中小企業の決算対策|節税だけじゃない「目の付け所」

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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。


年に1度の大切な決算、着地したいところにソフトランディングするために「決算対策」は欠かせませんが、「決算対策」というと「黒字企業の節税対策」が一般的であり、ネットで検索すればたくさんの「節税ノウハウ」が出てきます。

もちろん「節税」は大切ですが、かといって「節税だけに気を取られる」というのもいただけません。「節税」は「決算対策」の一部にすぎません。

本稿では、中小企業における「節税以外の決算対策」について紹介します。

本稿は「決算書中小企業向け|決算書活用マニュアル」の補足です。

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決算対策の2つの視点

「決算対策」には、2つの視点があります。

そのひとつは「利益対策」、もうひとつは「決算”書”対策」です。

視点1:利益対策

ひとつめの視点である「利益対策」は、文字とおり「決算書上の利益をどれくらいにするか?」という対策です。

利益に課税されるので「節税」もこの中に含まれます。

「黒字予想」の場合、そのままでいいのか?それとも圧縮するのか?あるいはもっと利益を出すのか?を検討します。

一方で「赤字予想」の場合においても、そのままの「赤字」でいいのか?少しでも赤字を圧縮するのか?あるいは、レアケースですが、もっと赤字を増やすのか?

このように、予想が黒字であっても、赤字であっても、

  • 理想とする利益の着地点はどこか?
  • そこへ着地するために何をするのか?

について事前に検討するのが「決算対策」のひとつめの視点である「利益対策」です。

視点2:決算”書”対策

もうひとつの視点は、意外と盲点の「決算”書”対策」です。

簡単に言うと「見栄えの良い決算書(貸借対照表・損益計算書)」に着地するための対策です。

多くの中小企業は、決算書を金融機関に提出することで評価され、それが融資条件等に影響します。

それなら、少しでも評価がよくなる決算書にした方がオトクですよね。

そのための対策をしよう、というのが「決算”書”対策」です。

(その1)決算日までに

ひとつの例を挙げると「自己資本比率」を良くする対策です。

自己資本比率は「資産合計に対する自己資本の比率」です。

この比率を良くするためには?

  • 分母:資産合計を圧縮する
  • 分子:自己資本を増やす

というシンプルな分数計算です。

決算日までに「圧縮できる資産はないか?」「自己資本を増やす方法はあるか?」などを検討します。

  • 余剰資金があるなら前倒しして決算日までに借入金を返済する
  • 役員借入金や役員未払金があれば決算日までに精算する
  • 在庫整理をしてミニマムまで圧縮する
  • 除却できる固定資産を処理してしまう

・・・などがあります。

それぞれ、利益に対する影響額などを考慮しながら進めます。

逆に「決算日間際の借り入れ」は、資産合計が増え、自己資本比率は低下するので要注意です。

(その2)決算日のあとに

もうひとつ「決算書対策」として決算日が過ぎてから検討することがあります。

決算日を過ぎているので、もう数字を動かすことはできませんが「数字の表示場所」を動かすことは可能です。

例えば・・・

「販管費」に「臨時的な修繕費が500万円」計上されていたとしましょう。これをそのまま「修繕費」として計上すれば「経常利益」は、その500万円分少なく計上されます。しかし「臨時的な支出だから」という理由で「特別損失」に表示場所を移動すれば「経常利益」は、その500万円分だけ多くすることができます。

このように「表示する場所を変えることで見栄えがよくならないか?」の検討をすることも「決算書対策」のひとつです。

私は「決算書をスッピンで出すな!」とよく言います。「少しくらいお化粧しようよ!」です。もちろん「厚化粧」はダメですが(笑)。

やってはならない「悪い節税」

以上「利益対策」と「決算書対策」について紹介しましたが、いちおう「節税対策」についても少し書き加えておきますね。

「節税対策」には様々な方法がありますが、その中には「良い節税」と「悪い節税」があります。「節税」ばかりに気を取られて「悪い節税」をしないように気を付けてください。

「節税」はあくまでも「手段」です。

「目的」は、少しでも多くのキャッシュを手元に残すということだと思います。しかし「節税」の方法には「キャッシュが減ってしまう」ものがあるので、気をつけましょう。

「節税してキャッシュが減ってしまった」では本末転倒です。

(関連記事)節税で会社は弱くなる?キャッシュが減っては本末転倒

正確な月次決算は大前提

「決算対策」をして「理想とする着地点にソフトランディング」するためには「現在位置」を正確に把握しておかなければなりません。

  1. 現在、ここにいる
  2. このまま進めば、あのへんに着地する
  3. 着地点を修正するには・・・

というプロセスが「決算対策」であり、そのために「正確な月次決算」が欠かせないことは言うまでもありません。

「いま、どのあたりを飛んでるかわからない・・・」ってことでは、そもそも対策の打ちようがありません。

上手な決算対策のために正確な月次決算をすることは大前提です。

(関連記事)決算書は「経営者の人生の記録」なので大切に積み重ねること

まとめ

さて、どうですか?「節税以外の決算対策の視点」を簡単に整理しました。

一般的に顧問税理士が「黒字企業に節税対策」を提案することは珍しくありませんが、「赤字企業の決算対策」や「決算”書”対策」を提案することはマレです。

思い当たることがあれば、この記事を参考にして顧問税理士に相談してみてください。

関連記事も含め参考にしてみてください。

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以上、お役に立ちますように!