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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
中小企業経営にとって欠かせない「マネジメント会計(=管理会計)」ですが、それなりに手間がかかります。
本稿では、その「手間」と「効果」について整理しました。
これから「マネジメント会計(=管理会計)」を導入しようと検討中の経営者の方の参考になればと思います。
この記事は「中小企業向け|マネジメント会計(管理会計)の設計と運用の概要」の補足です。
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中小企業の管理会計=マネジメント会計とは?
「管理会計」は、法令やルールに縛られない自由な会計であるがゆえに、その範囲は広く、また、「これ!」と決まったフォーマットがあるものではありません。
このブログで紹介している「マネジメント会計(=管理会計)」は、一般の会計ソフトからアウトプットされる「財務会計」の試算表(貸借対照表+損益計算書)データをエクセルやスプレッドシートで変換して、各会社で作成したオリジナルのフォーマットにアウトプットするものです。
したがって、「財務会計」のデータと連携しない「販売分析」や「市場分析」のような営業関連資料や原価計算などは範囲外です。
その中心となるフォーマットは、下記の記事を参照してください。
(詳説記事)中小企業向|初めての管理会計「マネジメント会計入門」
管理会計は、こんなに手間がかかる!
「マネジメント会計(=管理会計)」の目的は、経営状態を示すデータをスピーディーかつ正確に経営者に届けることです。
そのためには、下記のような手間が必要になります。
正しい月次決算をしなければならない
「マネジメント会計(=管理会計)」は、「財務会計」のデータを変換してアウトプットするので、そのデータの精度が低く、ラフなものであれば台無しです。
したがって、「マネジメント会計(=管理会計)」は、「正しい月次決算処理」が前提になるので、いわゆる「発生主義」で処理することは当然として、下記の項目についても損益計算に与える影響が大きい場合は、毎月処理する必要があります。
- 減価償却
- 賞与引当金の計上
- たな卸し
- 法人税等の引き当て
- 為替換算
月次決算をスピード化しなければならない
「マネジメント会計(=管理会計)」のアウトプットは「経営情報」であり、「鮮度」がその価値を左右します。
月々の業績を把握するのに1ヶ月以上もかかってしまうと、その情報価値は半減です。
遅くても「翌月5営業日」にはアウトプットできるように「月次処理が遅い原因」について関連部署、時には取引先の協力も得て「スピード化・早期化」する必要があります。
フォーマットを作らなければならない
残念ながら、市販されている会計ソフトは「フォーマットのカスタマイズ」ができません。
したがって「マネジメント会計(=管理会計)のフォーマット」をエクセルやスプレッドシートで作成し「会計ソフトのデータを読み込んで変換する仕組み」を作っておく必要があります。
この「オリジナルのフォーマットを作る手間(=最初だけ)」と「そのフォーマットに変換する手間(=毎月)」が必要です。
(必要であれば)部門別処理が必要
「会社全体の数字」をチェックするためには上記で充分ですが、さらに「部門別・商品別等の業績が知りたい」のであれば、経理処理を部門別に行う必要があります。
これは「管理会計だから」というわけではありませんが「部門別会計」の場合、部門を細分すればするほど処理に手間がかかります。
部門別でなければ「100円」と「1データ」を入力すればよかったものを、「A部門50」「B部門30」「C部門20」というように、「複数データ」を入力しなければなりません。
(関連記事)中小企業の部門別会計|設計から導入までの実務ステップ
管理会計は、こんなにメリットがある!
以上のように・・・
・・・など「ひと手間~ふた手間」がかかりますが、要は「その手間をかける値打ち」があるか?です。
いわば「費用対効果」ですね。
メリット1:MA貸借対照表
「マネジメント会計(=管理会計)」のフォーマットのひとつ「MA貸借対照表」の特徴は「換金価値=実質内部留保」が、毎月チェックできることです。
一般の貸借対照表は「帳簿価格」で作成されているため「会社の本当の価値」を把握することは困難です。
それに対して、「MA貸借対照表」では、資産と負債の各科目について「換金すればいくら?」という「換金価値」を計算する仕組みになっています。
日常的に「損益計算書しか見てない」という経営者にとっては、「毎月、バランスシートをチェックすることが習慣化する」ことは最大メリットと言っても過言ではありません。
(詳説記事)管理会計|中小企業経営者のための【進化型】MA貸借対照表
メリット2:MA損益計算書
もうひとつのフォーマットである「MA損益計算書」の特徴は「限界利益」をベースにしていることです。
一般的に「人件費率」や「経常利益率」は、売上高をベースにしていますが、これは業種によって大きく差があり、その良し悪しを正確に判断することが困難です。せいぜい「業界平均に比較して・・・」と、お茶を濁しておしまい、ということが散見されます。
業種に左右されない「限界利益」をベースにすることによって「収益力・収益体質」についての「実力」をチェックすることが可能です。
また、コストは「変動費」「固定費」と区分するため、損益分岐点、収支分岐点の状況や推移を毎月チェックすることができます。
さらに、毎月「税引き後純利益」まで求めるので「納税後の正味の利益」を把握することができ「内部留保」に目標設定することが可能になります。
(詳説記事)管理会計|中小企業経営者のための【進化型】MA損益計算書
メリット3:波及効果
MA貸借対照表やMA損益計算書のアウトプットは、言うなれば「当然のメリット」ですが、それを超える最大メリットと言っていいのが「会計に強い経営者になれる」ことです。
毎月の「マネジメント会計(=管理会計)」のレポートによって、経営課題が鮮明になるので、知らず知らずのうちに「数字が読める」ようになります。そうすると、次は「数字で考えること」ができるようになり、その結果、数値目標に「根性」ではなく「根拠」を持つことができます。
(関連記事)中小企業経営者が会計に「弱い理由」と「強くなる方法」
さらに、「スピーディーかつ正確な業績把握」に加えて、人材育成、会議のレベルアップ、合理化、効率化など下記のような「波及効果」が期待できます。
- 予算管理が容易になる(詳説記事:成長するために「予算管理」が絶対必要な理由)
- 経営計画の数値化が容易になる(詳説記事:利益目標の設定方法、6つのパターン)
- 経営会議での意思統一や意見交換が「地に足が付いたもの」になる
- 経営情報を経理部門に集約するための業務プロセス(フロー)が合理化、省力化される
- 経理担当者の視点が「守り」から「攻め」に変わり始める(詳説記事:攻めのバックオフィスへのシフトチェンジ)
- 業績連動型賞与の仕組みが導入しやすい(詳説記事:賞与の決め方と制度設計のステップ)
まとめ
さて、「マネジメント会計(=管理会計)」について「手間と効果」、つまり「費用対効果」について整理しました。
関連記事も含め参考にしてみてください。
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以上、お役に立ちますように!