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この記事は、更新時の情報と筆者の考えに基づくものです。
「人事評価基準」は、給与や賞与、あるいは昇進等を決めるための「採点ツール」だけではなく、経営者が求める理想の人材に成長してもらうために「求める人材像」を伝えるための大切なツールです。
この記事では、10人~100人規模の中小企業が「人事評価基準」を作成する際の大切な視点を紹介します。
この記事は「中小企業向け人事評価|仕組み作りと運用のアウトライン」の補足です。
「好みのタイプ」は、人それぞれ
「あなたの好みのタイプは?」
・・・と言っても「異性」のことではありません(笑)。
社長として「どんなタイプの人材を求めていますか?」ということ。つまり「理想のタイプは?」、です。
「もっといい会社」を実現するために優秀な人材は欠かせません。会社が人の集団である限り「もっといい会社」になるか?ならないか?に「人材の優劣」が大きく影響することは言うまでもありません。できることなら「理想の人材」による「もっといいチーム」にしたいものです。
ここで重要なのは、「理想の人材」とは「あなたにとっての理想の人材」という視点です。
「社長、優秀な人材がいるので良ければ紹介しようか?」と誘われて実際に会ってみたら「なんか違う・・・」ということがあります。その人材は、紹介してくれた人にとっては優秀かもしれませんが、自分にとって優秀とは限りません。つまり「自分の好みのタイプ」ではないのです。
(関連記事)中小企業の人材育成|優秀な人材が求める5つのニーズに応える
黙っていたら「好みのタイプ」と出会えない
「好みのタイプ」は、人それぞれです。
当然ですが、黙っていたら誰にも伝わらないので、いつまでたっても「好みのタイプ」と出会うことができません。あなたの「好みのタイプ=理想の人材」を採用し、育成するためには「好みのタイプ」をわかりやすく明確に言葉にして発信する必要があります。
「好みのタイプ」が人事評価基準の原型となる
- 慎重な人か?それとも大胆な人か?
- 派手な人か?それとも地味な人か?
- 営業系?それとも研究者系?
- ハキハキ?それとも寡黙?
みたいに「性格由来」であったり
- お酒好き?それともキライ?
- 喫煙者?それとも非喫煙者?
- ロック系?それともクラシック系?
- アウトドア派?インドア派?
などプライベートな趣味嗜好まで。
「好みのタイプ」は様々な要素の複雑な組み合わせで決まります。さすがに、上記のような条件をそのままストレートに公言することはできませんが、自分の「好みのタイプ」に出会うために「本音」を整理することから始めましょう。もっと「いい会社」にするために、どんなタイプの人材を求めているか?です。
この「好みのタイプ」、意外に自分でもわかってないことがあります。「理想の人材」を求めているなら「下ごしらえ」として「こんなタイプが好き」「こんなタイプはキライ」と、具体的に言葉にして紙に書き出してみると整理できます。
この「下ごしらえ」をしておけば、
- 求めているスキル:どんなスキルを求めているか?
- 求めているレベル:それはどんなレベルを求めているか?
の言語化が容易になります。そして、これをリストにすれば「人事評価基準」の「原型」となります。
つまり「人事評価基準」は
「私は、
・こんなレベルの
・こんなスキルを持った
・こんなタイプの
人材を求めているんだ」
という経営者のメッセージなのです。
(参考記事)中小企業の人事評価|5段階評価「5点=満点」の大切な意味
「好みのタイプとして何点か?」を共有する
「人事評価基準」は、経営者が「自分にとっての理想の人材=求めている人材」を具体的に言葉にしたものです。
「人事評価」は「私の好みのタイプとして何点か?」=「私の理想として何点か?」について社員を数値化する仕組みというのが「実態」です。
「私の理想の人材として、あなたは80点だ」という具合に「見える化」し、お互いに共有する仕組みです。
「好み」を伝えて「好み」に近づいてもらう
「私の好みは、こんなタイプなんだ!」
「だから、少しでも私好みの人になってほしい!」
「人事評価基準」で「好み」を発信し、「人事評価」で「80点」と評価し、少しでも満点に近づくようにアドバイスしたり、フォローしたりする仕組みが「人事評価制度」です。
大切なのは「好みのタイプを伝えること」。自分の「好み」をはっきり発信しなければ相手、つまり社員達は、どうすればいいかわかりません。
この「発信」がないと、社員達は、それぞれ・・・
- たぶん、こんなのが社長のタイプなんだろうな
- たぶん、このレベルでいいだろう
- たぶん、これさえしなければいいだろう
など想像するしかありません。
もし「好みのタイプ」を発信しないまま「君は私の好みのタイプじゃない」と言えば多くの場合は「勝手にすれば!」とモチベーションは低下し、最悪の場合、あなたの元を去っていきます。
「人事評価基準」で「好みのタイプ」を伝えることで、社員は「あ、そういうのが好みなのね!・・・じゃあ、あなた好みになってあげる」と、ニュアンスは不適切?ですがw、好みを伝えて、少しでも好みのタイプに近づいてもらうために運用する仕組みが「人事評価制度の本質」です。
「好みのタイプ」に育てるための人事評価制度
人事評価制度そのものは「目的」ではありません。「目的」は好みのタイプの人材に成長してもらうことです。人事評価制度は、好みの人材に成長してもらうための「手段」。つまり「足りない部分」を補うためのサポートをしなければ「宝(=人事評価制度)の持ち腐れ」となってしまいます。
満点:100点-評価:80点=20点不足。この20点をどうすればカバーすることができるか?をアドアイスしたり、フォローすることで人は育ちます。予習復習を「自習」して自ら成長する人材は限られています。残念ながら、人は勝手に育つものではありません。
「もっと、こうしたら私の好みに近づくことができるよ」と「好みのタイプ」になってもらうためのアドバイスやフォローが必要です。
人材育成のPDCA
人材を育成するためのPDCA(Plan-Do-Check-Action)を回しましょう。
人事評価制度をこのサイクルに当てはめると
- P:「好み」を具体化する=人事評価基準や研修カリキュラム
- D:「好み」に近づくように研修し、その成果を観察する
- C:「好み」にどれくらい近づいたか?個人面談による評価・採点
- A:「好み」にもっと近づくためのアドバイス、フォロー、教育研修
となります。
この一連のPDCAを回すことで初めて効果が得られます。「P:評価基準」をリリースするだけで人材が成長するなら誰も苦労しないし「C:評価・採点」するだけでいいなら、学生にはテストだけやっていればよい、ということになります。
学校に例えれば、学年ごとのカリキュラムがあり、それに沿った授業があり、その成果を確認するためのテストがあります。そして、不合格者には補習でフォローし合格に導きます。
人を育てる、という意味では、学校も会社も同じ、というのが私の考え方です。
学生時代、予習復習自習ができなかった人材が、会社に入った途端に「自力で経営者の好みにまで成長する」ということはレア中のレアケース。授業や補習で「おしりをたたき」「なだめすかし」根気よく寄り添ってやることが必要なのです。
まとめ
さて、人事評価基準は「好みのタイプ」を伝えるメッセージ、という切り口で人事評価を紹介しました。
- 「好みのタイプ」は、人それぞれであること
- 黙っていたら「好みのタイプ」と出会えないこと
- あなたの「好みのタイプ」を言葉にすれば、それが人事評価基準の原型となること
- 人事評価は「経営者の好みとして何点か?」を共有する仕組みであること
- 人事評価で「好み」を伝えて「好み」に近づいてもらうこと
- 「好みのタイプ」に育てるための人事評価制度であること
- 面倒だ・・・
- そこまで手をかけられない・・・
- 自分にはできない
などと思ったかもしれません。
私のコーチングの現場では、ほとんどの経営者が最初に漏らす感想だからよくわかります。
しかし「好みのタイプじゃない社員と仕事を続けること」と天秤にかけて、考え方が変わる経営者も少なくありません。さすがに「全員が満点社員」は理想論です。しかし「全員が合格社員」というチーム作りは経営者の取り組み次第でじゅうぶん可能です。
「あなた好みの人材」をもっと増やすために「人事評価」をフル活用してください。もっと「いい会社」にできます。
関連記事も含め参考にしてみてください。
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