中小企業の人材育成|単発研修に効果なし=定例研修を仕組化

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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。


私は「ウチの社員の研修をやってくれない?」という社員研修の依頼があったときは原則としてお断りしています。

なぜなら、私は経験上「単発の研修に効果はない」と思っているからです。

実務的な技能や技術等の「知識研修」とは違って、私たちコーチが依頼される「考え方」や「基礎スキル」の研修は「考動習慣」なので、単発ではなく継続が必要です。なので、研修依頼があったときは、継続できる人材育成の仕組みとして「会議の活用」と「4つの定例研修」のふたつを提案しています。

この記事では、そのうちのひとつである 「4つの定例研修」について、どんな提案をしているか?を整理し紹介します。

この記事は「中小企業向け人材育成|人が成長する仕組み作りの概要」の補足です。

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「当社仕様の人材」に育つ環境作り

経営者が求める「優秀な人材」を丁寧に表現すると「当社にとっての優秀な人材」だと思います。

経営者によって優秀な人材の定義や求めるレベルは違うので、A社長が「優秀!」と思っていても、B社長にとっては「そ~かな?」ということが少なくありません。

誤解を恐れずに言うと、経営者が期待している人材育成は「当社仕様の人材に育てる」ことであり、「どこでも通用する人材に育てる」ということまでは期待していないはずです。

この「経営者が期待する当社仕様」は時間が解決してくれるものではなく、時間の経過とともに「会社に慣れる」ことはあっても「期待する当社仕様」に成長することの確率はそんなに高くありません。

つまり「何もしないのに当社仕様の人材に成長する」ということはないと思った方がよさそうです。

だからと言って、上述したように単発の研修等を行っても、私の経験上、ほとんど効果はありません。

じゃあ、どうすればいいのか?

その答えは「当社仕様の人材に育つ環境を作る」です。

これには、「カルチャー/企業文化」は言うまでもなく、人事評価や待遇、指導者のレベルなど、様々な仕組みが必要になりますが、その中でも重要なのが「会議」と「定例研修」です。

「会議で育てる」は、別記事に譲り、本稿では「定例研修」について続けます。

(関連記事1)チームのパフォーマンスを高めるための成長カルチャー創り
(関連記事2)中小企業の人材育成|人は会議で育てる

継続する4つの定例研修

私は、4つの定例研修を継続して実施することを提案していますが、下記を「基本形」として、クライアントごとにアレンジしてサポートをしています。

新人研修

対象者内容時期・頻度講師・参加者
新人企業理念・経営理念
成長の定義
各種制度や規則
人事評価基準
その他企業情報
入社時講師:経営者
全員参加
*自己紹介を兼ねる

「新人研修」を疎かにしている中小企業が少なくありません。

「チーム育成」の観点からも、新人には「ビギナーズセット」とでも言うべき「最低限のこと」をインストールしてからチームに合流させることがいいと私は思っています。

いきなり「現場任せ」にしていいのは・・・

  • 経営者でなくても、企業理念や経営理念を正しく伝えられるリーダー(ミドルマネジメント層)やメンバーがいる
  • 人事評価基準を主にして人事評価制度を正しく伝えられるリーダー(ミドルマネジメント層)やメンバーがいる

・・・など、すでにチームに「人材育成に長けたリーダーがいる場合」あるいは「当社仕様に育つカルチャーが醸成されている場合」に限ります。

そのような「当社仕様の人材に育成できる環境」でないのであれば、経営者自身が自ら「理念」や「人事評価」について正しく新人に伝えることが、とても重要です。最初が肝心です。

また「新人研修」は「顔合わせ」の場も兼ねているので、全員参加としていますが、その真のねらいは、新人が入る都度、既存メンバーに理念や人事評価について再認識してもらう場にしたいからです。

(関連記事)中小企業の人材育成|「成長の定義」を共有する大きな効果

基礎スキル研修

対象者内容時期・頻度講師・参加者
全員正しい考え方(マインドセット)
基礎スキルの事例研究
四半期ごと
半年ごと
リーダークラス

例えば、基礎スキルのひとつである「課題発見力」は、知識的には「あるべき姿と現状のギャップが課題」というように極めてシンプルな理屈ですが、この理屈を知ったからといってメンバーの課題発見力が向上することはありません。

課題発見力をアップし考動習慣にするためには反復継続のトレーニングが必要です。

そのため、それぞれのメンバーが定期的に「今、抱えている課題」を持ち寄り、リアルな事例研究をすることで、課題発見力が「考動習慣」となって身についていきます。

「あるべき姿は***なのですが、現状は***なので、課題は***だと思うのですが・・・」というように各自の課題を持ち寄り共有します。これを四半期ごとに(毎月でも私はいいと思っていますが)繰り返すことで、常に「あるべき姿」「現状」「課題」を言語化する考動習慣が身に付く、という具合です。

また、この研修の講師役は、ミドルマネジメント層などリーダーが務めます。これはリーダークラスの「指導スキル」のトレーニングも兼ねているからです。「教えること」の学習効果はご承知の通りです。

(関連記事)人材育成の重要視点|基礎スキル|ヒトも「OSとアプリ」で動いてる

実務スキル研修

対象者内容時期・頻度講師・参加者
職種に応じて技能、技術、知識の事例研究・問題解決
最新情報の共有など
顧客の声やクレームの共有
毎月
または
隔月
各部門長

「実務スキル研修」は、文字通り、実務に関する技術や技能、あるいは知識のインプットのための研修であり「随時」でもいいのですが、これを定例化する理由は「学習習慣」を身につけてもらうためというのが「真のねらい」です。

実務に関する知識、情報を「常にアップデートして最新状態をキープする」という習慣付のために定例化をおススメします。

管理職・ミドルマネジメント研修

対象者内容時期・頻度講師・参加者
管理職
ミドルマネジメント層
(候補生含む)
リーダースキル四半期ごと経営者
あるいは
持ち回り制

管理職・ミドルマネジメント層など、いわゆる「リーダーポジション」の人材育成に頭を悩ませている経営者も少なくありません。

私は、この育成が「最も重要」と考えています。リーダーポジションの育成は、会社の中長期的な成長のために欠かせないからです。

「ニワトリとタマゴ」の話みたいですが、リーダーポジションが少ないから、経営者はいつまでもプレーイングマネージャーでなければいけないのか?それとも、経営者が、いつまでも現場仕事をしているからリーダーポジションが育たないのか?

私の経験では「後者」が多いように思います。

この研修を定例化することで「社長は、リーダー育成に真剣なんだ」と示すことにもなり、とても重要です。

(関連記事1)人材育成の視点:会社の将来を人に任せるか?運に任せるか?
(関連記事2)中小企業向|管理職=ミドルマネジメント育成の6つのステップ

まとめ

さて、どうでしょうか?人材育成を継続する仕組み作りについて、私が現場で行っているサポートをベースに紹介しました。

中小企業の人材育成|人が育つ会社作り「学校方式」の実務」など、

関連記事も含め参考にしてみてください。

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