貸借対照表と損益計算書「今だけいい会社」と「ずっといい会社」

この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。約 7 分で読めます。


HORII
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おはようございます!

2025年第6週の土曜日。

今朝、外を見ると、久しぶりに積雪。いつも思いますが、雪は風情にも災害にもなり、何事も「ころあい」って大事やなあと思いながら眺めていました。

さて、今週も先週~先々週に続いて「決算書」の話ですが、今回は、意外と盲点になってる「貸借対照表と損益計算書の関係」を整理しておきます。

お伝えしたいことは「今だけいい会社」と「ずっといい会社」の違いです。

このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に、「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。
初めてアクセスしていただいた方は、「このブログについて」をまずご覧ください。

【課題共有】
考えたこともないBSとPLの関係

貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)の関係」と言っても、おそらく中小企業経営者のみなさんの声は「そんなん、考えたこともないわ」だと思います。もっと言えば「そんなん、どうでもエエんちゃうの?」かもしれません。

毎年の決算においては「損益計算書(PL)」で「売上・利益・税金」だけ見て「おしまい」という方が多く、ほとんどは「貸借対照表(BS)」までチェックし、ましてや、この両者の関係までチェックしている人は「皆無」ではないか?というのが30年以上も税理士をやってきた私の率直な感覚です。

自戒も込めて言うなら「それを説明しない顧問税理士が悪い」のであって、経営者の皆さんが悪いって話ではありません。

とはいえ、この両者は「ずっといい会社」でいるために、とても重要なヒントを発信してくれているので「知らなきゃ損」です。

では、詳しく見ていきます。

【課題解決】
BSとPLのつながりを実感する

突然ですが「バスタブ」の話です。

バスタブには、もともと50ℓのお湯が入っていました。
そこへ100ℓの「たし湯」をしました。
ところが、栓が緩くて30ℓが漏れていました。
結果、バスタブのお湯は120ℓになりました。
さて、バスタブのお湯は何リットル増えましたか?
  • バスタブには、もともと50ℓのお湯が入っていました。
  • そこへ100ℓの「たし湯」をしました。
  • ところが、栓が緩くて30ℓが漏れていました。
  • 結果、バスタブのお湯は120ℓになりました。

さて、バスタブのお湯は何リットル増えましたか?

さて、あなたは「どんな計算」をしましたか?

  • 最初50ℓー最後120ℓ=70ℓ増えた・・・という計算ですか?

それとも・・・

  • たし湯100ℓ-漏れ30ℓ=70ℓ増えた・・・という計算ですか?

もう、お分かりだと思います。

前者が「貸借対照表(BS)」の計算方法で、後者が「損益計算書(PL)」の計算方法です。

当然ですが、どちらで計算しても「答えは70ℓ」です。

これを、会計的に置き換えてみましょう。

  • 期首資本50-期末資本120=当期純利益70
  • 売上(収益)100-コスト30=当期純利益70

さらに、これを図解すると、次のようになります。

貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)の関係図

会計用語にすると、たちまち難しく感じるかもしれませんが「貸借対照表(BS)」は、バスタブであり、そこに入っているお湯が「純資産」です。

「損益計算書(PL)」で表されている「入(たし湯)」と「出(漏れ)」の差である「純利益」相当額が加算されます。

もし「漏れ」の方が多くて「純損失」になれば、その相当額の「純資産」が減ってしまうことになります。

さて、どうですか?「BSとPL」、少し分かり始めましたか?

さらに、理解を深め「実感」してもらうために、下記に練習問題を用意しました。

サラッと流さず、丁寧に考えてみてください。

スタッフ
スタッフ

*補足:「お湯」が「純資産」なら「資産・負債」は??とモヤモヤしてる方へ

この例え話を深めると「バスタブ」が「資産」です。この「バスタブ」が自己資金で買ったものなら「負債」はゼロです。でも、もし「高級バスタブ」で「ローンで買った」というなら「負債」も登場します。念のため補足しておきます。

【練習問題】
純資産の増減を計算してみる

「貸借対照表」のイメージ

簡単な問題で「貸借対照表(BS)」の理解度をセルフチェックしましょう。

下記の取引で「純資産」は、それぞれいくら変化しますか?

  • 【第1問】計上されている売掛金1000万円の入金がありました。
  • 【第2問】銀行からの借入金1000万円を完済しました!
  • 【第3問】今月の売上高は1000万円でした!

(Thinking-Time)

さて、どうですか?

バランスシートの「純資産」が動くのは「第3問」だけで「第1問」も「第2問」も純資産は変わりません。

正解できましたか?

【第1問】は「売掛金」という資産が減って、同額の「現金預金(資産)」が増えるので「資産」のプラマイゼロです。売掛金の入金は、単に資産が現金という形に変わっただけで、資産全体の合計に変化がないため、純資産も動かないのです。

【第2問】は「借入金」という負債が減って、同額の「現金預金(資産)」が減るので、それぞれ減少しますが、差額である「純資産」は変わりませんよね。

だから、【第1問】【第2問】では「純資産は変わらない」というのが正解です。

続く【第3問】ですが、上記に「動く」と書きましたが、実は「まれに動かない」ことがある、と少々ややこしい話です。

売上が1000万円だったら「純資産は増えた!」というイメージが先行しそうですが、減る場合もあります。「売上」で増えるのではなく「損益」で増減するからです。バスタブで言えば「たし湯」より「漏れ」が多ければ、バスタブのお湯は減ってしまいます。

正解は・・・その売上で「利益が出たら増える」、「損失が出たら減る」です。だから、たまたま「原価販売した」という場合は、損益が発生しないので差額である「純資産も動かない」ということになります。

これも、バスタブで例えるなら「たし湯」と「漏れ」が同量だったら、という話です。

【基本図解】
PLの利益がBSに加算されていく

さて、どうでしょう?

損益計算書(PL)」の「純利益」が「貸借対照表(BS)」の「純資産」に、毎期加算減算されていくということがお分かりいただけたと思います。

つまり「貸借対照表(BS)」は、毎年の利益(損益)の積み重ねであり、会社設立以来、ずっと繋がっています。

それを図解すると次のようなイメージです。

当期純利益を20年間積み重ねた時の純資産の増加推移を示すイメージ

「5,000万円の(資本金)純資産」でスタートし、毎期100万円の純利益(税引後)を積み重ねれば、20年後には「7,000万円の純資産」になる、ということです。

これを踏まえると、「損益計算書(PL)」は「単年度のフォーマット」であり、その前後の数字は影響しないのに対して、過去から続く会社の歴史の中で「貸借対照表(BS)」は「現在地を示すフォーマット」と言うことができます。

【長期視点】
「いつもいい会社」でありたい

高収益の損益計算書イメージ

この「損益計算書(PL)」を見てどう思いますか?

年商88億円、経常利益は約半分の41億円、納税後の「当期純利益」は28億7千万円。

この会社の経営者自身は、どう思うかは分かりませんが、客観的には「よぉ儲けたはるなあ~!」だと思います。

でも、だからといって純資産を充分蓄えている「いい会社」かどうかは、分かりません。

あくまでも「儲けている会社」であることは間違いないですが、それとて「この期は」という但し書きも必要です。「いつも儲けているか?」も分かりません。

つまり「今だけ・たまたまの黒字」かもしれないですよね?

一方で、下記が、この会社の「貸借対照表(BS)」です。

自己資本25億円の貸借対照表イメージ

さて、どうですか?

「ええ感じ」ですよね?

純資産が25億円もあります。

年間の販管費が2億円なので、10年分以上の「蓄え」です。

別の見方をすれば、万が一25億円の大損失を出しても、まだ「チャラ」です。

ビジネスは波乱万丈なので、今後「何があるか分からん」ですが、多少のことで、この「貸借対照表(BS)」が崩れるようなことはないでしょう。

このような「充分な純資産を蓄えている会社」が「いつもいい会社」です。

中小企業経営者の皆さんには、毎年の「損益計算書(PL)」に一喜一憂(も大事ですが)することなく「長期視点」を持って経営に勤しんでほしいと思います。

もし、自慢するなら「儲かった!」という「損益計算書(PL)」の短期視点ではなく、「ええBSやろ!」と「貸借対照表(BS)」の長期視点で「ドヤ顔」しましょう。

もちろん!それも「損益計算書(PL)」の積み重ねであることは言うまでもありませんが。

あと、最後に補足しておきます。この「貸借対照表(BS)」にも実は「とんでもない落とし穴」が潜んでいますが、気になる方は、下記の記事も参考にしてみてください。そのキーワードは「時価」です。

(参考記事)中小企業の貸借対照表|ヤバいバランスシートになってないか?

【要点整理】
BSが目的、PLはその手段

さて、どうでしょう。

今週は「貸借対照表と損益計算書の関係」を中小企業経営者の視点で整理しました。

今まで、考えたこともないBSとPLの関係を考えるきっかけになったでしょうか?

純資産増減の計算を通じて、BSとPLのつながりを実感してもらえたでしょうか?

PLの利益が毎期コツコツとBSに加算されていきます

こうして見ると「BSが目的」であって「PLは手段」であることがお分かりいただけたと思います。

長期視点で「いつもいい会社」であるように頑張りましょう!

関連記事も含め参考にしてみてください。

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