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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
このブログのあっちこっちで「内部留保を貯めよう!」と書いているのですが、そもそも「なんで?」について整理します。
中小企業の内部留保は「何のために?」「どれだけ?」貯めればいいか?の重要視点です。
本稿は「中小企業向け|マネジメント会計(管理会計)の設計と運用の概要」の補足です。
このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。初めてアクセスしていただいた方は、こちら(=「このブログについて」)をまずご覧ください。
内部留保を知らない経営者はいずれ後悔する
中小企業経営者の多くは「損益計算書」への関心が強く、それに比べてもうひとつの重要財務諸表である「貸借対照表」への関心がイマイチです。
「損益計算書(PL)」と「貸借対照表(BS)」は、超シンプルに例えるなら、「PL:1000万円の当期純利益」を3年続ければ「BS:内部留保が3000万円増加する」という関係です。
資本金1000万円でスタートしていれば、3年後の「帳簿上の純資産」は4000万円になっています。
この「帳簿上の純資産4000万円」を正しく理解している経営者は「貸借対照表に関心を持っている経営者」です。
反対に「帳簿上の純資産が曖昧(知らない)」という経営者が「貸借対照表への関心がイマイチな経営者」です。
ここで、私は断言します。
「貸借対照表を正しく理解していないと、いずれ後悔することになる(かも)」です。
その詳細は、下記の記事を参考にしてください。
(参考記事)「出口」を知らない経営者はいずれ後悔する
もし「内部留保?よくわからないなあ」と不安な方は、下記の記事に詳しく解説しているので、先に読んでみてください。
(詳説記事)中小企業の貸借対照表|内部留保が分かる経営者になること!
「実質内部留保」を正しく理解しておくこと
上記で、わざわざ「帳簿上の純資産」という表現をしましたが、この「帳簿上の純資産」は、別名「名目純資産」ともいう「計算上の数字」なので、あまり意味がなく、実際に正しく把握しておくべき数字は「実質純資産」、つまり「換金価値」です。
つまり、「いま、会社を解散・清算すれば、どれだけのキャッシュになるか?」。
ここからは、「内部留保」を「実質純資産(実質的な内部留保)」という意味で使います。
この話も、理解が曖昧であれば、下記の記事を再読しておいてください。
(詳説記事)中小企業の貸借対照表|内部留保が分かる経営者になること!
内部留保は何のために?どれくらい?
まず、「何のために?」、つまり「内部留保が必要な理由」ですが、それは次の3つです。
また、下記の3つの視点は優先順でもあります。
- 最優先すべき「守りのため」
- さらに上をめざすための「攻めのため」
- 経営者の「セカンドライフのため」
以下、それぞれについて「どれくらい?」と併せて解説します。
視点1:守りの内部留保:固定支出額の1年分を確保
新型コロナにおける非常事態が記憶に新しいところですが、当時、大きく影響を受けた中小企業には「緊急融資」や「助成金」によって「食いつないだ」という会社たくさんありました。
それでも足りずに息絶えた会社、また、最近になって緊急融資の返済が始まって「時間差」で息絶えた会社、あるいは、それが理由で今も資金繰りに窮している会社も少なくありません。
なぜ?
その理由は、そもそもの「収益力」にも原因がありますが、もうひとつの理由が「非常時の蓄え」が少なかったからです。
つまり「会社を守るための内部留保」。
なぜ少なかった?
当時、私はまだ現役税理士だったので、その実態を目の当たりにし「内部留保が足りない理由」は「内部留保への意識が足りなかったから」であると、痛感したものです。
同様のことは、私がまだ若手税理士であった頃の「バブル崩壊」でもありました。
いずれも「突然やってくる」のです。
震災や豪雨による災害によって、そのような窮地に立たされている中小企業も少なくありませんが、パンデミックや経済の急変による「経営環境の激変」もあり、そのリスクの認識と対策は、軽視すべきではありません。
これがが「実質内部留保を貯める理由」のひとつです。
そして、それは「どれだけ必要か?」ですが、私の考えは「最低でも固定支出の1年分」です。
万が一、売上が激減、あるいはストップしても「固定支出の1年分」の内部留保があれば「1年はつぶれない会社」になることができます。
もちろん、リスクは「お金では解決できないこと」もありますが、「お金で解決できること」は、「1年分の内部留保」で何とかなります。
繰り返しますが「内部留保が足りない理由」は「内部留保の意識が足りないから」です。
改めて、軽視することなく内部留保による「防衛意識」を高めましょう。
視点2:攻めの内部留保:リスク許容力を高める
「守りの内部留保」を確保したうえで、次に考えるべきは「攻めの内部留保」です。
これは、積極的な事業拡大や投資のために蓄えておく資金です。
ある意味、これも「守り」と捉えることもできますが、ほとんどの商品やサービスには寿命があり、常に「次の準備」が欠かせません。その準備がすべて順調に成功するならリスクマネジメントは必要ありませんが、現実はそんなに甘くないですよね。
商品やサービスの開発、マーケットの開拓、そして、人材育成など、企業経営には「先行投資」が伴います。
その「先行投資」をするための資金が必要であり、また、万が一、それが失敗してもゆるぎない財務体質が必要です。
敢えて、極端な話をすると「5000万円の投資」が失敗しても「余剰資金による投資」であれば、感情的な反省や後悔があったとしても、勘定的には会社はビクともしません。
会社の事情によって差があるので「どれだけ必要か?」については差があります。御社にとっては「どれくらいの余裕を持てば安心して先行投資ができるか?」をよく吟味して「リスク許容力」の目標設定をしてみましょう。
視点3:退職金原資:経営者のセカンドライフ設計
以上「守りの内部留保」と「攻めの内部留保」を充分に蓄えれば「会社は大丈夫」です。
しかし、オーナー中小企業においては、「会社」と同列で「経営者個人」についても検討しておかなければなりません。
「会社は大丈夫」でも「経営者は大丈夫」か?です。
いずれやってくる引退のときに、セカンドライフのための資金として「退職金」や「会社の譲渡対価」を期待するのであれば、その資金も「実質内部留保」として貯めておく必要があります。
先代社長が退職金でゴッソリ抜いて「守り」も「攻め」もスッカラカンになってしまえば、後に残された人たちは、突然「薄氷の経営」を強いられることになります。
経営者のセカンドライフのための内部留保は「守りも十分」「攻めも十分」という状態での「残余部分」と考えるのが「筋・道理」です。
長期の経営計画において、この「セカンドライフ資金」についても、検討しておくことを忘れないようにしましょう。
(参考記事)中小企業の経営計画は「経営者の人生計画」という視点
まとめ
さて、どうですか?中小企業における内部留保について「なぜ?」「どれくらい?」を3つの視点で整理しました。
関連記事も含め参考にしてみてください。
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