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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
あなたは「会計」に強いですか?
会社経営において「会計」の重要性は十分理解していても苦手意識を持っている人が少なくありません。
「会計」が示すデータは、コックピットの計器が示すデータと同じで、パイロットにとって「苦手」で済まされるものではありません。もし、会計に対して「苦手意識」があるなら、この記事を読んで、会計に強い経営者になるための自主トレのきっかけにしていただければと思います。
この記事は「中小企業向け|マネジメント会計(管理会計)の設計と運用の概要」の補足です。
このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。初めてアクセスしていただいた方は、こちら(=「このブログについて」)をまずご覧ください。
会計に強い経営者に共通する2つの特徴
まず、そもそも「会計に強い」って、どういうことなのか?を整理しておきます。
「会計に強い」は「数字に強い」とは少々違います。
一般的に「数字に強い人」というのは「計算に強い人」というイメージで、例えば、ややこしい計算でも暗算が出来たりすると「数字に強いね~」って印象を持ちます。
もちろん、会計の前提である「算数力」として、計算に強いに越したことはないのですが「計算だけ」では「会計に強い」とは言えません。
「会計に強い経営者」を観察すると「良し悪しの判断基準を持っている」「数字で経営を考えることができる」という共通する2つの特徴があります。
良し悪しの判断基準を持っている
- 売上高:2億円
- 人件費:1億円
この場合「人件費率は?」と問われて「50%!」と暗算できる人が「計算に強い人」です。
でも「50%ってイイの?悪いの?」って聞かれて「ん??」という人は、会計には強くありません。
「会計に強い人」は「人件費率が50%!?こりゃ高すぎる。せめて40%に抑えないと!」と答えてくれます。
つまり、計算結果の良し悪しを判断する基準を持っているのです。
課題解決策を数字で組み立てることができる
- 売上高:10億円
- 粗利益: 1億円
- 粗利益率:10%
さて「粗利益を2倍の2億円にするためには、どうすればいいか?」
反射的に「根性でもっと売ればいい!」と言う人が少なくありません(笑)が、「会計に強い経営者」は、次のように話します。
- 「販売量での達成は難しいなあ」
(=売上20億円-原価18億円=粗利益2億円) - 「だったら、10%値上げすればいいかな」
(=売上11億円-原価9億円=粗利益2億円) - 「それとも、仕入れ値を12%ほど圧縮するか」
(=売上10億円-原価8億円=粗利益2億円 - 「拡販・値上げ・原価圧縮を組み合わせればどうなるかな?」
これは、シンプルな例ですが、このように「(粗利益)=(売上=単価×数量)-(仕入原価)」という計算プロセス(変数)のそれぞれをシミュレーションしながら考えます。つまり、課題解決策を数字で組み立てることができるのです。
(参考記事)盲点?「会計力」の前に「算数力」が必要な話
中小企業経営者が会計に弱い4つの理由
会計に苦手意識を持っている経営者や、そもそも関心が薄い中小企業経営者は少なくありません。その理由は様々ですが、私の30数年にわたる税理士経験から、次のような理由を挙げることができます。
税理士や担当者に任せきっているから
理由のひとつは「税理士や経理担当者に任せきっている」ことです。会計は専門分野なので「モチは餅屋に」、自分は「専門外」と思い込んでいるのでしょう。
また、そういう経営者の傍には「会計は私に任せて、社長は営業に専念してください」という税理士がいたりします。このメッセージ、親切そうに見えて実は会計をブラックボックス化しようとする税理士の魂胆なので注意しなければなりません。
会計活用のメリットに気付いてないから
2つめの理由は「会計活用のメリットを知らないから」です。メリットを感じないものに時間や労力を費やすことがないのは当然です。
しかし、会計によるデータドリブン経営で「収益性」や「キャッシュフロー」を高めることができ、その結果として「時価ベースでの自己資本(実質内部留保)」を厚くすることができるというメリットを知れば自ずと興味や好奇心が湧いてくるはずです。
周りに会計活用の専門家がいないから
もうひとつの理由は「中小企業経営者の周りに会計活用の専門家がいないから」です。
世の中には、税理士の数だけ「財務会計の専門家」はウジャウジャいます。しかし、データドリブン経営の視点を持って「会計の活用方法をアドバイスできる専門家」は限られています。それに伴って発信されている情報も少ないので、中小企業経営者に会計活用のメリットが届いていないのです。
あきらめている?
「会計活用の価値」を感じつつも「難しそうだし」「勉強する時間もないし」「今は困ってないし」という「できない理由」によって、あきらめてしまっている経営者も少なくありません。
厳しいことを言いますが「責任放棄」と言われても仕方がりません。会社のトップとして、会社の経営状況を正しく把握しておく責任があるはずであり、避けては通れないのです。
マネジメント会計(管理会計)で強くなれる
「会計に強い経営者」になるためにもっとも効果的な方法は「マネジメント会計(管理会計)」の仕組みを活用することです。
収益構造やキャッシュフローが可視化され、実質的な内部留保を高める効果がある「マネジメント会計(管理会計)」ですが、もうひとつの特筆すべきメリットは「会計に強い経営者にすること」です。
「マネジメント会計(管理会計)」を活用することによって経営者の会計スキルはどんどんアップデートされます。その理由は、書籍やセミナーで使われる「架空の数字」や「他社の数字」ではなく「自社の数字」だからです。
「自社の数字」は、経営者のアクションと連動しているので、その理解や納得には深みがあります。「マネジメント会計(管理会計)」のマネジメントレポートは過去の行動を数値化したものであり、その分析や反省から、次の行動成果を予測したり、根拠のある目標設定をすることが可能になります。
経営者は、学問的な会計に強くなる必要はありません。「自社の会計・自社の数字」にだけ強くなればいいのです。
成長志向の経営者なら誰でも「自社の数字」が気になります。だから、毎月のマネジメントレポートを読み解くことが習慣化され、その繰り返しによって、イヤでも「自社の会計・自社の数字」に強くなっていくのです。
これを3つに整理すると次のようになります。
経営者のためのフォーマットだから
金融機関や税務署など、外部報告用フォーマットである試算表や決算書ではなく「マネジメント会計(管理会計)」は、内部用であり、経営者のためのフォーマットです。当事者である経営者のリクエストによってアレンジされるオリジナルのフォーマットなので理解の深さが違います。
月次決算によって習慣化されるから
「マネジメント会計(管理会計)」は「月次決算」が前提です。毎月の分析結果によって「良し悪し」を確認することが習慣化されるので、知らず知らずのうちに「感覚」が身に付きます。まさに「習うより慣れろ」です。
身銭なのでリアリティがあるから
自社の数字なので「経営者自身の身銭の計算」です。自分の(会社の)お金のことなのでリアリティがあります。「月次決算」で示される数字に「心当たり」があるので、納得感が違います。自分自身の行動の結果が数字で表されており「行動」と「結果」の関連性がよくわかり「生きた数字」に見えてきます。
まとめ
さて、どうですか?中小企業経営者が会計に「弱い理由」と「強くなる方法」について整理しました。
- 会計に強い経営者は、「良し悪しの判断基準を持っている」「課題解決策を数字で組み立てることができる」という共通点があること。
- 中小企業経営者が会計に弱いのは、「税理士や担当者に任せきっている」「会計活用のメリットに気付いてない」「周りに会計活用の専門家がいない」「あきらめている」ことが理由として考えられること。
- マネジメント会計(管理会計)で会計に強くなれる理由は、「経営者のためのフォーマットだから」「月次決算によって習慣化されるから」「身銭なのでリアリティがあるから」であること。
上述しましたが、経営者にとって会計は必修科目であり、それは経営責任でもあります。
最後に、ちょっとしたエピソードを紹介しておきます。
かつて「会計は難しいから自分にはムリ!」と開き直った経営者がいました。私が彼に言い放ったのは「会計以上に経営はもっと難しいよ。会計がムリなら、経営はもっとムリ!」。
関連記事も含め参考にしてみてください。
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