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2025年第8週の土曜日。
今週は、また寒くなってコンディションを崩したりしてませんか?
さて、今週は、少し変わった視点ですが、決算書の読み方を「経営者自身の課題発見」という切り口で整理しました。
「会社の課題」は「経営者の課題」と表裏一体です。
結論は「経営者が純資産思考法を習慣化すれば会社はもっと良くなる」という話です。
「経営脳の自主トレ」の参考にしてみてください。
このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に、「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。
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【課題共有】
知ってるけど読めない決算書
決算書(貸借対照表と損益計算書)って「知ってるのに、読めないもの」だと思いませんか?
毎年の決算で見る貸借対照表と損益計算書を知らないはずはないですよね?流石に(笑)。
でも「じゃあ、読める?」と聞かれたら、ほとんどの経営者の顔は曇ります。
知ってるけど、読めない決算書。
かといって、読めなくても別に日頃の仕事や生活に支障はない。
だから、危機感はない・・・ですよね。
でも、経営者は「読めた方がいい」し、厳しく言うなら「読めなければダメ」なんです。
そこで今日は、将来のために「今、どの程度読めるか?」の確認をしておきましょう。
「手遅れ」は悔やんでも悔やみきれないので。
(参考記事)決算書は「経営者の人生の記録」なので大切に積み重ねること
【課題解決】
決算書が読める経営者になる
「当社の決算書は、いいのか?悪いのか?」を、当事者である経営者は正しく把握しておかなければなりません。
「良い決算書」であれば、その状態をキープし、できることなら、もっと良くしたいものです。
「悪い決算書」であれば、さっさと課題を解決し、正常化しなければなりません。
そのためにどうするか?
まず「貸借対照表(BS)と、損益計算書(PL)が読める経営者」になることです。
「読める」とはどういうことか?
では「決算書が読める」とは、どういうことか?
例えば「総資産500」「自己資本100」の場合、自己資本比率は20%です。
「読める」とは、この20%が「いいのか?」「悪いのか?」「どうでもいいのか?」が分かるということです。
自己資本比率の計算方法を「知っている」とは違います。
決算書に並んでいる数字を見て「良し悪し」が分かれば「読める経営者」です。
しかし、そこに記載してある数字を知っていても、その「良し悪し」が分からなければ「知ってるけど読めない経営者」です。
知らなければ「読めない」
「読める経営者」になると言っても、そもそも、その前段階として「知っている経営者」でなければなりません。
念の為に「決算書のキホン」をおさらいしておきましょう。
もし、不安であれば、下記の記事で確認をしてみてください。
【視点確認】
決算書を読めているか?
「決算書を知ってる」ことが確認できれば、次に本題の「決算書を読めているか?」ですが、「読めるよ!」と思っていても、実は「読めてないやん」という中小企業経営者が少なくありません。
念の為、「本当に読めているか?」を確認しましょう。
つまり、「決算書を読む視点は間違ってないか?」です。
下記のチェックリストの各項目において、スラスラと回答できれば「問題なし」です。
あなたの会社の「過去3年分の決算書」を手元においてチェックしてみましょう。
現在〜中期視点
まずは、現在から今後3年程度の時間軸で、下記のようなことを読み取れているか?です。
つまり、下記のチェックポイントのそれぞれについて「理解した上で良し悪しを判断できているか?」です。
- 共通:決算書に並んでいる各科目の内容を把握しているか?
- BS:現在の「名目純資産」と「実質純資産」を把握しているか?
- BS:現在の銀行借入金の残高は「何年分の利益相当額」か把握しているか?
- PL:過去3期間の固定費の推移を把握しているか?
- PL:今後3年間の固定費の推移を予測しているか?
- PL:毎月の損益分岐点限界利益を把握しているか?
上記は、業種を問わず共通して経営者が把握しておくべき重要ポイントです。
これら以外にも、業種によって「減価償却と返済の関係の把握」「適正在庫の把握」などが重要であることがあります。
中期〜長期視点
次に、この先3年〜10年程度を見通してみましょう。
決算書から、会社の近未来~将来を見通せているか?です。
- PL:今後3年間の「税引後純利益」の見込み予想、または、目標設定をしているか?
- BS:現在の収益状況が続くと仮定したとき、3年後の純資産、10年後の純資産はどれくらいになるかを把握しているか?
- BS:自分自身が引退するまでに、銀行借入金は完済できるだろうか?
さて、どうですか?決算書を正しく読めていましたか?
【読解視点】
決算書は「仮説起点」で読む
上記で「ヤバイ!読めてない!」と気付かれたのであれば、ここで「読み方」を覚えましょう。
重要なのは「仮説起点」で読むことです。
決算書を漠然と眺めていても経営課題は浮かび上がってきません。
「当社に限って、大丈夫なはず」とか「ひょっとしたら、当社はヤバいかもしれない」という仮説を立てて、それを確かめるために「決算書を読む」という方法です。
その仮説が、上記のチェックリストに他なりません。
仮説形式で再掲します。参考にしてみてください。
- 共通:決算書に並んでいる各科目の内容は、すべて正しいはず。
- BS:現在の「実質純資産」は充分であり、万が一があっても大丈夫なはず。
- BS:銀行からの借入金は収益力に対して適正範囲であり、過剰ではないはず。
- PL:過去3期間、今後3年間の固定費の推移の状況は想定通りのはず。
- PL:損益分岐点限界利益に対して、実際の限界利益は「安全圏」で推移しているはず。
- PL:今後3年間の「税引後純利益」の見込みは、期待値を越えているはず。
- BS:自分自身が引退するときに「実質純資産」は充分蓄積され、それに対する「相続対策」も問題ないはず。
これらの「はず=仮説」に対して「実際はどうだろう?」と検証することで「良し悪しの判断力」が高まっていきます。
この「仮説起点」で、定期的に「決算書を読む」ことを習慣化しましょう。
【反面教師】
ヤバイ決算書のサンプル
ここで、参考までに「ヤバイ決算書」を紹介しておきます。
特に「ヤバさ」は、貸借対照表(BS)に表れます。
「こうなってはならない」という警鐘です。
もうすでに見た目がヤバイ

一目瞭然ですね。
資産110,000千円に対して、負債が135,000千円で、いわゆる「債務超過」の状態にあります。
長短合わせて1億円の借入金に対して、現金預金は、わずか5,000千円で、銀行も警戒する状態ですね。
しかし「25,000千円程度の債務超過なら、まだ、なんとかなるでしょ?」と思う人もいらっしゃるかもしれません。
ここでの注意点は「これは簿価だ」ということ。
実はもっとヤバイ

上記の貸借対照表(BS)を「換金価値」に置き換えてみました。
前払費用や、工具器具備品は、換金価値ゼロ。在庫や車両運搬具も、簿価に比較すると大きく減額されています。
一方で、負債は「額面通り」です。
こうすると「80,000千円の債務超過」になってしまいます。
「まだ、何とかなる!」という人もいらっしゃるかもしれませんが、普通は「こうなりたくない」と思うはずです。
この「ヤバイ決算書」が気になる人、あるいは、ここからの脱出方法に興味がある人は、下記の記事を参考にしてみてください。
(詳説記事)中小企業の貸借対照表|ヤバいバランスシートになってないか?
【深堀視点】
決算書に潜む自分まで読む
さて、ここで厳しい話をします。
良くも悪くも、今の決算書の状態にしたのは経営者です。
経営者自身が、決算書を意識して経営したかどうかに関係なく、経営の成果は問答無用で決算書に表れます。
創業以来、ずっと黒字経営を続けていたら、内部留保(実質純資産)もそれなりに蓄積できているかもしれません。
一方、業績が振るわず、赤字を出し続けていたら、内部留保どころか、最悪の場合「債務超過」に陥ってるかもしれません。
現在の決算書の状態を振り返って、後悔や反省があるでしょうか?
- 意識はしてなかったものの、黒字経営を続け、キャッシュを潤沢に蓄えてきて良かった
- ずっと黒字だったので、すでに「たっぷりの内部留保」があると思ってたのに「からっぽ」だったとは。。。
- 銀行が貸してくれるのでキャッシュフローは安定してたので「問題なし」と思ってた・・・
- キャッシュフローが安定していても「他人のお金」って意識しておけば・・・
- たまたま良かったけど、意識してたらもっといい貸借対照表にできたと思う
- 資産価値が増えない車や不動産を買いすぎた・・・
- 節税のつもりで、経費を使いすぎてたからか・・・
どうですか?「決算書に潜む過去の自分=経営者としての課題」が見えたのではありませんか?
「決算書を読める経営者」は、この意識がとても高いものです。
つまり「決算書を良くするのも、悪くするのも自分」という自責の意識です。
決算書から「会社の課題」を通して「経営者の課題」を読み取れるようになれば、会社は必ずもっと良くなります。
【要点整理】
「純資産思考法」をクセにする
さて、どうでしょう?
今週は、決算書から「会社の課題」を通して「経営者の課題」を読み取るという視点で整理しました。
- 会社の課題:現在の状態は?あるべき状態とのギャップは?
- 経営者の課題:過去のどんな意思決定が、この決算書に影響しているのか?
決算書を良くするのも、悪くするのも、経営者です。
決算書をあるべき状態に近づけるために、経営者として考動をどのように改めるべきか?
その判断基準の中心にあるのは「時価純資産」です。
「時価純資産」を厚くするために、どのように意思決定すればいいか?という「純資産思考法」をクセにしましょう。
(参考記事)中小企業の貸借対照表|内部留保が分かる経営者になること!
本稿が、この気付きのきっかけになればと思います。
関連記事も含め参考にしてみてください。
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以上、お役に立ちますように!