
こんにちは!
今日は「付加価値改善」について整理します。
商品やサービスを「もっといいもの」にするため
「モノ」と「コト」の二軸で考えるフレームワークです。
本稿では、商品やサービスの付加価値を「モノ価値」と「コト価値」の2軸で整理するフレームワークを紹介しています。
要旨・結論は次の通りです。
忙しい人は、これだけでもインプットしてください。
- 商品やサービスの課題は「モノ」×「コト」に分けると整理しやすい
- どちらかに偏ると逆効果「機会損失:もっと売れるのに」
- 付加価値を見直す時の視点は「モノ?コト?どっち寄りか?」
- 付加価値の差別化を軽視すると「その他大勢」となって目立たない
- 課題解決は、まず「守り」を固めることから
- 「守り」を固めてから「攻めに転じる」
- 商品やサービスの価値は「会社の価値」と表裏一体
自社の商品やサービスのクオリティをもっと高めよう!と考えておられる経営者の方は、ぜひ読んでみてください!
「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けた「自己投資=経営脳トレーニングのサポート」を目的に、「もっといい会社」に成長するヒントを毎週発信しています。
本記事は、25年以上にわたり税理士として中小企業経営を支援し、管理会計や経営計画を専門とするマネジメントコーチ・堀井弘三が、その現場で得た豊富な経験と知識に基づき執筆しています。
初めてアクセスしていただいた方は、「このブログについて」をまずご覧ください。
執筆者、堀井弘三のプロフィールはこちらです。
【視点概要】
「モノ好き」と「コト好き」
突然ですが、
あなたは「モノ好き」ですか?
それとも「コト好き」?
例えば、
「いい腕時計が欲しい」のか
「いい腕時計をしてオシャレしたい」のか?
あるいは
「おいしいコーヒーを飲みたい」のか
「心地よいお店で過ごしたい」のか?
「見える=モノ」と「感じる=コト」。
「モノ」は、「腕時計」や「コーヒー」。
「コト」は、「オシャレ」や「心地よさ」。
私も、税理士時代「スピーディーに決算書をお届けしよう!」と心がけていましたが、これも・・・
「モノ」は、「決算書」。
「コト」は、「早い!」。
「決算書=モノ」だけを見ていると「差」はありません。
しかし、スピーディーにお届けすると、お客様は「え?もうできたの?ありがとう!すぐに銀行に提出できる!」と喜んでくださる。
さらに、「オシャレな決算書」であれば「モノ+コト」の両面で付加価値の高いサービスが実現できました。
- モノの価値=品質価値
商品・技術・スペック・性能など「見える価値」 - コトの価値=感情価値
体験・雰囲気・信頼・意味づけなど「感じる価値」
このように、二軸で整理して考えると「付加価値の設計」がとてもやりやすくなります。
今回は、商品やサービスの「価値」を「モノ価値」と「コト価値」の二軸の視点で考えてみよう、という提案です。
【機会損失】
もっと売らないの?
「顧客ニーズ」と提供する「付加価値」のマッチングは、とても重要な「商売の基本」です。
「顧客ニーズ」と提供する「付加価値」にギャップがあれば、それは「もっと売れる余地がある」ということ。
そのギャップを「モノ」と「コト」の二軸で考えてみましょう。
「モノ・ニーズ」は満たせているか?
「コト・ニーズ」は満たせているか?
よく「モノはいいのに、思ったように売り上げが伸びない」という悩みや相談を聞きますが、「コト視点」を忘れているケースが少なくありません。
「接客や応対は充分で評判もいいのに、なぜか売り上げが…」という場合も同様です。
「モノ」に課題があるんですね。
「モノ・ニーズ」を満たしてなければ、どれだけ「コト」にチカラを注いでも、お客様の声は「先にやることあるだろ!」です。
飲食店でよく経験しますが、「コト磨き:接客はバツグン」なのに「モノ不良:料理はイマイチ」。
このようなお店に入ると、いつも「もったいないな」と思います。
このように「モノ・コト」が整理できていなくて「機会損失」が発生していることがよくあります。
「モノ」はイイのに「コト」が残念なケース。
「コト」はイイのに「モノ」が残念なケース。
心当たりはありませんか?
このような「機会損失」が生じないように提供する「付加価値」を整理する視点が、次の「モノコト・フレームワーク」です。
【課題整理】
「価値」=「モノ」×「コト」
「モノコト・フレームワーク」といって、形はシンプルです。

「商品やサービスの価値」は、「モノ:品質価値」と「コト:感情価値」で決まります。
ポイントは「足し算」ではなく「掛け算」で結んでいるところ。
「1点」を「平均的なフツウ=合格ライン」とすれば・・・
「モノ:1」×「コト:1」=「価値:1点」
「モノの価値がフツウ」で「コトの価値もフツウ」だから「フツウの商品・サービス」と表現できます。
いくつかパターンを示すと、次のようになります。
- 「モノ:1」×「コト:2」=「価値:2点」
- 「モノ:2」×「コト:1」=「価値:2点」
- 「モノ:2」×「コト:2」=「価値:4点」
- 「モノ:2」×「コト:0」=「価値:ゼロ」
これをマトリックスにすると、次のようになります。
コト ゼロ:低い | コト 1点:ふつう | コト 2点:高い | |
---|---|---|---|
モノ ゼロ:低い | (価値なし) | 「モノ」足りなさを 「コト」でフォローできてない | 「コト」がイイのに「モノ」が残念 |
モノ 1点:ふつう | どうせなら 「他で買う」 | <平均的な価値> | どうせなら 「ここで買う」 |
モノ 2点:高い | 「イイモノ」なのに もったいない「コト」 | 「イイモノ」なので 「コト」はフツウでよい | 文句なしの 高付加価値 |
「モノ」も「コト」も高いレベルだと、その相乗効果で「高付加価値」の領域です。
また、「コトがゼロ」というのは「感情価値がフツウ未満」なので、「イヤな思いをする」レベルです。
よほど「イイモノ」でないと売れません。
さて、あなたの商品やサービスは、どんな計算式になりますか?
「モノ価値」を台無しにする「コト価値」になっていませんか?
「コト価値」を無力化する「モノ価値」になっていませんか?
次の事例を参考にして、「モノ」と「コト」の二軸で考えてみてください。
*注:このフレームワークは「思考のカタチ」なので、「2点は?3点は?」という点数評価の道具ではありません。念のため。
【事例紹介】
「どっち寄り」か?
この話は「モノか?コトか?」の二者択一ではありません。
特殊な業種を除いて、ほとんどの商品やサービスは「モノコト」の二軸両面で設計されています。
そこで、もうひとつの大切な視点は「どっち寄りか?」。
特に、競争の激しい市場では「選ばれる理由」に直結しています。
よく聞く事例として3つを紹介します。
事例1|ピアノ業界:
カワイ vs ヤマハ
- モノ寄り:カワイは、素材や音、演奏性能など「モノとしての完成度」に重心。プロや上級者の根強い支持。
- コト寄り:ヤマハは、「音楽のある暮らし」「家族で音楽を楽しむ」といった体験=コト価値を前面に展開。
→ 両社ともにモノ/コトを兼ね備えているが、市場が持っているイメージは違う。
事例2|住宅業界:
一条工務店 vs 無印良品
- モノ寄り:一条工務店は、断熱性・耐震性など住宅性能にフォーカスした商品設計。
- コト寄り:無印の家は、「自然素材と暮らす」「余白のある空間」など、暮らしのスタイルを前面に。
→ 住宅を「設備として売る」のか、「暮らしとして売る」のかで、戦略の違いが鮮明。
事例3|飲食業界:
珈琲専門店 vs スタバ
- モノ寄り:専門店は、産地・焙煎・抽出といった「品質重視」のモノ設計。
- コト寄り:スタバは、「空間」「接客」など、コト価値の演出が主軸。
→ モノ寄りか?コト寄りか?が明確に戦略に表れている典型例。
【放置警鐘】
「その他大勢」は目立たない
「どっち寄りか?」の違いは、見せ方・伝え方・選ばれ方に直結しています。
「御社の特徴は?」と聞かれたときに「なるほど」と思わせる答えが必要です。
どっちつかずのままだと、価値が際立たず、「フツウ=よくある会社のひとつ=その他大勢」になってしまいがちです。
たとえば…
上述した「モノ:フツウ」 ×「 コト:フツウ」 =「 価値:フツウ」。
競合が多い業界ほど「平均的」では選ばれにくくなります。
「うちは、モノに強みがある」
「うちは、コトで勝っている」
この価値設計の視点が「選ばれる会社」としてとても重要です。
さて、「どっち寄り」にするか?
それとも、両方の「ハイブリッド型」にするか?
【課題解決】
「守り」を固めて「攻める」

課題解決の鉄則は「まずリカバリーから」。
「アドバンテージ課題=攻めの一手」を検討する前に、
「リカバリー課題=できて当たり前」ができているか?
まず、足りてないところを補って足元・土台を固めましょう。
攻めに転じるは、守りを固めてからです。
想像できると思います。
- 雰囲気作りは熱心なのに、お料理や接客がイマイチなお店。
- レポートは立派なのに、届くのが2カ月遅れの会計事務所。
「リカバリー課題」が残っていると、市場は「先にすることがあるでしょ?」と思いがちです。
「できて当たり前」「やって当たり前」はクリアできているか?
「アドバンテージ課題」は、その確認が出来てから、つまり「ゼロ線」を越えてからです。
「リカバリー課題」と「アドバンテージ課題」に分ける「ゼロ線思考法」は、この記事で詳しく解説しています。
・努力をムダにしないゼロ線思考
・リカバリー課題とアドバンテージ課題
・成果に結びつかないのは順序が違うから
・よくあるリカバリー課題
・焦ると成果は遠ざかる、土台固めをしっかりと!
守りを固める
リカバリー課題の解決
まず「リカバリー課題」のリストアップから始めましょう。
課題は「あるべき姿」と「現状」のギャップです。
- 「本来は、どうあるべきか?」
- 「それに対して、現状はどうか?」
「モノ」「コト」で下記の自問自答です。
- 「お客様が求めているモノ価値は?」
- 「お客様が期待しているコト価値は?」
- 「それに対して、我々はお応えできているだろうか?」
これは、必ず「チーム全員参加」で行うことを強くおススメします。
「課題解決」のために、全員が「課題認識」を深めておくことがとても大切だからです。
チーム全員で議論した結果・・・
- 「できていて当然・あたりまえのこと」は「きちんとできている」
- 「あるべき姿」と「現状」にギャップが無い。
・・・という結論に至れば「課題なし」です。
さて、どうでしょう?
チームで話し合ってほしいサンプルをリストしておきます。
参考にしてみてください。
- コト価値のマイナス要因
- 接客の不快感
- 言葉遣いや態度
- 納期や対応スピード
- モノ価値のマイナス要因
- 不良品・初期トラブル
- ミスの頻発
- 品質への不信感
- 顧客ニーズと提供価値のズレ
- 「モノ・ニーズ」に対して「コト」で対応
- 「コト・ニーズ」に対して「モノ」で対応
- その他
さらに、下記の点についても共通認識できているかを確認しましょう。- 強み認識「買っていただいている理由」は?
- 弱み認識「お客様が口に出さない不満・クレーム」は?
- 勘違思込「品質ではなく、安いからが理由」ではないか?
- 競合比較「ウチにしかないモノ/コト」は?
- 伝達効果「伝えたいモノ/コトが市場に正しく届いているか」か?
- 顧客理解「モノ好き?コト好き?の割合」は?
- 依存脱却「知り合いだから買ってくれている」はないか?
攻めに転じる
アドバンテージ課題の解決
「リカバリー課題」を解決し、足元が固まったら、次は「攻め」に転じましょう。
アドバンテージ課題は、業種・規模・市場ポジションによって多種多様。
だから「これが正解」というテンプレートはありません。
ここでは「こんな視点から考えてみては?」というヒント集として、戦略構想の起点となる視点をリストアップしておきます。
ここでも「チーム全員」で議論を深めてください。
- 価値創造
- 「モノ」×「コト」のハイブリッド価値
- 「品質価値」と「感情価値」の相乗効果
- 独自のハイブリッド価値
- 先行未来
- 既存顧客だけでなく、潜在顧客や未来顧客に思いを馳せる
- 未来の「ニーズ」「不満」「不便」を予測し、先回り
- 競合が気づく前に、先行者利益を確保
- 不戦勝利
- 圧倒的な競争優位
- 競合を無力化する独自策
- 戦う土俵を変えてしまう
- 価値共創
- 顧客とともに価値創造
- 顧客を仲間に変える
- 顧客同士の交流コミュニティ作り
- 関係深化
- 顧客の「ナニ」ではなく「ナゼ」に応える
- 叶えたい理由に寄り添う「伴走者」になる
- もう一歩踏み込むコト価値
- 理念共感
- 圧倒的なブランディング
- 共感・賛同・共鳴される理念
- 「当社を買ってもらう」視点
(関連記事)
スピンオフとして、業種別のヒントリストをアップしているので、あなたの業種もあるかチェックしてみてください。
付加価値改善チェックリスト|全26業種|モノ視点+コト視点
【要点整理】
「当社の価値」をアップデート
さて、どうでしょう?
今回は「モノ・コト」の二軸で「付加価値」を改善するヒントを紹介しました。
会社の商品やサービスの価値は、お客様や取引先にとって、まさに「会社の価値」そのものです。
「当社の価値」をアップデートするきっかけにしてみてください。
また、これは採用競争力の強化にも波及することも見逃せません。
改めてポイントを整理しておきます。
- 「価値=品質価値×感情価値」であること
- 「あたりまえ」を見直し、「リカバリー課題」から取り組むこと
- 「足元・土台」がしっかりしてから「アドバンテージ課題」に取り組むこと
- 「当社の価値」をチーム全員で共通認識すること
もし、サポートが必要であれば、いつでも気軽に連絡ください!
以上、お役に立ちますように!