利益を1.7倍にするロジック|中小企業の管理会計実践ガイド

HORII
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おはようございます!

今日は2025年第17週の土曜日。

「儲かってまっか?」

「ボチボチでっか?」

さて、今日は「もっと儲けるロジック」を「管理会計≒マネジメント会計」の視点で整理します。

収益力改善の参考にしてもらえたら幸いです。

このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に、「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。
初めてアクセスしていただいた方は、「このブログについて」をまずご覧ください。

【常識再考】
当たり前の計算を再確認する

 収益-費用=利益

シンプルすぎて拍子抜けするこの計算式。

でも、収益力改善の本質はこの一行で表せてしまいます。

最小限のコストで、もっと収益(売上)を上げる。

そうすれば、もっと儲かる。

この「当たり前」に異論はないはずです。

でも実際には、「もっと儲けよう」と思っても、なかなかカンタンではない。

この極めて当然の常識の確認から始めましょう。

なぜなら、多くの中小企業経営者が「収益(売上)を上げること」に偏っているからです。

安売り!、広告!、人員増!、投資!・・・

様々な施策によって収益(売上)を拡大させても、利益がついてこない・・・

心当たりはありませんか?

「利益が目的、売上は手段」って、百も承知なのに、気付けば「売上が目的」になっていませんか?

そんな「当たり前」を最初に確認してから、次に進みます。

【必要利益】
どれだけ儲ければいいか?

もうひとつ、盲点となっているはずの「当たり前」の話をしておきます。

「経営者の引退」の話。

中小企業の多くはオーナー企業であり、経営者の引退は「譲渡(相続を含む)」か「清算」の2択です。

いずれであっても、そのときの「評価額」は、大雑把にいうと「時価内部留保」。

つまり、創業以来の利益の積み重ねです。

これが引退時、「退職金」や「株式譲渡収入」となって、経営者の手元に入ってきます。

ストレートに聞きます。

「そのとき、いくら欲しいですか?」

1億円ですか?5億円ですか?10億円ですか?それでも足りませんか?

これが「いくら儲けるか?」の「目標額の最終地点」です。

  • もう十分なら、これ以上チームに余計な負荷をかけなくていいかもしれません。
  • 天変地異があるかもしれないので、青天井に蓄えるべきですか?
  • ぜんぜん足りないので、もっと儲けなければなりませんか?

さて、あなたの「事情」はどうですか?

百社百様なので「こうすべき」という正解はありません。

しかし、「あなたの正解」を整理しておかなければ、短期的な利益で一喜一憂することになり、その結果・・・

  • 儲かっていたのに、間違った節税で、内部留保が貯まらず
  • ずっと冴えない状況が続いて、いざ引退の時に寂しい内部留保
  • たっぷりの内部留保と思ってたのに、思わぬ課税でごっそり減額

「内部留保はいくら必要か?」についての「あなたの正解」が明確になって初めて「もっと儲けたい!」という意思が意味を持ちます。

「儲けたいに理由なんかない」

「もっと内部留保を厚くしたいから、もっと儲けたい」

この両者の差は、将来、大きな差になります。

簡単な計算式を示しておくので参考にしてみてください。

  • 引退時に欲しい内部留保:5億円
  • 現在:1億円
  • 不足額:4億円(5-1億円)
  • 引退まで20年だとすると。。。
  • 毎期平均必要(税引後)利益:2,000万円

こんな具合です。

税引前で計算すると「ざっくり3,000万円/年を20年間続ければいい」となりますね。

【現状確認】
自社の収益構造を確認

大事な前置きだったので長くなってしまいました。

「もっと儲けるための計算実務」に進みましょう。

さっきの「収益-費用=利益」のシンプルな計算式。

経営実務においては、「損益計算書(PL)」になります。

ただ、ここで必要なのは、その「管理会計バージョン」である「進化型MA損益計算書」。

収益力改善に取り組むにあたって、まずこのフォーマットで、「自社の収益構造」を正しく現状把握しましょう。

*このフォーマットの詳細は、「詳説記事:中小企業経営者のための【進化型】MA損益計算書」を参照してください。

下記にサンプルを示します。

ここからは、数字が並ぶので、ゆっくり丁寧に読んでください。

「サラッ」と流すと、この記事の目的の「1.7倍にするロジック」が分からなくなってしまいます。

売上高300,000
変動原価180,000
限界利益
(対:売上)
120,000
40%
事業コスト90,000
創造付加価値30,000
経営コスト24,000
経常利益6,000
法人税等(概算)2,400
税引後利益3,600

このサンプル(単位:千円)をよく見て、次について確認してみてください。

  • 「売上高」から、最後の「税引後利益」までの計算プロセス
  • 「限界利益」が「売上高」の40%であること
  • 固定コストが「事業コスト」と「経営コスト」に大別されていること
  • 「創造付加価値」という見慣れない項目があること
  • 「経常利益」の40%が概算の法人税として計上されていること
  • 「税引後利益」が、3,600千円であること

以上が確認できれば、あなたの会社の直近の決算書に基づいて各項目を埋めて、同じように確認してみてください。

なお、この目的は「収益構造の確認」であって「細かな数字」に捉われる必要はありません。

大まかな数字でいいので、ざっくりと埋めてみましょう。

また、臨時的な損益である「特別利益」や「特別損失」が計上されていても、ここでは無視。

「どんな体質なのか?」が分かればOKです。

【感度分析】
どこがイチバン感じるか?

収益力改善に取り組むときの「定番」となるのが「感度分析」です。

「どこを触れば、イチバン感じるのか?」

上記のサンプル(単位:千円)を用いて、その例を示すので、あなたの会社の数字でも同じように計算してみてください。

売上高300,000
変動原価180,000
限界利益
(対:売上)
120,000
40%
事業コスト90,000
創造付加価値30,000
経営コスト24,000
経常利益6,000
法人税等(概算)2,400
税引後利益3,600
  • 売上高を1%アップすれば?
  • 限界利益率を1ポイントアップすれば?
  • 事業コストを1%削減したら

このように、それぞれ「1%(1P)」を改善すれば「経常利益」にどれくらいのインパクトがあるでしょう?

売上高1%の影響試算

売上高:300,000千円の1%=3,000千円のアップ。

固定コストはそのままだとすれば、限界利益率が40%なので「経常利益」は、1,200千円アップします。

売上の1%で、経常利益ベースでは「6,000→7,200千円」と、20%アップすることが分かります。

限界利益1Pの影響試算

限界利益率を「40%→41%」にアップしたときのシミュレーション。

売上高:300,000×1%で、限界利益は3,000千円増です。

限界利益を1ポイントアップすれば、経常利益は「6,000→9,000千円」と50%アップ、つまり「1.5倍」になりました!

事業コスト1%の影響試算

結果は、分かっていますが、一応計算しておきましょう。

事業コスト90,000千円×1%=900千円。

つまり、経常利益は「6,000→6,900千円」と、微増します。

売上高を1%+限界利益率1Pアップ

では「複合技」です。

「売上高を1%アップ」し、さらに「限界利益率も1Pアップ」すれば、さっきの「MA損益計算書」が、どのように進化するのか?を計算してみました。

すると、経常利益は、「改善前:6,000千円」だったのが、「改善後:10,230千円」に変化しました!

約1.7倍です。

御社の数字では、何倍になったでしょうか?

【改善前】【改善後】
売上高300,000303,000
変動原価180,000178,770
限界利益
(対:売上)
120,000
40%
124,230
41%
事業コスト90,00090,000
創造付加価値30,00034,230
経営コスト24,00024,000
経常利益6,00010,230
法人税等(概算)2,4004,092
税引後利益3,6006,138

さて、どう感じましたか?

もし「意外!」と感じたなら、このロジックを活用する価値と期待が持てます。

なぜなら「今まで、こんな計算してみたことはなかった」はずだからです。

経営者なら、この「意外な計算結果」にアタマが刺激されたのではないでしょうか?

たかが1%、されど1%」です!

上記の「経営者の引退」に関わる時間軸で換算すると、次のようにも考えることができます。

「税引後利益」は、3,600千円から6138千円に変化しましたが、これを10年、20年積み重ねた部留保を比較すると?

  • 3,600千円→(10年)→36,000千円→(さらに10年)→72,000千円
  • 6,138千円→(10年)→61,380千円→(さらに10年)→約1.2億円!

【行動計画】
もっと儲けるためにどうする?

さて、「小さな刺激」でも「大きく感じる」ことを確認しました。

さりとて、これは「机上の空論」。

実際に収益力を高めるためには「どこを?」「どれだけ?」改善できるか?を具体化しなければなりません。

もっと儲けるためにどうするか?

その答えは、業種・規模・現状の違いに応じて様々です。

ただ、具体化するときのステップは同じです。

Step1
 感度分析の精度を高める

上記の「感度分析」のシミュレーションですが、実務的はもう少し細かな計算が必要です。

例えば、上記の試算は「事業コスト」は変わらずという条件でしたが、実際には、そのためにメンバーを増やすなど、固定的なコストのアップが必要なことがあるでしょう。

また、案外盲点(聖域?)になるのが「経営コスト」。

売上や利益率を改善しなくても、役員報酬や交際費などの削減の余地が残ってるかもしれません。

感度分析の過程において「あらゆる可能性」をもれなく確認するようにしましょう。

(参考記事)中小企業の内部留保|財務基盤を強化する重要KPI-8選

Step2
 感じるところを絞り込む

「一点集中」か、それとも「複合技」で取り組むか?

下記の視点を参考にして決定してください。

  • 効果性:より大きな改善ができること
  • 即効性:効果が出やすいこと

最も効果的な組み合わせについて、優先順位に注意して方針決定しましょう。

(参考記事)人が育つ仕組み|優先順位思考が習慣になっている企業文化

Step3
 行動計画と担当割

具体的な改善スケジュールを明確にし、担当者を配置しましょう。

その際には、上記の計算を示し「小さなことが大きな効果を産む」ことをチーム全員で共有しましょう。

売上高、限界利益率、コスト、いずれも「全社的な取り組み」にすることが効果的です。

また、効果も共有するため、モニタリングしやすいように「予算化」することを強くオススメします。

(参考記事)中小企業の予算管理|「予算」は「予想」でも「予測」でもない

Step4
 モニタリング

行動が始まれば、「期待通りの効果は得られているか?」のモニタリング。

管理会計≒マネジメント会計を活用し、定例会議を開催することがオススメです。

ここからは、PDCAをグルグル回して「体質改善」を推し進めていきましょう!

(参考記事)会計活用|管理会計で経営会議はもっと良くなる!重要6視点

【要点整理】
必要利益を確実に獲得する

さて、どうでしょう?

タイトルには「1.7倍ロジック」と書きましたが、何もこの数字が固定しているわけではありません。

「小さな数字のインパクト」を疎かにしない「視点」の話です。

また、これは「会計的な計算技術」に留まらず、中小企業経営者の「ハッピーリタイアメントのためのロジック」でもあります。

そのポイントを再掲します。

  • 実質内部留保に目標設定を行う
  • 内部留保目標のため、与えられた時間にどれだけの利益が必要か?を把握
  • 必要利益を確実に獲得するため「小さなことを疎かにしない」
  • 理想を現実にするため、PDCAをグルグル回す!

関連記事も含め参考にしてみてください。

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以上、お役に立ちますように!