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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
「売上高目標」を、どのようにして決めていますか?
前年対比で決める方法や、損益分岐点を目標にする方法、あるいは、業界シェアを基準に決める方法など、それぞれの会社の事情によって、その方法は様々ですが、本稿では、中小企業の経営計画における「必要利益から売上高目標を決める方法」について整理します。
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この記事は「中小企業向|経営計画の策定と運用、3つの新視点」の補足です。
その売上高でどれだけ儲かるか?
上述したように、売上高目標の決め方には様々な方法がありますが、いずれであっても共通して計算しなければならないのは「その売上高でどれだけ儲かるのか?」です。
つまり「利益」まで、正確には「税引前当期純利益」までを計算して、その妥当性を確認する必要があります。
万が一、その売上高では必要とする利益を確保できなければ、上方修正を検討しなければなりません。
目標には「理由と根拠」が必要
「予算」は「目標」でもあります。
効果的な「予算管理」を行い、健全な成長をするためには、その目標に「理由と根拠」が必要です。
- 「なぜ、この目標なのか?」という「理由」
- 「こうすれば達成できる!」という「根拠」
目標の「理由と根拠」を明確にすることで、経営計画の達成(実現)確率が上がると同時に、経営者の「経営スキル」を上げることにもつながります。
「なぜ、この目標なのか?」という理由に加えて「こうすれば達成できる!」という根拠が必要なのは、「地に足が付いた予算」にするためです。どれだけ真っ当な理由であっても、その数字が現実離れしていれば、それは、ただの「願望」や「期待」であり「目標」とは似て非なるものになってしまいます。
また、「理由や根拠のない目標」の場合、「クリアしたか、してないか」という達成状況を確認するだけに終わり「何が良かったのか?」「何が悪かったのか?」という「結果の原因」を振り返ることができません。
これでは「経営課題」をピックアップすることができず、なかなか経営レベルは上がりません。
目標の「理由と根拠」を明確にしておくことで
「なぜ、クリアできたのか?」
「なぜ、クリアできなかったのか?」
と、予実ギャップについて具体的に分析することができ、その分析から多くの気付きや学びを得ることができます。
この繰り返しが、経営者の経営スキルを上げていくのです。
(関連記事)中小企業の経営計画の成否は「ゴール設定」で決まる
「必要利益」を「売上高目標の理由」とする
では、売上高目標の理由はなんでしょうか?
そのひとつが「必要利益」という考え方です。
予算を立てるとき、売上高から組み立てる会社が多いのですが、私の考え方(やり方)は「逆」です。
まず「最終利益の目標を決める」ことから始めます。
「来期、どれだけの利益が必要なのか?」です。
この必要利益の考え方は、会社によって様々ですが、よくあるのは・・・
- キャッシュフローをプラスにするための必要利益
- 次の投資(人材・開発・本社移転・エリア拡大・・)のための必要利益
- 内部留保を厚くするための必要利益
- 債務超過を脱出するための必要利益
これら以外に
- 経営者のテンションやモチベーションが上がる利益水準
でも構いません。
いずれにしても「まず利益ありき」の考え方です。
「売上高目標を達成すれば、これだけの利益が出る」ではなく、
「利益がこれだけ必要だから、売上高目標はこれ!」という考え方です。
(関連記事)中小企業の経営計画|利益目標の設定方法、6つのパターン
図解すると下記のようになります。
この図を計算式で表すと次のようになります。
- 必要利益+必要固定費=必要限界利益
- 必要限界利益/限界利益率=売上高目標
という具合です。
(関連記事)管理会計|中小企業経営者のための【進化型】MA損益計算書
売上高ではなく限界利益を目標にする
以上、ここまで「売上高目標」と表現してきましたが、実務的には「限界利益目標」とすることをオススメします。
「必要利益を得るために、限界利益目標はいくらに設定するか?」です。
往々にしてよく見かけるのは「売上高目標」をクリアするための「安売り」です。
「売上高」に意識を取られ「限界利益率」が下がってしまっては本末転倒です。
敢えて言うなら「売上は限界利益の手段」にすぎません。
予定より高い限界利益率を確保することができれば、仮に売上高目標が未達でも必要利益を得ることが可能です。
限界利益目標を計算するプロセス
念のための補足となりますが、以上のように「必要利益」から「限界利益目標」を計算するので、「固定コスト予算」も必要です。
したがって「予算立案」の実務的なプロセスは、次のようになります。(短期予算=来期予算の場合)
- 来期の必要利益(=税引前当期純利益)の決定
- 来期の固定費予算を作成
- 来期の限界利益目標の算出(=必要利益+固定費予算)
- 来期の売上高目標の決定(=限界利益÷限界利益率)
まとめ
以上、中小企業の経営計画における売上高目標は「利益から積み上げて計算する」ということを紹介しました。
- 目標売上高をクリアしたときの税引前当期純利益を計算すること
- 目標には「理由と根拠」が必要であること
- 「必要利益」を「売上高目標の理由」とすること
- 売上高ではなく限界利益を目標にする方が良いこと
- 限界利益目標を計算するプロセス
関連記事も含め参考にしてみてください。
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