この記事は、約 7 分で読めます。
この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
正しく伝わっているだろうか?
その真意は伝わっているだろうか?
伝えたいことは鮮明だろうか?
伝わらないとき、他責にしていないだろうか?
「もっといい会社」にするためには、経営脳を整え「もっといい経営者」になることが唯一の選択肢です。
いい経営者になるためのマインドセットと心身のコンディション(L1~L3)を整えたら、次は「L4:経営のためのスキル」のトレーニングです。
このページでは、10人~100人規模の中小企業経営者のために、経営脳5つのレイヤーの「第4レイヤー:スキル」のひとつである「経営者の伝達力」について深掘りします。
日常の指示命令や依頼から理念や計画に至るまで、周囲はその背景にある真意(目的や意図)を正しく理解している。その結果、コミュニケーションに不安がなく、心理的安全性が常に保たれている状態。
「伝達力」は、これを実現するための必修経営スキルのひとつです。
- 中小企業経営者にとっての「伝達力」とは何か?
- 「伝達力」が不足すると何が起きるか?
- 「伝達力」のセルフチェックリスト
- 「伝達力」を高めるためにどうすればいいのか?
【スキルの構造】ヒトも”OSとアプリ”で動いてる
個々のスキルの前に、まず「スキルの全体像」について要点整理しておきます。
「スキル」は、仕事をするための技能や技術などのことですが、大きく・・・
・・・2つに分類することができます。
スポーツでも・・・
- 競技の種類に関係なくすべてに共通する「筋力」「走力」「スタミナ」などの基礎的な能力と
- 「技」「テクニック」「連係プレー」など、その競技特有の能力に分類できますが
・・・それと全く同じです。
基礎スキルは「ビジネスパーソンとしてのスキル」であり、新人やベテラン、年齢や性別、ポジションなどの違いに関わらず「全員必修」のものです。
このブログでは、その中でも特に優先的に重要と思われる「課題発見力」「計画実現力」「管理力」「仕組力」「コミュニケーション力」「論理的思考力」「拡深思考力」「リーダ力」の8つについて紹介しています。
一方で、経営スキルは、会社経営特有の技能等であり「ヒト・モノ・カネ+トキ」をマネジメントするための経営者にとって必修のスキルです。このブログでは「先見力」「理念創造力」「戦略構想力」「チームビルディング力」「会計力」「情報力」「プロジェクトマネジメント力」「伝達力」の8つを特に重要と位置付けて紹介しています。
「基礎スキル」は、パソコンやスマートフォンに例えるなら「OS」に相当する部分です。「OS」がイマイチであれば、どんなに優秀な「アプリ」をインストールしてもサクサク動かない、という現象をそっくりです。
「経営が上手くいかない」という症状において、経営者のアプリ(経営スキル)以上に、そもそものOS(基礎スキル)に課題があるというケースは少なくありません。
(詳しくは「経営脳の第4レイヤー:スキル」を参考にしてください。)
【定義】真意が伝わるチカラ
必修経営スキルのひとつである「伝達力」は、ビジネスパーソンなら誰にでも必要とされるスキルです。
その意味では「基礎スキル」なのですが、ここであえて「経営スキル」に分類しているのは、規模に関わらずチームのトップリーダーである経営者には、指示、命令、依頼、連絡など、単に情報を伝えることに加えて「真意(目的や意図)が伝わるチカラ」が必要であるからです。
例えば、次のような場面では特にトップの伝達力が大きく影響します。
- 企業理念や経営計画の発表や浸透
- 社員の個別評価面談
- 組織変更や人事異動の発表
- 社員教育やモチベート
- インタビューやプレスリリース
- イベントでのスピーチ
これらのシーンにおいては特に、誤解されることなく「真意」が正しく伝わることがとても重要です。
【力量不足】チームが思い通りに動かない
会社でおきる不都合、言い換えれば経営者の悩みは、その本質的な原因が「経営者の伝達力」であることが少なくありません。自社で起きている不都合は、その真因を他責ではなく、自責で考えることがとても重要です。
下記に「伝達力不足」が引き起こす典型的な例を示すので、チェックしてみてください。
- 方針や目標の認識が薄いチーム
- そもそも、方針や目標自体に魅力が無い場合は論外ですが、テキストベースでは魅力的に映る方針や目標であっても、伝え方が上手でない場合、そのホンキ度が伝わらなかったり、ただの理想論やタテマエに聞こえたりするものです。
- モチベーションが低いチーム
- リーダーの伝え方が稚拙なとき、メンバーのモチベーションや士気が上がりません。内心ではメンバーを高く評価しているのに、それを伝えない、あるいは、伝えているつもりでも熱量が低いときなどは、相手の感情にまで届かないものです。
- 動きが遅いチーム
- リーダーのスピード感が伝わっていない時の現象です。「至急案件だったら、そう指示してくれればいいのに・・・」とメンバーがグチってるようなシーンはありませんか?
- 指示命令が行き届かないチーム
- いわゆる「伝言ゲーム」です。リーダーの発信が末端に行くと劣化してたり、誤解されていたりする現象です。もちろん、そのプロセスにも課題がありますが、そもそも発信源が「確実に末端までいきわたる伝え方」をしておく必要があります。これを放置すると、情報が一部の人にしか伝わらない「情報の独占」や、情報が歪んで伝わる「情報の歪曲」が生じるリスクがあります。
- 違う方向に進むチーム
- まさに「伝え方」がマズい現象です。経営者が示した戦略や目標が正確に伝わらないため、それを実行するメンバーにおいてミスや誤解が生じます。
- 離職率が高いチーム
- 経営者の真意が伝わらず、誤解が生じてメンバーが離職するケースも少なくありません。コミュニケーションの頻度や深さも原因かもしれませんが、頻度が少なくても、誤解が生じないように伝えることが大切です。
こうしてリストアップすると「何もかも経営者のせいか?」と気分を悪くする人がいるかもしれませんが、残念ながら「そうなんです」。上記以外にも、次のような不都合も経営者の伝えるチカラが原因のことが少なくありません。
- 危機管理の失敗:クレーム処理や不祥事等における謝罪の伝え方
- 外部との関係悪化:取引業者との意思疎通の不都合など
【自問自答】伝わっている手ごたえはあるか?
次に、伝達力をセルフチェックするための自問自答のサンプルを紹介するので、このような視点で自己内観し、解決すべき課題がないかを確認してみてください。
- 現状確認:伝えたいことは、正しく伝わっているだろうか?
- 社外
- 社内
- 家族や友人
- スタンス:伝える心構え
- 思ったように伝わらないとき、相手のせいにせず、自分の伝達力の優劣を振り返っているだろうか?
- 相手の立場や経験に配慮して伝え方を工夫しているだろうか?
- 非言語的コミュニケーション:(ボディランゲージや声のトーン)に配慮しているだろうか?
- 相手の心理的負担を軽減するように配慮しているだろうか?
- 伝達実務
- 話し方、書き方など、分かりやすいと評判を得ているだろうか?
- 理由のない朝令暮改をしていないだろうか?
- 伝達の補助資料の内容は臨機応変、柔軟に作り分けているだろうか?
- 信用や信頼
- 伝達の前提として、相手の信用や信頼をえているだろうか?
- 誤ったことを伝えた時、伝えたことを変更するとき、誠意をもって対応しているだろうか?
- 伝えることの根底にある価値観や判断基準は一貫性があるだろうか?
- 情報が偏らないように、機会均等に伝えているだろうか?
(関連記事)経営者が「伝達力」を高めるための自主トレメニュー
【コーチング】言葉を大切にするサポート
コーチングの本質的な目的は「経営者の考え方を整えるサポート」であり、実務的なノウハウや方法論を伝授することではありません。
実務的な方法で解決しても、多くの場合、それは一時的な効果で終わってしまいます。
そのような一時しのぎの解決ではなく、経営者本人の考え方という根本的な解決が必要です。経営者の考え方が整えば、行動が改善します。行動が改善すれば、結果が変わる、というロジックです。
「整える」とは、漠然として言語化できていない考え方や勘違い、間違っている考え方を正しく鮮明にすることを指します。
スキルに何らかの課題がある場合、その原因のほとんどは「考え方」にあります。「考え方」を正しく、鮮明に整えることができれば、ほとんどの課題は解決します。
以下に、スキルの課題解決のためのコーチングのステップを紹介します。このステップを自主トレの参考にしてみてください。
Step1:前提条件を整える
経営脳の5つのレイヤーで紹介しているように、スキルの前提には「マインドセット」「フィジカル」「メンタル」という3つのレイヤーがあります。
「うまく行かない原因はスキルなのか?」という「本当の原因」の確認が最初のステップです。
下位のレイヤーに問題がなければ、次に「L4:スキルを改善したい」という「WANT」のレベルでの内発的なモチベーションがあるか?です。もし「スキルを改善しなければならない」という「MUST」、つまり「外発的な義務感」が残っているようであれば、改めて「なぜ、欲求ではなく義務感を感じているのだろう?」という自己内観による自己認識が必要です。
これも問題なく、「スキルを改善したい!」というWANTを確認することができれば、次のステップに進みます。
Step2:ゴールを鮮明にする
前提が整えば、具体的に「伝達力」のトレーニングです。トレーニングとは、課題解決のための具体的なアクションのことですが、そのためには「ゴールを鮮明にする」ことがとても大切です。
ゴールである「伝達力が高い自分」とは?のイメージです。
「経営者の伝達力」とは「真意が伝わるチカラ」です。
例えば・・・
日常の指示命令依頼に限らず、理念や目標、計画に至るまで、自分自身が伝えたいことや、理解してほしいことは、相手によって伝え方を工夫しているので、誤解なく正しく伝わっているという手応えを感じる。
また、その内容に対する意見や異論、アドバイスなど、フィードバックも受け入れているため、社内外に関わらず、相互信頼感は強い。
これは、ひとつのサンプルですが、あなた自身の気持ちにフィットするあなた自身の言葉で「ゴール」を言語化しましょう。
Step3:意識的なトレーニング
ゴールが鮮明になれば、それに向かってのトレーニングです。
まず最初に取り組むのは「現状確認」です。
「伝えたいことは伝わっているか?」を、その相手に直接確認することです。伝わっていればOKです。しかし、伝わっていないな、誤解されているな、反対されているな・・・など、ネガティブな反応であれば、その原因や理由を明確にする必要があります。
この時の注意は「自責で考える」です。相手の理解力が低いから、という理由や原因はありません。「伝達力」が高ければ「理解力が低い相手でも伝えることができる」からです。
また、伝えたいことに反対される、というのは、伝わっている証拠でもあります。伝わっているから反対表明しているのです。意外と多いのですが「賛成してもらえない」と「伝わらない」は別のテーマなので混同しないように注意しましょう。
このステップでは「伝わっているか?」にフォーカスし、伝わっていない場合は、その真因を明確にすることに努めましょう。
Step4:伝わる技術をトレーニング
前のステップで「伝わらない原因」がわかれば、その解決のステップです。
この原因は、様々です。
軽症なのは「話下手」「たとえ話が下手」「言葉が少ない」「擬音が多い」「緊張しやすい」など、あえて言うと「伝える技術」が原因の場合であり、これは、その技術である「伝わる話し方」の習得というトレーニングになります。
コーチングの現場では、特にそのための時間を設けることなく、日常会話において「言葉を大切にするサポート」をします。
一方で重症なのは「伝える技術」ではなく「相手の拒否反応」が原因である場合です。相手が聞く耳を持ってくれないので伝わらないという症状ですが、この場合は簡単ではありません。なぜ拒否するのか?という深い原因を探らなければなりません。信頼関係が崩れている、過去の事実から信用されていない、人間関係が良好でないなどです。
これが社内で起きている場合は、特に深刻な問題です。その深く複雑な問題を明らかにし、それと謙虚に向き合うことができるか?が分かれ目です。
【まとめ】真意が正しく伝わるリーダー
さて、どうですか?
経営脳5つのレイヤーの「第4レイヤー:スキル」のひとつである「経営者の伝達力」について整理しました。
想像してみてください。
日常の指示命令や依頼から、理念や計画に至るまで、周囲の人たちはその背景にある真意を正しく理解してくれている状態。そのおかげでコミュニケーションに不安はなく、あなたは常にオープンマインドを保っている状態。
「伝達力」は、そのための必修経営スキルのひとつです。
もし、課題が見つかったなら、自主トレを重ね解決しましょう。
サポートが必要であれば、いつでも気軽に連絡ください!
以上、お役に立ちますように!