人事評価の実務|評価基準は社員たちが設計するというアイデア

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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。


「人事評価基準」の設計にあたって、ひとつの「難関」が「実務スキルの評価基準」です。

どのような評価項目をピックアップするか?また、それぞれの評価項目の「1点レベル~5点レベル」の差をどのようにつけるか?また、それらは感覚的にはイメージしていても、どのように言語化すればいいか。

やりだすと「奥が深いなあ・難しいなあ」と感想を漏らす経営者は少なくありません。

特に、経営者が苦手とする職種の評価となればなおさらです。

では、どうするか?

そこで、この記事では「思い切って、社員(メンバー)たちに設計してもらえば?」というひとつのアイデアについて検討し整理します。

この記事は「中小企業向け人事評価|仕組み作りと運用のアウトライン」の補足です。

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【諸刃の剣】評価基準のアンマッチは危険

人事評価は「諸刃の剣」という側面を持っており、人材育成にとってとても効果的なツールであることは間違いありませんが、使い方を間違うと、それは大きなリスクにもなってしまいます。

中小企業の人事評価が失敗してしまう原因には様々ありますが、その一つが「評価基準のアンマッチ」です。

社員(メンバー)たちが「評価してほしい点」と、会社側が「評価する点」にズレがある場合です。

例えば、営業職の評価において、当人たちは「営業成果を評価に反映してほしい」と希望しているのに、「営業のテクニカルなスキル」の知識レベルでしか評価されていなければ「せっかく数字を上げているのに評価が低い」というような不満につながることがあります。

また、経理職の評価において、税金計算は顧問税理士にお願いしているのに、税務知識の細かなことで評価されれば「その仕事は税理士さんでしょ」と内心思うかもしれません。

これらは、少々極端な例かもしれませんが、評価基準が「社員(メンバー)たちが評価してほしいこと」とズレていると、人事評価に対しての不信感や不満、さらには「あきらめ感」にまで発展することがあるので「危険」と言っても言い過ぎではないでしょう。

(関連記事)人事評価の課題|諸刃の剣=正しく運用しないとかなりキケン!

【重要課題】苦手な職種の評価ができない

多くの中小企業において、人事評価の最終決定をするのは経営者自身の仕事です。

しかし、経営者であっても「詳しくない職種」がある場合、「ちゃんと評価できてるだろうか?」と、その評価には不安が付きまといます。もちろん、その責任上「知らない・わからない」は通用しないので、評価するための必要最低限の知識や着眼点は学習しておく必要がありますが、です。

例えば、営業系の経営者が立ち上げたシステム開発の会社。経営者自身は「モノづくり」の経験がありません。だから、その喜びや苦労の理解が浅かったりします。なのにエンジニアの実務スキルを評価しなければならず、果たして正しく、公平に評価できているのか?という疑念まで生じます。

この手の話で悩んでいる経営者の相談は少なくありません。

(関連記事)中小企業向|人事評価が上手く運用できない理由

【視点転換】評価基準は社員たちが作る?

人事評価基準は、一般的に会社側が社員(メンバー)たちに対して「これで評価します」と示すものですが、それがズレるならば、思い切って社員(メンバー)たちに作ってもらえばどうだろう?

評価される社員たちが「これで評価してください」と、自分たちが基準を設計してくれれば、ズレることはありません。

私の経験では、提出された「評価基準案」を見た経営者は「なるほど!」と、まるで「目からうろこ」のような反応を示す人が多かったです。「こんな努力をしているんや」「こんな苦労があるんや」「そういうところで差がつくんや」など、新たな気づきがあるようで「(今まで知らんかったんかい!)」と思わず突っ込みたくなる場面も珍しくありませんでした。

とはいえ「原案を丸のみ」する訳にもいかないので、実務的には「評価基準委員会」を立ち上げ、労使で協力し合って完成委至るというプロセスになります。

【運用実務】評価基準委員会の効果

「評価基準委員会」は、「実務スキル」の評価基準を設計したり、改定したりするために設置するプロジェクト形式のチームです。

営業、開発、製造、顧客サポート、間接部門など各部門の比較的経験年数の長いメンバーを選任し、「どういう点を評価してほしいか」というリクエストとして上述した「評価基準案」を作成してもらい、その一つ一つについて経営側と意見交換を重ねて確定させていきます。

この「評価基準委員会」の実施は、評価基準を設計するという本来の目的以外に、その作成を通じて双方の理解が深まるという効果も小さくありません。

経営者は、各部門のメンバーが「どう評価してほしいと思っているか?」を生の声としてヒアリングできること、社員(メンバー)たちは、経営者から、どんなレベルを求められているのか?どんな成果を求められているのか?を改めて認識できることは、とても有意義です。

このプロセスを経て設計・作成される評価基準の納得性が高いことは言うまでもないでしょう。

【まとめ】検討する価値は十分ある

さて、いかがでしょうか?「実務評価基準は社員(メンバー)たちに作成してもらう」ということの検討について整理しました。

この方法について、賛否両論あることは承知していますが、検討する価値は十分あると思います。

関連記事も含め参考にしてみてください。

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