中小企業経営者のための「正しい情報収集」の重要視点

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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。


経営者の必修スキルのひとつが「情報力」ですが、膨大な情報が流通している現代において、その取捨選択のチカラが「情報力」の優劣を決定付けます。

あなたは、自分の価値観や考えに近い情報を集めがちではありませんか?もし心当たりがあるなら、その原因は「安心感が欲しいから」であり、それを続けていると、多様な意見や価値観に触れる機会が少なくなり、視野が狭く、思い込みの激しい「経営脳」になってしまうリスクがあります。

「情報」は「量」も大切ですが、それに「質」が伴っていなければ、意味がないどころかミスリードの原因となってしまうので注意が必要です。

「質の良い経営」のためには「質の良い情報」が欠かせません。

本稿では「経営者にとっての正しい情報収集」について、その重要視点を整理します。

経営脳の自主トレにおいて特に重要な「情報力」のセルフチェックの参考にしてください。

本稿は、必修経営スキル【情報力】収集・分析・活用のチカラの補足記事です。

このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。初めてアクセスしていただいた方は、こちら(=「このブログについて」)をまずご覧ください。

安心するための情報収集の罠

本稿の執筆時点(2024年9月14日)で、阪神タイガースがリーグ優勝できるかどうか?がメチャクチャ微妙なので、すでに優勝確実のソフトバンクホークスの記事より、「タイガースが有利だ」という記事が気になります。さらに、ライバルのジャイアンツやカープにとって「優勝は危ういかも?」という記事も気になります。

ウクライナが越境攻撃を仕掛けて優勢に進んでいる、という記事も気になります。

これから人口が減少しても日本は揺るぎない、という記事も気になります。

南海トラフ地震の可能性は低いというようなタイトル記事も、すぐにクリックしてしまいます。

このような私の考動を自己内観すると「安心感が欲しいんや」と自認することができます。

あなたも心当たりはありませんか?

意識の有無は別にして、多くの人に「安心するために情報収集をする」という傾向があります。

これが、野球のようにエンターテインメントの情報であれば、むしろ、それを楽しんでいるので何ら問題はありませんが、この傾向が、仕事、つまり「経営に関わる情報」であれば注意しなければなりません。

自分が考えていることや価値観、あるいは、期待していることや願望などについて、安心感を求めて、それに沿った情報収集に偏ってしまうと、それによって「間違った思い込み」や「実は根拠のない自信」などを強くしてしまいます。

これが「安心のための情報収集」の「罠」です。

エコーチェンバー効果と確証バイアスの危険性

偏った情報収集は、経営判断において重大なリスクを招く可能性があります。

視野を広げ、多様な意見や情報に触れることが、冷静でバランスの取れた意思決定を行うために不可欠です。

しかし、それを邪魔するのが「エコーチェンバー効果」と「確証バイアス」です。

無意識に働く心理的な傾向として、誰もが陥りやすいこのふたつに触れておきます。

エコーチェンバー効果

自分の意見や信念を強化する情報ばかりを集めてしまい、その結果、似た考えを持つ人々の間で同じ意見が繰り返し反響(エコー)し、外部の異なる意見が聞こえにくくなる現象です。

たとえば、SNSやニュースサイトで自分と似た価値観のコミュニティに属することで、あたかもその意見が「常識」や「多数意見」であるかのように感じてしまう心理的な現象です。

経営面においては、同業者だけで情報交換を行う、情報源はいつも同じ新聞や雑誌やウェブサイト、ひとりのコンサルタントやコーチとタッグを組みセカンドオピニオンがいないなどにおいても同様の現象が起きやすくなります。

このような環境にいると、新たな視点を得る機会が減り、思考が偏りがちになります。

確証バイアス

確証バイアスは、上記、私の「タイガース現象」が典型例です。

自分が信じていることや期待していることを裏付ける情報を優先して探し、反対の情報を無意識に避けてしまう傾向です。

たとえば、ある経営判断を「正しい」と考えている場合、その判断を支持するデータや事例ばかりを探してしまい、反対の意見やリスクを見落とすことがあります。

さらに要注意、有名人・著名人の発信

さらに「エコーチェンバー効果」や「確証バイアス」を強める危険が潜んでいるのが、有名人や著名人の発信情報です。

彼ら彼女らの発信情報であっても冷静に吟味し、他の情報源や反対意見と照らし合わせることが必要です。それらの意見や情報が必ずしも客観的で正確とは限らないからです。

また、有名人や著名人の発信には、時には望ましくない意図が絡んでいることもあるので、鵜呑みはキケンです。

「TVで言ってた」「本に書いてあった」「新聞に載っていた」「ブログで発信してた」というように、メディアに惑わされることにも要注意です。

(関連記事)このブログは信用していいのか?

自分のクセを知り、ミラー情報に触れる必要性

多くの人が、上記の「エコーチェンバー効果」や「確証バイアス」、さらに「知名度や権威性に対する無警戒な信用」などによって情報収集が偏る傾向があります。

ここで重要なのは、情報収集における「自分のクセ」を知ることです。

  • エコーチェンバー効果が生じやすい場所に偏ってないか?
  • 自分や自社にとって都合の良い、耳障りの良い情報に偏っていないか?
  • 根拠のないモノを根拠としていないか?

定期的にこのような自己内観を行い「クセ」が悪くなりそうであれば、こまめに軌道修正する習慣がとても重要です。「悪いクセ」を直さずに過ごしていると、どんどん「思い込み」や「自己洗脳」が悪化してしまいます。

また、この「こまめな軌道修正」に加えて、自分の考え方や価値観、あるいは期待や願望に反する情報である「(左右反対に映ってる)ミラー情報」に意識的に触れることも効果的です。

そのための方法として、下記がおススメです。

  • 複数の異なるコミュニティに参加する=視野を拡げる
  • 意識的に反対意見に触れる=自分との違いを確認する
  • 異なる価値観を理解し尊重する=瞬間的に排除しない
  • 情報の出所によって、信用に柔軟性を持つ
  • 情報の区分(事実?見込み?予想?)を確認する

自分のクセを知り、その上でミラー情報に接することを意識しましょう。

情報収集とクリティカルシンキング

情報収集において、クリティカルシンキングがとても重要です。

このブログでは「深広思考法」として紹介していますが「表面的に流してしまうことなく、物事を深く、広く考える思考習慣」と定義しています。

この「深く・広く」を「浅く・狭く」と比較してみると下記のようになります。

特徴クリティカル
(深く・広く)
クリティカルでない
(浅く・狭く)
分析情報やデータの出所、背景、根拠を自ら確認情報やデータをそのまま信用
一般的な意見に同調
論理的事実の積み重ねによる理詰めで結論を導く結論に至るプロセスで感情や感覚、カンが影響
批判的議論を深めるため敢えて批判的な意見を発信摩擦や対立を避けるため批判的質問や反対意見を制限
代替案単なる反論ではなく、代替案や選択肢を提案対案なき反論や批判が多い
リスク想定の範囲が広く深く、また、その事前対処も考慮根拠なき楽観。リスクを見落とす、または過小評価
柔軟性最適解のために、意見の取下げや変更など、柔軟に対応当初の計画や自身の意見に固執することがある
客観性主観的な偏見を排除し、客観的な視点を保つ個人的な意見や偏見に影響されやすい

この「深く・広く」考える目的は「本質を得るため」であり、「表面的」「一時的」「その場しのぎ」という言葉と対極にある概念であり、情報収集には欠かせません。

詳しくは、下記の記事を参考にしてみてください。

(参考記事)【経営者の基礎スキル】深く広く考えるクリティカルシンキング

経営者にとっての正しい情報収集

経営者の最も重要な役割は「意思決定」です。

現在の会社の状態は、今までの経営者の意思決定の連続の結果です。

会社が「望ましい状態」にあるのは、経営者が今まで「望ましい意思決定」をしてきた結果であり、もし、「望ましくない状態」にあるなら、どこかで意思決定を誤ったと言えます。

会社が続く限り、経営者の意思決定が続きます。

その意思決定に「質の良い情報」が欠かせませんが、それは「向こうからやってくるもの」ではなく「自分から取りに行くもの」です。

そのとき「より良い情報」を得ることができるかどうか?は「経営者の情報力」にかかっています。

改めて「安心のための情報収集」ではなく「正しい意思決定のための情報収集」という視点を忘れずに経営脳をトレーニングしていきましょう。

まとめ

さて、どうですか?「経営者にとっての正しい情報収集」についての重要視点を整理しました。

関連記事も含め参考にしてみてください。

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以上、お役に立ちますように!