長の意味を知らないから」の可能性があります。
(関連記事)中小企業の人材育成|「成長の定義」を共有する大きな効果
社会人の意味を知らないから育たない
なかなか成長しない人(=もっと役に立つように進化しない人)をよく観察していると、そもそも「社会人としてどうなん?」と疑問を感じることが少なくありません。このような人には、ビジネスパーソンの前に「社会人の意味」をインプットしてあげる必要があります。
社会人とは?という定義について、一般的には様々な説明がありますが、私は次の方程式で表しています。
(社会人)=(自覚)×(役に立つ)×(迷惑をかけない)
極めてあたりまえのキーワードですが「社会人とは?」についてチーム全員の共通認識することが狙いです。このキーワードのどれが欠けても「社会人としてアウト」ということを全員で共有することが大切なのです。
- 社会人としての自覚がない・・・論外
- だれかの役に立ちたい、という気持ちが弱い
- だれかに迷惑をかけても平気
たとえば、会社のルールを守らなければ、だれかに迷惑をかけている、ということになりますが、社会人とはなにか?の共通認識ができていると「ルールを守りなさい!」ではなく「社会人として迷惑をかけてはいけません!」と言葉をかけることができます。
成長が遅く、実務的なスキルがなかなか上達しない人は、「社会人としての自覚があるか?」「役に立とうと考えているか?」「迷惑をかけてはならないと考えているか?」を確認し、欠けているようであれば、改めてインストールしてあげることが大切です。
組織人の意味を知らないから育たない
成長が遅い人の原因として考えられる3つめは「組織人」です。
チームの一員としての考え方が欠けていないか?を確認します。
私は「組織人」について次の方程式で表しています。
(組織人)=(目的認識・目標認識)×(役割認識)×(行動・実行)
これも「当たり前」のキーワードが並んでいます。
- 目的認識・目標認識:会社の目的や目標を正しく理解し、認識しているか?
- 役割認識:目的実現・目標達成のための自分の役割を正しく理解し、認識しているか?
- 行動・実行:自分の役割を果たしているか?
これらのいずれかが欠けると「組織人として=チームの一員としてダメ」という話です。
冒頭に書いた「経営者の期待」さらに「仲間の期待」に応えるために必要な3つです。この「組織人の意味」を知らなかったり、日常の意識レベルになければ、その社員にとって「スキルを上げる理由」がなく、当然、その結果、成長は鈍い、ということになります。
もうひとつ大切なこと「メンタル」
上記の3つとは別に、もうひとつ大切なことを付け加えておきます。
それは「メンバーのメンタル」です。
メンタル的に何か問題を抱えている場合は「成長の前提」が整っていません。「仕事のこと」「プライベートなこと」「健康上のこと」など、その理由は様々ですが無視することはできません。むしろ、気付いてあげてフォローすることが大切です。
メンタルに問題を抱えているのに「成長とは?」「社会人とは?」「組織人とは?」と問いかけても、それはむしろ悪影響を及ぼすリスクさえあります。
人材育成の大前提として、メンタルが健全か?は、雇用責任者として常に注意しておく必要があります。
(参考記事)人材が育たない理由は「メンタル」が原因かもしれない
経営側の課題
人材の成長は、上記のように「当事者側の問題」もありますが、反対に「経営側の問題」が原因であることも少なくありません。
少々、厳しいことを書いておきます。
私の経験上、「人材育成」に悩んでいる経営者を観察していると、そのほとんどは「人材が育たない」のではなく「人材を育てるスキルが不足している」あるいは「人材が育つ環境ではない」というのが原因です。
以下、人材が育たない経営側の課題としてよくあるケースをリストアップするので、心当たりがないかセルフチェックしてみてください。
経営者の姿勢に問題がある
自責で考えれば、会社で生じる諸問題や課題のすべては経営者に原因と責任がありますが、その中でも、人材育成において、直接的に経営者に原因があると思われるケース。
- そもそも、人材育成にホンキでない
- 経営者自身の成長意欲が希薄
- メンバーにとっての魅力的なゴールが示されておらず「何のために働いているか?がわからない」
(関連記事)中小企業の人材育成|経営者自身が成長のお手本を示す効果
会社が楽しくないから
人材のパフォーマンスは「スキル」×「モチベーション」です。
優れたスキルを持っていても、モチベーションが低ければ、期待通りに活躍してくれません。「スキル」ではなく、会社(職場)が楽しくないので「モチベーション」が低いのではないですか?
- 企業風土や企業文化に馴染めない
- 適正と役割がアンマッチ
- 会社が目指しているゴールに共感できない
- いわゆるブラックや何らかのハラスメント
- メンバー同士が不仲
疲弊しているから
過剰な業務負荷やストレスにさらされる場合や、ワークライフバランスが悪い場合、メンバーは仕事に集中できなくなり、成長意欲は消え失せ「成長どころじゃない」ってことになります。
将来に不安があるから
「この会社にいることで、自分の人生は大丈夫だろうか?」という将来への不安があれば、成長どころか、そもそも会社にいる意味すら悩み始めます。
- 経営側が、キャリアプランを示していない
- 給与や賞与の基準がブラックボックスであり「将来の収入」が見えない
(関連記事)中小企業の給与と賞与|人事評価を金額に反映する実務
評価されないから
優秀な人材ほど「評価されたい」と思っています。人事評価の仕組みに問題があれば、ほとんどのケースでメンバーのモチベーションは低下し、また、成長課題の解決ができないまま悶々と日々を過ごすようになります。
(関連記事)人事評価は「経営計画実現のための人材育成ツール」という視点
教育研修の仕組みがないから
特に、中小企業・スモールカンパニーのメンバーは育てないと育ちません。自主的かつ意欲的に成長のために努力する人材は残念ながら少数派です。
「人材育成」のための「教育研修の仕組み」があるかどうか?という「そもそも論」です。
「指導者の力量不足」もよくあるケースですが、「人を育てる指導者を育てる」ということも大切です。
(関連記事)人材育成力が明暗を分ける時代、「人を育てる人」を増やす
まとめ
さて、どうですか?
「人材が成長しない理由」と「人材側」と「経営側」で整理しました。
以上、よくある事例を整理して紹介しました。人材育成には「具体的な取り組み」が必要であり「願望」だけで解決するようなテーマではありません。
人が育つと、チームのパフォーマンスが高まり、もっといい会社に進化します。
関連記事も含め参考にしてみてください。
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