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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
私は、税理士として30年以上にわたって、また、現役を引退した今でもマネジメントコーチとして多くの経営者と仕事をしていますが、時々「人事評価って必要かなあ?」と相談を受けることがありますが、私の答えは「必要に決まってるやん!」です。
でも「中途半端」はキケンなので要注意です。
この記事では、10人~100人規模の中小企業において「人事評価制度は絶対必要である理由」と「中途半端な運用はリスクである理由」について整理しておきます。
この記事は「中小企業向け人事評価|仕組み作りと運用のアウトライン」の補足です。
人事評価制度が必要ない会社
本題に入る前に「人事評価制度がいらない会社」についてリストしておきます。
- 当然ですが・・・だれも雇ってない経営者ひとりの会社
- 社員が成長する必要がない会社
- 全員が短期の有期雇用の会社
- 給与や賞与に評価を反映する必要がない会社
私にはこれくらいしか思い当たりません・・・。
あえて追加するなら「師弟関係」で「給料なんかいらないので弟子入りさせてください」とメンバーが「入門」しているような会社です。もはや「社員」というより「弟子」の状態ですね。このような会社に人事評価は不要でしょう。
人事評価制度が絶対必要な会社
もし、上記に該当しないなら、社員が一人であっても「人事評価制度は絶対必要」というのが私の考え方です。
その理由は、上記の裏返しです。
- 人事評価制度は成長支援(人材育成)のツールだから
- 人事評価制度によって、給与や賞与を公正に分配できるから
この2つの理由から、一般的な中小企業であれば、どんな会社でも「必要」という答えになると思います。
さらに付け加えるなら「社員の成長をサポートし、公正な待遇で報いる」ということは、何より「経営者と社員との健全な信頼関係」を築くうえで欠かせないという理由もあります。
人事評価制度を活用することで、社員たちの持続的な成長を促し、その貢献によって「もっといい会社」になるのです。
実際、私の周辺で、人事評価制度を上手に運用している経営者は、次のような感想を聞かせてくれます。
- チームワークの改善効果:定期的な「評価個人面談」を重ねることで個々のメンバーとの(労使の)相互理解が深まって、コミュニケーションの質がスゴク良くなった
- 自己評価効果:人事評価基準によって「会社が求める人材像」が明確に伝わるので、個々のメンバーは「どんなスキルをどのレベルまで上げればいいのか?」が具体的に理解できるので「自己評価」の精度が上がった。
- 人材育成効果:人事評価の結果、各メンバーの「成長課題」が明確になるので「どうすれば伸びるのか?」が明確になり成長支援(サポート)がとてもやりやすくなった。
- 理念浸透効果:人事評価基準が、企業理念や経営理念とリンクしているので、チーム全体に理念が浸透し、フェードアウトしたり、形骸化するようなことがなくなった。
- 業績分配効果:人事評価と賞与をリンクさせたので「どれだけ払おう?」など悩むことがなくなってスッキリしたし、もちろん「労使のハラの探り合い」みたいなイヤなことは無くなった。
人事評価制度の正しくない運用による不信感
人事評価制度は「あればよい」というものではありません。
「人事評価制度さえあれば、もっといい会社になる?」・・・そんなワケありません(笑)。
「人事評価制度は、成長支援の仕組みとして正しく運用するから役に立つ」のです。
正しく運用できないなら「やらない方がマシ」です。
私が経験した範囲ですが、人事評価制度の正しくない運用事例をリストしておくので(順不同)参考にしてみてください。
- 評価者スキルが低く、正しく評価できていない
- せっかく評価基準があるのに、感覚的に「2点!3点!」と基準に沿わない点数を付けている
- 日常において評価基準が意識されていないため、事実に基づかず、記憶や思い込みで評価してしまっている
- 評価期間は6カ月なのに、直近の成果や失敗が評価に大きく影響している
- 評価者の「スキキライ」が大きく影響している
- 評価基準が複雑で、評価する側もされる側も双方が正しく理解できていない
- 評価基準が「保有スキル」で作られているので「発揮スキル」がなくても高得点になることがある。(例:「基準:真剣に取り組んでいた」・・・「真剣って?」「成果はないのに?」)
- 評価者がイマイチなので、社員たちは「あなたには言われたくない」と内心で思っている。
- 日常の関りが薄い人が評価者であるため「あなたに何が分かるの?」と内心で思っている。(評価を外注してるというとんでもない会社もあったw)
- ネットで拾ってきたテンプレート?サンプル?を使っているので「これ、どこの会社の基準なん?」という違和感がある。
このような場合、社員は「正しく評価されていないこと」に気付いていて、それが不信感になっています。
人事評価に対する不信感は、会社や経営者自身に対する不信感でもあります。また、この不信感は残念なことに「優秀な人材」ほど強い傾向があります。
このような正しくない運用を続けていると、制度そのものが形骸化、儀式化していき、ついには「なんのためにやってんの?」となっている事例さえありました。
「人事評価」は、正しく運用しないと不信感の温床になりデメリットどころかリスクになるので要注意です。
(参考記事)人事評価の必要性とリスク|正しく運用しないとキケン
人事評価制度の正しい運用の概要
では、どうすればいいか?
「人事評価制度の正しい運用とは?」について、概要をリストしておきます。詳細は「中小企業向け人事評価|仕組み作りと運用のアウトライン」の該当記事を参考にしてみてください。
- 人材育成のPDCAサイクルにおいて、人事評価制度は「C」のプロセス。成長支援のツールとして運用する。
- 30人程度までの中小企業であれば、経営者自身が「人事評価担当者」として運用リーダーとして取り組み、人任せにしない。
- 企業理念・経営理念・経営計画と整合性があり、その実現への貢献が評価できる評価基準で運用する。
- 人事評価基準によって経営者が求める「理想の人材像」が明確に言語化されている。
- 人事評価の点数をアップするためのフォロー面談等によって成長をサポートしている。
- ある程度の規模の会社で、評価者が複数いる場合、人による偏りや不公平を防ぐため「評価委員会」のような会議を定例化し、事例共有や意思統一に取り組んでいる。
まとめ
さて、どうですか?
「人事評価制度」の正しい運用について整理して紹介しました。
「人事評価制度」は、やる?やらない?の二択であり「中途半端」は社員たちの不信感の温床となるリスクがあるため安易な導入や運用はキケンです。
成長支援のためのツールであるというコンセプトにそって正しく運用できるように注意しましょう!
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