中小企業の事業承継は10年スパンで計画する:逆算のサンプル

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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。


中小企業の経営者の高齢化が進んでおり、経営者年齢のピークはこの20年間で50代から60~70代へと大きく上昇しています。
また、後継者の不在状況は深刻であり、近年増加する中小企業の廃業の大きな要因の一つです。このままでは日本経済・社会を支える貴重な雇用や技術が失われる可能性があります。

(引用)中小企業庁:https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/know_business_succession.html

現役でバリバリ活躍中の若い経営者にとって、この話は「実感がない」が正直な感想ではないでしょうか?かくいう私も現役時代「これは高齢経営者の話だから」という受け止め方であったと記憶しています。

しかし、今、事業承継を実体験した私だからこそ「若い経営者に伝えておかなければならない話」だと思っています。

事業承継において、ヒトのこと、モノのこと、おカネのこと、いずれも時間を要するテーマですが、引退したい時に引退できるように、また、その引退がハードランディングではなく、ソフトランディングであるため、綿密な計画がとても大切です。

そこで、本稿では「若い間に考えること」として、経営者の引退である「事業承継のプランニング」についてのサンプルを紹介します。

この記事は「中小企業向|経営計画の策定と運用、3つの新視点」の補足です。

このブログでは「10人~100人規模の中小企業経営者」の方々に向けて「経営脳の自主トレサポート」を目的に「もっといい会社」にするためのヒントを発信しています。初めてアクセスしていただいた方は、こちら(=「このブログについて」)をまずご覧ください。

「出口」を知らない経営者はいずれ後悔する

経営者の出口は、大きく分けて「承継(後継者承継・売却)」か「廃業」のいずれかしかありません。

会社目線で言い換えれば「継続」か「解散・清算・廃業・閉店」です。

創業は、一人でも可能なので難しくありませんが、引退は、その時点で社員、取引先、得意先など多くの人との繋がりや、資産や負債もそれなりの金額になっているので、それぞれを円滑に、周りに迷惑をかけることなく解決することは、簡単ではなく「それなりの時間」が必要です。

多くの経営者が、気付いたときにはもう手遅れで「もっと早く対策をしておくべきだった」と後悔しています。

詳しくは、下記の記事を参考にしてください。

(詳説記事)経営者の引退・・「出口」を知らない経営者はいずれ後悔する

時間軸を可視化する

オーナー企業が多い中小企業において「経営計画」は「経営者の人生計画」と表裏一体です。

「出口」のイメージを可能な限り具体的にしておくことが重要であり、無策でも何とかなる人、つまり、特に対策もなく「ハッピーリタイアメント」できるのはレアケースと心得ておきましょう。

対策において最初にやるべきことは「時間軸の可視化」です。

下記の例のように、簡単(おおまか)でいいので中長期の時間軸を常に頭の中に持っておくことが必要です。

この時間軸の「どこで着陸するか?」です。この際に、家族の年齢も併記するとリアリティが増します。

2025年
現在
2035年
最盛期
2045年
着陸準備期
2055年
着陸期=引退
2065年
2ndライフ
自分35歳45歳55歳65歳75歳
配偶者30歳40歳50歳60歳70歳
第1子5歳15歳25歳35歳45歳
70歳80歳90歳100歳110歳

(関連記事)想い通りに生きる経営者のための「人生計画」の重要視点

事業承継の重要視点「ヒト・モノ・カネ」

事業承継に対しての考え方は様々であり、ここで紹介するサンプルについても賛否両論があることは承知しています。

したがって、下記は「こうするべき」というものではなく「こんなふうに考える」ためのヒントとして受け止めてもらえればと思います。

まず「事業承継の重要視点」です。

一般的に、事業承継は「後継者問題」という文脈で語られることがほとんどですが、それは解決すべきテーマのひとつに過ぎません。

事業承継のプランニングにおいては、他にも解決すべき重要なテーマがあり、それぞれの「解決策の解像度」が明暗を分かちます。それを「ヒト・モノ・カネ」のカテゴリーで整理すると下記のようになります。

ヒトの事

事業承継を検討する際「後継者をどうするか?」と、経営者のことだけを考えがちですが、経営者と同時に、現メンバーも同じだけ年齢を重ねます。各部門のリーダーは?各リーダーのスキル承継は?次世代の採用は?

さて、「後継チーム」をどうするか?です。

モノの事

中小企業の場合、商品やサービス、さらに技術も含め、それらに関する競争優位的なノウハウを創業者に依存していることが少なくありません。いわゆる「モノの競争優位性」ですが、その伝授は一朝一夕には困難で、それなりの時間を要することがほとんどです。

さて、「ノウハウの承継」をどうするか?です。

カネの事

私は「貸借対照表は引退のパスポート」と言っているのですが、経営者の引退において「貸借対照表(バランスシート)の良否」が、引退の良否に大きく影響します。

たっぷり稼いで「潤沢な内部留保を蓄積した」のであれば、株価評価が大きいので「相続税対策」が必要です。

反対に「債務超過」なのであれば、残った負債をどうするのか?後継者が借金の肩代わりまでしてくれるのか?という重い問題を抱えることになります。

さて、「貸借対照表(バランスシート)」をどうするか?です。

(参考記事)中小企業の貸借対照表|内部留保が分かる経営者になること!

逆算のサンプルフォーマット

上記のように、事業承継のプランニングは「後継者」のみならず、ヒトのこと、モノのこと、おカネのことなど、検討すべき範囲は多岐わたり「テキトー」に「なんとなく」できるものではありません。

また、それぞれ時間を要するテーマなので、綿密なスケジューリングがとても重要です。

私は、経験的に「事業承継は10年がかりのプロジェクト」と考えていますが、具体的には、下記のような「逆算フォーマット」で可視化すると頭の整理がしやすくなります。

このプランニングは、それぞれの個別事情があるので、百社百様ですが、ひとつのサンプルとして参考にしてみてください。

ちなみに、このサンプルは、経営者は60歳で2億円の退職金を手にしてハッピーリタイアするためのスケジュールですが、そのために、50歳の時点で「次世代チームビルディング」に着手し、57歳で後継者に社長交代し、その後引退までの3年間は会長として社長をサポートするというプランになっています。

*スマートフォンの方は、見辛いと思うので「横向き」にするか、改めてPCでご覧ください。

年齢ヒトモノカネ:実質内部留保
(備考)毎期2千万円増
あと10年50歳後継組織の設計
不足人材の可視化
商品力・サービス力・技術力の承継とトレーニング0.6億円
あと9年51歳不足人材の採用(↓:継続)0.8億円
あと8年52歳各部門長の後任指名(↓:継続)1.0億円
あと7年53歳各部門長のトレーニング(↓:継続)1.2億円
あと6年54歳各部門長のトレーニング(↓:継続)1.4億円
あと5年55歳各部門長の交代(↓:継続)1.6億円
あと4年56歳各部門長のサポート(↓:継続)1.8億円
あと3年57歳社長交代:自身は会長に(↓:継続)2億円達成
あと2年58歳会長として社長サポート(↓:継続)2億円キープ
あと1年59歳会長として社長サポート(↓:継続)2億円キープ
引退セレモニー60歳会長辞任=完全引退退職金2億円を受け取って引退。

まとめ

さて、どうですか?事業承継を10年で計画するときの逆算サンプルを紹介しました。

ヒトのこと、モノのこと、おカネのこと、いずれも時間を要するテーマですが、引退したい時に引退できるように、また、その引退がハードランディングではなく、ソフトランディングであるため、綿密な計画がとても大切です。

関連記事も含め参考にしてみてください。

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