リーダー育成|「人を育てる人」が自律型成長チームに必要

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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。


「メンバーが増えてきて、だんだん目が行き届かなくなってきた」という経験はありますか?まさに「今がそう!」という方もいらっしゃるかもしれませんね。メンバーが少ない時は一人ひとりのことがよく見えますが、成長して15人くらいを超えるころからだんだん見えなくなってくるんですよね。

チームが大きくなり、人材育成を急がないといけないのに、なかなか手が回らず、かえって自分の仕事が増えるという悪循環に悩む経営者が少なくありません。その原因は「リーダー不足」であり、それは経営者自身も分かっているのですが、だからといってすぐに解決できるほど簡単なものではありません。

このような相談をもらったときの私のアドバイスは「人を育てる人」を増やそう!ですが、その視点や方法について整理するので参考にしてみてください。

この記事は「中小企業向け人材育成|人が成長する仕組み作りの概要」の補足です。

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【現状確認】育成力が中小企業の明暗を分ける

私は、税理士として30数年前から中小企業の現場で仕事をしてきましたが(私の年齢のせいもあるかもですが)時代は大きく変わったな、と特に最近思います。

今も昔も、それなりに一長一短があるので、決して「昭和はよかった」というわけではありませんが、価値観の多様化、働き方の変化、そして人材不足。「優秀な人を採用すること」と「人を育成すること」の困難さが益々増しているように感じます。

中小企業の多くは、少数精鋭チームなので、採用や育成の良し悪しがそのまま業績や、会社の成長に大きく影響します。もちろん、数十年前にも同様の悩みはありましたが、その難易度が高まっているという受け止め方です。

現在の中小企業経営を観察していると、採用力や育成力を高めることの重要性、緊急性がますます高くなって、最優先課題と位置付ける必要があると強く思っています。

特に「育成力」は重要で、せっかく採用した優秀な人材に期待通りのパフォーマンスを発揮してもらうためにも育成への取り組みを疎かにすることはできません。優秀な人材だから育成しなくてもよい、というような中小企業は超レアケースです。

私は、人材育成力がその企業の明暗を分けると言っても言い過ぎではないと思っています。

【課題確認】人が増えると生じる様々な不都合

顧客が増え、売上が増え、それに伴って人が増え、チームが大きくなるにつれて、様々な不都合が生じていませんか?

  • 自然発生的に業務分担が決まり、属人化が進む
  • 同様に自然発生的な業務フローが生成され、合理性、効率性が低下していく
  • 各自が、それぞれの価値観で考動し、一体感が薄れていく
  • 小さな派閥のようなものが生成され、徐々に連携が乱れていく
  • チームの大きさに応じたリーダーが育たず、情報流通が悪くなる

ざっと、思いつくものをランダムにピックアップしただけでも、憂鬱になりそうな現象の数々です。

人が増えた結果、このような不都合で悩む経営者は珍しくないでしょう。

【理想確認】人が成長するチーム

上記のような不都合は、全体最適より各々が個別最適を優先するからで、決してサボってるわけではないので、余計「タチが悪い」のですが、これらを解消するためには「管理を強化する」「ルールを厳格化する」などの解決策に走りがちです。でも、これがまた悪循環に拍車をかけます。

「誰が管理するの?」「「誰が、どんなルールを作るの?」「誰が、そのルールを運用するの?」と、結局「ヒトの問題」として返ってきます。また、それは、多くの場合「社長の仕事」となって、益々、忙しいことになってしまうというオチが付きます。

結局「ヒトの問題」なのです。

管理強化や、そのためのルールも必要ですが、その前に「個々のメンバーの成長」が欠かせないことは言うまでもないでしょう。

メンバーのデキが悪ければ、ルールを細かくし、管理も強くしなければなりません。しかし、メンバーが優秀で、その結果チームのパフォーマンスが高いレベルで維持されれば、管理もルールも必要最低限でいいはずです。

人材の成長が解決策の本質であり、そんな「人が成長するチーム」が理想ではないでしょうか?

【課題解決】育て上手な人材をリーダーに任命

私の考え方は、上述したように「人を育てる人」を増やすことです。人を育てる仕事は部門長などの下位チームのリーダーの役割です。各部門を任されたリーダーたちが、それぞれのチームメンバーを育ててくれれば「人が成長するチーム」になります。

リーダー人選の視点

ここで重要な視点は「誰をリーダーにするか?」ですが、多くの場合「担当業務に長けた人・経験の多い人」が選出されますが、それ以上に大切なのは「育て上手な人材」であることが優先条件です。

「デキル人」は、往々にして「自分のやり方を盗め」「考えれば出来るでしょ?」「これくらいは簡単やん!」というような態度を示す人が少なくありません。相手が「背中を見て学ぼう」「先輩のスキルを盗もう」「足手纏いにならないように頑張ろう」という部下ばかりであれば、それもアリだと思いますが、残念ながら現実はレアケースです。

まず「人材育成は自分の役割であり、責任である」という自覚を持っている人が上に立たないと「人が成長するチーム」にはなりません。

「仕事がデキルこと」もリーダーに欠かせませんが、それと同等以上に「育て上手であること」も選出の要件として重要視する必要があります。

「仕事はデキルけど、育てるのがヘタ」という人材より「仕事はふつうだけど、育てるのが上手」の人材の方が「人が成長するチーム」のリーダーとして適任です。

(参考記事)中小企業向|管理職=ミドルマネジメント育成の6つのステップ

育て上手な人材がいないとき

残念ながら「育て上手なリーダー」としての適任者がいないときはどうするか?

中小企業の場合、経営者の出番です。

経営者自身が『「育て上手なリーダー」を育てるのが上手』になる必要があります。

私の経験上「リーダー人材が少ない会社」の多くは、その原因は「リーダー育成が上手でない経営者」です。

経営者自身が「リーダーとは?」「育て上手なリーダーとは?」について正しく理解し、納得し、足りないところを学ぶことが唯一の解決策です。

「自分は育てることが苦手」という経営者は「育て上手な人を採用すればいい」と考えがちで、それは間違ってはないのですが、皮肉なことに「育てることが苦手な人」は、「育て上手」を見極めることも苦手で、結局「育て上手な人材が見つからない」という悪循環に陥ることが少なくありません。

【育成方針】人事評価基準で伝える求める人材像

ここで注意点ですが「育て上手なリーダー」がいるからと言って安心してはなりません。

「育て上手な」を丁寧に表現すると、「当社が求める人材として育てることが上手」という意味です。

もっと、ストレートに表現すると「経営者が望む人材として育ててくれるリーダー」です。

そのためにどうするか?

その答えは「人事評価によって求める人材像を言語化する」です。

その上で「人事評価の点数が上がるように育ててほしい」とリーダーに伝えることが効果的です。

また、メンバー間の相互支援を促し「仲間の成長をサポートできることが大切」であることを伝えるために「人事評価基準の5点(=満点)は、指導実績レベルとする」のです。

「人事評価」というと、ほとんどのメンバーは「個人の評価」というイメージを持っており「個人」にフォーカスされています。しかし、「もっといいチーム」として「成長カルチャー」を根付かせるためには、「個人」から「チーム」にメンバー全員の視点を向けなければなりません。

その「視点転換」の道具が「人事評価基準」です。

「人を育てられるレベルが最高点・満点」という相互認識ができるチームにしましょう。

視点が変われば、あとは「どうすれば、人を育てることができる人になれるか?」を個別フォローすればいいのです。

PDCAサイクルに当てはめてみると次のようになります。

  • Pゴール設定
    人を育てた実績が満点評価
  • D実践
    部下や後輩の育成への取り組みをサポート・フォロー
  • C評価
    育成実績について評価
  • A支援
    育成するための課題を個別にフォロー

(参考記事)中小企業の人事評価|5段階評価「5点=満点」の大切な意味

【支援体制】経営者の仕事は “カルチャー” 創り

ゴールイメージは「経営者が直接関与しなくても、メンバー相互が成長支援を行い、自律的に成長するチーム」です。

「育て上手なリーダー」に期待通りの成果として、個々のメンバーの成長を望むには、経営側としてその援護射撃も必要です。

その援護射撃にもっとも効果的なのは「カルチャー」です。簡単に言うと「成長が当たり前という職場環境」です。また、それは競争によるものではなく、お互いが仲間の成長をサポートし合うという「成長カルチャー」が、リーダーの育成活動を後押しします。

この「成長カルチャー」を創り、醸成をけん引するのが、トップリーダーである経営者です。

「成長とは何か?」「なぜ、成長が必要なのか?」「どうすれば成長できるのか?」という価値観を継続的にメッセージとして発信し、そして、それは決して「口だけ」ではなく、具体的な環境作りや、仕組み作りを進めることで、各リーダーの育成活動はより成果に結びつきやすくなります。

経営者は「成長カルチャー」によって、各リーダーの育成活動を援護射撃しましょう。

(参考記事)チームのパフォーマンスを高めるための成長カルチャー創り

【まとめ】自律的に成長するチーム作り

さて、どうですか?「人を育てる人を育てる」という視点について紹介しました。

経営者が求める理想の人材は「人を育てることができる人材」であるというメッセージを人事評価によってチームで共有し、意識するところから始めます。繰り返しますが、人材育成は「個」ではなく「チーム」です。

さらに、「もっといいチーム」にするために、経営者が直接関与しなくても自律的に人が育つ「成長カルチャー」を作り、醸成することも欠かせません。

関連記事も含め参考にしてみてください。

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